刑事ヨシヒコと犯人は○○   作:ドラ麦茶

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第三話 事情聴取

 関係者への事情聴取を行うため、警察署へとやって来た刑事ヨシヒコとその仲間たち。かなり大きなビルだ。ロビーはたくさんの人でにぎわっている。受付には相談に訪れた市民たちが並び、入口付近ではパトロールから帰った私服警官とこれから出かける警官が敬礼を交わす。明らかにヤクザ者と思われるガラの悪そうな男が両脇を抱えられ奥へと連れていかれ、ロビーの一角では子供向けのイベントをしているのか、小学校低学年くらいの子供たちが集まり、警察のお姉さんとネコの着ぐるみが交通マナーについて説明していた。

 

 それらを横目に見ながら、取調室へ向かうヨシヒコ達。

 

「さて、まずは文恵からだね」取調室でムラサキが言った。

 

 ヤスが説明する。「沢木(さわき)文江(ふみえ)、二十三歳。被害者山川耕造の会社の秘書です。守衛の小宮と一緒に遺体を発見しました。短大を卒業後耕造の会社に入り、現在三年目です」

 

「ヨシヒコの推理によると――」メレブは手帳を見る。「密室状態を作ることが可能だった人物の一人だからな。慎重に話を聞こう」

 

 文江を取調室に呼ぶ。入って来たのは、なかなかの美人の女性だった。その姿を見た途端、ヨシヒコの顔が真っ赤になり、だらしない笑顔を浮かべ、頭から湯気が出はじめた。

 

「……どうしたヨシヒコ?」メレブが訊くが、ヨシヒコは答えない。

 

「なんかイヤな予感がするけど、とりあえず事情聴取はじめるよ」

 

 と、ムラサキが話を始めようとしたら。

 

「服を脱いでください!!」

 

 ばん! と両手で机を叩いて、ヨシヒコが身を乗り出した。

 

「ボス! なんてことを! 職権乱用ですよ!」ヤスが止める。

 

「いや、そんな職権ねーから」と、ムラサキはあきれる。

 

「服を脱いでください! お願いです! 服を脱いでください!!」

 

 興奮して文江に詰め寄るヨシヒコを、メレブとヤスが二人がかりで取り押さえ、なんとか後ろに下げた。

 

「ゴメンね、あのバカはほっといていいから」コホン、と咳払いをし、ムラサキは口調を改めて行った。「では、文江さん。まずは、遺体発見時の様子を説明してください」

 

「はい。十八日の朝八時、いつものように社長宅へお迎えに伺ったのですが、書斎には鍵がかけられてあり、呼んでも返事はありませんでした。なので、守衛さんに言って、ドアをこじ開けてもらい、中に入りました。そうしたら、部屋の中で社長が血まみれで倒れていて……」

 

 その時の様子を思い出したのだろう。文江は青ざめる。

 

「文江さん。申し訳ないんですが、部屋に入った時のことを、もう少し詳しく話してください」同情した様子もなく、冷たい口調で続けるムラサキ。「先に部屋に入ったのは、あなたと守衛さん、どちらですか?」

 

「えっと……守衛さんです」

 

「そうすると、耕造氏が死んでいることを確認したのも、守衛さんですか?」

 

「そうです。守衛さんが、倒れている社長に近づいて、確認してくれました。あたしは怖かったので、ドアのそばにいました」

 

「なるほどなるほど。では、守衛さんが遺体に気を取られている隙に、何か別のことをすることも可能だったわけですね?」探るような目で文江の顔を覗き込むムラサキ。

 

「それは……どういう意味でしょう……?」

 

「遺体発見時、書斎のドアには内側から鍵が挿し込まれていました。この状態では外側から鍵をかけることはできませんから、いわゆる密室状態になります」

 

「じゃあ、社長は自殺した、ということでしょうか?」

 

「いいえ。遺書は見つかっていませんし、自殺には少々不自然な点が多いんです。我々は、他殺と見ています」

 

「では、犯人はどうやって部屋に鍵をかけたんですか?」

 

「それは現在調査中なんですが……いま文江さんに聞いた話なら、守衛さんが遺体に気を取られている隙に、文江さんがドアの内側に鍵を挿し込むことも可能だったことになりますね?」

 

「そ……そんな! あたしを疑ってるんですか!?」

 

「そういうわけではありませんが、我々としては、あらゆる可能性を視野に入れて捜査をしないといけませんので」

 

「バカなことを言うな!」と、ヨシヒコがメレブ達を振り払い、声を上げた。「文江さんはそんな人じゃない! この取調べは違法だ! これは冤罪事件だ!」

 

「いや、これオメーの推理じゃねーかよ」怖い目で睨むムラサキ。

 

 ヨシヒコはムラサキを無視して再び机の上に身を乗り出した。「文江さん。こんな不当な捜査に付き合う必要はありません。これは任意の事情聴取なので、拒否することもできます。安心してください。文江さんの無実は、私が必ず証明して見せます。だからお願いです! 服を脱いでください!!」

 

 いきり立つヨシヒコを、メレブ達が抑えつける。

 

「失礼しました。最後にひとつだけ」と、ムラサキ。「十七日の夜は、どこで何をしていましたか?」

 

「その日は会社が終わって、夜七時から英会話の学校へ行きました。終わったのが夜の十時で、その後は家に帰って、〇時には寝ました」記憶を探るような口調で、文江は話した。

 

 犯行時間は夜の九時だ。ウラを取る必要はあるが、文江にはアリバイがあることになる。

 

「……判りました。またお話を伺うことがあると思いますので、その時はよろしくお願いします」

 

 ムラサキがドアを開け、文江を帰す。

 

「待ってください! 服を! 服を脱いでください!!」ヨシヒコが後を追いかけようとするが。

 

「うるさい!」

 

 ムラサキは一度屈み見込み、一気に飛び上がって渾身のアッパーカットを決めた。吹っ飛んだヨシヒコは、ばたんきゅーと倒れ、おとなしくなった。

 

 すると。

 

 ぱらららっぱっぱっぱー。

 

 ファンファーレが鳴り響く。

 

「おや? レベルが上がったな?」首を傾けるメレブ。「味方を攻撃しても経験値は得られないから、レベルは上がらないはずだが」

 

「いや、コイツ敵だから」ムラサキは吐き捨てるように言った。「でも、おかげで、新しい呪文を覚えたわ。まあ、それはさておき……文江は、今のところシロだね」

 

「うむ。アリバイはあるし、動機らしきものも今のところ無し」メレブは手帳にさらさらと書き込んだ。「これは、ヨシヒコの密室の推理は、ハズレかな」

 

「そもそも地下にあんなおっきなダンジョンがあるって時点で、密室なんて破綻してるしね」

 

「じゃあ、次の取調べといこう」

 

「えーっと、次は……もう一人の遺体第一発見者、守衛の小宮だね」

 

 ヤスが説明する。「小宮(こみや)六助(ろくすけ)、六十歳。五年ほど前から耕造の屋敷の守衛をしています。身寄りはなく、屋敷に住み込みで働いていました」

 

 小宮を部屋に呼ぶ。すると、小宮は入って来たなり、「わしじゃない! わしはやってない!!」と、わめきはじめた。

 

 途端にヨシヒコがよみがえり、小宮の胸ぐらを掴んだ「お前が耕造を殺したんだろ!!」

 

「わしじゃない! わしはやってない!!」

 

「嘘をつけ! お前がやったに決まってる! そのうえ文江さんに罪を着せようとはとんでもないヤツだ! さあ言え! ボカ! ガス!」

 

「いきなり殴り始めたけど、いいのかな」ムラサキはメレブを見た。

 

「まあ、いいんじゃね? なんかまともに話しできる状態じゃなかったし。現代なら大問題だろうけど、ここは一九八五年だからな。ほら。横浜港署の皆さんも、そこらのチンピラ捕まえては、しょっちゅうボコってたし」

 

「ひー、やめてくれ! 言う! 言うから!」意外にもヨシヒコの行動は功を奏し、小宮は話し始めた。「事件のあった夜、実はこっそり抜け出して、深海地へ飲みに言ってたんじゃ。しかも玄関の鍵をかけ忘れて……それだけじゃ! わしはやっていねえ! ほんまじゃ! 信じてくれ!」

 

 腕にすがりつかれたメレブは、うっとうしそうに振り払った後、ムラサキを見た。「そうなると、小宮にもアリバイがあることになるな」

 

「なんだよ。ヨシヒコの推理も当てになんねーな」

 

「ま、所詮ヨシくんだからな」

 

 ヨシヒコは再び小宮の胸ぐらを掴む。「嘘をつくな!! お前が犯人だ! お前以外に誰がいる!! さあ言え! 言うんだ!!」

 

「ベギラマ!」

 

 呪文を唱えるムラサキ。掌から炎が吹き出し、ヨシヒコと小宮は真っ黒コゲになった。ぱららっぱっぱっぱー、と、ファンファーレが鳴り響いた。

 

「ヨシヒコはともかく、小宮さんを巻き込むな」メレブが注意する。「メラ系にしとけ、メラ系に」

 

 ムラサキたちは改めて小宮から話を聞いた。

 

「……確かに、社長はいろんな人に恨まれておった。けど、わしを雇ってくれた恩人なんじゃ」

 

 涙交じりに話す小宮。なんだかかわいそうになってきたので、今日のところは帰ってもらうことにした。

 

 ムラサキは腕を組んだ。「耕造が死ぬと小宮は職を失うことになる。そうなると、年齢的に再就職は難しい。住み込みの仕事だから家も出なければいけないし、独り身だから行くあてもない。小宮が耕造を殺したとは考えにくいね」

 

「アリバイもあるし、今のところシロだな。じゃ、次行くか」

 

「次は俊之です」ヤスが説明する。「山川(やまかわ)俊之(としゆき)、二十九歳。耕造の甥です。港の近くに一人で住んでいます。二十歳のとき、一度障害で逮捕され、執行猶予つきの有罪判決となっていますね。現在無職。耕造にお金をせびっては、ぶらぶらしていたそうです」

 

 俊之を部屋に呼ぶ。リーゼントにサングラスに革ジャンでタバコを咥えた、見るからにヤンキーという男が入って来た。

 

「――お前がやったんだろ!」

 

 いきなり胸ぐらを掴むヨシヒコに対し。

 

「メラミ!」

 

 ムラサキは呪文を唱えた。掌から炎の球が発生し、ヨシヒコに襲い掛かった。ヨシヒコは燃やされ、ぱららっぱっぱっぱーとファンファーレが鳴った。

 

「失礼しました。ではまず、耕造さんについて、何かあれば話してください」

 

「まあ、俺にとっちゃいい叔父貴だったな。いつも小遣いくれてよ」タバコをふかしながら答える俊之。

 

「十七日の夜は、どうしてましたか?」ムラサキはタバコの煙を手のひらではらいながら、さらに問う。

 

「その日の夜はずっと家にいたな」

 

「それを証明できる方は?」

 

「いや、ずっと一人だったから、いないよ」

 

 ヨシヒコがよみがえって俊之の胸ぐらを掴む。「そうなるとお前はアリバイが無い! やはりお前がやったんだな!!」

 

「ヒャダルコ!」

 

 ムラサキは呪文を唱えた。吹雪が吹き荒れ、室内は雪まみれになり、俊之のタバコの火も消えた。そして、ファンファーレが鳴る。

 

「……だから、集団呪文を使うな。単体呪文にしとけ」と、メレブ

 

「もう、ヨシヒコが余計な呪文使わせるから、MP無くなったじゃない。回復回復」

 

 ムラサキは屋敷の前で拾った証拠品の指輪をはめると、天に祈った。MPが回復する。

 

「証拠品を勝手に使うなって。壊れたら責任問題だぞ?」

 

 メレブがさらに注意するが、ムラサキは知らんぷりをした。

 

「お?」と、俊之が指輪に反応する。「それは、俺が由貴子にあげたものじゃねぇか」

 

「由貴子? 平田由貴子さんですか?」ムラサキは指輪を机に置いた。「彼女と、面識が?」

 

「ああ。いま口説いてるところよ」

 

 またまたよみがえるヨシヒコ。「いい歳して女子高生に手を出すとはなんと破廉恥な! やはり貴様が――」

 

「マホトーン!」

 

 ムラサキは呪文を唱えた。呪文は効果を表し、ヨシヒコは喋れなくなった。

 

「最初からこうしておけばよかった」改めて俊之に向き直るムラサキ。「さて、話の続きをお願いします」

 

 しかし、マホトーンは集団呪文だ。1グループの呪文を封じるため、ヨシヒコ同様俊之も喋れなくなっていた。これ以上事情聴取することはできず、仕方がないので今日のところは帰ってもらった。

 

 メレブはさらさらと手帳に書き込む。「殺された耕造には身内がいないから、遺産は甥である俊之に行くことになるな」

 

「動機はあるし、アリバイは無い。今のところ、かなり怪しいね」ムラサキは頷いた。「それと、次の取調べ相手の由貴子とも関係がありそうだね」

 

 ヤスが説明する。「平田由貴子。高校二年生。グレたこともあったそうですが、今は真面目に学校に通っているそうです。八百屋を経営している父が、耕造から三百万円の借金をしています」

 

 取調室に由貴子を呼ぶ。ポニーテールでセーラー服の、なかなかカワイイ女子高生だ。

 

 さっそくヨシヒコが身をのり出す。

 

「服を脱いでください! お願いです! 服を――」

 

「ラリホーマ!」

 

 ムラサキは呪文を唱えた。とたんに、ヨシヒコはいびきをかいて眠った。ラリホーマの効果範囲は使い手によってさまざまだが、ムラサキが使うものは対象が一人である。

 

「失礼しました。服を脱ぐ必要はないので、安心してください」

 

「あたしは別にいいんだけどなぁ」

 

 由貴子の言葉に、メレブが目を輝かせる。「お? では、お願いして――」

 

「黙れスケベボクロ。えーっと。まず、耕造氏のことをお聞かせください」

 

「親父がお金を借りてた人でしょ? それくらいしか知らないよ?」

 

「お父さんの捜索願いを出されているようですが、失踪する理由に心当たりは?」

 

「お店の経営がかなり苦しいって言ってたくらいしかわかんないかな」

 

「行先に心当たりは?」

 

「うーん、京都に行ったのかもしれないけど、それ以上はわかんない」

 

「京都に? どうしてそう思うのですか?」

 

「十六日の夕方だったかな? 学校から帰ると、京都に行くってメモが置いてあったの。でも、連絡が取れなくて。次の日の夕方になっても帰ってこなかったから、おまわりさんに相談したの」

 

「すると、最後にお父さんに会ったのは、十六日の朝?」

 

「そだね」

 

「そうですか。ちなみに、十七日の夜は、どうしてましたか?」

 

「なんでそんなこと訊くの? 家にいたけどさ」

 

「アリバイは無いわけですね……」そう言った後、ムラサキは例の指輪を取り出した。「では、この指輪に見覚えは?」

 

「な……なーに、それ? あたしのじゃないよ?」と、言いつつも、明らかに動揺した声の由貴子。

 

「でも、俊之があなたにあげたものだって言ってましたけど?」ムラサキは探るような視線を向ける。

 

「ウソだよ。あたしがあんな男から貰うわけないじゃん。もし貰っても、すぐに捨てちゃうよ」

 

 やや焦っているように見える。どうも疑わしいが、ムラサキはそれ以上追及しなかった。

 

「そうですか……ありがとうございました。もしお父さんから連絡があれば、すぐに知らせてください」

 

 ムラサキたちは由貴子に帰ってもらった。

 

「由貴子にアリバイは無し。本人は否定してたけど、あの様子だと、指輪は恐らく彼女のものだと思う。指輪が屋敷の前に落ちていたということは、由貴子が耕造の屋敷へ行った可能性は高い。由貴子の父親は耕造に借金をしてる。その取り立てが厳しかったら犯行に及ぶ可能性も無くは無い……」そう言った後で、ムラサキは腕を組んでうーんと唸った。「でも、女子高生があの屋敷に忍び込んで、ナイフで耕造の首を刺す、っていうのは、ちょっと現実的じゃないかな?」

 

「娘はともかく、父親はかなり怪しいな」メレブが手帳をめくる。「事件発生前から行方不明。借金苦という動機もある」

 

「ふーむ」とムラサキは小さく息を吐いた。「ちょっと複雑になってきたから、ここまでの情報をまとめてみよっか?」

 

 ということで、取調室に定番のホワイトボードを持ち込んだムラサキたちは、関係者の詳細を書きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 山川耕造

 ・サラ金会社の社長。

 ・昔はかなりあくどいことをしており、恨んでいる人も多い。

 ・首を刺されて即死。凶器のナイフは右手に。遺書等は発見されておらず、後述の理由により自殺の可能性は低い。

 ・家族無し。甥が一人。

 ・遺体発見時、部屋のドアには内側から鍵が刺さっており、密室状態だった。

 ・頸椎を切られての死亡と見られる。自殺の方法としてはかなり不自然。

 

 

 

 沢木文江

 ・耕造の会社の秘書。

 ・小宮と共に遺体発見。

 ・アリバイあり。

 ・動機無し。

 

 

 

 小宮六助

 ・耕造の屋敷の守衛。住み込みで働いている

 ・文江と共に遺体発見。

 ・アリバイあり。

 ・動機無し。耕造は歳老いた小宮を雇ってくれた恩人であり、また、耕造が死ぬと職や住む場所を失うことになる。

 

 

 

 山川俊之

 ・耕造の甥。

 ・無職。耕造にたびたび金をせびる。

 ・アリバイ無し。

 ・動機あり。耕造は家族がいないため、死ぬと遺産は俊之のものに。

 

 

 

 平田

 ・八百屋経営。経営は苦しい。

 ・耕造から三百万円借りていた。

 ・アリバイ無し。事件発生時より行方不明。娘の由貴子に京都へ行くという書置きを残していたが、詳しい場所などは不明。

 ・動機あり。借金の返済を厳しく迫られていた可能性がある。

 

 

 

 平田由貴子

 ・平田の娘。高校生。

 ・昔はグレていたが今はマジメ。

 ・本人は否定しているが、屋敷前に落ちていた指輪の持ち主と思われる。

 ・アリバイ無し。

 ・動機あり。父親が借金の返済を厳しく迫られていた可能性がある。しかし、犯行は難しいと思われる。

 

 

 

 川村

 ・平田が何度も金を渡していた人物。借用書が無いため、客ではないと思われる。

 ・その他、詳細不明。

 

 

 

 真野康彦

 ・犯人ヨシヒコ一行の部下。

 ・アリバイ無し。

 ・動機不明。

 ・一緒に行動しているが、実はかなり謎が多い人物。

 

 

 

 

 

 

 

「――こんなもんかな?」ムラサキは詳細を書き終え、腕を組んだ。「今のところ怪しいのは、俊之と平田だね」

 

 メレブは頷いた。「平田は京都に行ったという情報しかないから、今の段階で足取りを負うのは難しいな。まずは俊之から調べるか?」

 

「そだね。俊之が住んでるって部屋に行ってみようか」

 

 次の捜査方針が決まり、ムラサキたちは出かけようとした。

 

 が、ヨシヒコが眠ったままだ。ラリホーマは対象が一人な分、効果が長き続きするという特徴もある。

 

 ムラサキがヨシヒコの肩を揺すった。「ほらヨシヒコ、起きて。俊之の部屋の捜索に行くよ」

 

 すると、寝ぼけたヨシヒコはムラサキに抱きつき、顔をおっぱいにうずめ、ぱふぱふした。いや、正確にはしようとしたができなかった。

 

「うーん、文江ちゃーん。意外とおっぱいちいさいね」

 

「イオラ!!」

 

 ムラサキは呪文を唱えた。取調室は大爆発。ぱらららっぱっぱっぱーと、ファンファーレが鳴り響いた。

 

「さ、行くよ!!」

 

 黒焦げアフロのヨシヒコを引きずり、ムラサキたちは相変わらず多くの人でにぎわうロビーを通って、俊之の住む部屋があるという港へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーの一角で子供相手のイベントをしていた猫のぬいぐるみが、ズボッ! と顔を取った。ぬいぐるみの中にはヒサが入っていた。

 

「兄様、容疑者の部屋になんて行って大丈夫かしら……ヒサは心配です」

 

 ヒサは不安そうに外を見つめた。

 

 

 

 

 

 

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