今回は、アニメを見た回数やオタクの練度によって、脳内で再生される声が変わると思います。
今更になるが、私は広く調査依頼を募集している。……宣伝方法が悪いのか、それとも『小惑星あお』の発見以来大きな発見がないからか……ほぼみら達のメールボックスと化しているけど。
今回は珍しいことにその中に調査依頼が入っていた。
『一週間に一度現れる扉の調査』……これだ。
その名の通り一週間に一度、明らかに変な場所に扉が現れるのだという。依頼主に詳細を聞いたところ、具体的な場所まで示してくれたため、調査に踏み切った。
で、どうやって調べるかというと……やはり、毎日扉が現れるという場所まで行って調べるしかないだろう。一週間に一回現れるのであれば、ほぼ確実にいつか扉は現れるからだ。
場所は、某県某市の、遺跡発掘現場の跡地。依頼主によると、こういう場所に見合わない木製の扉が現れるみたいだけど………
*
調査開始3日目。
「あれか……」
私は、発掘現場の最奥に、ぽつんと佇む扉を発見した。近づいて見てみると、古い感じの木製のドアに、猫のエンブレムがかかっている。
「『洋食のねこや』……?」
私は、エンブレムの猫がくわえていた看板?に書かれている文字を目で追った。昨日までは影も形もなかった木製の扉が、いま目の前に立っている。
どうして、こんなところに扉があるのか。『洋食のねこや』って何?これを開いたらその先に何が待っているのか。言葉には表しがたい緊張と高揚が全身を駆け巡る。
意を決して、私は扉を開いた―――
「いらっしゃいませ!」
「……………え?????」
…今、目の前でありのまま起こったことを表すならば……
『私が発掘現場に不自然にあった扉を開けてみたら、そこには洋食屋の内装があった上に、ウェイトレスさんに出迎えられた』。
何を言っているのか分からないと思うけど、私自身も何が起こっているのか分からない。
マジックかと思い、扉の反対側を見て、手を伸ばしてみる……が、なにも手ごたえがない。
まさか、これって……
「ここ、洋食屋……ですか?」
「はい! お好きな席へどうぞ」
いや、お好きな席へって言われても……さっきの衝撃がぜんぜん抜けてないんだけど。
まるで夢に入り込んだかのような足取りで、テーブル席のひとつへつく。そうして間もなく、角の飾りがついたウェイトレスさんが、レモン水が入ったビンとメニューを持ってきた。
「東大陸語は読めますか?」
「東大陸語って何ですか?」
「えっ…」
聞いたことのない言語について尋ねたら、「少々おまちください」とウェイトレスさんが引っ込んでいった。ちょっと話し声が聞こえたかと思ったら、今度はシェフの格好をした男の人が出てきた。この人が店長さんのようだ。
「お客さん、何の言語なら読めますかね?」
「え? えーと、日本語と英語、あと、中国語とフランス語を少々…」
「日本語?…わかりました。 …珍しい。今日は土曜の日の筈なんだが」
日本語のメニューを渡され、何か注文する流れになった。まぁ、ここが洋食店だと分かった時から薄々分かっていた事だし…ちょうど、お腹がすいていたところだ。
「お待たせしました! 海老ドリアになります!」
私が注文したのは海老ドリアだった。あと、食後に抹茶アイスも頼んでいる。
早速海老ドリアを食べてみた……のだが、普通の洋食店とは思えないくらいに美味しい。濃厚なチーズとクリームソース、香ばしい焦げまでもが、プリプリの海老とほかほかのご飯と絡み合う……!
「おや。今日は先客がおるのか」
「いらっしゃい。いつものですね」
「あぁ」
ドリアを半分ほど食べた頃、おじいさんが扉から入ってきて、カウンター席に座った……んだけど、真っ白なひげが物凄いのびてるし、服も日本では見ない格好だ。どこから来たんだろう?
「ここへ来るのは初めてかい?」
「! は、はい」
おじいさんに話しかけられた!
「あの…扉、凄いですね。おじいさんもあの発掘現場から?」
「いいや。あの扉は土曜の日だけにわしらの世界に繋がるんじゃよ。色んなところに扉が現れる。だから、他の者達も来る。あんな風にな」
『わしらの世界』……『色んなところに』……? この人、もしかしてあの扉のことを知っているのかな?
「あの、扉の事、知ってるんですか?」
「いかんよ。ここでそういう事を考えると、食事が冷めてしまう」
「あっ!」
おじいさんに指摘されて、まだドリアが食べてる途中だったし、この後抹茶アイスが控えてることを思い出した。
ドリアとアイスを食べ終えて、勘定を払ってから(千円札を出したらウェイトレスさんに驚かれた。日本円をあまり見ないのかな?)
「ありがとうございました、おじいさん……えっと、」
「ロースカツで良い。ここの常連は、頼むメニューで呼び合う」
「なるほど」
そして、一言ロースカツのおじいさんにお礼を言った。
ロースカツを肴にお酒を飲むおじいさんを背に、扉を開けて店を出ると、そこはすっかり日が暮れた遺跡発掘現場だった。
振り返ったら、もう「ねこや」の扉はなくなっていた。
洋食屋「ねこや」では、土曜の日に不思議な営業が行われている。
そこでは、様々な人が、至高の料理を求めて通っており、特に常連と呼ばれる人たちは、自分のあだ名となる大好物の料理がメニューの中で一番美味しいと確信していて、時に「どっちが美味しいか」などという話題になろうものなら、言い争いになるともいう。
「フン!そんなもの海老カツサンドに決まっておろう?」
「何を言ってるの!朝までじっくりソースが染み込んだメンチカツとパンの味も知らないくせに!」
「それは此方の台詞だ!サクサクに揚がった
「ふふ…程々にしてください、エビフライさんにメンチカツさん。食事が冷めちゃいますよ。
それに…確かにサンドウィッチも良いですけど、持ち帰りはサンドウィッチだけじゃあないんですから」
土曜日の「ねこや」に新たに加わった常連は、異世界から来たと思われるにも関わらず会計は日本円を使い、他の常連から「ドリア」と呼ばれる少女だったという。
扉の正体は、異世界の洋食屋「ねこや」の入口だった。
…と、報告するのは簡単だけど、あんまり知れ渡りすぎるともどうかと思う。みら達を誘うか迷ったけど、あそこの人達のキャラの濃さに間違いなく驚くだろうなぁ…私もカツ丼頼むライオンさんとかオムライス頼むトカゲの人見たときはそうだったし。
☆洋食のねこや
『異世界食堂』の物語の舞台となっている洋食屋。一見普通の洋食店であるが、一週間に一度だけ、異世界へと繋がる扉が開くという。その日は、異世界の住人達がこぞってねこやの洋食を食べに来たり、テイクアウトしたりする。
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