モモちゃんのワシボン   作:ムラムリ

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2017年に開かれたポケモンストーリーテラーフェスに投稿した作品を改稿したもの。
テーマがあって、ラジオ、上昇気流、反比例という言葉を必ず使う事。




前編

「おかーさーん、おかーさーん、あけてー!!」

 お母さんはモモちゃんの急いだ声を聞いて、コンロの日を消しました。

 ふつふつと、弱火で煮込んでいたクリームシチューから白い湯気がふわふわと立ち上り始めます。

 スリッパをはいたまま、お母さんはパタパタとドアの前まで小走りで急ぎました。

「なになに、どうしたの」

 ドアを開けると、ぐったりとした毛玉を腕に抱えたモモちゃんがいました。

「あら……」

 その毛玉には鋭い爪を生やした、物をがっしりと掴める鳥の足が生えていました。毛玉は、もふもふとした頭の毛でした。

 ひょっこりと、おでこから生えているらしき一つ大きな羽がその頭の後ろから見えました。

 ここ辺りでは見ることのないポケモンでした。

「この子、うちの近くでたおれてたの。お母さん、助けてあげられない?」

 お母さんはそのポケモンをじっと見てから、注意ぶかく体をなでました。

 体をひっくりかえして顔を見ると、きゅう、きゅう、と弱い声で鳴いていました。どこをなでられても、痛みを感じるような声は出しませんでした。

「お腹、へっているのかな」

 でも、お家にはポケモンフーズはありませんでした。お父さんはコドラを持っていましたが、コドラの食べ物はポケモンフーズではなく、鉄くずでした。

「ちょっと待ってね」

 そう言って、お母さんは家の中にぱたぱたと戻ります。

「大丈夫だからね」

 きゅう、と弱々しくそのポケモンは鳴いて、顔を横に向けました。

 少しすると、お母さんがお椀を持って戻ってきました。

「……、ミルタンクのモーモーミルクで作った、栄養たっぷりのクリームシチューよ。ちゃんと冷ましてあるから」

 そのポケモンはくん、くん、と何度か匂いを嗅ぐと、それから一気に食べ始めました。がつがつと、ごくごくと、そのポケモンは一心不乱にクリームシチューを食べました。

「あら、もうなくなっちゃったわね。モモ、またちょっとそこで待っててね。そのポケモン汚れてるし、お家に入れるにはちゃんときれいにしないと」

「……うん! ありがとう!」

 モモちゃんは、このポケモンを気に入っていました。顔を覗こうとすると、ぷい、と目を背けてしまいますが、その様子もモモちゃんは気に入っている様子でした。

 

 夜、お父さんが帰ってきて、ソファの上ですやすやと眠るそのポケモンを見つけました。

「ワシボンじゃないか。こいつはイッシュのポケモンだぞ。どうしてこんなところに」

「いっしゅ?」

 きゅっ、きゅっ、とコドラの体を磨きながら、モモちゃんはお父さんに聞きました。

「遠い遠い、海の向こうの国さ」

「どの位遠いの? シロガネ山くらいまで?」

「そんな、目に見える近さじゃないさ。シロガネ山まで、うーん、100回往復する以上の遠さだと思うよ」

「ひゃっかい!」

「もしかしたら、200回、300回、それ以上かもしれない」

「ふええええっ! そんな遠くから来たんだ、この鳥さん!」

「……うん、そうだね」

 お父さんは、そうでないことをもちろん分かっていました。

 カントー、ジョウトとイッシュの間にある広い、広い海を横断できるポケモンなんて、そうそう居ません。ましてや、進化する前のポケモンがその海を渡るなんて、あり得ないことでした。

 このワシボンは誰かしらの手によってこのジョウトに連れて来られて、そして野に放されてしまったのです。

「夜ご飯の支度できてるからねー」

 お母さんが呼びかけました。今日は、モモちゃんの大好きなクリームシチューです。

 お肉のおいしさもともかくですが、サラダとかで食べるとそんなにおいしくない野菜もシチューに入るとふしぎと甘く、モモちゃんはそのいつもと違う野菜の味が大好きなのでした。

 

 

 

 夜ごはんの後、モモちゃんはラジオを聞き始めました。毎日の日課です。

 お父さんがラジオを好きで聞いていたのを、モモちゃんも聞き始めて、いつの間にか日課にもなっていたのです。

「今日のお話は、シロガネ山のお話です」

「シロガ、……シロガネ山ね」

 モモちゃんは大声で叫びそうになったのを抑えて言い直しました。

 大声を出しているとラジオが聞こえない、とお父さんに叱られるからです。

「皆さんのシロガネ山のイメージと言えば、何でしょう?

 日本一高い山? トレーナー達の修行する場所? おとぎ話にも出て来る神聖な山? 屈強なポケモン達が棲む魔境?」

 モモちゃんは、シロガネ山の高さが自分の身長の3000倍以上あることを知っていました。シロガネ山の高さがさ3776メートルであることも覚えていました。でも、それ以外のことは知りませんでした。

 分からない言葉も多くありました。

 でも、話す人の喋り方で、どういうことを話しているのかということはなんとなく分かりました。その喋り方に連られて、モモちゃんも悲しくなったり楽しくなったり、しんみりしたり怒ったりするのです。

「――カメラマンが相棒のブースターと山に籠って五日後に撮った写真は、ゴウカザルが天然の温泉に入っている姿でした。

 炎タイプであっても温泉の気持ち良さは変わらないのだろうと、そのカメラマンは後に語っていました」

 気付くと、ワシボンは目を覚ましていました。モモちゃんは小声で、じっとしていた方が良いよ、と言いました。

 そんなモモちゃんにワシボンはぷい、と目を背けましたが、モモちゃんの言葉は通じたのか、あまり動こうとはしませんでした。

 モモちゃんはワシボンの隣に座り直して、ラジオを聞き続けました。

「――食糧の大半が尽き、そろそろ下山しなくてはいけない頃、とうとうバンギラスの姿を撮影することが出来ました。

 この山のヌシと呼んでも良い程に、その立ち振る舞いには強者としての風格がありました。

 カメラマンはじっと息を潜めて、カメラのレンズを慎重に絞りました。

 歩く度に、ずん、ずん、という音までは流石にしなかったが、まるで聞こえてくるかのような存在感があった、とカメラマンは語りました。

 岩の鎧を身に纏う巨獣。ポケモンとしては、カイリューやボーマンダなどのドラゴンポケモンと同格の力を持つとされています。

 怖くなかったのですかと聞いたところ、カメラマンは少し悩んで、答えました。

 怖かったけど、怖くなかった、というのが一番近いかな。

 怖かったけど、怖くなかった?

 カメラマンは続けて答えました。

 バンギラス自体は流石に怖かったけどね、見つかったらヤバいよな、とか。でも、あくタイプがそのまま悪者じゃないってことと同じでさ、そいつはシロガネ山という日本一でかい山という厳しい自然の中で、他のポケモン達と一緒に暮らしているコミュニティの一員であることには間違いなかったんだ。一端に書かれている、山や川を荒らして地形まで変えてしまうとか、そのバンギラスがするようには思えなかった。

 それが怖くなかった、という理由だ」

 モモちゃんはふと、ワシボンの方を見ました。

 ワシボンは、真剣にラジオの方を見ていました。ワシボンもお話を聞いている様子でした。

「分かるの?」

 ワシボンは、答えませんでした。

 分かるのはちょっといやだなあ、とモモちゃんは思いました。私より頭良いって思われちゃう。

「バンギラスの姿を何十枚も撮る事が出来てから、カメラマンは最後にまた温泉の写真を撮って帰ることにしました。

 そしてそこにはゴウカザルとバンギラスが居ました。

 カメラマンは言いました。

 ……どちらが上なんだ? って思ったね。ゴウカザルの素早さと格闘術なら、バンギラスに勝るだろうからね。

 写真にはさながら人間のように、大岩に背中を凭れながら温泉に入っているゴウカザルと、その向かい側にぼうっと、大雪の降る曇り空を眺めながら温泉に入っているバンギラスがいました。そこには微塵も、平和を乱すものは感じられませんでした。

 まあ、どっちがヌシだろうと大して問題ないんだろうな、とカメラマンは締め括り、下山しました。

 カメラマンは、最後にこう言いました。

 トレーナー達が修行に入ることもある、というのも良く知っている。けれども、ここにも厳しい自然の中で平和に暮らしているポケモン達がいる。それは、絶対に忘れないでほしい」

 その少し後に、ラジオは終わりました。

 今日は、むずかしい話だったけど、なにか大切なことを学んだ気がしました。

 ワシボンはまた目を閉じて、そのままソファで寝始めました。

 モモちゃんも、眠くなってきたので寝ることにしました。

 

 

 

「あ、起きた」

 ワシボンは起きてすぐに、びくっ、と思わず震えてしまうほどに、とても恐怖しました。なぜなら目の前にはモモちゃんの顔がとてもとても近くに、モモちゃんの顔しか見えないほどにあったからです。

「ワシボンが驚いているでしょほら。そんな顔を近づけないの」

「はぁい」

 ワシボンは、モモちゃんの顔が遠ざかるとほっとしました。それから、ここがどこか思い出すように周りを見回しました。

 カラフルな家の中です。茶色いタンスに白い壁。窓際には様々な色の服が干されています。カイスの実の形をした緑と黒の時計もありました。眠っていたソファはだいだい色です。

 体を起こすと、まだ、自分の調子はそこまで良くないことが分かりました。

 けれども安全な場所に来ることができたのだと、ほっとしました。

 どこかも分からない場所なのは、連れて来られてから変わりありませんし、元いた場所で多少は聞き取れていた会話も、違う言葉を話すここでは全く聞き取れません。

 でも、ここに居れば安心なのだとだけは、分かりました。

 ぐぅぅ、とお腹の音が鳴ってしまいました。モモちゃんのお腹も同時に鳴っていました。

「あはは、おそろいだね」

 にかっ、とモモちゃんはワシボンの方を向いて笑いました。

 余り慣れない顔に、ワシボンは顔を少し、背けました。

 

「――本日6時頃より、グラードンがえんとつ山の火口から出て来ました。今の所強い日照りなどの現象は確認出来ず、近辺を歩いているだけですが、多くのポケモントレーナーがその事態に駆けつけ、警戒をしています」

 ラジオを聞いていると、お母さんが朝ごはんの支度が出来たとモモちゃんをお手伝いに呼びました。

 今日の朝ごはんは、フレンチトーストとサラダでした。

「お母さん、今日のご飯、ちょっと物足りないよ」

「ごめんね、ちょっと冷蔵庫の中身間違えちゃって。お昼前までに買い物行って来るから、朝だけはちょっと我慢してね」

 ワシボンの前にも、薄い味付けのフレンチトーストが置いてありました。

「人間用の食べ物だけじゃなくて、ポケモン用の食べ物も買って来なくちゃねえ……」

 昨晩、モモちゃんとワシボンが寝てからお父さんとお母さんはお話をしていました。

 早いけれど、このワシボンをモモちゃんの最初のパートナーにしてみよう、ということになっていたのです。

 まだモモちゃんは10歳にもなっていないので、自分のポケモンとすることはできませんが、キープしておくことはできます。

 それに進化すれば、ウォーグルになるのです。

「それは大きくて格好良い鳥ポケモンさ。ジョウトの鳥ポケモンにも負けないくらいね」

 お父さんはそう言いました。

 けれど、そうしようと決めた一番の理由はやはり、モモちゃんが助けたから、ということでした。

 そういう運命的なものは、中々あるものではありません。

 また、ワシボンがモモちゃんのパートナーにならないまま、どこかへ去って行ったとしてもそれはそれでモモちゃんにとってとてもいい経験になると思えたのです。

 ポケモンと付き合うには、ペットと主人と言う関係では絶対にダメなのです。

 

 お父さんが会社に行ってから、お母さんが家事をしている間、モモちゃんはワシボンとテレビを見ていました。

「最近、27番道路でギャロップ達に混じり、ゼブライカが見えるとの情報が入ってきました。その情報を確かめるべく我々調査団はカメラを持って調査へと乗り出しました――」

 ワシボンはテレビをじっと見ていました。ぼうっと見ているモモちゃんとは違い、真剣な目つきでした。

「ワシボン、分かるの? わたし、むずかしい言葉ばっかり使われて、あんまり分かんないよ」

 ワシボンは、ちょっと目をモモちゃんの方に向けましたが、またすぐにテレビの方に目を戻しました。

「数日の間、調査を続けてみましたがギャロップの姿こそ見れたものの、ゼブライカの姿は中々見つけることが出来ませんでした。

 こちらに良く来ているという、ワカバタウンのモリミツさんです。

『ゼブライカ? 一回だけ見たね。でも、後ろ姿だけだ。俺が見た時にはもう、先にあっちが気付いて逃げてたんだよ。ギャロップ達も近くに居たが、そいつらは逃げなかったのによ。あいつ、ここのポケモン達の中でもかなり警戒心が高いぜ』

 その後、調査団は定点カメラを仕込むことにしました。これで数日待ってみましょう。

 気になる続きはCMの後!

 筋肉モリモリマッチョマン達による筋肉天国! 頼れる筋肉! 誇れる筋肉! 安らぎの筋肉! 世界は筋肉で出来ている! カイリキー印の筋肉カフェ! 最近58店舗目が出来ました! 場所はコガネタウン6丁目の……」

「筋肉カフェなんて行く人いるのかしらねえ……」

 皿をキュッ、キュッと拭きながら、お母さんが台所から出てきていました。

「私も行きたいとは思わないなあ。ワシボンはどう思う?」

 ワシボンは目を向けるものの、やはり答えませんでした。

「コドラは答えてくれるのになあ。私の聞き方が悪いのかしら」

 モモちゃんがそう言うと、お母さんが、それは違うわ、と言いました。

「ワシボンはね、きっともの凄く遠くから来たの。昨日、お父さんも言っていたでしょう?」

「うん。シロガネ山まで往復するの、何百回も繰り返さないといけない位、遠くの海の向こうからって」

「そうね。そっちでは、日本語は喋られていないの。

 こんにちは、はハロー、朝ごはんはブレークファスト、この平たいお皿はプレート」

「へえ、そうなんだ」

「だからね。ワシボンはきっと、こっちの言葉が分からないのよ」

「だったら、どう聞けばいいのかな?」

「えっとね……私も英語がそんなに喋れる訳じゃないんだけど、多分、こうかな?

 ねえ、ワシボン。Do you want to go to muscle cafe?」

 ワシボンは首を振りました。

「ほら、通じた」

「お母さんすごーい! 私もワシボンとお話したいー」

 その時、テレビが再開しました。

 ワシボンはまた、テレビをじっと見始めました。

「うーん。きっと待っていれば、ワシボンとお話出来るようになるわよ」

「え、どうして?」

「ワシボンはね、私達の言葉を、私達の会話からだけじゃなくて、テレビやラジオからも学ぼうとしているわ。

 ほら、テレビをじっと、集中して見ているでしょ?」

「うん」

「分からないからこそ、ワシボンは分かろうとしているのよ」

「へぇー」

「モモも分からないからって言って、そのままにしておくのは良くないわよ。

 テレビもラジオも、喋っている話が分かれば、とても面白いものばっかりなんだから」

「分かったー」

 モモちゃんは、ちょっとだけイヤそうに返しました。

 分からなくても、何となくでも楽しいのに、とちょっと思っていました。

 テレビの中ではとうとうゼブライカが映っていました。ちょっとやせ気味でしたが、ギャロップ達の中に一匹だけでも、仲間として受け入れられている様子でした。

 

 

 

 数日が経つと、ワシボンはもうすっかり元気になっていました。

 家の中をぱたぱたと飛び回りる程です。

「一回、外に出してみたらどうかしら?」

 休日のある日、お母さんはそう提案しました。

 モモちゃんはイヤだ、とぐずりはじめました。

「だってワシボン、どこかに行っちゃうかもしれない」

「ええ、そうね」

「だったらどうして?」

「ねえ、モモ。モモがずっと、いつも寝る部屋に閉じ込められていたらどう思う? ご飯とかは出て来るのだけれど、外には絶対に出してくれないの」

「……つまらない」

「そうわよね。それは、ワシボンも一緒なの。ワシボン、外を良く見ていたでしょ?」

「……うん。でも、ワシボンが行っちゃうかもしれないの、イヤだ」

「そうね。でもね、お母さん、遠くに行っちゃうとは余り思わないの」

「どうして?」

「ワシボンは、本当に外に出たいなら、ガラスを割ってでも出てるはずだもの。でも、ワシボンはそうしなかった。どうしてだと思う?」

「うーん、やっぱり外に出たくない?」

「色々考えられるかもしれないけど、それは無いと思うわ」

「なら、なに?」

「ワシボンは、うちを気に入っているんじゃないか、って思うの。私達に何も悪いことしてないでしょう?」

 ワシボンは外に出られなくても、コドラを持っているお父さんはともかく、モモちゃんやお母さんにも当たることはしませんでした。

「でも、そんなの、たまたまかもしれないよ」

「……ねえ、モモ。モモにとってワシボンは、何?」

 いきなりそんな質問をされて、モモちゃんはとまどいました。仲良しになろうと思っていますが、お父さんとコドラのような、仲良しではまだありません。ワシボンはモモちゃんのことをまだ、余り好きではありませんでした。

 モモちゃんは、それ以外のことを考えていませんでした。

「……分からない」

「じゃあ、どうなりたいと思ってるの?」

「仲良しになりたい」

「仲良しになりたいのに、ワシボンをずっと閉じ込めておくの?」

「…………」

「ワシボンは、モモちゃんのものじゃないのよ。仲良しになったって、ならなくたって、それは変わらないわ」

 モモちゃんは、黙ってしまいました。

 でも、やっぱり、ワシボンがどこかに行ってしまうかもしれないのは、モモちゃんにとってとても、とても嫌なことでした。

 ワシボンは、コドラの上でうとうととしていました。

 

 モモちゃんがだまってしまったまま、玄関の扉が開けられました。

 コドラが玄関へのしのしと歩いて行きます。その上ワシボンはうとうととしたまま乗っていました。

 秋の冷たい風が入って来て、ワシボンの体をなでました。するとワシボンは目を覚まして、そして、翼を広げました。

「あ……」

 モモちゃんがとっさに手を伸ばしました。ワシボンはモモちゃんの方を一度振り向いて、それから、外に向かって飛びました。

「行かないで!」

 モモちゃんは泣きそうになりながら、叫びました。

「行っちゃった! お母さんのうそつき! ワシボンを返して!」

 お母さんは家の中で叫ぶモモちゃんを半ば引っ張りながら、外へ連れ出しました。

 ワシボンは風に乗ってはるか高くまで飛んでいましたが、この家の遠くへ行こうとはしていませんでした。

「ほらね、言ったでしょ」

「…………うん」

 ぐすり、ぐすりと涙と鼻水を垂らしながらも、モモちゃんはほっとしていました。

 ワシボンはしばらく飛んでから、家の屋根の上に着地して、そこでまた長い間じっとしていました。

 その日からワシボンは、毎日外で1時間から2時間ほど、外を飛ぶようになりました。

 モモちゃんは空を飛べるっていいなあ、とワシボンが飛ぶ姿を毎日飽きずに見ていました。




後編は後日投稿します。

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