聖女と直死 作:あるけ〜
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…ちょっと何言ってるかわからないですね…。
アイズの面倒を見るようになって7日目。恩恵を貰ってから2度目のステータス更新中。
背後から聞こえてくる唸り声に振り返り、羊皮紙に書き写された内容を確認する。
シキ
LV.2
力 :H178→G245
耐久:I36→I79
器用:G242→E413
敏捷:G261→F353
魔力:I0
千里眼:D→C
恐怖耐性:EX
痛覚耐性:EX
≪魔法≫
≪スキル≫
【直死の魔眼】
・"死"を視覚情報として捉えることが可能
(対象が死を意識している程に効果上昇)
・"死"の概念が無いもの、"死"を理解出来
ないものは見ることが出来ない
・格下であれば見ただけで殺すことも可能
・威圧、魅了の相殺
・発動時、器用と敏捷のステータス上昇
【霊核御手】
・常時発動可能
・視界内の物体の掴み取りが可能
・実体を持たないものでも可
・投擲に対して高補正
「ーふむ。」
「…お前、何をしてきた?」
「…何だよ急に。」
「ステータスの上昇具合を見れば疑問に思うのも当然じゃ。一体何をしてきたらこんなに急に上がるんじゃ?」
目を閉じ、あくまで平静な態度でディアンケヒトが聞いてくるが、その頬が若干引きつっている。
「…別に、アイズたちの技術も上がってきたし、中層手前まで降りただけだよ。ちょっと攻撃も喰らったけど、大したことないしアミッドの魔法で回復もしたから問題ない。」
「全然大したことなくないわ!それに中層手前だけでこんなに伸びるわけがないじゃろう!もっと下まで降りたな⁉︎あと、アミッドへの攻撃を全て排除するのはやめろ!お陰であいつの耐久値お前よりも低いんじゃぞ!」
「うるさっ!朝っぱらからでけぇ声出すんじゃねぇよ。」
ディアンケヒトの声に驚いた鳥が飛び立っていくのが窓から見える。その窓から昇ってきたばかりの太陽の光が差し込む。
あれから毎日、一日中ダンジョンに潜っているために帰ってくるのが遅くなり、こんな時間に更新する羽目になってしまった。
「…まぁ、生きているなら別に構わん。予定だと今日辺りに、ロキファミリアの連中が帰還するんじゃろう?とっとと依頼達成の報告でもしてこい。」
「言われずともわかってるよ。深層の薬草も破格の値段で手に入るし、俺の治療費の返済も近いな。」
ステータス更新のために脱いでいたコートを羽織り、背中に新たな武器を背負いながら立ち上がる。
「…お前、その武器使いにくくないか?」
思わずといった風にディアンケヒトが尋ねる。それも仕方がない。少年の背中には、明らかに身長よりも長い刀が背負われているのだ。下を見ると僅かに地面に引きずっている。
「アイズを見ててリーチが長い武器が欲しくなってな。素材と引き換えに昨日ヘファイストスさんから売れ残りを貰ってきたんだ。軽く振ってみたけど、意外にいいぞ?」
感覚的には剣道に似た感じだ。恩恵で器用度が上がっているせいか、想像以上に自由に扱えた。
敵と密接することなく戦える為、回避にも余裕が出来るだろう。何より一撃の威力が違う。怪我の頻度も減る筈だ。
「シキ、用意終わりました。」
そんなことを考えていると、準備ができたアミッドが扉から顔を出す。
「あぁ。じゃあ、行ってくる。」
ディアンケヒトに声をかけ、アミッドと一緒にホームを出る。まだ陽も昇ったばかりで人通りも少ないが、広場まで行くと既にアイズが待っているところだった。
「…遅い。」
「お前が早いんだよ。…まぁ、律儀に待っていたことは褒めてやる。」
文句は言ってきたものの、2人が来るまで勝手に突入せずに待っていたことを考えると、初日と比べてかなりの進歩だろう。
ダンジョンへ入りながらアイズが質問してくる。
「今日は何処まで行くの?」
「昨日は
その返答に少女が顔を綻ばせる。
アイズにとって、戦闘に対してうるさく口出しせず、下の階層まで連れて行ってくれるシキという少年はとても好感の持てる存在であった。またアミッドの方も、アイズの怪我を見てくれるほか、歳が近く話し相手にもなる姉のような存在だった。
何より、2人と潜るようになってからステータスの伸びは勿論、戦闘における技術、探索に必要な知識についても学ぶことができた。
今日の戦闘も、主にアイズが前に出てモンスターを殲滅し、討ちそびれたものをシキが倒すといった形だ。唯一違うのは、シキの武器が長い刀になっていることだが、間合いが出来た分動きに余裕が生まれたらしい。普段なら僅かにする怪我もない。アミッドも時折ナイフを使って自衛をしながら、倒されたモンスターの魔石を回収している。
そんなこんなで順調に探索を進め、現在ダンジョン12階層。中層手前ということもあり、浅い層に比べて多くのモンスターが出現するのだが、フロアの中には冒険者はおろか、モンスターの気配が無い。
「…やけに静かだな。」
まるで、猛獣が近づいて来た時の森みたい…などと考えたのが悪かったのか。奥の壁に大きく亀裂が入ったと思うと、巨大までとはいかないが、人より充分大きいモンスターが生まれ落ちる。
「竜?…あいつよりは小さいな。」
脳裏にかつて自分が斬り殺した翼竜を思い浮かべ、目の前の敵と比較する。アミッドもそれを思い出していたのだろう。僅かに顔を強張らせるが、冷静に相手を分析する。
「あれは…
「成る程ね…。通りで他のモンスターがいないわけだ。」
幸いまだ距離はある。逃げようと思えば逃げられるのだが、生憎こちらには戦闘狂幼女様がいらっしゃる。
「…シキ。」
「…ったく、危なくなったら無理矢理にでも止めるぞ。というか俺もやる。」
止められると思ったのだろう。アイズが目を見開き少年を見上げる。
「流石に1人でやるのは許可出来ないが…滅多に無い機会だ。ここで見逃すのは惜しい。負傷したらすぐ撤退する。これが条件だ。」
「…わかった。」
強敵に挑む事を許容してくれる。その事実に喜びを覚えるが、即座に顔を引き締める。
こちらの敵意に気付いたのか、小竜が大きな足音をたてながら近づいてくる。
「アミッド。念の為魔法の詠唱をしておいてくれ。」
「わかりました。」
「俺がサポートに入る。アイズ、先陣は任せた。…あぁそれと、」
「?」
「あれ、使っていいぞ。」
「!うん。…【
アイズがそう叫んだ途端、周囲に強い風が巻き起こる。通常ダンジョン内である筈のない強烈な空気の流れに、小竜が一瞬歩みを止める。
その隙を少女は見逃さなかった。己の身体に付与された風の出力により、敵の予想を上回る速度で肉薄する。
迫りくる攻撃を身体を捻ってなんとか直撃を避けるも、剣に纏った風が容赦なく体表を切り裂く。
「グオオオオオオ⁉︎」
「っ!浅い。」
鮮血が舞う中、先に体制を立て直した小竜が、前脚の爪を少女に向かって突き立てる。
否、しようとした。
振り下ろした前脚が少女に触れる寸前、突如横から現れた少年の長刀が、突き出した前脚を見事な切断面を残して斬り飛ばす。
「?グオオオ⁉︎」
「やっぱり図体でかい奴が相手だと使いやすいな。斬りやすい。」
何が起きたのかわからないと言うように悲鳴を上げる敵を一瞥し、すぐさまその場から離脱する。
片足を失い大きくバランスを崩す小竜に、自身を獰猛な嵐へと変えた少女の剣が迫る。
「グオオオオオオオオ⁉︎」
「【
風砕。
竜の顔面に叩き込まれた巨大な竜巻が、上顎ごと口内を粉砕する。
行き場を失ったエネルギーが、周囲の壁に大小様々な亀裂を入れる。
戦闘を終え、剣を背中の鞘へと戻して魔法を解く。
「…勝っ、た…。」
無意識のうちに止めていた呼吸により、肺に溜まった空気を吐き出す。小竜が灰になることを確認して、改めて自身の勝利を実感する。
「お疲れ。大分魔法の扱いにも慣れたんじゃないか?」
同じように刀を背中の鞘へと戻し、声をかけてくる少年に首を振る。
「ううん。…まだお母さんみたいにはいかない。」
「そうか。…ま、とりあえず今後の課題としては、戦闘中に呼吸を止めないようにすることだな。」
「うっ、…気を付ける。」
「慣れるまでは仕方ないさ。俺も時々やるからな。」
そんな軽口を叩きながら、一緒にアミッドの元まで戻る。あまりに早く決着が着くものだから、少し呆然としてはいたが、共に勝利の喜びを分かち合う。
丁度壁に亀裂が入り、モンスターが産まれないようになった為、昼食がてら休息をとる。
ダンジョンに潜る前に買ったパンを食べながら、千里眼で周囲の警戒を行う。熟練度が低い段階では眼に多少の負荷がかかったが、Cになったことで範囲も広がり、長時間の使用が可能になった。
「それにしても変だな。もう遠征から帰っててもおかしくないんだが…。」
少し妙だ。気になり、ギルドで貰った地図を見ながら、千里眼で下の階層の様子を確認していく。18階層まで視たところで、多くの人の集団がいるのを発見する。その中にはフィンの姿もあるが、どうやら様子がおかしい。
もう少し先までいくと、団員であろう者が何人か寝かされているのが見える。毒でも受けたか、全員顔色が悪い。どうやら治療する手段が無く、どうするか判断に迷っているようだ。
「あー成る程ね。…2人とも、ちょっと遠出するけど…いい?」
少女達が揃って首を傾げる。
「多分今日中には帰れないから、よろしく。」
2人の服を掴んで立ち上がらせると、腰から短剣を抜き、横へと振るった。
書きたいところまで書けなかった…。
なかなか時間がとれなくて少しずつ書いてる状況なので、文章的におかしなところがあるかもしれません。
アイズの魔法に関しては次回以降触れますので疑問に思った方は安心して下さい。
1日50時間くらいにならないかな…。