某県某市、朧塚。
私がここに来たのには訳がある。
「ドラゴンの目撃情報ね……」
依頼に書いてあったドラゴンがいるという話。それを調査しようと思ったきっかけは、私がナナちゃんの元に向かった時に、興味深い話を聞いたことだ。
『雨雲が一気に晴れた?』
『はい。こちらでは有名な話なんですが……雨の予報だった地方があったんですが……突如、その地方の雲一帯が瞬時に蒸発しまして』
『じょ、蒸発??』
『気象庁にもアメ○スにも載っている話です』
『雲って蒸発するの?』
『雲はもともと大気中の水蒸気が冷却・凝結して集まったものですから、蒸発する可能性はゼロではありませんが………それでも、広域に渡って一斉に、しかも一瞬で蒸発などありえません』
『確かに……』
雲の広範囲に渡る一斉蒸発。信じられない現象が現実に起こった直後、雲が消えた空は、その日の予報に反して晴れ渡っていたという。で、その信じがたい晴れの中心に位置していた街こそが………
『朧塚……』
『はい。ここを中心に突発的な快晴が起きたんです。誰もが機械の故障を疑いましたよその頃でしたかね。ドラゴンの炎だなんてホラ話が出回ったのも』
『ドラゴンの炎?』
『そういうのを見たって情報があったんですよ。まぁ、ほぼ自己顕示欲の高い人が流したデマかと』
『いや、分からないよ。喋る石もメテオガーリックも金のパズルピースもダイヤモンドスライムもいたんだから、ドラゴンくらいいてもおかしくない』
『ちょっと何言ってるかわかりませんよ、あお先輩』
―――というわけで。
調査に来たわけですけども……まぁ、簡単には見つからない。この朧塚という土地……以外と、広い。流石に県中や市中ほどの広さではないけれど、それでも下手な町村よりは広く思えてくる。
でも、まったく手がかりが無いわけでもなかった。
近所の話から、依頼書にもあった「頭部に角を生やしている人がいる」という情報を得たのだ。
最近は、メイド喫茶でバイトを始めたみたいだけれど……
「おかえりなさいませ、お嬢様!」
「えと…一人で」
「はい!ご案内いたします!」
「あの、すみません」
「なんですか?」
「頭に角が生えてる人がいるって聞いたんですけど……」
「あぁ、料理長はちょっと前に辞めちゃいまして…」
「あらら…」
どうやら、間が悪かったみたいだ。
もう少し日を早めていれば会えたかもしれなかったのに……まぁ、こればっかりは仕方がない。
このまま何も頼まず帰る訳にもいかないから、ここでご飯にでもしよう。
「お待たせしましたー、オムライスです!
それでは、美味しくなる魔法をかけさせていただきますね!」
「―――夜を統べる影の王に奉らん、外法を以ってこれを最上とすべし。
我が魔は泥として広がり穢れを、我が理は浸食し反乱を―――」
「!?!?!?!?!?!?」
……………私の知るものとは全くベクトルの違う「美味しくなる魔法」でした。
*
不思議すぎる魔法とソースのオムライスの、遅めの昼食を終える。
さて、午後からまた調査といきますか。
「小林さーん!荷物持ちますよー!」
「あぁ…ありがと、トール。…早めに帰ろっか。」
「ですねー。カンナが待ってます!」
「……」
その時、私は目撃した。
角が生え、鱗のある尻尾が生えていて、メイド服を着た少女が、眼鏡をかけた大人の女性と歩いていくのが見えた。
あれがドラゴンなのか―――と思い、話しかけようとした、けど。
あのドラゴンと思われる少女の嬉しそうな顔を、眼鏡の女の人に向けている様子。
そして………『カンナが待ってます』……この言葉。待っている人がいるのかな。
「………………帰ろう」
二人は、幸せそうだった。
部外者が、余計なことを調べる必要もないかな。
【日本に住まうドラゴンの調査結果】
調査の結果、ドラゴンが住むという決定的な証拠は見つからなかった。
不可思議な天候のデータも、ドラゴンとの因果関係はない。
☆トール
『小林さんちのメイドラゴン』に登場する、中心人物にしてドラゴンの一匹。ドラゴンのうちの混沌勢という派閥のトップである終焉帝の娘であり、対立する調和勢との戦いで傷ついたことがきっかけで小林の世界に避難。泥酔していた小林と話したことがきっかけで、彼女のアパートにメイドとして住むことになる。
みなさんの好きな人は
-
みら
-
あお
-
モンロー先輩
-
イノ先輩
-
桜先輩