戦闘が始まってから3日が経過した。
レイリーとの戦いは長期戦に持ち込まれ、シャボンディ諸島でサバイバル戦のような極度の緊張感に襲われていた。最初の1日は一定の距離を維持しながら戦闘していたが、2日目からレイリーの気配が
見聞色の覇気。
最初に存在感を出し、その後直ぐに見聞色に意識を切り替え姿を消したのだろう。レイリーは原作の中で屈指の覇気使いだ。いくら多々良が覇気の扱いに
レイリーの狙いは何だろうか。
突如の出来事で反応が遅れたものの、直ぐに振り返り臨戦態勢を極限まで引き上げることができた。だが、瞬きをした瞬間に気配が忽然と絶たれ、今まで追いかけて来た多々良を意識する影が空気に同化するように消えたのだ。最初は奇襲を仕掛けるためだと思っていたのだが、今日で3日目。既に襲ってくる気配がなく、ついつい気が緩んでくる。だが、多々良は頑張って踏ん張った。これが向こうの狙いかもしれないから。相手が
そして、多々良がするのはシンプルに耐えること。
街中に行って優雅にコーヒーを飲むのも悪くなかったのだが、海軍のエリアを刺激していたため、本部から中将以上が来ると予想していた。シャボンディ諸島在住の将官連中は取るに足らない存在であったため、来る可能性が高い。多々良はそれらの懸念があるため、街中に降りず臨戦状態のまま、ヤルキマングローブの上で潜伏している。それに解いた場合、直ぐに復帰できる自信がない。レイリーとの戦闘で極度に高まった反応力、反射力を持続したいのが多々良の本音だ。休んでリラックスしたいという気持ちはあるが、それは後のご褒美にとっておこう。
「そろそろ、動かないとな」
シャッキー’s ぼったくりBAR
「それであの子はどうだったの?」
物珍しいそうに見る女性、シャクヤク。カウンター席に座る男の顔をマジマジと見ながら訊いてみる。
「凄まじいの一言だな」
酒の入ったグラスをグイッとあおりながら、淡々と口にするレイリー。右眼の下と顎の右付近に2つの銃弾の跡がライン上に刻まれていた。
「そう。やっぱり、あの子も覇王色持っていたの?」
「ああ。そこそこ使えるようだ。それよりも武装色の覇気は厄介だ。あそこまで銃弾に乗せてくるとは」
「ふーん、それは凄いわね。でも多々良ちゃんはこれから大変な。レイさんと戦えると知られた今、海軍に狙われるわ」
「わははは。それは大丈夫だろう。多々良くんは色々と修羅場を通って来ている。なら、生半可な相手に遅れは取らないだろう」
「そう。あの子が元気にやってくれるならそれでいいわ」
煙草をプファ〜と吐きながら明後日の方向を向く、シャクヤク。彼女には多々良の未来が見えているのだろうか。続いて、意外なことを口にする。
「でも、多々良ちゃんは何でもなれるから少し危険ね」
「うん?どう言う意味かね?」
「敵にもなれるし、味方にもなれるってこと」
「すまない。私に分かるように言ってくれ」
「言葉が足りなかったわ。多々良ちゃんの経歴に未だ謎が多いことはこの際抜きにして、あの子は仲間殺しをするおそれあるかもってこと。ゼロ番隊だったことも考慮すれば、ニューゲートの考えも次第に分かってくる」
「多々良くんが?それはないと思うが。本人と戦った私としての感想だが、多々良くんの覇気は迷いがない。覚悟を決めたかのような鋭い覇気。野心があれば、覇気の中に蟠りが残る。それがない彼に万が一はないと思うぞ」
「それならいいのだけど。ただ心配なのは人を殺す味を覚えている点かしら。白ひげ海賊団を降りた後も多くの人を殺しているわ」
「それは彼がピースメインだからだろ。殺した相手も新世界で名を轟かす海賊と聞く。それなら問題はあるまい」
シャクヤクの心配をよそにレイリーはそれはないと言い切る。レイリーは多々良本人との戦闘を通じて、忘れていたものを思い出すきっかけをくれた。純粋に覇気を交え真剣勝負する多々良の姿勢が、どこガープやロジャーを思わせる不思議な感覚で、相棒やライバルになりそうな、そんなオーラを感じたのだ。決して仲間を裏切ることはないと考えている。
「そうかもね。私の考えすぎかしら」
シャクヤクはどこ引っかかりを覚える。レイリーの悪い癖を思いながら。レイリーの悪い点は覇気で人を判断する所だ。全てではないが、大方見聞色で見ている。確かにこの海において覇気やその姿勢は重要だろう。だが、人の心を読む真似は消してできない。見聞色で読み取れるかもしれないが、それはその者の本質ではなく、今現在の状態に過ぎない。レイリーが見ているのはその者の経歴と性格、覇気から導き出される憶測を考察したもの。レイリーが見ているものは断片であり全てを表してはいない。
「そうだとも。多々良くんがこれから何をするかはわからないが、悪事に手を染めることはないと思うぞ」
「既にに懸賞金付いているわよ」
多々良の手配書に指差しながら、呆れた口調で言う。
「一般市民にだ。多々良くんはそこらの海賊じゃない」
「それは分かっているわよ。ただ少し心配なだけよ」
「ああ、分かった。私の方でも出来る限り見ておく」
「ありがとうね」
「ああ」
話し合いが一区切りついたのか、互いに酒を煽る。レイリーはニヤつき、シャクヤクは彼に溜め息を吐いた。その後、シャクヤクは店の仕事、レイリー近くにおいてあった新聞を広げ、各々と自分の時間に取り掛かる。普段の日常を取り戻した『シャッキー’s ぼったくりBAR』は平和である。
「それでレイさん、多々良ちゃんにどのようにして勝ったのかしら?」
「いや、まだ決着ついてないが」
「じゃあ、引き分けに終わったの?」
「いや、私はここに戻って来ただけだが」
「多々良ちゃんはそれを知っているの?」
「いや、知らないが」
「じゃあノコノコと1人帰って来たということでいいのね?」
目が笑っていない。だんだんと目が漆黒へと変化を遂げる。
「……ああ」
うむうむと首肯するレイリー。
「多々良ちゃんは今もなお戦っているということ?」
「そうだと思う……っあ!」
レイリーが認めると空気が変わる。圧力はないが次第に冷んやりとした空気が流れ始める。覇気は込められてはいないが、冷徹な瞳がレイリーを覗き込む。
「じゃあ、1人多々良ちゃんは見えない敵に怯えながら、戦っていて。その敵はのうのうと目の前で酒を飲んで楽しんでいる」
淡々と口にする。嫌な予感を覚えたのかレイリーは嫌な汗を掻き、そろーり、そろーり、この場を後にしようと店のドアへと見聞色を使いながら逃げ出そうとする。しかし――
「何逃げようとしているの?」
――ガッチリと腕を握られてしまった。手から逃れようと力を入れるが、シャクヤクの腕はビクともしない。
「ダ・メ・よ♡」
悪い笑みを浮かべながら。レイリーの腕を掴み、バックヤードのある店の奥へと連れ込む。覇気は使われてはおらず、素でこれだから、たまったものではない。
「シャッキー。私が悪かった。多々良くんにも謝る。だから、その手を離してくれ」
だが、聞く耳を持たない。いや、持とうしてない。いい獲物を見つけたかのような笑みをし、官能的なそれはどこにもない。
「ウガァァアアア!!!」
その日、レイリーは悪魔を見た。
bebeちゃん様 ありがとうございます。