魔法少女リリカルなのはー規格外の赤龍帝ー   作:れいとん

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第二話

「どうかな? ここが私たちのお家、機動六課だよ」

私は隣を歩いている一誠くんに話しかける。一誠くんは表情を変えることなく六課を一瞥する。

「特にこれと言って感想はないけど」

そう言ってまた無言になる一誠くん。……はぁ、さっきからずっとこれだ。私がいろいろと話しかけているんだけど一誠くんは一言二言返事して、それ以降会話が続かない。後ろでフェイトちゃんが心配そうに私を見てくる。うぅぅ……、やっぱりこういう時フェイトちゃんのほうが適任なのかなぁ? 私は少しだけ凹みながらとある部屋の前で止まる。私が扉の前に立つとドアが自動で開く。

「失礼します」

「失礼します」

私とそれに続くようにフェイトちゃんが部隊長室に入る。その後に続くように一誠くんも部屋の中に入る。

「高町なのは一等空尉」

「フェイト・T・ハラオウン執務官」

「「任務完了したのでご報告に参りました」」

私とフェイトちゃんはこの部屋にいるはやてちゃんに敬礼する。はやてちゃんは私たちを見て笑顔を浮かべる。

「うん、ご苦労さん。楽にしてええよ。なのはちゃん、その子が報告にあった次元漂流者?」

「はい。話しを聞く限り間違いないかと」

「そか」

一通り私の話しを訊くとはやてちゃんは一誠くんへと顔を向ける。はやてちゃんは一誠くんが怯えないように優しい笑顔で話しかける。

「はじめましてな。私が機動六課の責任者。八神はやてです。わかりやすく言うとここ、機動六課で一番偉い人なんよ」

「初めまして!私はリインフォースⅡ空曹長です!リインって呼んでください!」

「………………たぬき?」

一誠くんが首を捻りながらそう言うと、はやてちゃんの顔が引きつる。……一誠くん、会ってそうそうたぬきって……。

「……えと……、キミのお名前を訊いてもええかな?」

「兵藤一誠」

一誠くんは自分の名前を言う。

「一誠くんって呼んでもええかな?」

「兵藤でも一誠でも好きに呼べばいい」

一誠くんは相変わらず素っ気なく答える。

「それじゃ一誠くん、幾つかお話訊いてもええか?」

「いいよ」

「ありがとな。ほな、まず一つ目の質問や。あの光の柱は一誠くんの仕業?」

「光の柱?」

はやてちゃんが質問すると一誠くんは頭を捻る。はやてちゃんはパネルを操作して画像を見せる。

「これや」

「……ああ、そうだよ。僕がやった」

「これは一誠くんの魔法?」

「ちがうよ」

一誠くんがそう答えると私たちは同時に頭を捻る。あれが魔法じゃないとしたらなんだと言うのだろうか?

「じゃあ、この光の柱はなんなん?」

「ただ単純に魔力を放出しただけ」

「魔力を放出しただけ!?」

この答えに私たちは言葉を失った。確かに魔力を放出して一時的に衝撃を与える技術はある。だけど、あれだけの現象をそれだけで成そうとするとどれだけの魔力が必要なのだろう。少なくとも私たちじゃ不可能だ。

「今度はこっちが質問しても良い?」

「……ええよ」

一誠くんの言葉にいくらか冷静になったはやてちゃんは言いかえす。

「さっき高町なのはが言っていたデバイスって何?」

「一誠くんはデバイスを知らへんの?」

「知らないよ。ってか、デバイスって初めて聞いたし」

「……ええっとな、デバイスいうんは魔法使いが使う杖みたいなもんなんよ」

「ああ、つまりは武器って事か」

「簡単に言うとそうやよ。一誠くんはデバイスは持ってないの?」

「持ってないよ。神器なら持っているけど」

「神器?」

「魔法使いなのに神器も知らないの?」

「うん」

さっきの会話でも出てきた神器。一体何なんだろう?

「神器って言うのは特定の人間に宿る規格外の力のことだよ」

「レアスキルってことかな?」

一誠くんの答えを聞いてフェイトちゃんが聞き返す。

「レアスキル?」

「ええっとね、レアスキルって言うのは特定の人が持っている特殊な力のことだよ。例えば私の魔力変換資質『雷』なんかもレアスキルの一つだよ」

そう言って指先に火花を散らすフェイトちゃん。

「まあ似たようなものかな」

「似たようなもの? レアスキルとは違うの?」

「話しを聞く限りは違うね。神器にはいろんなものが存在するし、なによりそんなちゃっちい代物じゃない」

「その話、詳しく聞かせてもらってもええか?」

はやてちゃんは真剣は表情で一誠くんから神器の話しを聞こうとしている。はやてちゃんだけじゃない私たちも真剣な表情だ。

「いいけど。それで、何が知りたい?」

「その神器ってのが具体的にどないなものか知りたいんや」

「神器ってのは聖書の神が生み出した人間にのみ扱える力だよ」

………………へ? いま一誠くんはなんて言った?

「……ごめん一誠くん、いまなんて言ったの?」

私は思わず一誠くんに訊き返してしまった。

「だから、神器ってのは聖書の神様が創った人間のみに扱える武器ってことだよ」

一誠くんは少しめんどくさそうにそう答える。やっぱり訊き違いじゃなかった。

「あんな、一誠くん。いま神様が創ったって言った?」

「うん」

「…………ええとな、神様は実在しなんやで?」

「……………………はぁ」

はやてちゃんが一誠くんにそう言うと一誠くんはまるで頭の出来が悪い生徒を前にした教師のような表情をし、ため息を出す。

「それはあんたらが知らないだけで神って存在はこの世に存在するんだ。いや……」

一誠くんはそこで一呼吸開け続きを言う。

「世界中にある神話や伝承に出てくる存在ってのは実際に存在するんだよ」

一誠くんはそう言い、私たちを見据えてくる。

「伝説や伝承に出てくる存在? それってどんなのがおるん?」

「それを説明する前に訊くけど、高町なのはと八神はやては日本人だよね?」

一誠くんがいきなりそんなことを聞いてくる。

「そうだよ。私とはやてちゃんは日本人だよ。ここにいるフェイトちゃんも子供のころは日本で暮らしていたし」

「そうか。じゃあ、あんたらキリスト教は知っているな?」

「うん。勿論知っとるよ」

「北欧神話は? ギリシャ神話は? 西遊記は?」

「全部知っとるよ。私こう見えても本をよく読んでたからな」

そう言えばはやてちゃんとは昔、よく一緒に図書館に行ったの。

「その神話に出てくる神々や魔獣なんかが実際に存在するだよ。例えば北欧の主神オーディン、悪神ロキ。魔獣なんかだとフェンリル。ギリシャ神話なら天空神ゼウスに海神ポセイドン、冥府の神ハーデス。西遊記なら闘戦勝仏に帝釈天」

一誠くんがそう言う。普通なら信じられないような話だけど何故かすんなり信じられる。いや、信じるしかない。なぜなら一誠くんは嘘をつく必要がないからだ。それこそ光の柱なんてものを魔力だけで出現させることのできる一誠くんが私たちを警戒するはずもない。

「じゃあ、天使なんかも存在するん!?」

はやてちゃんも驚きのあまりか机から身を乗り出しながら一誠くんに問いかる

「ああ、存在するよ。僕がここに飛ばされる前に次元の狭間であったのは魔王二人魔王クラスが一人に熾天使が二人、堕天使の頭のアザゼルに幹部クラスが一人だったからね」

「魔王? 悪魔も存在するん!?」

「神や天使がいるのに魔王や悪魔がいないわけないじゃん」

一誠くんは何を当たり前のことを言っているんだと言わんばかりの表情ではやてちゃんを見る。

「ともかく、神器に話しを戻すよ?」

「……ああ、ごめんな。それじゃ神器の話しの続きを頼むわ」

興奮していたはやてちゃんも一誠くんのその言葉にいくらか冷静さを取り戻したのだろう。椅子に座り、こめかみ辺りを軽くほぐしながら一誠くんに話しを続けるように促す。

「さっきも言ったけど神器ってのは人間の身が使える規格外の力。聖書の神が残した遺産だ」

「遺産ってどういうこと?」

私は一誠くんの話しを聞いて疑問に思ったことを訊き返す。

「あ~、そこから説明が必要なんだね。まぁ、これを知ったのは僕もついさっきのことだけど」

一誠くんはそう言って頭をぽりぽり掻きながら信じられないようなことを言う

「その昔神や堕天使、悪魔は冥界……つまりは地獄の覇権を巡って三竦みの戦争をしていたんだよ。そしてその戦争の結果、悪魔の王である四大魔王や聖書に記された全知全能、絶対の神様はその時に死んじゃったんだよ」

「えええ!? 神様が死んじゃったの!?」

その話を聞いて愕然とする私たち。それはそうだろう。私たちは神様って存在にあった事はないが、神様って言うのは何でもできるものすごい存在だってことは知っている。それを信じる信じないは別として。

「そうらしいよ。だから僕も聖書の神ってのに会った事はないんだよね」

「でもさっきキミは魔王に会ったって言ってなかった?」

今度はフェイトちゃんが一誠くんに疑問を投げかける。確かに。そう言えば次元の狭間ってところで魔王二人に会ったって言ってたよね。魔王って死んじゃってるんじゃないの?

「ああ、悪魔はその大戦で自分達の王を失った。でもそのままじゃ他の勢力にそのまま滅ぼされる危険性があった。だから悪魔たちは最も力の強い悪魔四名にそれぞれの魔王の名前を名乗らせるようにしたんだ。ってかキミじゃなくて兵藤か一誠のどっちかで呼んでくれない?」

「それじゃ一誠って呼ばせてもらうね。私のことはフェイトでいいよ」

フェイトちゃんは一誠くんのその言葉に顔を綻ばせながら自分の名前を教える。それにしてもなるほど。つまり魔王って言うのは最も強い悪魔のことなんだね。

「ともかく話しを戻すよ。神器にはいろんな種類がある。それがどれだけの種類なのかは僕も知らない」

「そんなにたくさんあるん?」

「うん。僕が知っているだけでも直接攻撃するタイプ。相手を動けなくさせたり、怪我を治癒させるサポート系のタイプ。珍しい物なんかじゃ聖剣や魔剣を創るものなんかがある」

話しを聞く限り相当に数が多い。汎用性でもレアスキルって言うよりオンリーワンの魔法って感じかな? 一誠くんもその神器を持っているのかな? それにしても聖剣や魔剣も存在するんだ。

「一誠くんも持っとるん? 神器」

「持ってるよ。僕のは『神滅具』だけど」

神滅具?

「ロンギヌスってあれか? イエス・キリストを殺したゆう槍の?」

「ああ、まぁ合っているかな。『神滅具』ってのは、数ある神器の中でも十三種類しかないレア中のレア。他の神器なんかとは比べることがおこがましいほどに力を秘めたものだよ」

さっき一誠くんは神器は特定の人間に宿る規格外の力と言った。つまりは普通の神器でも強力なものはあるってことだ。それを含めたすべての神器よりも神滅具ってのは強力なのかな?

「その『神滅具』って、具体的にどないなものなんや?」

「『神滅具』ってのは、極めれば神様でも殺せるって言う神器だよ」

一誠くんの話しを聞いてから何度目かの驚愕。……神様ですら殺せるってどれだけの力なの!?

「一誠くんがもっとる『神滅具』を見せてもらうことはできるか?」

はやてちゃんが額に汗を流しながら一誠くんに訊く。具体的に『神滅具』ってのがどのようなものかわからにけど実物をこの眼で見ておいて損はないだろう。

「いいよ」

そう言って左手を前に出す一誠くん。そして次の瞬間には宝石が埋め込まれた赤い籠手みたいなものが出現した。

「これが僕の『神滅具』。『赤龍帝の籠手』だよ」

「これが……」

皆が食い入る様にその籠手を見る。……綺麗。なぜだかわからないけど私にはそれがどんな宝石や景色よりも綺麗に思えた。

「綺麗……」

私は思わず呟く。それを聞いた瞬間一誠くんがありえないものを見たような表情で私を見る。どうしたんだろう?

「『神滅具』は他にどないな物が存在するん?」

「さあ? あんまり興味がないから知らないんだよね。知っているのは二つだけ『白龍皇の光翼』と『黄昏の聖槍』」

「『白龍皇の光翼』? 『黄昏の聖槍』?」

フェイトちゃんが一誠くんが挙げた神滅具の名前を反復する。

「『白龍皇の光翼』は僕の『赤龍帝の籠手』と反する力を持った『神滅具』で、『黄昏の聖槍』は全ての『神滅具』の元となった『神滅具』だよ。神の子であるイエスを貫いた絶対の槍」

実際に訊いた限りじゃどのくらい凄いのかわからない。けど、神様でさえ殺せるという『神滅具』が強力なものであることはわかった。

「ねえ。一誠が持っている『赤龍帝の籠手』はどんな力があるの?」

フェイトちゃんが一誠くんに質問する。確かに気になる。神様ですら殺せる力ってどんなのなんだろう?

「『赤龍帝の籠手』は十秒ごとに持ち主の力を倍化していく能力だよ。十秒なら二倍。二十秒なら四倍って感じに。たとえどれだけ元の力が弱くても倍化していけばいずれは神や魔王ですら屠れる」

「……なんやそれ。反則もええとこやないか。そんなん下手なロストロギアより強力やんか……」

はやてちゃんが呆然とした様子でそう言う。それもそうだ。それこそ『赤龍帝の籠手』を使えば赤ん坊ですら私たちを超えることができる。あまりにもふざけた代物。そんなものが全てで十三種類。今日一日で私の中に有った常識なんかがいろいろと崩れていくのがわかる。

「でも、これって言うほど便利な力じゃないんだよね」

一誠くんは表情を変えることなくそう言う。便利な力じゃない? これだけ強力なのに?

そんな私たちの内心を察したようで一誠くんは言う。

「だって考えてもみなよ。一回の倍化に十秒も必要なんだよ? 僕だったら十秒の間に最低でも三桁は相手を殺せるね」

……なるほど、確かにそうだ。実際の戦闘で十秒って言うのは結構な時間だ。それこそコンマ何秒って刹那の時間で戦局変わることもある。それなのに十秒も必要と言うのは致命的だ。

「まあ、禁手に至ればそんな弱点もないんだけどね」

「バランス・ブレイカー?」

またよくわからない単語が出てきた。

「そうだな、……いま僕は普通に神器を出している状態なわけだけどこれだけじゃ最低限の力しか使えないんだ」

「最低限?」

「そう。『神滅具』も含める全ての神器に共通して言えることだけどただ発現させた状態じゃ神器ってのは、それほど大した力は無い。だけど禁手に至れば話は別」

「そのバランス・ブレイカーに至ったらどうなるん?」

「禁手って言うのは神器の力を高め、ある領域に至った者が発揮する力の形。基本的には元の力のスケールアップだけど使い手のよっては『化ける』こともある。『世界の均衡を崩す力』とも『禁じられし忌々しき外法』とも呼ばれ、使いようによっては世界を改変できる程の力がある」

「なら一誠くんの、『赤龍帝の籠手』の『禁手』はどんな力なん?」

「僕の禁手は『赤龍帝の鎧』。その力は倍化の力を瞬時に使える。それこそやろうと思えば一瞬で1の力を100にも1000にもできる力だよ」

ただでさえ強力な力を持った『神滅具』が禁手に至るとさらに力を増す。いや、もはやそんな次元の話ではない。もし一誠くんの言う『神滅具』を禁手で操れる人がいたら私たちでも敵わないかもしれない。

「一誠くん。さっき『白龍皇の光翼』は『赤龍帝の籠手』と相反する力があるって言うておったよな? もしかして……」

はやてちゃんが一誠くんに『神滅具』の一つの力を訊く。一誠くんが持つ『赤龍帝の籠手』は倍化する力。それに反する力って……。

「たぶんその推測は合ってるよ。『白龍皇の光翼』は十秒ごとに相手の力を半減させる力だよ。勿論、禁手した状態なら一瞬で相手を半減させまくることができるらしいけどね」

もし100の力を持っていたとしても十秒で50、二十秒で25といった感じに力が減っていくことになる。随分反則な代物だな。たぶん、他の『神滅具』も反則的な力があるのだろう。

「なあ、一誠くん。一つお願いしてもええかな?」

そう言ってはやてちゃんは一誠くんにお願を言う。それを聞いて私もフェイトちゃんも驚愕するのだった。




これ、どこまで続くんですかね?
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