フィニアスとファーブ イン アビス   作:クロブネペリー

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ハローアビス3:「オースでビジネス!」

 夜はすっかり明け、街の活気がピークに達する頃。

 大穴の方から帰って来た二人の少年が、鑑定所を目指し街道を歩いていた。

 

 

「うぇえ……まだ気分悪い……」

 

「本当に大丈夫か!?」

 

「大丈夫だっての……ロボットの癖に心配性なんだな」

 

 

 青い顔をして調子の悪そうな仲間より、更に青い顔を見せてオロオロと不安がる少年。

 やや浅黒い肌と猫のような縦に細い瞳孔、頬に塗られた赤い模様と、妙に変わった雰囲気を持った人物だ。

 

 その少年を含めて二人ともまだ、十歳に成り立てのような幼い子どもだった。

 

 

 二人は背中に、大きなリュックを背負っている。

 また頑丈なヘルメットと動きやすさを重視した服を着用しており、見た目はさながら探検家のようだ。

 その他の特徴としては、首にぶら下がった赤い笛だろうか。

 

 

「『ナット』。鑑定所はどっちだ?」

 

 

 妙な雰囲気を持った少年は、まだ少し具合の悪そうなナットに話しかける。

 

 

「次の角を曲がった先だな。まぁ看板あるし、他の『探窟家』に付いて行きゃすぐに分かるぜ」

 

「なるほど」

 

 

 言われてみれば、自分と似た格好をした人々が見える。

 同業者ならば自ずと、目的地は同じだろう。

 

 少年は彼らに付いて行くように、またナットから言われた通りに角を曲がった。

 

 

 

 

 

 

 曲がった先の眼前に、ヌッと何かが現れる。

 

 

「へ?」

 

 

 自分たちよりも一回り二回りも大きな存在。

 それはやけに綺麗な瞳を見せつけながら、パチクリ瞼を動かした。

 

 少年が突然の事に膠着していると、その存在はパカリとくるみ割り人形のように口を開いた。

 

 

『デンキオイテルヨー』

 

「ぎゃあーーーッ!!??」

 

 

 野太いく抑揚の無い声が響く。

 突如現れた化け物じみたそれに、少年は堪らずひっくり返る。

 

 

「おいおい!? どうした『レグ』……うぇッ!? なんだこいつ!?」

 

『コワクナイヨー』

 

「いや怖えよ普通に!」

 

 

 まじまじと良く見れば、それは大きくて不気味な木製の人形だった。

 

 人が入って動かしているとも思えるものだが、全長は余裕で三メートルは超えており、人間が中から操るには大き過ぎる。

 またパタパタと器用に動く手足も作り物であり、一切の人間味がない。

 

 パッと見た時には、本当に巨大な生物にしか思えなかった。

 

 

「ど、どうなってんだよコレ……」

 

「見るからにロボット……僕の仲間かもしれない?」

 

「絶対それはねーよ」

 

『ナニヲイッテイル』

 

 

 その人形はクイクイっと指を動かし、二人を近付けさせる。

 

 

「な、なんだよぉ……」

 

 

 恐る恐る近寄る、ナットとレグ。

 

 

 すると人形は頭部をパカリと開いた。

 

 

「そこ開くのか……?」

 

 

 レグが驚いていると、すぐに頭部の開口部より何かが飛び出す。

 

 小さな風車が出て来て、クルクルと回り始めた。心なしか冷たい風が吹いている。

 

 

「おー……回っているぞナット……」

 

 

 

 呆然と眺めていると、風車はまた頭の中に消える。

 

 

『オシマイ』

 

「今のなんだよ!」

 

 

 思わずつっこむナット。

 

 

『イヤシコウカ』

 

「どこに癒し効果あんだよ! なんなんだよこいつ……!」

 

「凄いな! もっと何かあるのか!?」

 

「お前はなんで興味津々なんだよ!?」

 

『レッツダンシング』

 

「ウネウネ動くな!! てか腕と足、どうやって動かしてんだ!?」

 

 

 作り物の細い手足を波のように駆動させ、踊る謎の存在。

 

 

 

 

「おーい! 店から離れているぞー!」

 

 

 圧倒されていると、彼らに近付く一人の少年の姿があった。

 

 

「む……君たちと同じくらいの子どもだ」

 

「見た事ない奴だけどな」

 

 

 彼は二人の前に立つ人形の横に立つと、のほほんとした表情で謝る。

 

 

「あぁ、驚かしちゃった? ごめんよ。すぐどっか行っちゃうんだ」

 

「君がコレを作ったのか?」

 

「うん。正確にはもう一人と作ったんだけどね。それでこれは『ビッグ・ファーブ』! どう?」

 

「どうと言われても……」

 

 

 チラリとレグは、ビッグ・ファーブを横目で見る。

 見た目は鉄と木を組み合わせた細長い人形だが、複雑に動く手足やキョロキョロ動く目、開く頭や口など見た目以上に凝ってはいた。

 

 

「……凄いな。まさかロボットを作れる人間がいるとは。遺物も、使っているのか?」

 

「どーせ中にそのもう一人がいるだけだろ。喋ってたし」

 

 

 少年は感嘆し、パチリと手を叩く。

 

 

「鋭いね! その通りだ!」

 

「ほらな? 言ったろ?」

 

「いや君じゃなくてそっちの君」

 

「は?」

 

 

 ビッグ・ファーブを回れ右させて、背中の開閉部を開いて中を見せる。

 ロッドやラチェット、歯車などが複雑に詰め込まれ、人間が入る隙がない事を示していた。

 

 

「は、はぁ!? 自動で動かしてんのか!? どうやって!?」

 

「それは企業秘密。この世界にとったらオーバーテクノロジーっぽいからね。因みに元になっているのは弟のファーブだ。おーい! ファーブ!」

 

 

 

 

 彼が手を振った方を見ると大きな露店と、本を売り捌くベレー帽と付け髭を付けたもう一人の少年が見えた。

 机の上には、見たことの無い生物が不気味に唸っている。

 

 

「一つ売ってくれ!」

 

「あたしにもちょうだい!」

 

「こっちにも!」

 

 

 しかもかなりの売れ行きで、大勢の人だかりが出来ていた。

 見た事ない光景に、ナットは呆然と目をパチクリさせた。

 

 

「何売ってんだ……?」

 

 

 少年も一冊取り出し、二人に紹介してやる。

 

 

「伝記。街の流行りが『ライザさん』って人だったから、彼女の伝記を売っているんだ」

 

「お、おい……その伝記っての、既に俺たちの所で売ってんだぞ!? 類似品だろ!?」

 

「探窟組合から認可済みだよ。それに中身は、僕らがインタビューとインタビューを重ね、ドキュメンタリー風に仕立て上げたオリジナルの伝記さ。おかげさまでベストセラー! あ、特装版はライザさんの肖像画のポストカードが付くよ」

 

「……!?」

 

「午前中を犠牲にして、ファーブが書いてくれたんだ。P&Fワークスを今後もよろしくね。キチンと街から認可してもらった会社だから、僕が名義上の社長さ」

 

「!?!?!?」

 

「そしてビッグ・ファーブは宣伝用の集客ロボットで、手足には言った通り、遺物の『伸縮する鉄(ウォークパイル)』を使用しているよ。頭からたまに風車が出るんだけど、これは僕らの発明品さ」

 

「!?!?!?!?!?」

 

「回るとマイナスイオンが出て、癒し効果になるよ。これも発売中。探窟家の皆さんに人気なんだ」

 

 

 ビッグ・ファーブは頭部から。少年は懐からその風車を取り出し、一緒にクルクル回す。

 妙に冷たい風を吹かせると思えば、微かに水蒸気のような物が出ていた。

 

 

「見て行く?」

 

「なにモンなんだよお前ら……」

 

「あ、自己紹介を忘れてたよ。あっちがファーブで、僕は────」

 

 

 

 

 突然、彼の言葉を遮り、黙っていたレグがガバッと少年の手を掴む。

 興奮気味な表情で、握手したそれをブンブン揺さぶっている。

 

 

「君は天才かッ!? ロボットを作ったり、本を書いたり会社を作ったり!! 多分同い年として尊敬するぞッ!!」

 

「あー、それはどうも。多分同い年として光栄だよ。凄い手だね」

 

「君には及ばないッ!!」

 

「僕は普通の手だけど」

 

 

 レグの手は両方とも機械だった。

 

 

「な、なぁ、レグ。ちょっと興奮し過ぎだっての。それにあまり街の人間にその手を見せるなってシギーに」

 

「是非、是非ッ!! 君の名前を聞かせてはくれないだろうかッ!? あ、僕はレグだ!! こっちはナット!!」

 

「聞いちゃいねぇ……てか、勝手に自己紹介すんな」

 

 

 窘めようとするナットの存在すら忘れるほど、少年に羨望の目を向けるレグ。

 少年は握手されたまま、自己紹介をした。

 

 

「やぁ、レグにナット。僕はフィニアス。その格好見るに、探窟家だよね? 僕たちと多分同い年なのに凄いなぁ。リスペクトを込めて、このライザさんの伝記をプレゼントするよ。多分同い年の縁もあるし」

 

「その多分同い年ってのやめろ」

 

 

 レグと手を離してから伝記を二冊、ビッグ・ファーブ経由で二人に手渡した。

 いざ手に取ってみると、かなり重厚な物だと分かる。

 

 

「うへ……既に読む気が失せて来る……」

 

「必ず読んで、感想文を送る!! 絶対送る!!」

 

「ファンレターは末尾にある宛先に送ってね」

 

「おめーまだ、俺より字が読めねぇ癖に……」

 

 

 フィニアスはナットの言葉に、得意げに反応した。

 

 

「大丈夫! 字が読めない人用に、別プロジェクトも進行中なんだ!」

 

「べ、別プロジェクトぉ?」

 

「おぉ!! なんて徳が高い……! 君たちは天使なのではないのか……!?」

 

「良くママから言われるよ」

 

 

 そのままフィニアスはニコッと笑いかけ、パチンと指を鳴らす。

 

 

 するといつの間にかファーブが、バグパイプを担いで現れた。ビッグ・ファーブもなぜか、バイオリンを取り出している。

 

 

「え? え? え? なに? なに?」

 

 

 困惑するナットをよそに、フィニアスは突然歌い出す。

 

 

 

殲滅卿ライザの伝記 歌唱バージョン

作詞 フィニアス

作曲 ファーブ

編曲 パンクスさん

 

♪探窟家の憧れ、偉大な白笛さ♪

 

♪アビスの底を目指してダイブ♪

 

♪その名はラ・ラ・ライザ、ラ・ラ・ライザ♪

 

♪怖い生物、悪い探窟家、なんのその♪

 

 

♪「とても強いぞ!」♪

 

♪「お酒も強い」♪

 

♪「爆弾級の一撃!」♪

 

♪「発言も爆弾級」♪

 

♪「見つけた遺物は数知れず!」♪

 

♪「嫌いな野菜も数知れず」♪

 

 

♪その名はラ・ラ・ライザ、ラ・ラ・ライザ♪

 

♪師匠も白笛────

 

 

 

「待て待て待て待て待て!! ストップ、ストップ! 演奏やめろ!!」

 

 

 ナットはフィニアスらと、どこからかやって来ていた演奏隊を止めた。

 

 

「どうしたの?」

 

「い、いきなり歌うか……? 祭りでもねーのに恥ずかしいだろ……!」

 

「え? いきなり歌わないの?」

 

「普通歌わねーよ!」

 

「なるほど、この世界じゃいきなり歌わないのか……じゃあ、仕方ない。郷に入りては郷に従えって言うからね。ごめんみんな! 折角雇ったところ悪いけど、今日は解散だ! シェブ、最高のフルートだ! ハル、君のコーラスはオースで一番だ!」

 

 

 フィニアスは集まってくれた演奏隊らの前に立って解散させる。

 演奏隊は名残惜しそうに口々に呟きながら、離れて行った。

 

 

「どっから現れたんだよ……」

 

(聴きたかった……)

 

 

 フィニアスとファーブは、店を閉めながら二人に別れを告げる。

 

 

「まぁ、ゆっくりでも良いから読んでみて。それじゃ、僕らはこれで」

 

 

 ビッグ・ファーブに荷物を抱えさせつつ、兄弟は揃ってどこかへ行ってしまった。

 ナットはやや疲れた顔で見送るだけ。

 

 

「スゲーのと知り合ったな……でもなんか、オースの人間っぽくなかったな。外国人か?」

 

「うぅ……フィニアスにファーブ……なんて凄い兄弟だ……!」

 

「惚れ込み過ぎだっつの」

 

「……あ、気分は大丈夫なのか? ナット」

 

「まだ心配してたのか……色々あり過ぎて、色々吹っ飛んだぜ……」

 

 

 落ち着いたところで、二人はやっと鑑定所へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 鑑定が済み、二人の拠点でもあり居住地でもある「ベルチェロ孤児院」に戻る。

 太陽は既に、西へ傾きつつあった。

 

 

「初めての探窟にしちゃ、良い方じゃねーか?」

 

「ありがとう。光栄だ」

 

 

 孤児院の入り口前まで到着する。

 

 

「報告が済んだら、早速これを読まなくては……」

 

「殲滅卿の伝記なら、もっと短い方をウチで売ってるだろ」

 

「でもこれは、あのフィニアスとファーブの作品だし……」

 

「おめーはあの兄弟の何を知ってんだよ……」

 

 

 扉の取手を握るナット。

 

 

「出来る事ならまた、会いたいものだが……」

 

「はっ……探窟もした事ない良いトコのボンボンが、オレらなんかに興味なんてねーだろ」

 

 

 そう皮肉を言いながら、ナットは扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんでも質問してっ!! もう、なんでも話すよっ!!」

 

「それじゃあまず、君が探窟家を目指した理由から」

 

 

 その先には、眼鏡をかけた少女のインタビューをしている、フィニアスとファーブと、二人のペットらしき生物がいた。

 ほんの数十分振りの再開に、ナットはあんぐりと口を開けるしかない。

 

 

「フィニアスにファーブ!?」

 

「なんでここにいんだよ!?」

 

「あ、レグにナット。やぁ、さっき振り。今、ライザさんの娘さんにインタビューしていたんだ。後で君たちも良いかな?」

 

 

 インタビュアーであるフィニアスの後ろで、ファーブがタイプライターを打っている。

 そのタイプライターさえここでは珍しい物なのか、目をキラキラさせて眺めていた少女だったが、すぐにナットらの方へ視線を移す。

 

 

 ナットを見た瞬間、少女はムッとした表情を見せてしまった。

 

 

「うっ……むぅ……!」

 

「あ、ナット……」

 

 

 彼女から逃れるように、ナットは一人さっさと部屋に戻ってしまう。

 顔を合わせた時は怒った表情をしていた少女だが、後ろ姿を眺めている時には少し寂しげなものとなっていた。

 

 

「…………」

 

「『リコ』?」

 

「……あっ! ご、ごめんなさい! じゃあ、さっきの質問に……えへへ。なんて質問だったっけ?」

 

 

 リコと呼ばれた眼鏡の少女は再度、インタビューに注意を戻す。

 彼らの間に、レグはまた興奮気味に近付いた。

 

 

「それにしても二人とも、良くここにライザの娘がいるって分かったな!」

 

「ライザさんの調査をする上で、知らない訳はないよ」

 

「あれ? レグ、知り合いなの?」

 

「さっき街であったんだ! この二人は凄いぞ!!」

 

「レグが凄い推してる!」

 

 

 フィニアスは一旦インタビューを止めて、自分たちが何をしに来たのかを説明してくれた。

 

 

「殲滅卿伝記の次は、探窟家の特集をしようと思ってね。未来の白笛たちにインタビューをしているんだ」

 

「えへへ……そうです! 私が白笛の娘さんかつ未来の白笛、リコさんなのです!」

 

「良いね! 君みたいな自信とパッションに溢れた探窟家と会ってみたかったんだ! ファーブ!! これは素晴らしい記事になるぞ!」

 

(双方とも、凄い熱意だ……!)

 

 

 ファーブは黙々と、タイプライターを打ち続けている。

 

 

「………………」

 

(……弟の方は分からないが)

 

 

 盛り上がっているところで、厳しい顔つきをした青年が四人と一匹に歩み寄る。

 その顔を見た途端に、リコとレグはドキリとした表情となった。

 

 勝手にこんな事をして、怒られないかと不安になったからだ。

 

 

「……あまりエントランスで騒がないでくれ」

 

「あ、あ、あの〜、これはですね〜……」

 

 

 釈明しようとするリコに反し、フィニアスは全く調子を変えていない。

 

 

「あぁ、すみません『ジルオ』さん。三十分ほどで終わらせますので」

 

「手短にな。滞在時間自体は終日まで構わないと聞いている」

 

 

 存外に寛容だった為、リコは愕然となる。

 

 

「え!? リーダー、インタビュー続けて良いんですか!?」

 

「幾つかの条件付けでな。元よりこの二人からアポイントは貰っている。お前よりよっぽど、しっかりしているぞ」

 

「まじですか」

 

 

 それに、とジルオは続けた。

 ギロリとリコを睨んでいる。

 

 

「……お前とジギーかやった停電騒ぎの後、孤児院の供給機の調子がおかしくてな」

 

(僕に電気を流した時のか……)

 

「それをわざわざ、二人が直してくれたんだ。しかもかなり、改良した上で……全く。本当にリコらと同い年なのか?」

 

「!?!?!?」

 

「えぇ、そうですね。良く言われます」

 

「!?!?!?!?」

 

「……本当に代金は良いのか?」

 

「その代わり遺物を割引き価格で売っていただくんで、大丈夫です」

 

「遺物買い取ったの!?!?」

 

「色々と必要でね」

 

 

 リコとレグはぽかんと、フィニアスとファーブを眺めていた。

 無理もない。あまりにも何でも出来過ぎるからだ。

 

 いつも冷静沈着なジルオさえも、驚きを隠せていない。

 

 

「……本当に子どもか? それに、オースの人間ではないだろ」

 

「僕たちは子どもですけど、アビスに興味があって色々と動いているんです。あと仰る通り、外国人ですね。旅行に来たんです」

 

(旅行ついでに会社を設立とは……それは旅行なのか……?)

 

「そうか……まぁ、なんだ。ゆっくりして行ってくれ」

 

「どうぞ、お構いなく。あっ、また後でインタビューしに行きますので!」

 

「…………あぁ」

 

 

 二人を訝しげに見ながらも、それだけ言い残して離れて行くジルオ。

 彼が去った後に待っていたのは、二人からの質問攻めだった。

 

 

「じ、ジギーみたいに機械いじりが出来るの!?」

 

「君たちはどこの生まれなんだ!?」

 

「やっぱり二人も探窟家に憧れて!?」

 

「買った遺物で何をするつもりなんだ!? また凄いの作るのか!?」

 

「凄いの!? 凄いのってなに!?」

 

「あー、参ったなぁ。僕らがインタビュアーのハズなのに……」

 

 

 困ったようにファーブへ顔を向けるフィニアス。

 相変わらず彼は聞いた内容を全て、見事なタイピングで紙に打ち込み続けていた。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 その時、彼の足元にいたハズの生物、ことペリーがいない事に気付く。

 

 

「ペリーどこだ?」

 

「さっきいた青い鳥みたいなの、カモノハシだよね!? 海外の珍しい鳥? って聞いたけど、どこで捕まえたの!?」

 

「ペットショップだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、ペリーは孤児院の裏に来ていた。

 日当たり悪く、あまりひと気のない場所だ。

 

 

 ペリーは辺りを確認すると、二足歩行となり中折れ帽子を被る。

 凛々しい顔つきの、エージェントPの姿を現した。

 

 

 

 そのままペリーは腕に付けていたバンドを翳し、スイッチを押す。

 

 

 

 途端、バンドからホログラムが出現。

 空中に映し出されたのは、ペリーの所属する機関の司令官でもある「モノグラム」の姿だ。

 

 

 

『ハハハハハ! こいつめ! こいつめー!』

 

「………………」

 

 

 平べったいイタチのような生物と、戯れている彼の姿だ。

 

 

『ほぉーれ! 大好きな、キャベツだよー! 食べられるかなー?』

 

「………………」

 

『ほれ! 喉を詰まらせたら駄目だぞー! さっきはまさか、ブロッコリーで喉を詰まらせるとは思わなかったからなぁ! ハハハハハ!…………』

 

「………………」

 

『………………』

 

 

 ペリーは呆れた顔で、彼が自身に気付くまで待機する。

 イタチのような生物がムシャムシャとキャベツを食べているところで、やっとモノグラムは通信に気付く。

 

 

『おぉ!? ご苦労、エージェントP! 一応聞くが、そこは異世界だよな?』

 

 

 ペリーは首肯し、到着の無事を伝える。

 

 

『良くやった! と言う事は、異世界を超えての通信が成功したと言う事だな!? いやぁ! これはなかなか凄いぞ! 技術班の給料を渋々上げてやった甲斐があった!!』

 

「………………」

 

『……さて、エージェントP。まずは、こちらの状況を伝えるぞ』

 

 

 モノグラムの隣に、追加の画像が表出した。

 そこに映されていたのは、三つの州の様子だ。

 

 

 街のあちこちに、ペリーのいる世界の怪物がウヨウヨと闊歩している。

 

 

「……!!」

 

『見ての通り、事態はどんどんと深刻な事になっておる。道路を掘り返すわ、水道管を溶かすわ、動物園を占拠するわ、ゴミ袋を突っついて中身を散乱させるわ、街は大混乱だ! 私の家も、アンテナに巣を作られてしまった! これでは見たかったドラマが観れないではないか!』

 

「………………」

 

『……まぁ、ケータイのテレビで観れるが。とにかく憎きドューフェンシュマーツ博士め! このままでは、三つの州の生態系がガラッと変わってしまう! その前に奴を阻止せねば! おのれドゥーフェンシュマーツ博士! さすがにここまではしないだろうと思っていたのに!』

 

「………………」

 

『……あー、とにかく、これでこちらの報告は終わりだ。今、技術班が「ゼロから始まる異世界生活ネーター」を作ってくれている……週休三日制を条件にな……完成次第、我々が助っ人として向かおう。以上だ。幸運を祈る』

 

 

 モノグラムの報告が終了し、ホログラムはブツッと途絶える。

 ペリーは通信を終え、まずは帰る手立てが出来そうな事に安心し、振り返った。

 

 

 

 

「?」

 

「!?!?!?!?」

 

 

 そこにはまだ6歳にも満たない子どもが立っていた。

 つぶらな瞳でジーッと、ペリーを見つめている。

 

 

\ とりさん? /

 

「………………」

 

 

 とりあえずペリーは帽子を取って、ニコッとぎこちなく笑いかけてやる。

 

 なぜか子どもは、キャッキャと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 この時フィニアスらは、インタビューしたリコとレグが明日の夜明けに街を出て行くとは、知らなかった。

 

 彼女らは誘われるように、大穴の底を目指そうとしていたとは。

 

 話した事のない生き別れの母、ライザの軌跡を辿る旅を始めるとは。

 

 

 

 

 しかしまた、リコもレグも知り得なかった事だが。

 

 突然現れた兄弟、フィニアスとファーブ(とペリー)もまた、アビスに入る準備していたとは、予想もしなかった。

 

 彼らは落ちてしまった、装置を探す為に。

 

 

 

 

 

 

 底を目指す者、落とし物を探しに行く者。

 

 目的は似ていて、全く違う。

 

 されど同じ、アビスに魅せられた者として、彼女らは交わってしまう。

 

 

 

 アビスが繋げた旅のはじまりまで、あと数十時間…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、元の世界では。

 

 

「………………」

 

 

 木の上に出来た巣に、キャンディスはいた。

 

 

 

 

 他の雛たちの中心に座り、完全に馴染んでいた。

 

 

「…………なんなのかしら。あたしって」

 

 

 キャンディスは呆然と、そこでジッと留まる。

 

 

 フィニアスらが向かった世界での時間の進みに反し、こちらはまだ十分程度しか時間が経過していない。

 そんな事を知らない彼女はまだ、ここからどうやって、母親に告発してやろうかと思案していた。

 

 

 空を見上げる。

 自分を攫った鳥っぽい生物が群れを作り、揚々と飛び交っていた。

 

 

 

「アァーーーーーーーーッ!?!?!?」

 

「アァーーーーーーーーッ!?!?!?」

 

「アァーーーーーーーーッ!?!?!?」

 

 

 自分の声と瓜二つな悲鳴を吐き散らしながら。

 

 

「……とりあえず誰か、この声だけはやめさせて。キレそう」

 

 

 若干、呆れ顔でキャンディスはぼやく。




トーカの嫁がライザと言うより、ライザの嫁がトーカ
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