かぐや様は他校生徒会と恋バナしたい   作:wisterina

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大洗女子学園生徒会(あんこうチーム)

「なあ、今日は他校交流会だよな」

「はい、そう聞き及んでおりますが」

「なんで校門なんだ」

 

 さて早々に第三回目となった他校生徒会交流会。生徒会の面々はどの高校が来るかは一応知らされてはいるのだが、なぜ生徒会室ではないのか疑問であった。

 

「というかもうすぐ交流会の時間じゃないですか会長。相手の生徒会まだ来てないんすけど」

「うむ、何かあったのかもしれんな。一度先生に」

 

 白銀会長がスマホを取り出した時、地響きのような音が遠くから聞えてきた。

 

「じ、地震!?」

「大きいすけど、このあたりに地震速報はきてないっすよ」

 

 震源地不明の地震に一同動揺する。だが、地響きは揺れを増して校門まで迫ってくる。そして地震の発生源が秀知院学園生徒会の目に飛び込んできた。

 

「「「せ、戦車あぁぁ!?!?」」」

 

 黒の車体に足回りのキャタピラ、そして明らかに場違いな長身の砲塔がついたその車体は、北海道の一部ぐらいでしか見られないであろう戦車であった。

 

「冷泉さん停めてください」

 

 戦車から顔を出していたショートカットの少女の呼びかけと同時に戦車が白銀会長たちの前に止まり、降り立つ。

 

「生徒会の人か?」

「いえ、私は大洗女子学園生徒会の案内とこの戦車の車長兼隊長の西住みほです。皆さん到着しましたよ」

 

 本日の他校生徒会交流会は、大洗女子学園高等学校である。

 

 大洗女子学園は数年前まではいくつもある学園艦のうちの一つでしかなかったが、生徒会主導で廃部になっていた戦車道を復活させ、僅か数か月で戦車道強豪校にまでなり上がった。近年では大学選抜チームとの戦いで勝利したことが記憶に新しい。

 

「お初にお目にかかります、大洗女子学園生徒会会長の五十鈴華と申します」

「わぁ~男の子だ。初めまして。大洗女子学園生徒会の広報の武部沙織です。って秋山さんは?」

「冷泉殿、一緒にご挨拶するであります」

「私は別に生徒会ではないからいらないだろ」

「そんなこと言わずにほら。っと失礼しました。自分、副会長兼あんこうチームの四号戦車の装填主をしております秋山優花里と申します。で、こちらは同じく四号戦車の運転手をしております冷泉麻子殿であります」

「うむ」

 

 今までちょっと変わった面々がそろう生徒会であったが、まさか戦車でやってくる生徒会がいるとはこれまでの予想の斜め上過ぎて一同発言に困っていた。

 補足であるが、彼女たち大洗女子学園などの学校は戦車道が活発で町中に戦車が走るなど日常茶飯事なことである。だが、秀知院学園生徒会は戦車道の存在はテレビで見たことはあれど、学園近辺ではあまり戦車道が活発ではないためあまり知識に乏しいのだ。そもそも戦車が町中を走っていること自体学園近辺では珍しい存在であるのだ。

 

 さて今回の交流相手である大洗女子学園の生徒会であるが、実は彼女たちは最近選挙で選ばれたばかりである。戦車道を復活させた本人である旧生徒会メンバーは全員卒業しており、まだ生徒会としてのノウハウが足りていないという事情があり今回の他校生徒会交流会をするに至ったわけである。

 

「不躾ながら全国一と言われる秀知院学園生徒会の皆さまに教えを請いたいとの申し出たのですが、私共が他にお役に立てるものと言えば戦車道しかないと思いまして、私共が使っている戦車をここまでお持ちいたしました」

「それはいいんすけど、うち戦車道なんて部活ありましたっけ」

「ありますよ石上君。今藤原と伊井野さんが戦車道部にお願いして戦車を持ってくる手はずになっております」

「いないと思ったら、そっちに行ってたのか」

 

 大洗女子学園生徒会が持ってきた四号戦車をグラウンドに移動させて待っていると、校舎の裏から大洗女子学園が来たときと同じ地響きが起きる。それもかなり大きめの。

 

「会長、お待たせしました。戦車持ってきましたよ~。いやぁ戦車から見る景色はいいですね~」

「デカイな!」

 

 藤原書記が身を乗り出しながらやってきた戦車は、四号戦車よりも一回り大きく、キャタピラから鳴る地響きも倍以上の大きさだ。ではこの戦車の解説を。

 

「スーパーパーシングじゃないですか! アメリカ軍がドイツ軍の新戦車ティーガーに対抗するまでのつなぎとして従来のパーシングよりも長砲身・大威力の砲を搭載戦車なんです。実践では力を発揮したんですが、数が足らなくて一両しかつくられなかった貴重な重戦車です。大学選抜戦のときはパーシングが主力だったからスーパーパーシングも来ると予想していたのですが。まさかこんなところでお見えするなんて」

 

 ……えー、おほん。秋山優花里はかなり戦車に詳しく、それで大洗女子学園を優勝に導いてきたのだ。

 

「ところで、戦車戦をするにしても俺たち素人なんだが」

「そこは、私たちのチームが何人かそちらの戦車に移乗しますので」

 

 という風に、四号戦車には白銀会長以下男女混合チーム。スーパーパーシングには四宮副会長以下の女子チームで編成されることになった。

 

 さて、こちら四宮陣営女子チーム。構成と役割としては車長の四宮他に、通信手藤原書記、操縦手伊井野、砲手武部、装填手は西住の構成である。

 

「意外と狭いのですね」

「うんそうそう、私も戦車の中に入ったときはそう思ったよ」

「学校内でこんな物騒なものを放つだなんて、でも戦車道は活動として認められていますし」

 

 そして緊張でガチガチに固まっている伊井野であるが、藤原書記は見逃さない。

 

「ミコちゃんそんなに緊張したら不安で危ないところに当ててしまいますよ。交流会ですからもっとリラックスしないと、ミコちゃんこっち向いて」

「藤原先輩、いきなり写さないでください」

「そうそういいですね決まってますよ。戦車に初めて乗るミコちゃん可愛いです」

 

 いきなり写真を撮りまくる藤原書記に戸惑う伊井野に、――ああまた藤原さんのおもちゃにされてますね。と可哀想な目で見る四宮であった。

 ――しかし戦車道ですか礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸と聞いてはいましたが、あいにく我が家では戦車の保有は危険であると戦車道はお教えられてませんでした。あまり勝手がわからないのは不利ですね。

 

「四宮さん、何か不安があることとかあれば質問してください。初めての戦車戦ですから緊張すると思いますので」

「みぽりんはね。素人の大洗女子の戦車部を優勝にまで導いたんだよ。とまあ私も最初は素人だったけどね。私なんか戦車道は女子力上がるからモテると思って入部したぐらいだし」

 

 その時、四宮に電流が走る。

 ――モテる! つまりこの戦車戦で勝利すれば、会長から告白させることも可能ということでは。

 なんてことを妄想する四宮はすでに自分が会長に完全勝利するシーンまで想像していた。

 

(なんて強さだ四宮。勉強だけでなく戦車道まで強いとはぜひ俺と付き合ってほしい)

(あらまあ、でも会長がぜひとおっしゃるのでしたら謹んでお受けいたしますわ)

 

 ――イケる! この戦車道で会長から告白を引き出してやります。

 

 さて、四宮が西住に戦車の知識を一気に頭に叩き込んでいる間に今回の戦車戦IN秀知院学園でのルールを説明しよう。試合は通常の殲滅戦と同じく相手の戦車を先に戦闘不能に持ち込むまで行われる。それ以外は通常の試合と同じである。

 試合開始まであと数分と迫り、会場には秀知院学園で生徒会同士による戦車戦が行われると聞き、学校中からギャラリーが集まりだしていた。

 

「――ということですが、大丈夫でしょうか。説明するのに時間が少し足りませんが」

「問題ありません。これでも勉学には自信がございます。ではパンツァーフォー!」

 

 掛け声と共にスーパーパーシングのキャタピラがうねりを上げて走り出す。両戦車のスタート位置はお互いが見えない校舎裏から発進する。なのでどちらかが先に相手の戦車を見つけるかが大事なのである。

 

「えへへ西住さん。一緒に写真撮りましょうよ」

「え。今試合中」

「まだ会長さんたち見えてないから大丈夫ですよ。変顔撮りましょう。ぶぇ~」

「藤原さん、なんだかボコみたいで可愛い」

「ボコられグマのボコ知っているんですか。あれ可愛いんですよね」

「ちょっと藤原さん、試合中ですよ」

 

 ――すでに試合は始まっているのにこの脳内ピンクはと無二の親友に憤る四宮。一瞬何か後ろから何か感じ取り振り向くと突然、戦車のすぐ脇の地面が轟音と共に抉れた。

 

「爆発!? いえ、会長ですね。ですがどうして前からではなく後方から」

「ええ! 後ろを取られたの!?」

「砲塔を反対に回転して応戦しましょう。幸いスーパーパーシングなら四号の砲撃でもある程度は耐えられます」

 

 西住の指示に従い砲塔を百八十度回転させて応戦する態勢を整える間、四宮の眼は体育館の壁際から砲撃する四号が見えた。

 

「会長は体育館の後ろです」

「はい」

 

 武部が砲撃するが、砲弾はギリギリのところで着弾してしまい。会長チームを逃してしまう。四宮たちは校舎裏へと急発進して追いかけるものの、会長チームはそれを先読みするかのように執拗に砲撃を繰り返す。

 

「この砲撃、まるでこちらの動きを読んでいるかのようです。でもどうして会長がここまで勘が鋭い方でしたでしょうか」

「かぐやさん。ピース」

「ピースって藤原さんまさか……」

「はぇ?」

 

 

 

 一方こちら車長の白銀会長陣営と通信手石上、砲手五十鈴、装填手秋山、操縦手冷泉以下男女混合チームは。

 

「なんとか避けられたな。どうだ石上」

「次は、図書館の前ですね。大半が戦車内部の写真ですから時間ぐらいしか把握できませんが、戦車の入り口から見える建物の一部から位置を特定できます。しかし図太いですね藤原先輩、テーブルゲームだとイカサマ使うくせに」

 

 実は、藤原書記が逐一戦車内部の様子をSNSにアップしておりその様子を通信手の石上が学園内のどこであるかを把握して場所を通達していたのである。

 

「戦車戦で携帯を使う戦法は武部殿がとっさに考えたものではありますが、まさか相手がSNSを使うことを予想していたとは」

「藤原のことだから遊び感覚で試合中の写真をアップロードするかもと軽く考えただけだ。公式戦ではSNSにアップロードしてはならないが、非公式では使ってはいけないと取り決めしたわけではないからな。まあ、戦車道のルールを見ているときにたまたま思いついただけだ」

 

 嘘である。

 この男、実は最初からこの交流会が戦車戦であることを知っており、試合ルールも戦法も完全に熟知している。そして戦車道が乙女の嗜みであることも知っているのである。

 

 ――ふっ、令嬢である四宮が戦車道を知らないわけがない。恐らくここで俺を負かして「こんな無様に負けるだなんてお可愛いこと。ですが、そんな無様な姿をさらし続けるのが嫌でしたら私の恋人になってくださいとお願いするなら許してもいいのですよ」とするに違いない。だから俺はここで圧勝して「や~ん、会長強~い。勉強でも戦車道でも強い人とお付き合いしたい」と向こうから告白を引き出してやる。

 

「まあ戦犯は藤原先輩なんですけどね。会長、次は」

「ああ、五十鈴さん秋山さん砲撃はお願いします」

「了解であります」

 

 白銀会長の指示で、性能的には少し劣る四号がスーパーパーシングに至近弾を撃ち込んでいく。スーパーパーシングがいかに性能がよかろうとも、四宮チームは素人が三人と不利。足取りはおぼつかなず次々と撃ち込まれて、四宮チームは一旦撤退するようで校舎裏に逃げていく。

 

「会長、SNSはまだ更新されますがどうします? さすがに気づくころでは」

「……一応SNSの監視は続けろ。」

 

 白銀はあえて石上の慎重策を採用する。

 ――あの四宮がこのまま藤原書記の投稿を続けているのを無視しているわけではないはず。恐らく何か反撃する仕掛けをするはずだ。こちらに経験者が三名いるとはいえ、油断はできん。

 

 校舎裏の花壇のところに入ると速度を落とす。石上の報告によればすでにパーシングは校舎を抜けたばかりだと伝えられている。すでにいないのはわかっているだが、何か嫌な予感がすると白銀は感じていた。そして、それは現実となった。

 

 ドーン!!

 花壇の植え込みから弾丸が四号に向けて火を噴いた。幸い前部が被弾したぐらいで済んだものの、校舎の使われていない教室が流れ弾で崩壊してしまった。

 

「前方被弾! 白銀殿だいじょうぶでありますか!?」

「ああ、待ち伏せか!」

 

 木々や草で薄暗くなっていたところから、また火が吹く。それは間違いなく、すでにここを通り過ぎたはずのスーパーパーシングであった。

 

 ――会長、どうですか。藤原さんが別の場所で撮ったSNSを信じてまんまと誘導された感じは。性能ではこちらのほうが上なのは西住さんからお聞きしてます。

 

 今度は四宮チームに追いかけられる形となった白銀チーム。

 

「すみません。SNSの投稿が誘導に気づかなくて」

「いや、俺が固執していたのが悪い。五十鈴さん、秋山さん、パーシングはパーシングを撃ちぬける場所はどこがベストですか」

「できれば側面か後方ではありますが、足回りでパーシングに勝てるかどうか」

「相手は長身砲ですから遠距離からの砲撃は不利。また平地ですから高所も取れないとなると」

 

 平地と高い建物自体が障害物である学園という環境が性能の劣る四号を追い詰めていく。

 

「冷泉さん次の校舎の間を抜けてください。幅はギリギリだと思いますが」

「やってみる」

 

 白銀の指示に従い、二つの校舎が建っている間を抜ける。時折履帯が校舎を傷つけながら幅ギリギリの中を通り過ぎる。砲塔が後方のパーシングに向けるものの、白銀は砲撃の指示を出さずパーシングが来るのを待つ。そして狙い通り、四宮が乗るパーシングが四号が通ったところに迫る。

 

 だがその隙間の幅に四宮は気付く。

 

「停止!」

 

 だが操縦手である伊井野の判断は一歩遅く、砲塔が校舎に引っ掛かった状態で突っ込んでしまった。四号の全幅は三メートルに満たないのに対して、〇.五メートル強もあるスーパーパーシングではぎりぎり校舎に入り切らなかった。

 

「伊井野さんバックです!」

「ま、まってください。まだ砲塔が当たってます。このままだと校舎がまた壊れてしまいます」

 

 おまけにパーシングの長身砲が仇となり、脱出に時間がかかってしまう。その隙を白銀は見逃さない。

 校舎を迂回してきた四号がパーシングの側面に迫る。同時にパーシングも脱出し、砲撃する。

 

 ズドーン!!

 

 両戦車が同時に砲塔から火を噴き、煙幕が包み込む。そしてもうもうと広がっていた煙幕が薄まり、両戦車が見えてくると、備え付けられている戦闘不能の白旗が二つ上がる。

 どちらが早かったか、判定は秀知院学園戦車道部が判断を下す。

 

「同時、両者引き分けです!」

 

 今回の勝敗。両者引き分け。

 

 引き分けの結果に終わった両者。しかし煤だらけになった二人の顔には、試合の後の余韻に浸って。

 

「本気で勝負して引き分けか。ふっ気持ちいいな……でも勝ちたかったなぁ」

 

 そして四宮も、迎えに来た早坂に抱えられて労いの言葉がかけられる。

 

「お疲れ様です。かぐや様、立派な勝負を」

「もぅ。どうして戦車道を教えてくれなかったの!? 散々押し付けてきたくせに、どうして戦車道だけ教養として教えなかったのよ!」

「負けず嫌いなのか本家に文句を言うのかどっちですか」

 

 訂正。本日の勝負。白銀&四宮の敗北。




 ――戦車戦後

「今日は良い試合をありがとうございました。いつも同じチームで戦っているのですが、別々ですることはないので貴重な訓練にもなりました」
「戦車ってゲームでしかしなかったすけど、リアルでは結構色々しないといけなんすね。西住さんの話も聞いてはいましたが、みなさん手練れで」
「ありがとうございます石上さん。ですが、私たちの学校は良くも悪くも戦車道しかなくて。私も生徒会長になってから日が浅いのでまだこれからの展望が見えない状態で」
「卑下することないっすよ。俺から見れば戦車道以外にも学園艦のノウハウとか他の高校では見ないすから、それを売りにすれば他の高校と差別化できますし」
「そうなんですか。当たり前に学園艦に住んでいますから、珍しい存在だとは気づきませんでした」
「あとは選手の育成方法っすね。やはり短期間で全国優勝と大学選抜に勝ったことは強い価値がありますから、それを文章とかにして売りにすれば大洗女子学園がもっと」
「すみません。それはちょっと……トラウマが。特にみほさんにとって廃校の危機の遠因でしたので」
「あっ、なんかすんません」
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