彼と彼女らとちょっぴり俺の物語   作:俳人 

3 / 3
彼らと彼女らと、ちょぴり俺のカラオケ大会が始まる。

「ねーねー、上田くん」

 

入学式から約2週間。まだ比企谷は帰っておらず、しかしそんなことも気が付かず、クラスは青春を謳歌していた。

 

「ねー!上田くんってば!」

 

「……それ、俺のこと?」

 

声の方を見ると、相模南は嘲笑うような目で俺を見下ろしていた。

 

「あれっ?名前違うかったー?ごめんねー!」

 

相模南。彼女は作中では、とても人間らしいキャラクターだと言える。雪ノ下雪乃という女の子と

相模南という正反対といっても過言ではない女の子。その対比は、原作六巻を大いに盛り上げた。

が、彼女を特別好きだという人物は、少ないだろう。

男性が苦手な女子。というか、あまり近寄りがたい女子なのだ。

 

「ねえ、うちの話聞いてる?」

 

「ああ、聞いてなかったわ」

 

「だからぁ、他のクラスの子といっしょにカラオケ行くんやけどぉ、いっしょに行かん?」

 

……ちなみに、俺は相模南が嫌いではない。とても人間らしく、とても身近な人物に感じられた。つまり、こいつの考えていることは、なんとなく分かる。

 

「……戸塚か」

 

「そーそー!向こうのクラスの子が戸塚くんと喋りたいって言ってさー!ちょっと頼んでくれない?」

あの日の後、俺もまたテニス部に入ることになったのだ。

……マネージャーとして。

いや、テニスってキツイんだって。まだ、テーブルテニスやったらいけたと思う。

そういう訳で、俺と戸塚はクラスでもいっしょにいる機会が多く『戸塚の横の人』と認知されるようになった。…やったね、有名人だ。

 

「……答えはNOだ、そろそろ試合も近いしな」

 

「えー、高校三年間全部部活に使っちゃうのー」

 

おそらく、この後こいつは『テニスはいつでもできるけど、皆でカラオケは今しかいけないんだよ!』という。

 

「テニスはいつでもできるけど、皆でカラオケは今しかいけないんだよ!」

 

このままだと、相模横断ウルトラクイズが出来てしまう。

実際、試合も近いし、マネージャーとしても、と友達としても行かせたくない。……というか、俺と戸塚って友達なのかな。ちょっと不安になってきたわ。

 

「ひできくん、どうしたの?」

戸塚がひょこりと俺の後ろから顔を出した。

「あー、いや別に」

 

「ね!戸塚くん!いっしょにカラオケ行かない?!」

俺を回り込み戸塚の手をとって、そうお願いした。…こいつ、男子やったらぶん殴ってたな。

戸塚は、戸惑ったような顔をして俺に助けを求めるような顔をした。

 

「えっと……部活の大会が近いしなぁ…ひできくんは?」

 

「カラオケなぁ……」

 

そういえば、今まで一回も行ったことがない。もちろん存在は知っていたし、近くにはあるのだが一人で行くのはなんとなく躊躇われて行ったことがなかった。

 

「ひできくん、行きたいの?」

 

「あー、いやそう言えば行ったことなかったなって」

 

「じゃあ、行こうよー!友だちのお母さんの店だから、安くしてもらえるんだよ!」

 

相模は、ここぞとばかりに推してくる。これ、何が嫌かって『戸塚を連れてきた相模』っていう肩書きのために戸塚が使われる、みたいな気がして嫌なんだよなぁ…。

 

「そっか……、大会終わったあとだったら…いいよ!ひできくんも来るの…ならだけど」

 

上目遣いで見るな。かわいいな。おい。いや、戸塚と二人だったら、どんなに良かったか……。

 

ちなみに相模は「いや、来るよな?来ないとかねぇからな?」という目で俺を見ている。

 

「……わかった、6時半には家に帰るのよ」

 

「お母さん!?」

 

「じゃあ、二人ともまた連絡するね!」

 

そう言って、相模はどこかへ行った。……悪は去ったぜ。

 

 

「…ねえ、もしかして、ひできくんって相模さんのことすき?」

 

「ブフッ!!!」

 

つい飲もうとしていたお茶を吹き出してしまった。

 

「ちげーよ、別に……なんでそう思ったんだよ」

 

「なんか、授業中とか、相模さん見てること多いからそうなのかなって」

 

「お前……よく見てるな」

 

素直に感心してしまった。戸塚彩加はよく人を見ている。観察しているのだ。

しかし、それは俺が相模を見ているような、興味と似て異なるものなのだろう。

人の良いところを、キレイなものを見ているようなそんな感覚なのかもしれない。

 

「い、いや!別にずっとひできくんを見ているわけではないんだよ!?」

 

「お、おう、照れるな照れるな、俺も恥ずかしいだろうが……別に好きじゃないさ、ただ…」

 

「ただ?」

 

相模の人間らしさ、誰もがもつ要素なのだが、その醜くく、浅ましい人間らしさは、俺が欠如していたものだ。なので、どこか美しく見えるのさもしれない。

 

彼女のどこかに、もしかすると『本物』とやらを見出そうとしていたのかもしれない。

 

もっとも相模から見つかる『本物』など、『本物』ではないだろうが。

 

「まあ、とにかく好きとかじゃねえよ」

 

そう言って頭をポンポンと撫でる。小動物のような少し嬉しいそうな顔をして、笑った。

 

「でも、いつか二人でカラオケ行こっか!」

 

「……おう」

 

こいつが、作中で最もかわいいと謳われる理由が

分かった気がする。

 

 

「やっぱ、俺帰るわ」

 

「ひ、ひできくん!待ってよ!!」

 

2週間後、大会も終わり一段階したころに相模主催カラオケ会に誘われた。イクト約束した以上、戸塚も断りきれずに行くことになり、俺も付いていくことになったのだ。

 

放課後、教えられたカラオケ店に行くと、そこにいたのは俺も知っている男が一人いた。

 

「やあ!戸塚!それと、上田くん?」

 

「上野くんだよ!葉山くん!」

 

葉山隼人。俺ガイルを彩る数少ない男性キャラクターの一人だ。いや、もちろん戸塚も男性キャラクターだよ?

 

その整った容姿と、卓越したコミュニケーション能力、抜群の運動神経、でクラスいや学校の代表生徒といっても過言ではない。

 

嫌だぁぁぁぁ!完璧イケメン野郎と美少年(女の可能性もアリ)の隣に俺が座るなんて、嫌すぎるぅぅぅ!!

 

しかし、戸塚に近づく女をなぎ倒すという使命も……。

 

「よろしく!上野くん!」

 

「お、おう、よろしく」

 

なんだこいつ……。なにもかっこいいこと言ってないのにキラキラしてやがる……。これが、イケメン…!

 

「来たみたいだよ、俺もカラオケ久しぶりだな」

 

「おう、俺は最初で最後にしようかな…」

 

「だめだよ!今度一緒に行くんでしょ?」

 

そうして、彼らと彼女らと、ちょぴり俺のカラオケ大会が始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。