天然で儚げで可愛いらしい年上のお兄さんは好きですか?~オリキャラ中野家長男√~   作:崇藤仁齋

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私たち長男と五つ子姉妹の六人兄姉妹なんだ

 明けて翌日、上杉風太郎に衝撃走る。

 

「中野千早です。ぜひ仲良くしてください」

「中野五月です。兄共々よろしくお願いします」

 

 転校生としてクラスに新しく入ってく来たのが昨日食堂で出合ったそっくりさん二人組――先の自己紹介によると姉妹でなく兄妹が正しかったようだが、今そんな事はどうでもいい。

 男相手に胸キュンしてしまったのも問題と言えば問題だがあの時は女と思っていたからノーカンだ。それより重要な問題がある。

 

「や、やあ。同じクラスになるとは奇遇だな」

「……ふんっ!」

「(だ、ダメだ! 第一印象が悪すぎたからか取り付く島がない!)」

 

 問題はこの兄妹が仕事先――家庭教師のアルバイトの生徒たちだということだ。

 自分への悪感情から拒否されて家庭教師のアルバイトがご破算になれば借金の返済が遠のく。それだけは断固として阻止しなければならない。

 だが全くの光明がない訳でない。

 

「あ、昨日の親切な人。同じクラスなんだね。よろしく」

 

 どこからどう見ても女――髪を緩く三つ編みに結い左肩から前に流し、日除けのためだろうフード付きカーディガンを羽織った深窓のご令嬢の様な儚げな美少女――にしか見えない兄の方は焼肉定食焼肉抜きを教えた自分に対し好感情を抱いている。何とか彼をこのまま味方に付けて妹を説得して貰わねば。

 そういった思惑から普段は積極的に人と関わろうとしない風太郎が持論を曲げて千早に接触を図ろうとするのだが、これが中々に難題だった。

 

「中野君と中野さんって背丈も同じで顔もそっくりだよね。もしかしなくても双子?」

「違うよ~。私、五月より一つ年上なんだ」

「年上で同じ学年となると年子の兄妹?」

「ううん。実は私病気で一年留年してるんだ。だから正真正銘皆よりもお兄さんなんだよ」

「あ、あの、その何か、ごめんなさい……」

「別に謝らなくていいよ。留年の事私は気にしてないし。それに妹と同じクラスで机を並べて学校生活を送れるってちょっとレアな体験じゃない?」

「すごい前向きだなんだ――あっ、なんですね」

「別に敬語でなくていいよ。畏まられるより仲良くしてくれる方が嬉しい」

「そう? じゃあ遠慮なくタメでいくよ。中野君って本当に男の子? 妹さんとそっくりで可愛いから初めて見たときは女の子だと思っちゃった」

「わかるわ~。Y染色体仕事してるのか疑わしくなるレベルだわ」

「いいや、逆に考えるんだ。こんなに可愛い子が女の子の訳がないってな」

「その理屈でいくと同じ顔の中野さんも男の子ってことになっちゃうよ。そこのところはどう? 中野さん」

「私は女の子です!」

「だってさ。はい、論破」

 

 初めは転校生という物珍しさからクラスメイトに囲まれていた千早だったが、その朗らかな人柄故かいつの間にかクラスの人気者になっていた。

 他人の評価などどこ吹く風な風太郎もさすがに人垣を割って千早を引っ張り出す事は憚られた。

 

「(いや待て。まだ慌てるような時間じゃない。家庭教師の仕事は今日の放課後。まだ俺には昼休みがある!)」

 

 そして迎えた昼休み。

 カツ丼ゼントラ盛りwithプリンの五月と火星丼小盛りの千早の後を焼肉定食焼肉抜きの風太郎が追う。

 

「(狙うは相席。そこで何としてでも兄の方に協力を仰がねば!)」

 

 二人の一挙手一投足に全神経を集中し、どの席に座るかを見定めようとしたその時だ。

 

「皆お待たせ~」

「お待たせしました」

 

 四人の女子生徒が座る六人用テーブル席にプレートを置いたのだった。

 

「(友達と待ち合わせ……だと……っ!)」

 

 しかも席は定員オーバー。これでは相席は望めない。

 あてが外れその場に立ち尽くす風太郎に気がついた五月が昨日の仕返しだと言わんばかりにいい表情を浮かべる。

 

「すみません。席は埋まっていますよ」

「くっ、見れば分かる」

 

 ここは一時退却し計画修正が必要だ。

 そう思いひとまずカロリーを補充して今後の作戦を練ろうとした風太郎だったが、妙にお姉さんぶる女子生徒に絡まれたり喧しい女子生徒に後をつけ回されたりして貴重な昼休みと午後の休憩時間を潰されてしまった。

 

「(こうなれば帰宅途中をアタックするしかない!)」

 

 そう意気込んでみたものの帰り道まで友達と一緒にいるので話しかけるタイミングが全くなかった。

 ちなみに千早五月兄妹の後を付ける不審者ぶりから眠そうな眼をした女子生徒に通報されかけたのはご愛敬だ。

 

「(くっ、タイムアップか。こうなれば出たとこ勝負だ!)」

 

 しかし上手く行かない時はとことん上手くいかないものだ。

 腹を括っていざ出陣と千早と五月の自宅――高級タワーマンションに足を踏み入れようとすると気の強そうな女子生徒に不審者と疑われ、逃げるようにしてマンションの中に逃げ込むもタイミング合わずエレベーターに乗り遅れ、心臓破りの三〇階分の階段を駆け上がるハメになった。

 

「ぜぇっ、はぁっ、ぜ、全部あの妹のせいだ! 赤の他人の顔色を伺う居心地の悪さも……、学校帰りにこんな所で汗だくになって走っているのも……、変な奴らに絡まれたのも……、全部……っ!」

 

 悪態を吐きつつも辿り着いた中野家自宅――高級タワーマンション最上階。丸々ワンフロアを使ったペントハウス。

 

「なん……だと……?」

 

 息も絶え絶えな風太郎の目の前に信じられない光景が広がっていた。

 

「あなたは!?」

「あれ? 優等生くん?」

「いた! ストーカーよっ!」

「上杉さんがストーカー!?」

「早とちりしすぎ」

「こんなところで奇遇だね。何か用?」

 

 千早五月兄妹、学校で絡んできた二人の女子生徒、自分を不審者扱いした二人の女子生徒が揃っていたのだ。

 もはや何が何だか分からなくなってきた風太郎だったが腐っても学校一の秀才だ。限界を超えた高速回転の思考の末、一つの答えを導き出した。

 

「まさかとは思うがお前ら六人、兄妹なのか……?」

 

 同年代の六人兄妹となると親の再婚による連れ子や里子ではないかと言う予想のもと答えを下した風太郎だったが、千早の返した模範解答は風太郎の予想を遙か彼方に高くさらに斜め上を行くものだった。

 

「そうだよ~。私たち長男と五つ子姉妹の六人兄姉妹なんだ」

 

 これが夢なら醒めてくれ――それが風太郎の心からの叫びだった。

 

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