魔法少女リリカルなのはー規格外の赤龍帝ー   作:れいとん

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第三話

……はぁ、何でこんなことになったんだろう。私は今日何度目かわからないため息を出す。

「どうしたんだよなのは。ただあのガキと模擬戦するだけだろ? ……まぁ確かに弱い者いじめみてぇで良い気分じゃないけどな。こっちは四人で相手はガキ一人なんだ。怪我させないように手加減すればいいだけの話だろ?」

ヴィータちゃんが私に話しかけてくる。

「しかし主もなぜこの様なことを申しだしたのか」

シグナムさんが思わずと言った感じで呟いた。それもそうだろう。これから私たちは模擬戦をするのだ。こっちは私とフェイトちゃんとヴィータちゃんとシグナムさん。相手は一誠くん一人。正直負ける気はしない。確かに一誠くんは規格外の魔力を持っているがそれだけなら対処のしようは幾らでもあるのだ。

「まったくはやてちゃんてば……」

私は思わずこの模擬戦を提案した親友を愚痴る。

「まあまあなのは。はやてにも考えがあるんだよ。それに神滅具所有者と戦うのも良い経験になるかもしれないでしょ?」

フェイトちゃんが私を窘めるようにそう言う。まぁ、確かにそうだ。今まで神器を見たこともなかったので、それと戦うのは確かに良いことだ。事前にこうして戦えればいざ神器所有者と戦う時に対処する手段が増える。

「しっかしあのガキのが言ってたことは本当なのかよ」

ヴィータちゃんが画像越しに見える一誠くんを胡散臭そうに見ている。

「やっぱり信じられない?」

「そりゃそうだろ。悪魔に天使。果てには神様までいるって言うんだぞ?普通信じられるわけねぇだろ」

「ああ、だがこの少年の言う神器には少なからず興味がある」

私とヴィータちゃんの会話を聞いていたシグナムさんが自分の意見を言う

「おまえは相変わらずだな。シグナム」

ヴィータちゃんが呆れたようにシグナムさんを見る。シグナムさんはかなりのバトルマニアだからな~。私は思わず苦笑する。

「ともかくやるからには全力全開、本気でがんばろう!」

「おう!」

私が気分を一新してそう言うと皆苦笑しながらデバイスをかまえる。

『みんな準備はええか? それじゃ模擬戦開始!』

 

 

「ねえねえティア! あの子だいじょうぶかな?」

私の相棒であるスバルが私の腕を掴みながら心配そうな表情でモニターを見ている。

「ひっつくな! 暑苦しい! そんこと私にはわからないわよ! ただ八神部隊長が言いだしたことらしいし、何か考えがあるんじゃないの?」

私はひっついてくるスバルを引き離しはながらそう言う。

「大丈夫でしょうかあの子。フェイトさんやなのはさん。ヴィータ副隊長にシグナム副隊長が相手なんて。いくら模擬戦だからってこれはあまりにも……」

エリオも心配そうにその子を見ている。自分より幼い子が自分たちより遥かに強い隊長、副隊長が四人がかりで相手にするというのだからそれも当然だろう。

「さっきからどうしたの? キャロ」

さっきから一言も話さず、モニターも見ずにいるキャロに話しかける。

「さっきからフリードの様子が変なんです」

キャロはそう言って腕にだけ抱えているフリードを心配そうに見る。確かにそうだ。いつもと違ってブルブルと震えている。フリードはモニターに映っている少年を見て酷く怯えているようだ。

「フリードどうしたの? なんかものすごく怯えているけど」

スバルが心配そうにフリードの顔を覗き込む

「さっきあの子を見た瞬間から酷く怯えてて」

「どうしてかしらね? フリードは何か怯える原因を言った?」

キャロは自分が従えている龍と意思疎通ができるので(というよりも召喚士は基本自分の召喚獣と意思疎通できるらしい)、なぜそんなに怯えているのかわかるかもしれない。私がそう言うとキャロは困ったような表情で言う。

「それがわからないんですよ。フリードはあの子を見た瞬間『赤い龍帝』。そう言って震え始めたんです」

赤い龍帝?龍帝ってことは龍の帝王って事よね?あんな小さい子が? キャロみたいな召喚士ってこと?

『模擬戦開始!』

「あ! 始まりますよ」

エリオがそう言い私たちはモニターに注目する。―――そして私はこれから思い知る。いや、思い知らされる。本当の力と言うものを。才能だとかレアスキルとかそんなものじゃどうしようもできないほどの絶対的な力を。

 

 

「もうすぐやな」

私はモニターに映し出されている時間を確認しながら準備を進める。

「シャーリー! 計測の準備はええか?」

「はい!ばっちりですよ」

そう言って笑顔でこちらを見てくるシャーリー。ものすごくたのしそうや。

「たのしそうやな? シャーリー」

「はい! だってこの子ものすごい魔力を持っているんですよ? そんな子のデバイスが作れるかと思うともう楽しみで仕方ないですよ!」

ものすごい笑顔ではしゃぐシャーリー。相変わらずやな。私はそんなシャーリーを見て思わず苦笑してしまう。

「それにしてもよくこんなこと思いつきましたね」

シャーリが作業しながら私に話しかけてくる。

「一誠くんが言っていた神器に興味もあるし、報告にあった光の柱も一誠くんがやった言うんや。正直一誠くんがどのくらい強いかわからへん。今後神器持ちと戦う可能性もゼロやないんやから、ここで隊長陣に経験してもらうこともええことやと思ってな。それにデータも取れるし一石二鳥や」

「なるほど~。それにしてもロマンチックですよね」

「なにがや?」

「この子……一誠くんの話しが本当だとしたら神器っていのは本当の意味で、神様からの贈り物なんですよ? ロマンチックじゃないですか」

シャーリーがそう言うが私はそうとは思えへんかった。確かに訊く限りではシャーリーの言う通りなのかもしれん。だけど、神器を持っているが故にまともな人生おくれへんかった人たちがいると思うんよ。私やなのはちゃん、一誠くんの出身世界である第97管理外世界『地球』は魔法とかそう言ったファンタジーは表立っては存在せえへん。そんなところに異能の力である神器を持った人がいたらどうなるか。よくて迫害、悪くて死刑や。それは昔おこなわれ、今現在でも地域によって残っている魔女狩りが証明している。一誠くんはどうだったのだろうか?神器の中でもさらに強力な神滅具を宿した一誠くんは一体どんな人生だったのだろうか?私はそんなことを考えていると、ふと三十分前、模擬戦を一誠くんに提案した時のことを思い出した。

 

 

「なあ、一誠くん。一つお願いしてもええかな?」

「なに?」

私が一誠くんにそう言うと一誠くんは特に表情を変えずに訊き返してくる。

「あんな、一つ模擬戦をしてもらいたいんよ」

「模擬戦?」

「そう、ここにいるなのはちゃんとフェイトちゃん。それとヘリで一緒にいたシグナムとヴィータとな」

「あの桃髪と赤髪のチビ?」

「そう。桃髪の方がシグナムで赤髪の方がヴィータや。この四人はこの六課でもトップクラスの実力者なんよ。一誠くんが教えてくれた神器を私らは知らんかったし、今回の模擬戦で少しでも対神器戦を経験できればもし、神器持ちと戦うときに取れる手段が増えるやん? だから模擬戦をしてもらいたいんよ」

私がそう言うと一誠くんが嗤った。

「別にいいよ。ただ、アンタらが僕に『赤龍帝の籠手』を使わせられるほど強かったらね」

そう言う一誠くんの笑みを見て私の背筋になにか冷たいものが走る。……なんなんや? いまの……

ともかく私は笑顔のまま一誠くんに話しの続きを言う

「そこ等辺は大丈夫や。さっきも言ったけどなのはちゃんたちは六課でもトップクラスの実力者やからね。それじゃ、模擬戦はこれから三十分後でええか?」

「いいよ」

「それじゃ三十分後に訓練場に集合な。っあ! 訓練場がわからへんかったら、なのはちゃんかフェイトちゃんに訊いてな」

「うん、そうするよ。それじゃ何処か休めるところに案内してよ」

「わかった。こっちだよ」

一誠くんはフェイトちゃんに案内に先導されながらこの部屋を出る。

「……それでなのはちゃん。模擬戦を提案してみたけどどう思う?」

「いきなりのことで驚いてるよ。それと模擬戦のことだけどたぶん私たちが勝つよ」

私がなのはちゃんに訊くと、なのはちゃんは勝てると断言する。

「それはどうしてや?」

「一誠くんが幾ら強い魔力を持っていてもそれだけなら対応の仕方は幾らでもあるしね。それにあの年齢くらいなら魔力の制御がちゃんとできてるかどうかって年頃だし。正直弱い者いじめにしか思えないよ」

そう言ってこっちをジト眼で見てくるなのはちゃん。私は苦笑しながらなのはちゃんに退室するように言う。

『フェイトちゃん。あんな、一つお願いがあるんやけど』

『どうしたの? はやて』

『一誠くんの住居とか聞いといてほしいんよ。模擬戦中にでも、調べとこ思ってな』

『そっか、わかった。聞いとくね。模擬戦が始まる前に報告すればいい?』

『うん。それくらいでええよ。よろしくな』

私はそう言ってフェイトちゃんとの念話を切る。

「さて、なのはちゃんは勝てるゆうてたけどどないやろ? 正直、そこらへんはわからんと、私は思うんよ」

私はそうひとりごとを呟きながら背もたれに体を預ける。……それにしても、さっきの悪寒は一体何やったんやろ?

 

 

『模擬戦開始!』

はやてちゃんのその言葉で模擬戦は始まった。私たちは特に動かずその場にとどまる。

「どーするよ、なのは。このままあのガキが突っ込んでくるのを待つか?」

「う~ん、あんまり危ないことをさせたくないから四人である程度固まって移動して、一誠くんが見つかったら、見つけた人と一対一をして怪我無く撃墜させるってのはどう?」

「ああ、それでいいな。フェイトにシグナムは他に案はあるか?」

「特にないな」

「私も」

私たちの意見が一致してさあ、行こうと動き出そうとした瞬間―――。

「なんだ。さっさと動き出さないと思ったら作戦会議? 普通そういうのって始まる前に済ませとくものじゃないの?」

後ろから声が聞こえてきた。私たちは慌てて振り返る。そこにはつまらなそうにしている一誠くんがいた。

いつのまに!? 私たちは驚きのあまり反射的にデバイスを構える。

「いつのまに!?」

フェイトちゃんは私たちが思っていることを声に出していた。

「いつのまにって……今だけど?」

相変わらず無表情のまま一誠くんはそう言う。

「レイジングハート。一誠くんが近づいて来たの気づいた?」

『No, I had not notice at all(いいえ、まったく気がつきませんでした)』

私は自分の相棒であるレイジングハートに訊くがまったく気がつかなかったという。まさか……、

「短距離瞬間移動?」

いや、それだとおかしい。私たちはお互いの位置こそ知らなかったが、距離は結構離れていた。短距離瞬間移動を繰り返したとしてもここにいることはできない。それに、たとえ短距離瞬間移動だったとしてもそれならレイジングハートたちが気づくはずだ。

「ああ、転移とか瞬間移動とかじゃなくてただ単に移動しただけだよ」

そんな私たちの困惑が伝わったのだろう。一誠くんがどうしてここにいるのか簡単に説明してくれる。

「―――っ!!?」

その言葉にフェイトちゃんは愕然とした表情になる。それもそうだろう。フェイトちゃんはスピード重視の近・中距離を得意とする魔導師だ。そのスピードは速く、管理局全体で見ても三指に入るほどだ。いや、もしかしたら一番早いかもしれない。そんなフェイトちゃんの速度ですら嘲笑うほどのスピードで私たちの後ろを取ったと言うのだから、その驚きようもものすごいだろう。私たちですら驚きを隠せないのだから。

「ふむ、これはなかなか……」

シグナムさんは苦笑いをしながらレヴァンティンを構える

「それで? 最初は誰がくるわけ? ……ああ、別に四人いっぺんにきてくれてもいいけど?」

私たちのことを、微塵も警戒せずにそう言う。

「なら最初は私が行こう」

最初に名乗り出たのはシグナムさんだ。

「私はヴォルケンリッター烈火の将、剣の騎士シグナムだ。おまえは」

「兵藤一誠」

「兵藤か、いい名前だ。……おまえは強い。もしかしたら怪我をさせるかもしれないがこの身の未熟を許してくれるか?」

「キミ如きが僕を傷つけることができたらね」

一誠くんのその言葉を聞いて苦笑するシグナムさん。

「では、行くぞ!」

そう言ってものすごいスピードで一誠くんに切りかかるシグナムさん。

(さあ、どうする? テスタロッサを凌駕するその速度で回避するか? 防御魔法を使って防ぐか? それとも神器とやらを使って受け止めるか?)

シグナムさんの斬撃を一誠くんは受け止める。人差し指一本で(・・・・・・・)

「なっ!?」

あまりの出来事に私たちは驚愕する。シグナムさんの攻撃を指一本で受け止めるなんて私たちでも不可能だ。

「この程度?」

一誠くんは少しガッカリした表情でそう言う。シグナムさんは一誠くんから距離を置き、構える。

「まさか私の攻撃を指一本で受け止めるとはな。……レヴァンティン!」

『Explosion!』

ガシャン!

レヴァンティンからカートリッジが排出される。

「紫電一閃!」

カートリッジを使い魔力を高めた魔力付与斬撃を一誠くん目掛けて振り下ろす。

ドォン!

攻撃の余波で辺りに爆煙が包み込む。これは少しやりすぎじゃないだろうか? 一誠くんだいじょうぶかな? 私は煙で姿が見えない一誠くんの心配をする。

少ししてから煙が晴れる。一誠くんは無事だった。シグナムさんの紫電一閃を受け止めていたのだ。人差し指と中指の二本だけで。

「白刃取り」

私は思わずつぶやく。確かに刀や剣を素手でつかむ技術は存在するがシグナムさんの紫電一閃でそれができる人なんて管理局どころか次元世界全てを見渡してもいないだろう。そんなむちゃくちゃなことを目の前にいる少年はやってのけたのだ。それを見て私たちの背筋にうすら寒いものが奔る。

「―――う、うおおおぉぉぉぉぉぉぉおお!!」

シグナムさんが気合と共にレヴァンティンを振るおうとするがピクリとも動かない

「ああ、もういいよ」

ドン!

衝撃が空気を震わせた。一誠くんがシグナムさんを攻撃した音だ。攻撃はいたって単純で一誠くんは空いてる手をシグナムさんのお腹辺りに当て、魔力で衝撃を与えたのだ。シグナムさんは音もなく崩れ、下に堕ちる。

「シグナム!? ……てっめぇぇぇぇぇ!」

ヴィータちゃんがシグナムさんが落とされたことに驚愕し、その瞳を怒りに染める。ヴィータちゃんは一誠くんとの距離を詰め、グラーフアイゼンを一誠くんに叩きつけるが、一誠くんはそれを片手で受け止める。

「アイゼン!」

『Explosion!』

ガシャン!ガシャン!

空になったカートリッジが二発排出され、アイゼンの形が変わる。

「ラケーテン・ハンマー!」

ヴィータちゃんはさらに力を込めるが一誠くんは表情一つ変えずに片手で受け止めている。

「こんっのおおぉぉぉぉ!! おとなしくぶっ叩かれやがれ!!」

ヴィータちゃんがそう怒鳴るが一誠くんはほんの少しだけガッカリしたような表情になる。

「口先だけかよ? チビガキ」

そう言って一誠くんはアイゼンを握り潰す。ヴィータちゃんは振り下ろした体勢のままその顔に驚愕を張りつかせる。

「はい、二人目」

ドオン!

ヴィータちゃんの体を純粋魔力による砲撃が貫く。ヴィータちゃんもシグナムさんと同じく落とされる。

(どうしようなのは? シグナムやヴィータをこんな短時間で落とすなんて私たちでも不可能だ。速度でも私よりも遥かに速いし、防御もヴィータの攻撃を片手で受け止めていたことから相当固い。今の私たちじゃ決め手がない)

(たしかにそうだね。でもまったく手がないわけじゃないよ)

(どうするの?)

(フェイトちゃんが速度を活かして一誠くんの動きをほんの少しだけ止めて。その隙に私が砲撃で落とす!)

(まさか集束砲撃? また無茶するつもり? これはあくまで模擬戦なんだよ?)

(確かにそうだけど他に手がないよ。それに大丈夫。昔と違ってそれほど反動はないから)

(はぁ、まったく、なのはったら……。わかった、でも無茶しないでよ?)

(フェイトちゃんこそ無理しないでね?)

私がそう言うとフェイトちゃんはソニックフォームで一誠くんに切りかかる。

一誠くんはシグナムさんの攻撃を防いだ時と同じように指一本で防ぐ。フェイトちゃんは素早くバルディッシュを引き、また切りかかる。防ぐ、切りかかる。私の目じゃ追いきれない速度で切りかかるフェイトちゃんの攻撃を、一誠くんは苦もなく指一本で防ぎ続ける。

「レイジングハート!」

『load Cartridge!』

ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

「ディバイン・バスター!」

カートリッジを四つ消費した私のディバインバスターが一誠くん目掛けて放たれる。フェイトちゃんはそれを確認してその場を離れる。一誠くんは私の放ったディバインバスターを確認し、右腕を前に出す。そしてディバインバスターを弾く。

「そんな!?」

私は驚愕のあまり驚きの声を上げる。自信のあった砲撃を弾かれたこともそうだが弾かれた方法に私は驚愕し、恐怖した。一誠くんは砲撃に対しデコピンをし、それだけで砲撃は軌道を変え、遥か空の彼方へと消えていったのだ。

(なのは!)

フェイトちゃんが念話で私に話しかけてくる。

(大丈夫。フェイトちゃんはもう一回かく乱をお願い。今度はブレイカ―を一誠くんに叩きこむ!)

(わかった)

「バルディッシュ!」

『Yes sir』

ガシャン!ガシャン!

「ハーケン・セイバー!」

フェイトちゃんはカートリッジを使用し、作った魔力刀を一誠くんに放つ。一誠くんはそれを指二本で掴む。

「これ、返す」

そう言ってそのままハーケンセイバーを投げ返す一誠くん。フェイトちゃんはそれをバルディッシュの柄で受け止め、そのままいなす。

「レイジングハート。いくよ!」

『Yes My Master Starlight Breaker!』

「全力全開! スターライト……」

私がブレイカ―の準備をしている間にフェイトちゃんが落とされる。どうやって落とされたか私の目じゃわからなかった。フェイトちゃんが切りかかったらいきなり意識を失い、堕ちたようにしか見えなかった。

「ブレイカ―!!」

私の持つ最強の魔法が一誠くん目掛けて放たれる!集束砲撃(ブレイカ―)は辺りにある魔力を集めて放つ魔法技術だ。空気中に含まれる魔力は勿論。近くにいる人たちが使用し、散った魔力をも集めるのでその威力は絶大だ。

―――勝った!

私がそう確信した時信じられない光景が目に入りこんでくる。

ガガガガガガッ!

一誠くんは右手一本でブレイカ―を防いでいた。

「へぇ。周囲の魔力をかき集めて放っているのか。中々に面白い技だね」

そう言ってスターライトブレイカ―を握り潰す。

―――そんな……。

私は絶望する。私はスターライトブレイカ―に自信を持っていた。これは私とレイジングハートが考えだした知恵と戦術、最後の切り札だ。今までどんな相手でもブレイカ―を使えば勝てた。それなのに……。

「もしかして、今のが、なのはの最強魔法ってわけ?」

一誠くんが私の方を見てそう言ってくる。だが、私はなにも答えられない。いや、声をだす元気もないのだ。私の中にあった自信が無くなっていくのがわかる。確かに私たちにはリミッタ―がついているがそれが無かったとしても勝てたとは思えない。しかも一誠くんは手加減をしているのだ。それもかなり。一誠くんは神器を使用していないし、フェイトちゃんみたいに私たちを速度でかく乱したりもしない。ただただ純粋な力で私たちを倒しているのだ。

「じゃあ、今度はこっちの番かな」

そう言って右腕を天へ伸ばす。そしてその手の平から強大な魔力の塊が生み出される。かなりの魔力が迸っているその塊は、燃え盛る太陽が地上に出現したようだった。

「あっ……」

死んだ。私はそう思う。一誠くんが作りだした魔力の塊は感じ取れるだけでさっきのブレイカ―の三倍以上はある。こんな物たとえ全力のプロテクションで、防ごうとしても一秒と耐えられない。私に一誠くんの攻撃を防ぐ手段はない。

『そこまでや! 模擬戦は終了! 勝者は一誠くんや!』

突然はやてちゃんの声が聞こえてくる。一誠くんはその言葉を聞き、作りだしていた魔力を霧散させる。

「なんだ。やっぱり神器を使うまでもなかったじゃん。ここでトップクラスの実力者とか言っていたけど、大して強くないし」

そう不満そうに呟く一誠くん。はやてちゃんは目つきを鋭くして一誠くんに話しかける。

『さっき私が止めなきゃ、なのはちゃんを殺す気やったんか?』

「諦めた表情をしていたから別に当てる気はなかったよ」

『諦めていなかったら、あれを放ったんか?』

「諦めていなきゃなにか対抗策があるってことでしょ? だったら問題ないじゃん」

『はぁ。ともかく模擬戦は終了。あとで話したい事が幾つかあるから私の部屋に来てな』

「わかった」

そう言って二人は会話を終える。

一誠くんは私を一瞥すると興味を無くしたようにその場をあとにする。




三話目です。

ちなみにストックは次が最後です。
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