バキィ!(鬱展開を叩きのめす音)   作:ほろろぎ

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最終話 バキィ!(レオとその他のバーテックスと天の神を叩きのめす音)

「なんだこれは、タマげたなぁ……」

 

 球子はそれ(・・)を見て、呆気にとられたようにつぶやく。

 ひなたの神託を受けて挑んだ樹海で勇者たちの前に現れたのは、これまでに類を見ないほどの超巨大なバーテックス。

 その名も十二星座型最強の個体、レオ・バーテックスだ。

 

 百メートルもの巨体を誇るレオは、神樹の壁を超えてすぐの地点で動きを止めている。

 対する勇者たちも、神樹を背にかばうようにレオと向き合っていた。

 

「若葉ちゃん、君ならどうする!?」

 

 友奈が、レオに対しどう打って出るかを若葉に問う。

 

「杏の時のことがあるからな、満開を使うのは止めた方がいいだろう」

 

 この時はまだ大社の面々は会議中で、散華のことについては少女らには知らされていない。

 しかし若葉たちは薄々満開の反動には気づいていたので、独自の判断でその使用を取りやめた。

 

「精霊の力だけで戦おう。私と友奈が主力となって奴を叩く。千景たちは援護してくれ」

 

 若葉の作戦に四人は、かしこまりっ! と声をそろえる。

 

「いいよ来いよ、酒呑童子!」

「イッキーマウス……大天狗!」

 

 友奈と若葉が、精霊の中でも最強の力を持つ二体を体に降ろした。

 千景、球子、杏もそれに続き精霊を呼び寄せる。

 

「「はぁああーっ!!」」

 

 作戦通り、まず若葉と友奈がレオの体に攻撃を打ち込む、が……

 

バキィ!(攻撃がはじかれる音)

 

 レオの体表はあまりにも固く、二人の攻撃はまったく通じなかったのだ。

 若葉と友奈は再び攻撃を繰り出すも、やはりはじかれてしまう。

 

「私たちも一緒に……」

 

 千景らも合流し、今度は精霊の力を使った勇者五人の同時攻撃を繰り出す。

 

バキィ!(やっぱり攻撃がはじかれる音)

 

「ウッソだろお前!?」

 

 なんと五人同時の一点集中による攻撃でも、レオ・バーテックスの体には傷一つ付けられないではないか。

 

 カスが効かねえんだよ……。

 レオはそう言いたげな余裕の動作で、勇者たちに向けて火の球を放つ。

 

バァン!

 

 火球を避けられなかった五人はもろに爆発を食らい吹き飛ばされる。

 倒れる若葉たちの姿は、ダメージで精霊の力が消失し通常の勇者服に戻ってしまっていた。

 

「……強すぎィ!」

「ドウスッペ……ドウスッペ……」

 

 火球のダメージで五人はなかなか立ち上がれない。

 お前らのここが隙だったんだよ! レオはその間にターゲットを神樹に変更、照準を合わせ再び火球をチャージし始める。

 

「マズいですよ」

 

 杏が漏らす。このままでは人類の頼みの綱の神樹が殺されてしまう。

 

「シャア、(これを)どうぞ」

 

 危機的状況に聞こえてきたその声は、相変わらずどうやってここに来たのか謎のチョコボール向井と鈴木のものだった。

 向井と鈴木はしゃがむと、杏に向けて新しいスマートフォンを差しだす。

 

「おい! まさか、また杏に満開を使わせる気じゃないだろうな!?」

 

 デジャブを覚える光景に球子が叫んだ。

 その怒りを意に介さず、向井は涼しげな声でこう言った。

 

「これですよ、アップデートって言うんです。勇者様の身に起こる散華なんかを、取り除いているんですよ」

「これマジ? 展開に対して準備がよすぎるだろ」

 

 向井の発言を球子は訝しむ。彼女としては杏の身を心配してのものだから仕方ないね。(レ)

 

「これは、信じてもらうしかないんですよ」

 

 向井が言った。

 少女らが不信感を覚えるのは承知の上で、それでも尚自分たちを信じてくれと頼み込む。

 それしか出来ない自分を不甲斐なく思いながら。

 

「なら、私はその言葉に……応える!」

 

 杏は力強く、向井の手から新型スマホを受け取る。

 

「杏さん!? ちょっと……マズいですよ!」

「大丈夫だって安心しろよ~。ヘーキヘーキ、ヘーキだから」

 

 杏の行動を慌てて止めようとする球子だが、逆に杏がそんな球子を落ち着かせる。

 

「心配しないで、タマっち。みんなも。向井さんと鈴木さんは、今まで何度も私たちのピンチを助けに来てくれたじゃないですか。だから、今度もきっとなんとかなりますよ」

「杏……」

「待ってて、あのバーテックスをやっつけてくるから」

「……分かった分かったダイエー」

 

 ゆるぎない決意を抱いた杏の表情を見て、球子はしょうがないと彼女の好きにさせることにした。

 

「またタマのこと忘れたらもう許せるぞオイ!」

「絶対に忘れないってはっきり分かんだね。……満開ッ!!」

 

 杏は再び満開システムを起動し、紫羅欄花(ストック)の花を咲かせた。

 神樹とレオの射線上に躍り出た杏は、手にした巨大クロスボウをレオに向ける。

 

「パパパッとやって……終わりッ!!」

 

 レオが火球を放つのと同時に、杏もトリガーを引いた。

 クロスボウから撃ち出された九本の矢は一つになり、レオの火球を貫いて、レオ本体までをまとめて打ち抜く。

 

バキィ!(レオ・バーテックスの御霊が砕ける音)

 

 満開の力はやはりヤバい。たった一人の勇者が一撃で最強のバーテックスであるレオを葬ってしまったのだ。

 これほどの力を行使して、本当になんの反動もないものだろうか?

 樹海化が解け、杏のもとに仲間が駆け寄る。

 

「杏、大丈夫か? 大丈夫か?」

「……うん、なんともないみたい。タマっちのことも、みんなのことも、ちゃんと全部覚えてるよ」

 

 心配そうに声をかける球子。

 自分の体と記憶を調べてみても、杏にはなんの不調もない様子だ。

 向井と鈴木の言うように、本当に散華は起きなかった。

 

「やったぜ」

 

 ワイワイと勝利を喜ぶ少女たち。

 向井と鈴木は少し離れたところで、その様子を黙って見ていた。

 二人の瞳にわずかに涙が浮かんでいたことに、少女たちは気づくことは無かった。

 

 その日の夜、最強の敵を下したことを祝ってうどんパーティーを開こう、と若葉たちは食堂に集まったのだが

 

「あれー? おかしいね誰もいないね」

 

 いつも最高の料理を提供し続けてくれていたシェフ、中野くんの姿が、なぜかどこにも見当たらなかった。

 それ以降、料理人不在の食堂は閉鎖され、中野くんを見かけることは一度として無かった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 レオを倒してから一月が経ち、再びバーテックスが侵攻してくる、が

 

バキィ!(満開した球子がサジタリアス・バーテックスを叩きのめす音)

 

バキィ!(満開した千景がアリエス・バーテックスを叩きのめす音)

 

バキィ!(満開した友奈がキャンサー・バーテックスを叩きのめす音)

 

 散華というデメリットが無くなった勇者たちは存分に満開の力を行使し、連日攻めてくる十二星座型バーテックを難なく蹴散らしていった。

 そうして十二星座型をすべて倒しきったところで、ふいに若葉は一つの違和感に気付く。

 若葉が久しぶりに稽古をつけてもらおうと、タクヤ、葛城蓮、AKYSの元を訪ねたのだが、どこにも彼らの姿が見られないのだ。

 大社本部を訪ね職員に三人のことを訪ねるが、何人の職員に聞いてもタクヤたちの所在を教えてくれない。

 

「お姉さん許して!」

 

 尋ねられた職員は皆そう言い、恐れるように若葉のもとを去っていく。

 まるでタクヤたちのことを聞かれるのが禁忌ででもあるように。

 行方が分からないのは師匠陣だけではない。

 毎日の食事を用意してくれていた勇者専属調理人の中野くんも、レオと戦った時を機に行方知れずとなっている。

 関西から来た文句の多い大社上層部の職員と、同じ上層職員の白いのと呼ばれる人物も姿が見えなくなっていると、若葉は噂で聞いていた。

 他にも五人、大社の人間が行方不明になっているという話もある。

 若葉は胸中に言い知れぬ不安を感じていた。

 

 忽然と姿を消した大社職員の数は十一人。

 改良された満開を使って倒したバーテックスの数も十一体。

 都合よく無くなった散華。

 デメリットなしに使える満開という超パワー。

 

 若葉は真実を確かめるため、チョコボール向井と鈴木の元へ向かった。

 

「お邪魔するわよ~?」

 

 部屋の一室を訪れると、そこには若葉の予想通り向井と鈴木がいた。

 彼らもまた、若葉が尋ねてくることを予測していた様子だ。

 若葉は二人の前に立つと、言い逃れは許さないという強い面持ちで、散華のことについて尋ねる。

 

「向井さん、鈴木さん、教えてくれ。私たちの知らないところで、貴方たちはいったい、なにをやっているんだ!?」

「すぐ誤魔化しますよ」

 

 コンビは答えず視線を逸らす。

 それでも若葉は二人の前から去ろうとせず、二人を問い詰め続ける。

 やがて根負けした向井と鈴木は、衝撃の事実を若葉に語った。

 

「これですよ、散華シフトシステムっていうんです。仲間の命なんかを、犠牲にしているんですよ」

「えこれ(絶句)」

 

 散華は取り払われたわけではなかった。

 システムは機能し続け、しかしそれによって失われるものを勇者の体から、大社職員の生命へと交換していたのだ。

 若葉たちは戦うたびに中野くんの、タクヤたち師匠の命を、供物として神樹へと捧げていた。

 

「これはキツいですよ……」

 

 残酷な真実を告げられた若葉は、ショックでその場に崩れるように倒れ込んでしまう。

 意図せずとはいえ、共に戦う人々を犠牲にしていたのだ。当然の反応だろう。

 

バァン!

 

 そこに、勢いよく扉を開けてひなたが走り込んできた。

 はぁはぁと肩で息をしながら、叫ぶように言う。

 

「大変です若葉ちゃん!」

「……どうしたんだ、ひなた」

「神が……天の神が、やって来ます!」

「……なにぃ!?」

 

 天の神──それはバーテックスを生み出す存在であり、人類を滅ぼそうとする文字通りの『神』である。

 これまで若葉たちが戦い続けていた怨敵。その元凶であり、勇者が勝たなければいけない相手。

 

 世界が静止した。

 

 一面が樹海に取り込まれ、若葉は神樹の根の上にいた。

 空を見上げると、結界をこじ開けるようにして銅鏡状の体を持つ天の神が、四国へ向かってくるのが見える。

 最強の配下である十二星座型バーテックスをすべて葬られたため、ついに自らが人類の粛正に動いたのだろう。

 

「おーい、若葉ちゃーん!」

 

 向こうの方から友奈たちもやって来くる。

 

「あれが天の神……すべての元凶……」

「アイツを倒しちまえばいいわけだ」

「二人ともやめちくりー」

 

 千景と球子は満開システムを起動しようとスマホを取り出す。

 それを若葉が慌てて止めた。

 

「どうしたんですか、若葉さん? 満開はなんの異常も無いんですよ?」

 

 訝しむ杏。若葉は四人に向けてすべてを説明する。

 

「散華で失われていたのは、大社職員の人たちの命だったんだよッ!!」

「「「「「な、なんだってー!?」」」」」

 

 若葉と同じように、友奈たちも散華の真実を知り衝撃に包まれる。

 その間にも天の神は結界を完全に破壊し、四国内に侵入。神樹へ向けて前進している。

 ドウスッペ……ドウスッペ……と混乱する勇者たち。

 

「と、とにかく、満開はもう使えない。精霊の力だけでなんとかしよう」

 

 若葉は振り絞るように言う。

 他の勇者もうろたえる気持ちをどうにか押さえ、精霊を体に降ろした。

 

「イクゾオオオ!! オエッ」

 

 若葉の号令で、五人は天の神へ向かって一斉に攻撃を放つ。

 

バァン!

 

 これで決着をつけるつもりで放たれた渾身の一撃だったが、それらは天の神の体に触れる前に張られたバリアーによって難なく防がれてしまった。

 天の神はお返しとばかりに、神の怒りともいえる雷を放つ。

 

バキィ!(勇者たちが叩きのめされる音)

 

 雷は五人の勇者に直撃し、その身を引き裂かんばかりの激痛を与えた。

 ダメージで精霊の力はおろか、勇者装束すら消失している。

 

「オワァ……ンマァ」

「ォワァ……アァ……ウッ」

 

 少女たちは倒れふし、痛みで指一本動かせなくなってしまう。

 たった一発の攻撃ですさまじいまでの威力だ。死ななかったことが奇跡といえる。

 もはや少女らに成すすべはないと見た天の神は、五人を無視して再び神樹へ向けて侵攻を再開する。

 

「このまま天の神に地上を侵されるなんて嫌よ~」

 

 若葉は痛みを堪え、無理矢理その身を立ち上がらせた。

 そして、再度変身しようとスマホを構えるが

 

「あれーおかしいね動かないね」

 

 天の神の一撃でスマホは壊され、勇者システムを起動することが出来ないではないか。

 

「あっ……」

 

 これまで人類の明日のために奮戦してきた若葉であったが、あまりにも追い込まれた状況に、無情にも人類の敗北を察してしまった。だが……

 

「これどうして使わないのか、ちょっと理由を話してみせてお」

 

 当たり前のように聞こえてきた声。若葉の隣に立つチョコボール向井と鈴木のものだ。

 二人は若葉に、なぜ満開を使わなかったのか尋ねる。

 満開さえ使っていれば、少女らが傷つくこともなかったろうに、と。

 

「なぜって……当たり前だろう! 確かに私たち勇者は負ける訳にはいかない。だが、そのために誰かの命を犠牲にすることなど、あってはならない!」

「じゃあ次は何やろっか?」

 

 犠牲を良しとしない若葉に、ならどうやってこの局面を乗り越えるつもりかと鈴木が問う。

 その厳しい言葉に、若葉は返答に窮してしまった。

 

「なかなか優しい心してるねぇ(ねっとり)」

「流石に、神樹様に見初められただけのことはある」

 

 だが鈴木も向井もそんな若葉を責めることなく、むしろ彼女の心の優しさを認める発言をする。

 

「じゃあ最後に、新システム」

 

 向井はそう言って、どこからか新しいスマートフォンを取り出し若葉に差し出した。

 

「これは……?」

「これですよ、『大満開』って言うんです。神樹様なんかの御力を、その身に宿すことができるんですよ」

 

 向井が手にするスマホには、満開をさらに大きく凌ぐ新機能が搭載されているという。

 しかし若葉は、それを受け取ることをん拒否するぅ。

 

「ダメだ! 私たちはもう、誰のことも犠牲にしたくないんだ!!」

 

 涙を流す若葉。

 ここで新機能を使わなければ天の神に人類は滅ぼされてしまう。

 それが分かっていても尚、仲間の命を奪うこともできず、若葉は板挟みにあっていた。

 そんな若葉を慰めるように、向井と鈴木は柔らかな微笑みを浮かべる。

 

「「これですよ、最後のお願いって言うんです。世界の平和なんかを、取り戻してほしいんですよ」」

 

 二人は声を合わせてそう言うと、若葉に対して深々と頭を下げた。

 

「……まさか……今度は貴方たちが犠牲に……ッ!?」

 

 向井と鈴木の態度は、次の満開で捧げるのは自分たちの命だと若葉に伝えているようだった。

 二人はいつまでも下げた頭を上げようとしない。

 オナシャス! センセンシャル! と、二人の命を懸けた必死の訴えを見た若葉は、ついに彼らの手からスマートフォンを受け取った。

 

「向井さん……鈴木さん……。今まで本当に……ありがとナス……!」

 

 若葉はあふれる涙をそのままに、向井と鈴木に心からの感謝を伝えた。

 そして天の神を見据えると、スマホのアイコンを力強くタップする。

 

「大満開ッ!!」

 

 樹海全てを包み込むばかりの眩い輝きがはしり、神樹から膨大なエネルギーが若葉の体に流れ込む。

 光が晴れ、若葉の姿は勇者装束とも満開とも違う、神々しい衣服をまとうものとなっていた。

 その姿を見た天の神は、標的を若葉に変え雷撃を放つ。

 

バキィ!(雷を切り払う音)

 

 神の一撃を、若葉は生太刀の一振りで霧散させた。

 さらに若葉は刀を構え、背中からはやした翼を使い天の神へ向けて飛び立つ。

 

「天の神よ! これが貴様に殺されていった人々の、無念の思いだッ!!」

 

バキィ!(天の神が叩きのめされる音)

 

 神樹の力を上のせした若葉の渾身の一撃は、見事に天の神の体を切り裂くことに成功した。

 砕けた天の神は光の粒子となり、空に向け立ち上っていく。きっと、自らの住まう神々の国へと還っていったのだろう。

 

 戦いを終えた若葉は地上へと降りた。

 樹海化も解除され、友奈たちもダメージから回復し若葉を迎え入れる。

 そこへチョコボール向井と鈴木もやって来て、再び若葉に対し深く頭を下げ感謝を示した。

 そんな二人の体は、肩代わりした散華によって徐々に粒子と化し消滅しつつあった。

 

「これですよ、がしゃどくりょって言うんです。世界中のすべての人間の魂なんかが、結合しているんですよ」

 

 向井と鈴木は、ここで初めて自分たちの正体を明かす。

 彼らは天の神によって殺された世界中の人間の恨みが実体化した、妖怪ガシャドクロだったのだ。

 妖怪であるがゆえに、精霊と同じく勇者たちの力になることが出来たのだろう。

 

 少女たちが見守る中で、チョコボール向井と鈴木は自らの役目を果たし、満足した思いでこの世を後にした。

 後にはコンビが勇者に渡したマルティスポーターが、二人の存在した証明であるかのように残されていた。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 天の神を退け、世界には再び平和が戻ってきた。

 四国外を覆っていた炎は消え、閉ざされていた人々も復興のため外の世界へ旅立っていく。

 バーテックス対策機関としての役目を終えた大社は、今度は世界復興の陣取りをするため奮戦が続いている。

 

 一方、前線で戦い続けていた少女たちはそのお役目を解かれ、普通の中学生へと戻っていた。

 戦いを終えたことで一旦はそれぞれの住む場所へ帰った少女らだったが、この日は久しぶりに丸亀城へ戻り再会を果たしていた。

 言葉を交わすのもそこそこに若葉、ひなた、友奈、千景、球子、杏の六人は、揃って大社本部があった場所へと赴く。

 

「こ↑こ↓か……」

 

 六人が訪れた敷地の一角には、十三基の墓石が建てられている墓地があった。

 それは、少女たちを助けるため自らが散華の犠牲となった、十三人の大社職員のものだ。

 彼らの体は散華の影響で遺体は残っていない。

 形だけのものだが、十三人の英雄を忘れないようにという若葉たちの希望により建てられたものだ。

 

 若葉らは一つ一つの墓に花を手向け、手を合わせて行く。

 そして最後、チョコボール向井と鈴木の墓の前に来た。

 

「思い返せば、初めて会った時から向井さんと鈴木さんには助けられっぱなしで、私たちはなにも返すことが出来なかった」

 

 若葉はそう言い、コンビが残したマルティスポーターを墓前に供える。

 

「私たちがこれからも生き続けることが、せめてもの恩返しだと、私はそう思います」

 

 少女たちは手を合わせ、チョコボール向井の、鈴木の、タクヤたちの冥福を祈った。

 

「向井さんたちは、天国に行けたんでしょうか……」

 

 ひなたは誰かに問うようにひとり呟く。

 その言葉に、若葉は確信を持ったようにこう答えた。

 

「すべての苦しみから解放されたんだ。きっと、みんな天国に行けたさ」

 

 そうに決まっている。六人の少女たちは、確かにそう思った。

 空の上から向井と鈴木たちが、にっこりとほほ笑んだような、そんな気がした。




最後だけいつもより長文になりましたが、楽しんでもらえたら幸いです

最後まで読んでくれた人ありがとナス!
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