暑い夏は過ぎ、幻想郷にも秋がやってきた
涼しく過ごしやすい季節となり、美味しい山の幸も増える
そう、秋である
秋といえば食欲の秋やスポーツの秋などさまざまな秋があるが、紅魔館には読書の秋が到来していた
紅魔館で読書といえば地下大図書館である
そうして紅魔館の主であるレミリアお嬢様も読書をしようとパチュリー様のいる地下大図書館に訪れていた
もっとも……
「やっぱり本を読むのは性に合わないわね」
すぐに飽きていたが。
「レミィ、うるさいわ。図書館では静かにしてくれないかしら」
「そんなこと言ったって静かに本を読むって言うのが退屈なのよ、パチェは一日中そんなことしてて飽きないの?」
「飽きないわ、一生こうしていたいくらいね」
「まあパチェはそう言うわね……咲夜は?本とか読むの?」
パチュリー様と話していたお嬢様がこちらに話を振ってくる
「まあ人並みには読みますね」
「あらそうなの、咲夜が本を読んでいるところなんて見たことないわね」
もちろんお嬢様方の前で本を読むなんてことはしないが、私は本はどちらかと言えば好きな方である
メイド長としての仕事が多く、最近はなかなか読めていないが
「ところで咲夜はどういう本が好きなの?」
「よく読むのは物語ですね、あとは料理本なども読みます」
「料理本は読書って言わないでしょ……」
そんなことはない、料理を作らない時でも料理本を読んでどういった出来になるかなどを想像するのは楽しいものである
これは私だけかもしれないが
「ねえパチェ、この図書館に物語ってどのくらいあるの?」
「ここの図書館は魔導書系の本が多いけど、物語も数え切れないほどはあるわよ。向こうのほうの本棚は全部物語だったはずね」
「ここにない本の方が珍しそうね、幻想郷にある本なら全部ここにあるんじゃないの?」
「それは分からないわ、人里の本屋には新刊は出るたびに買って並べてるけど」
そんなことを話していたお嬢様は突然目を輝かせて私の方を向いた
「ねえ咲夜、1つ頼みができたわ」
「なんでしょうか」
「幻想郷からこの図書館にない本を探してきて欲しいの。
と言ってもこの図書館はなんでもあるし一々あるかないかを確かめるのも大変だから、あなたがこの本は図書館になさそうだな、と思った本ならなんでもいいわ。
何にも見つからなかったら見つかりませんでしたで帰ってきてもいいわよ」
「かしこまりました、探してまいります」
そう言って私はお嬢様方の紅茶をいれ直した後、図書館から姿を消した
◆
「……よかったの?あんな難題押し付けて」
咲夜が出かけた後、パチュリーはレミリアにそう尋ねる
「まあ探すのは大変そうだけど無理難題ってほどでもないでしょ。人里の本屋とかもあることだし。見つからなかったら帰ってくるでしょ」
「人里の本屋に現時点である本はここにも全部あるわよ?」
「…………え?」
レミリアはいやまさかそんなことないだろう、といった思いを込めてパチュリーを見るが、パチュリーは当たり前だろうとでも言いたげに続ける
「新刊が出るたびに咲夜に買いに行ってもらってるし、最後に買ったのは1週間ほど前だから人里に新しい本はないと思うわよ」
「そんなの買ってるって聞いてないんだけど」
「……あなた紅魔館の主なのになんで知らないのよ」
◆
お嬢様の命で本を探しに来たわけだが、人里の本屋をのぞいてみても自分がかつてパチュリー様に届けた本ばかりで新しい本は見つからない
私は人里に早々に見切りをつけ、掘り出し物がありそうな古道具やに行くことにした
「と言う訳なのだけど、なにか珍しい本はないかしら」
「ここは古道具屋であって古本屋では無いんだけどね」
「でも本も売っているのでしょう?」
「まあ売ってるけどね」
そう言って店主は店の奥の方にある本棚に案内してくれた
「あら、意外と多いじゃない」
「数は多いがその分よくわからない不気味な物なんかもあるんだ、それもあってあまりひとには売らないんだよ。まあ君のところなら大丈夫だろう、気になる物があったら言ってくれ」
かなりの量の本があり、ここなら期待できそうだ
後はお嬢様方に渡せるような本を見繕うだけである
◆
しかしぱっと見たときはわからなかったが確かに不気味な雰囲気を放つ本も存在している
ほかにも紅魔館の図書館で見た覚えがある物も多く、以外と候補はすくなそうだ
とりあえず目についたものを見ていこうと思い、図書館になさそうなものから手に取る
◆
『しんよげんのしょ』
「反陽子ばくだんで世界はほろびるだろう……なんなのこれ」
「さあ?僕にもわからないが予言の書というくらいだ、将来こういうことが起きて世界は滅びるのかもしれない」
こんな子供の空想のようなでたらめで世界は滅びるのだろうか
というか早苗がこの間巨大なロボットがどうとか言っていたがこれのことじゃないでしょうね
◆
次の本は何故かベルトでぐるぐる巻きにされていた
しかもひとりでに暴れているし私の手に噛みつこうとしているようにしか見えない
表紙を見てみると『怪物的な怪物の本』と書いてあった
「……これ何なの」
「魔導書の一種らしい、僕も読んだことないからわからないよ」
「商品が客に怪我させようとしてくるなんて管理がなってないんじゃない?」
「縛っていたら危険はないよ、ペットみたいなものさ」
間違ってもペットではないし、本としてでもお嬢様方にこんな危険なものを持って帰ってらことはできない
まあこの本程度がお嬢様方に危害を加えられるとは思えないが
◆
次の本は明らかに危険な雰囲気を漂わせている本だ
手に取ること自体も本能的に危険だと判断した為、見えている背表紙だけ確認するとかすれていて読みづらいものの『ネク■■ミ■ン』と読めた
「……なんでこんなものを店頭に並べているの」
「そればっかりは僕にもわからないんだ」
「わからないも何もあなたの店の商品でしょう?仕入れたときの記憶とかあるでしょうに」
「……これ実は買った記憶も拾った記憶もないんだ。全く知らない間に本棚に並んでいたんだよ」
「…………」
「…………」
……お嬢様にお渡しすることなど出来るはずもない
◆
「ただいま戻りました、お嬢様」
「おかえり咲夜、どう?何かあった?」
「はい、こちらを買ってまいりました」
そういってお嬢様に買ってきた本を差し出す
「……なにこれ」
「本です」
「いや本は本よ?でもこれ料理本じゃないの」
「本です」
「確かに書籍の形をとってるけど料理本は本じゃ……」
「本です」
「…………」
私は古道具屋で『超美味!スイーツレシピ100』という本を買ってきた
………自分でもお嬢様の求めていたような本では無いと思う
「……まあいいわ、この表紙のショートケーキ美味しそうだから作って頂戴」
「すでに」
「なんでもう作ってあるのよ!やっぱりちょっと後ろめたいんでしょ!?」
「いえ、そんなことは」
「なんでそこで意地張るのよ!」
ちなみにパチュリー様にショートケーキをお出しするために図書館に行った際買ってきた本を告げたら呆れられた
皆さんはどんな本が好きですか?