「もしもし、真中です」
『あおさん、杜王町に行ったって本当ですか!?』
「え、イノ先輩? えぇ、確かに行きましたが……それがどうかしましたか?」
『大丈夫でしたか!? 怖い所、行ってはいませんか!?』
「あの、落ち着いてください。
要領を得ないのですが……どうかしたのですか?」
『そ、そうですね。私も説明しないと。
実はですね、私も杜王町に行った事があるんです。その時に経験した事が……ちょっと、恐ろしくて』
「なにか、あったんですね?」
『はい。杜王町は地図的にも面白くて、探検した事がありまして。
きっかけは、地図と実際の道の違いを見つけたことでした。』
「地図と実際の道が違う?」
『そう。「未知のエリアだ」って喜んで入っていったらね……なんだか、妙に肌寒かったんです』
「肌寒い?」
『はい。そして、その小道の郵便箱を通り過ぎたあたりからでしょうか……何か、大きい人がついてきているような感覚がしたんです』
「そ、それって、警察に届け出るべきじゃあ……」
『普通じゃあないと思ったのはここからです。
私、その大きい人らしき気配が怖くて走って逃げたんです。そしたら…桜先輩の声が聞こえてですね…』
「え、桜先輩が!? イノ先輩、桜先輩と杜王町に来てたんですか?」
『ううん。杜王町には一人で行ったよ。いると思わなかった桜先輩に「イノ、こんな所でなにしてるの」って声をかけられたから振り向きそうになったの。でも……
いつの間にか真横にいた知らない女の子に「振り向いちゃあ駄目」って言われて。「魂を持っていかれる」って言ってきてね。その時は、何というかすんなりと信じちゃったんですけど』
「……不気味な話ですね」
『オーソンまで来た時に、後ろの気配も隣にいた女の子もフッと消えていたんです。まるで最初からいなかったかのように』
「え、女の子も、ですか?」
『そう、女の子も。そこでやっと振り返ってみたんですけど……そこには、あったはずの小道がなくなっていたんです。』
「……変な話ですね」
『そうだよね。後でその事をとある財団の方に話したら、「後ろを振り返ってはいけない」といった噂があるって教えてくれて…生きた心地がしませんでした』
「……怖い話にできそうな話ですが…分かりました。
イノ先輩がわざわざお電話してまで話したことです。信じてみます。念の為、目印とかを教えていただいてもよろしいですか? 間違って入らないようにしますので」
『コンビニのオーソンと「ドラッグのキサラ」の間にあった小道です。郵便箱が目立つので分かると思います。』
「ありがとうございました、イノ先輩。」
この話を聞いた後、再び杜王町に立ち寄った際に少し探してみたが……オーソンと『ドラッグのキサラ』の間には小道なんて存在しなかった。イノ先輩が嘘をついたとは思えないが、どうやらなかなかお目にかかれない不思議な小道のようだ。まぁ………見つけたところで入りたくはないけれど。
☆振り返ってはいけない小道
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』に登場する、現れたり消えたりする不思議な小道。そこでは、一人の少女と犬に出会い、『振り返ってはいけない』事を知ることができる。
『この世』と『あの世』の境目であり、戻る時には後ろを振り返ってはいけない、とされている。しかも、戻る途中で何者かが後ろを振り向かせようとしてくるのだともいう。振り返った者がどうなったのかは……語るべきではないし、知る者も多くないだろう。
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