「他校の生徒会の人と交流会だなんてドキドキしますねかぐやさん。向こうの学校の恋バナとか色々聞けたらいいですね」
「藤原さん好奇心でソワソワする気持ちはわかりますが、他校の方が緊張されてしまいますよ」
「はわっ! そうでした。リラックスリラックス。スーハー」
藤原書記が緊張緩和のために深呼吸をしている間に説明をしておこう。
他校生徒会交流会。
秀知院学園では以前フランスの提携校と交流会があったが、この度範囲を拡大して日本の国公立・私立問わず生徒会同士の交流会をすることとなった。学校の生徒トップと交流することで、どのような取り組みをしているか、生徒とどのように向き合っているかお互いを刺激し合い、新たなイノベーションを生むのである。
なお今回が初ということもあり、校長の計らいで女子は生徒会室、男子は別室の応接室で同性の生徒会の人と交流することになっている。
さあて今回交流するのは――
「
「同じく生徒会書記の七条アリアです」
「会計の萩村スズだ」
私立桜才学園高等学校。
数年前まで女子高であったが少子化の影響で共学となった高校である。まだ共学化して日が浅いこともあって、女子が九、男子が一以下と未だに男子の数が少ない。しかし生徒会長天草シノの計らいによりまだ一年生の津田タカトシを副会長に任命するという大胆なことをすることで男女の融和を図っている。
さてお互いの挨拶も済み、交流会が始まる。
だが四宮かぐやはこの生徒会交流会を恋愛頭脳戦に持ち込もうとしていた。
――これはチャンスね!
今回の交流会は男女別というが、絶対に顔を合わさないということはない。かならずお互いの生徒会同士が終わりの時に顔を合わせて別れの挨拶はする。
そこで桜才学園生徒会のメンバーが別れのあいさつの時に、白銀会長に告白を誘発させる作戦だ。
しかしただ単にかぐやが「白銀会長が好きなんです」と言っては自分から告白してしまう図式が完成してしまう。なのでさりげなく、匂わせる程度に。それでいて白銀会長が自分にアピールしているとほのめかす方向で「白銀会長は四宮副会長が好きなんですね。お似合いです」と外部圧力で告白を誘発させるのだ。
人間は直接言われるより、他人からの言葉で大きく影響を受けやすい生き物。やや回りくどい作戦であるが、内実四宮かぐやは恋バナがしたいのも事実である。女子という生き物は自分が得たもの、感じたものを同性同士でシェアし合う生き物であるのだから。
そしてタイミングの良いときに、藤原書記がきっかけをつくる。
「ところで桜才学園生徒会の皆さんは恋とかしたことありますか? 特に七条さんなんかスタイルもいいですし」
「あら、ありがとう。でも残念ながらそういうことはまだシたことないの」
「生徒会はまだないと思うが、ウチの高校はまだ女性の比率が多いものの、共学化してから男女交際をしている者もいる。今後の懸念として、男女交際に慣れていない生徒の風紀の乱れが今後の課題だ」
「そうなんですね。今まで女の子ばかりで過ごしてきたのが急に男の子が入ってくると、そういう問題も起きるのですね」
一件何気ない両校の活動を話し合っている様子。しかし、両校の生徒副会長と会長は違うところを見ていた。
それは七条アリア&藤原書記のスタイルの良い胸部。この世には持っているもの持たざるものが存在し、それがいつしかコンプレックスとして持つ者に対して敵視する。
そしてお互い持たざる者同士である両者が互いの敵視するものを感じ取るとどうなるのか。
――この人たぶん波長が合う。
同士を見つけるのである。
「秀知院学園では男女交際をする人は少なからずおります。そのためどこの誰かが惚れたはれたなどのうわさだけが先行して空気を乱すことも」
「ああ、うちも身に覚えがある。私と副会長の恋仲などという噂を、新聞部が根も葉もないところに噂をくっつけてしまう所業をするから、頭を悩ませている」
「そうですか、それは大変なことで。幸い私共の生徒会にはそのような噂はございません。ですが時折、生徒会室で二人っきりになると、私に熱い視線が向けられることがございまして」
その言葉でラブ探偵チカこと藤原書記が食いつく。四宮かぐやが特段二人っきりになるのは藤原書記か白銀会長のどちらか。そして話の話題的に、これはある男子生徒が四宮かぐやに片思いをしていると藤原書記が思い込んだのは間違いないとかぐやは予想した。あとは白銀会長の名前さえ口に出せばこの脳内ピンク単細胞生物が盛り上げてくれると安心して紅茶を口にする。
だが、その予想を裏切る人間が二人いた。そして天草シノが口火をふく。
「うむ私も同じ体験はある。特に大勢に視〇されて感じてしまうのはたまらないからな」
「あー、相変わらずだなこの人は」*1
「ぶぇあ!」
藤原書記に開幕直球ストレートパンチ! 下ネタは口にする藤原書記であるが、超弩級の下ネタの天草会長の洗礼に顔が真っ赤に! しかし。四宮かぐや性知識の不足により、幸いノーダメージ。
「会長、そういうこと言っちゃダメでしょ」
「ああそうだった。すまん」
「もぅ、興奮してお股がびちゃびちゃになったのが正しいでしょ」
「ぷびゃあああ」
二度の下ネタ。臆面もなく飛び出す下ネタの嵐。しかも際どいを通り過ぎて、かなりアウトな言葉にほぼノックアウト状態の藤原書記。そして予想外のことに困惑する四宮かぐや。
――ふ、藤原さん!? いったい先ほどの言葉になんの意味が?? とにかく藤原さんが立ちなおるまで話をつなぎませんと。
「ですが、男女交際の気があるようでしたら私としては慎重にことを進めることを考えております」
「うむ、思春期である高校生の対応は慎重にするのが良いのは同感だ。男女交際は一歩間違えば危ない火遊びにつながるからな。わが生徒会も重々気を付けねば」
「そうね。火遊びをするときはちゃんと専用のろうそくでしないとお尻が火傷しちゃうものね」
七条アリアまさかのSMプレイ用のろうそくを持参していた。「わざわざ持ってくるものなのか」と萩村が突っ込む。それはなにかしらと首をかしげる四宮かぐや。何と答えればいいかなまじ知識があるためさらに困惑する藤原書記。
なんとかこの場の微妙な空気を戻そうと萩村が無難な話題に変える。
「そういえば、秀知院学園の生徒会の男女比率はどれくらいなんですか。今後うちの生徒会も男子の比率を上げる可能性もあるので」
「去年までは男女均等に二人ずつでしたが、今年度からは風紀委員の一年生女子を加えて女子三、男子二の体制です」
「まあ、男子が二人もだなんて羨ましいわ。おち〇〇んが選り取り見取りだけど咥える側が余っているのは不公平ね」
「ぶふぁ!!」
意表を突かれた! 四宮かぐや、小学生レベルの下ネタに弱いことが仇となり、吹き出してしまった! 後半のアリアが出した危なすぎるエロワードよりも、小学校レベルの下ネタで笑ってしまうという桜才学園生徒会側も予想外のことであるが、しかし牙城を崩したことで桜才学園生徒会の二人は自重を知らない。
それはまさしく、おもしろいおもちゃが与えられたのごとく。
「そういえば最近のオマーンであれがあったな」
「オマーン国際女子マラソンのことね」
「ああ、そうだ。オマーン国際女子マラソンだった」
「ぶふぅぅ」
「おまん、こくさい、ジョシ。ああ、分からなければよかったです」
話筋がまったく関係のないことにも気にせず、止め度目もなく下ネタを続ける天草会長と七条書記。しかし会計の萩原スズはなぜ止めないのか? 否止めるには力不足なのだ。桜才学園ではこの下ネタギャグの大洪水を止められるツッコミ担当の津田タカトシが存在するのだが、彼が別室にいるという校長の計らいが最悪の選択を生んでしまったのだ!
「大阪の阪堺電車は何が走っていたかしら?」
「アリア知識不足だな。チンチン電車に決まっているだろ。音がチンチン鳴るからな! チンチンとチンチンと」
「ぶひゃあははは!!」
「あわわわあわわわ。はわあああ!?!?!?」
超上級下ネタのフルコースに秀知院学園生徒会女子組は羞恥も忘れ赤面、失笑の嵐にひれ伏していく。
そして試合終了もとい、他校交流会が終わる時間となった。
桜才学園生徒会が退出すると、入れ替わりに風紀委員の仕事が残っていた伊井野が死屍累々の戦場痕を残す生徒会室に足を踏み入れる。
「遅れてすみません。あ、もう交流会終わってしまったのですかって、お二人ともどうして顔が真っ赤なんですか? もしかして急患!?」
生徒会のナンバーツーと憧れの人物が倒れて、慌てふためく伊井野ミコ。しかし当事者たち二人は決してその原因を口にしなかった。
「あれが桜才学園生徒会女子ということは。男子の人、きっとすごいですよあれ」
「すごっ!!」
本日の勝敗。桜才学園生徒会女子組の勝利。
なお生徒会男子組は何事もなく、スムーズにやりとりができた模様。
「情報交換は以上だな」
「津田さんの生徒会、周り女子ばかりで苦労しません?」
「ええ毎日苦労しています。ツッコミが絶えない日々で」
「ああ、うちの生徒会も似たようなもんです。特に頭ピンク女子がひっかきまわして」
「それには俺も同意する」
「いえ生徒会だけでなく、全校生徒アーンド先生が」
「「え?」」