いまなうって言うと年寄り扱いされると知って、時間の経過は早いものだと思いました。
「一誠くん、この子らが六課前線メンバー。フォアードの四人やよ。右から順に……」
はやてちゃんが一誠くんにフォアードメンバーを紹介しようとするとそれより速くスバルたちが敬礼する。
「機動六課スターズ4ティアナ・ランスター二等陸士です!」
「同じくスターズ3スバル・ナカジマ二等陸士です!」
「同じくライトニング3エリオ・モンディアル三等陸士です!」
「同じくライトニング4キャロ・ル・ルシエ三等陸士です」
そう自己紹介するティアナ達、その表情には緊張がある。それもそうか、今のティアナたちじゃ私たちにも及ばないのに、そんな私たちを簡単に倒した少年が目の前にいるのだ。緊張して当然か。……あれ、どうしたんだろう? キャロといつも一緒にいるフリードが一緒にいない? そう思ってよく見ると、フリードはキャロの背中に隠れて怯えていた。
「この子は私の家族で名前はフリードリヒ。フリードって呼んであげてください」
キャロが一誠くんにフリードの紹介をするが一誠くんはまるで聞こえていないかのようにフリードを見る。
「キャロ、なんでこんなにフリードは怯えているの?」
フェイトちゃんがそう訊くとキャロは困ったような表情をしてフリードを抱きかかえる。
「フリードが……えっと、一誠くん?を見た瞬間『赤い龍帝』って言っていきなり怯え始めたんですよ」
キャロがそう言うと私たちは思わず顔を見合わせる。それって一誠くんの神器に封印されているドラゴンに気がついたってこと? 同じドラゴン同士だからわかるのかな?
「ふ~ん。随分弱いな、このドラゴン。幼生のスプライトドラゴンより少し強いくらいかな?」
一誠くんが突然そう言う。
「きゅる~」
フリードはさっきから一誠くんに見られて、とても居心地が悪そうだ。というよりもものすごく怯えていて、可哀想に思えてくる。
「取って食べたりしないよ」
そう言ってフリードの頭を撫でる一誠くん。
その表情は相変わらず無表情だけど、どこか優しさが含まれているような気がした。
「きゅく~♪」
撫でられているフリードは気持ちよさそうにしている。そして、キャロの手から離れ、一誠くんの頭の上に乗る。
「だ、だめだよ。フリード……」
キャロが怯えながらそう言うがフリードは一誠くんの頭の上で機嫌よさそうにしている。
「あ、あの……すみません」
そう言って頭を深く下げるキャロ。
「別に気にする程の事じゃないと思うけど?」
一誠くんがそう言うとキャロはもう一度頭を下げる。
「ありがとうございます」
キャロがそう笑顔で言うと一誠くんがぽかんとした表情をする。
「どうしました?」
「いや、別に」
キャロにそう訊かれ、一誠くんの表情がまた無表情になる。
「えっと、一誠くんって呼んでもいいかな?」
スバルがしゃがみ、一誠くんと同じ視線でそう訊く。
「兵藤でも一誠でも好きに呼んでくれればいいよ」
一誠くんがそう言うとスバルは笑顔になる。
「ねえねえ! 一誠くんは何歳なの?」
「歳? ……確かもうすぐで七歳の筈だけど?」
やっぱりそのくらいなんだ。
「一誠くんはどうやってあそこまで強くなったの?」
スバルが興味津々といった表情でそう訊く。一誠くんは少し考えてから口を開く。
「基礎を固めた上で実践を繰り返すことくらいかな。正直さっきのお遊びみたいな戦いじゃ得る物はなにもないし」
一誠くんのその言葉でまた落ち込んでしまう。一誠くんからしたらあの模擬戦は遊んでいるのと変わらないらしい。みればフェイトちゃんたちも微妙な表情をしている。
見ればスバルたちが微妙な表情をしている。
「どんなに強力な魔法でも、基礎ができてない奴に使いこなせるわけないでしょう? 強くなりたいんならみっちりと基礎を固めたほうが早いよ? ある程度基礎を固めてから使える魔法なんて増やしていけばいいんだし」
一誠くんの言うことは正しい。
どんな簡単な魔法だろうと、基礎がしっかりとしている者とそうでない者とでは、雲泥の差が生まれる。
一誠くんは続けて言う。
「それか、実戦で殺し合いでもしまくることだね。人間だって動物だ。本能を刺激されるような状況になれば強くなれるかもよ?」
「それって、一歩間違えれば自分たちも死ぬじゃない!」
ティアナがそう一誠くんに言い返す。
私たちとしても、ティアナたちにそんな危険な事はさせたくない。
しかし一誠くんは、そんなティアナに冷静に言い返す。
「別に良いんじゃない? どんなに強くなろうが死ぬときは死ぬんだ。英雄なんて呼ばれる人間や神様、強大な力を持つドラゴンであろうと死ぬときはあっさりと死ぬ」
それこそ嵐に巻き込まれた虫けらのようにね。
そう無表情に言い切る一誠くんを見て、私やフェイトちゃん達は背筋に嫌な汗が流れるのを止められなかった。
あまりにも……あまりにも違いすぎる。
私たちと一誠くんの生きてきた世界が。
それは今まで無数の『死』を見てきたからこその台詞なのだとわかってしまう。
◆
「ここ?」
「うん、急だったから部屋を用意できなくてね。しばらくは私とフェイトちゃんと同じ部屋で我慢してね?」
部屋を用意するにあたって一誠くんは一人部屋が良いと言ってきたが、まだまだ子供な一誠くんを一人にするのは不安なので、私とフェイトちゃんと同じ部屋で過ごしてもらうことになった。
「あっそ、お休み」
一誠くんは睡魔に勝てなかったのか、興味なさそうに相槌を打ったあと、フラフラとベッドに潜り込む。
すぐに眠ったのか、小さい寝息が聞こえてくる。
「ふふ、こういうところはただの子供だね」
フェイトちゃんは笑を浮かべながら一誠くんの頭を撫でる。
「……うん」
私は寝巻きに着替えながら頷く。
一誠くんは出鱈目だ。
それでも、子供であることに変わりはない。
「……もう寝よっか」
フェイトちゃんは下着姿でベッドに入りながら、私にそう言う。
「うん、お休み」
「お休み」
私とフェイトちゃんの真ん中で寝ている一誠くんを抱きしめながら、私は眠りについた。
◆
次の日、早朝。
僕は昨日の訓練場近くに居る。
目の前に広がる水面と水平線を見ながら。
「…………」
『どうするつもりだ? 相棒』
暇そうに頬付きをしながらぼーっとしている僕に、ドライグが話しかけてくる。
「どうしよっか?」
『俺に聞き返すな。この世界に居ようが、元の世界へ戻ろうが、相棒の好きなようにすればいいさ』
うーん、どうしようかな。
まったく未知の世界っていうのも面白そうではあるんだけど……正直、元の世界よりつまらなさそうだし……。
なのはたちがこの世界でどれくらい強いのかわからないけれど、あの時の表情を見る限り、自分たちの実力にかなりの自信があったのだろう。あんなに弱いのに。
魔力を制限しているようだけど、例え抑えていなくともなのはたちの実力は上級悪魔クラスになるかどうかくらいだろう。はっきり言って雑魚だ。
ああ、つまらない。いっそのこと……
「ぷちっと、潰しちゃおうかなぁ……」
本当につまらない。
この世界はまるで砂で出来たお城だ。
ほんの少し触れただけで、ほんの少し力を加えるだけで崩れ去る、脆くて脆弱な箱庭。
あれだけ楽しみにしていたオーフィスとグレートレッドも雑魚だった。
つまらない、つまらないつまらないつまらないッ!!
僕が力を制御するのにどれだけ頑張ったか、僕がどれだけ楽しみにしていたか。
それなのに……それなのにっ……、
「ああ……ほんと……」
つまらない。
僕が心の中でそうつぶやいた瞬間、誰かがふわっと、まるで包み込むように後ろから僕を抱きしめた。
◆
朝、いつもより早く起きた私は六課の周りを散歩していた。
早朝なこともあったか、清んだ空気が肺を満たすのが心地よい。
ふと見ると、防波堤の上に子供が退屈そうに座っていた。
一誠だった。
ぼーっと海面を眺めるその瞳は、何処か寂しさと苛立ちを含んでいた。
「ああ……ほんと……」
一誠がそうポツリと呟いた瞬間、私は彼を抱きしめていた。
本能的に、あのままでは駄目だと思った。
多分それは、昔の私にどこか似ていたから……。
◆
いきなり抱きしめられ、後ろを見ると綺麗な金色が視界に入った。
「なんの用?」
僕はフェイトにそう問いかける。
すると、フェイトはどこか困ったような表情をしながら答える。
「用があるわけじゃないんだけど……なんとなく」
「何となくで人に抱きつくんだ。フェイトってもしかして、変態?」
「変態じゃないよ!?」
がーん! と擬音がつきそうな勢いでショックを受けるフェイト。
そんな見た目よりも幼くて、何処までも純粋な表情を見せるフェイトが可笑しくて。
だからなのだろうか?
「あはは、変なの」
僕が思わず笑ってしまったのは。
◆
「フェイトってもしかして、変態?」
「変態じゃないよ!?」
変態と言われて、私は反射的に拒否する。
確かに小さな子供とか好きだけど、別にそれは変な意味ではない。
ただ単に、昔の私みたいな子供が居ることが許せない。
だから、私はエリオとキャロを保護した。
だから、さっき、思わず一誠を抱きしめていた。
そこには決して邪な感情は存在しない!
……しないんだけど……、流石に七歳の子供に『変態』と言われるのは結構ショックだ。
もしかして、エリオとキャロも声に出さないだけで、私のことをそう思っていたのかな?
一度そう考え始めると、余計に落ち込んでしまう。
そんな私をおかしく思ったのだろう。
「あはは、変なの」
そう言って、一誠は可笑しそうに笑った。
初めて純粋な笑顔を浮かべた彼が、私には何故か『天使』に見えた。
◆
なぜかぽかーんと、僕の顔を見ていたフェイトは突然嬉しそうに微笑んだ。
「どうしたの?」
僕がそう訊くと、フェイトは変わらず嬉しそうに微笑みながら、
「初めて笑ってくれたね」
そう優しく呟いた。
なにがそんなに嬉しいのだろうか?
そんな僕の心情を察したように、フェイトは言う。
「今までずうっと無表情だったからね。そんな一誠の笑顔が見れたから嬉しくなっちゃって」
そう言って、本当に自分の事のように嬉しそうに笑う。
そんな、何処までも純粋で、何処までも綺麗な笑顔を浮かべる彼女が、僕には本当の『女神さま』に見えた。
◆
「ふふ、やっぱりフェイトって変だね」
そう言ってさっきと同じように可笑しそうに笑う一誠。
変という言葉に、私は少しだけショックを受けるけど、面白そうに笑う一誠の笑顔を見たら、それでも構わないかなと思えてしまう。
「僕、部屋にもどるね」
そう言って立ち上がった一誠は、私に背を向けて歩き出す。
「道分かる? 一緒に行こうか?」
「だいじょーぶ!」
どこかしら呆れの含まれた返事をしながら、一誠は隊舎の方へと歩いて行った。
やっぱり心配になり、一誠を追いかけようとした私に、バルディッシュが話しかけてくる。
『sir』
「どうしたの? バルディッシュ」
そう質問する私に、バルディッシュは時刻を目の前に表示する。
「いけない、遅刻!?」
私は慌てて走り出す。
こうして今日も一日が始まる。
◆
「ふふふ♪」
『随分ご機嫌じゃないか、相棒』
さっきから笑が止まらない僕にドライグが話しかけてくる。
「うん!」
何故だかわからないけど、僕は何か満たされているのを感じる。
それが何かは分からないけど、胸がぽかぽかしてとても気分が良い。
「あはは♪」
普段は気にしない周囲の光景も、今は全てが輝いて見えた。
今までくすんでいた物が、ものすごく色鮮やかでキラキラしている。
この世界に飛ばされた時はつまらなく感じたけど、今はそんなことない。
とても胸がドキドキしてワクワクが止まらない。
そんな、抑えきれない感情を抱きながら、一日は始まった。
俺の中のゴーストが囁いたんだ、オネショタでもいいじゃないかと(`・ω・´)
(まぁ、どこまで書くかは不明ですけど)