Vは異より出でて異よりVし   作:竹馬ってビリヤード出来そうじゃね?

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異世界出身だからって何でもできると思うなよ!!


事もあろうに異世界出身

「いや俺面白い方だと思うんだよね実際」

「どうしたよ急に」

「活動始めて二か月と二週間。なんで伸びないんだろうなぁ、って」

「そりゃオマエ」

 

 一拍。

 

「わかりきった話だろ」

 

 わかってるんかい。

 

 

第一話「通らばストライク。音に聞こえしナックルカーブ」

 

 なんぞ、VTuberとかいうのが流行ってるんだと。んでそれなるはアニメキャラになって面白い事をやって金が入る芸人みたいなものなんだと。職業にするには難しいけど小遣い稼ぎには中々良いんだと。

 

 ほんじゃま、仲間集めてやるかいやVTuber!

 と思い立ったのが二か月と二週間前。

 

 ISIGEN channel

 チャンネル登録者数 22人

 

「 2 2 人 」

「いや、無名素人集団にしては十分……な方じゃね? 知らんけど」

「こんなに面白いのにか!? こんなに面白いのにか!!?」

「でもお前SNSやってねえしコラボもしねえし歌も歌えねえしゲームも上手くねえしアピールポイント今んとこゼロだぜ?」

「この! 美声!! そして体を張ったッ企画ッ!」

「どこの配信者も大体そうだよ。スタートラインだろ、むしろ」

「厳しすぎるだろVTuber界!!」

 

 メンバーは四人。全員社会人として働いているし、今すぐ金に困るようなことは全くないのだが、しかし手ごたえの無さオブ無さ。勿論毎度毎度見てくれてる、配信始めたら必ず見てくれる人が二、三人いるのは嬉しい超嬉しい。だが! だがよ!

 だがよ!!

 

「もっと、俺はこう……みんなにキャーキャー言われるような! 具体的には女子! 女子にキャーキャー言われるような奴だと思ってたんだ!」

「オマエ彼女いるだろ」

「はぁ!? お前は男女がいたら必ずセックスになる以外道はないとか言っちゃう奴か!? 違うだろ男なら女の子にキャー言われたいってのは別に付き合いたいとかそういうことじゃないだろバカが! バカが! ばーかばーか!!」

「帰るぞ」

「待ってくれもう少し構ってくれ」

 

 俺たち四人は結構、人にはあんまり話せない共通の秘密を持った幼馴染なんだが、何分女っ気が無い。彼氏彼女のソレじゃなく、なんつーか花が無い。むさくるしい。四人集まったらとりあえず麻雀でもすっかー、とか言っちゃうタイプの男友達。

 それを少しは! 少しは! 女子と触れ合えると! 画面越しで良いからキャーキャー言われるんじゃあないんですか、と!

 

「期待してたんだよ……なぁ!」

「そういうのはまず有名になってからだろ。はじめは何が何でもがむしゃらに突っ走って、ある程度の知名度を得てから路線開拓してくもんだって言ってたぜ」

「誰が」

「会社の後輩」

「誰だよ」

「お前が知らない可愛い子。もち女子」

「とりあえず殴らせてくれ頼むよ」

「可愛い後輩を殴らせるわけないだろ?」

「お前だよ!」

 

 エンチャントを施した(息を吹きかけた)拳を軽々と避けられつつ、しかしまぁ、そうだよなぁ、なんて思ってしまった自分を頭から追い出す。そんなのは知ってんだよ。知ってるんでございますよ先生。

 そんなこたぁ、重々承知なんでございますよ。

 

「でも宣伝したら負けだろ……」

「プライド高すぎるんだよなぁオマエは」

「実力でのし上がらないと意味なくね? そんな……誰かの力で有名になって楽しいか?」

 

 別にそういう奴らを否定したいわけじゃなくて、俺はヤだって話。テレビの芸人とVTuberの違う所って、実力が反映できるところだと思うんだよな。変な圧力に臆することなく、自由に、嫌なもんは嫌だと言って、好きなもんは好きだと言える。言って嫌われる事はあっても干されるわけじゃない。

 

「流石実力でのし上がった特級サマ。言う事が違いますねぇ」

「ただいま~。ってあれ、リーダーどうしたの? 随分と不機嫌だけど」

「いつもの発作だよ。伸びねえ伸びねえでも宣伝はしたくねぇってアレ」

「あ~」

 

 買出し組が帰ってきた。もう随分と見慣れた外行きの恰好に手提げのビニール袋。中にはビールやらアイスやらツマミやらカップ麺やら……まぁ、雑多な食い物が多数。

 今日は記念日だから、こうして俺の家に集まってプチパーティをしよう、ってなった次第だ。男四人で。くぁー、寂しいねぇなんだこいつら!

 

「なんだ嫌味眼鏡。お前は違うってのか」

「いえいえ? 宣伝行為を庶民のやる事だと見下しておられるその姿、その言動が如何にも神に愛された特級らしいな、と思っただけですよ」

「別に見下しちゃいない。それに、こっちには神さんはいないんだ、今の俺は特級なんて面倒臭いのじゃない。そんなことお前が一番わかってるだろ」

「ほらほらー、二人とも喧嘩しないの。今日は記念日なんだから、今日くらいは仲良く行こうよ、ね?」

「他の日は良いのか?」

「うん!」

「いいのか……」

 

 ニコニコと笑いながら、ね? と肩に手を置いてくるノッポ。まぁ、それに免じて今回は引いてやらんでもない。別にこっちは喧嘩をしているつもりはないしな。

 嫌味眼鏡もノッポには弱い。渋々、引き下がった。

 

「そいじゃ、ま。とりあえず乾杯と行こうぜ。音頭はオマエが取れよ、リーダー」

「ああ」

 

 適当に配られた缶ビールを手に持って、それを掲げて。

 今ここにいない奴へも向けて、一つ。

 

「異世界転移十周年記念に──あー、乾杯!」

 

 薄っぺらい金属がカチカチとぶつかった。

 

 

◇

 

 

 何を言っているんだこいつらは、と思われるのはまぁ仕方がない。そうだろうなぁと俺でも思う。

 ただ、マジで、俺達は異世界出身だ。ぶっちゃけまだ俺達的にはこっちの世界の方が異世界なくらい異世界出身だ。マジでマジで。

 

 で、まぁなんやかんやあって、幾人かの仲間と一緒にこっちに転移してきたのが十年前。そのまんま残ったものと失ったものがいくつかあって、ただ元居たところじゃ考えられない程平和な国に来ちまったもんだから、んー、とりあえず就職活動、と。まぁそう相成ったわけである。

 そこから更になんやかんやあって、もうほとんど一般人だ。ちょっと筋肉量からは考えられない威力の拳が出たり光の剣が出せたりするけど、まぁまぁ一般人。使う機会無いしな。

 

 四人はその世界の仲間で、あと俺の奥さんと、もう幾人かがこっちに来ているけど、あんまり連絡しないしほとんど関係ない。クソ程殺伐としていたあの世界ではこんな風に自分たちの活動内容を談義して適当に流して安酒囲んで宴会、なんてのは……ああ、考えられなかったから、十年経ってもしみじみと思う。

 

 こっち来てよかったなぁ、って。

 

「せめて法術系がトラッキング出来ればいいんだが……」

「無茶が過ぎる」

「わかってて言ってるんだ、わかれ」

「無茶が過ぎる」

 

 ニコニコノッポ、嫌味眼鏡、パソコンデブ、そして俺。

 VTuberとして活動していくにあたって必要なものはパソコンデブが用意してくれてる。それには感謝している。んだが、如何せん、技術力不足だ。ちょっと力を入れて走るとすぐにトラッキングが外れるのは本当に何とかしてほしい。

 あと光系のオーラを纏うだけでも外れる。それらは反映されないし、踏んだり蹴ったりだ。踏んだり蹴ったりさん!?

 

「実写だと困る事が多いですからねえ。耳の修正、義手の継ぎ目、そもそもワタシがカメラに映るのかどうか」

「多角に作用する光系は扱いが難しいんだよねぇ」

「そこんとこどうにかしてくれよマスターリッチ殿」

 

 当然のことながら、というと多少の語弊があるが、俺たち四人はこっちの純人間とはちょっと違う。ニコニコノッポはエルフって妖精種。パソコンデブはドワーフって妖精種。嫌味眼鏡はマスターリッチ……まぁ魔物だな。んでもって俺が半神半人と……これも多分、何言ってんだお前らって言われる話だ。

 でも本当なんだよなぁ。

 そういえばVTuber界隈は人間の方が少ないくらいなんだが、その内何割くらいが本物なんだろうな。結構いるんじゃねえかな、マジで人間じゃない奴。

 

「あ゛ぁ゛~……いやぁ、ビールは良いな。安い美味い文句なしだ」

「肉はあっちのが美味かったな。まぁ生命力の問題だろうが」

「あっちのお肉は食べたことないからな~」

「どんな肉も死肉よりは美味しいでしょうよ」

「違いない」

 

 俺たちの使うアバターは元のまま、ノッポはエルフでデブはドワーフで眼鏡はリッチで俺は人間にしているから、他の奴らもそうなのかもしれん。吸血鬼だの悪魔だの……あっちで見つけてたら即刻退治していた相手だが、こっちにゃこっちのルールもあろう、そんな暴挙には出られない。

 ちなみに活動名もあっちのままだ。だから見るヤツが見れば一発でわかる。身バレしたところで、ってところではあるが。

 

 ま、身バレするほど知名度はないんだが! ないんだが! な!

 

「それじゃ、今日の動画を撮ろうか、そろそろ」

「ああ、準備は出来てる」

「酒が回った体で運動はしたくないのですがねぇ」

「回る体が無いヤツが良く言う」

 

 そいじゃあ今日は、ちょっと激しめの殺陣でもやりますかね。

 ……どれだけトラッキングできるかはわからないが!

 

 

◇

 

 

「初見です、ファンになりました、チャンネル登録しました、応援してます……かぁ~、いや嬉しいな、応援の声っつーのは!」

「前は孤立無援だったからなぁ。帰っても歓迎されねえし」

「ちゃんと見てくれてんだなぁって思うだけで、いやこれが頑張れるもんだ」

「女子か男子かわからんがな」

「かぁ、これだから! これだから心に余裕がないヤツは! 女でも男でも応援されるのは嬉しいだろうよ、ええ!? 違うか!?」

「女子にキャーキャー言われたいって言ってたのはオマエだろ」

「キャーキャー言われるのと頑張ってくださいって応援されるのは違うだろ」

「……まぁ、なんでもいいけどよ」

 

 全く、色気のイの字も無いパソコンデブはこれだから困る。

 投稿された動画についたコメントは2件。いつも見てくれてる人と、初見の人。再生回数は89回。同じ人が何度も見てくれているか、登録はしていないけど気になったら見る、程度の人が今回は多かったか。

 いずれにせよ、ああ、まだ。

 続けていられる。あの頃の孤独に比べれば、なんてことはないし。

 

「いいか、俺は絶対知名度上げてビッグになるぞ!」

「適当に頑張れ」

「お前も頑張るんだよ!」

 

 そういう事で。




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