狙撃手・多々良   作:おべ

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多々良vsレイリーvsガープ(中編)

 

 

 

 

 

 

 

 

――バキューン!

 

 

 

 2人の顔を血に扮した銃弾が掠め取るように静かに刻んだ。綺麗に裂かれたそこから新鮮な血が溢れ出し、レイリーは傷の角度から銃弾の軌跡を追い、多々良の存在を射抜き。ガープも帆に手を当て痛そうにしながらも、隣人のやる視線を追い、その先にいる1つの笑みを浮かべた影を視認する。

 

 

 

「あれが多々良か?」

 

 

 

「ああ。綾小路・多々良。狙撃手だ」

 

 

 

 多々良と分かり、ガープの瞳は獲物を伺うような猛攻な物となり、その実力を推し量ろうと見聞色の覇気を展開する。レイリーはやはり来たな、という表情を浮かべ、ついでに探す手間が省けたと内心ホッとしていた。覇気と覇気の衝突で気づき、気になったため見に来たのであろう。

 

 

 

「外野も増えたわい」

 

 

 

「ああ。あんたの部下もおるぞ」

 

 

 

 ガープは、視線は多々良を捉えつつも、意識の半分はその周り、外野に向けられていた。周りには先程の衝撃波を受け、その場から逃げる者と入れ替わるようにして政府関係者や海軍、海賊、賞金稼ぎが集まって来た。中には覇気使いが混ざっており、練度は高くないが戦い慣れていることが伺える。

 

 

 

「私とガープ、多々良の三つ巴。世界政府はどのように対応するので?」

 

 

 

「わしは知らん。だが、見過ごすとは思えん。レイリーは兎も角、多々良は何かしら理由をつけて、接触するに違いないわい。ブワッハッハッハッ!」

 

 

 

 2人は面倒ごとに巻き込まれていることに内心気づいていながらも、その場の雰囲気で現実逃避する。今のターゲットは多々良なのだから、自分達に被害は少ないと思っているから。しかし、それでもヒヤヒヤしており、暫しの間、隠居先として使えないという点はレイリーにとって不運なものとさせており、一方のガープは直接の被害こそないが、センゴクの髪の毛が大変なことになるのは明確だ。

 

 

 

「来るぞ」

 

 

 

 レイリーの一言でガープも再度意識を多々良へ向ける。

 

 

 

――パーン!パーン!パーン!

 

 

 

 連続で撃ち出される豆鉄砲。小さい鉄の塊が黒いオーラと共に2人目掛けて突っ込んで来る。先端はドリルの如く鋭く尖り、ジャイロ回転したそれは武装色の覇気を纏って空気を貫通する。来た道を振り返れば摩擦で焼けたチリが螺旋状に作り出している。

 

 

 

――キィィィイイン!!

 

 

 

――ダァァァン!

 

 

 

 交わしたり覇気で相殺する2人。ガープはぶん殴るように上から叩き堕とし、レイリーは軌跡に沿うようにその漆黒の銃弾を切断する。

 

 

 

――ギァギィィィィン!

 

 

 

 覇気が覇気を斬る。レイリーの輝く劔は鞭のようにしなり、ワイヤーでも通ったかのように切断面は鋭く、刃がいつ通過したのか分からないほど、目で追うことは困難を究める。手首を巧みに操りその鋭く覇気を纏った得物が、まるで身体の一部のように錯覚する。それほどに使い慣れ使いこなし、改めてその伎倆がこのひと時で浮き彫りとなった。

 

 

 

――パーン!パーン!パーン!

 

 

 

 ポップコーンが永遠に弾く、終わりの見えないその漆黒は紐でも付いているのか、吸い込まれるように2人を捉える。誘導して来るのではなく、そこで避けきれないと分かっているかのような未来を見通す弾丸。避けることは問題ないが、いく先々にその漆黒が狙い通りに飛んで来ることに違和感を思い出す。

 

 

 

「これは何じゃ!?」

 

 

 

 不思議な感覚。優位性は圧倒的に2人で負けることはないと言えるが、まるで自分達が踊らされている感覚に苦いものを感じる。掌の上で転がされているような、誘導とはまた違う、正体不明な何かに操られる。

 

 

 

「いや、待て」

 

 

 

 流れ作業のような熱意を感じない狙撃。

 ガープやレイリーを1つのターゲットとしてしか認識されていないことにガープは顎に手を当て、考え出す。

 

 

 

「気を抜かな」

 

 

 

 レイリーは唐突に多々良の意図する行動について考え出す、海軍の英雄に声をかける。ここは戦場。生きるか死ぬかの鬩ぎ合い。手を止めることは許されない。のうのう役目を放棄するガープに少しイラッとしながら、注意する。

 

 

 

「悪い悪い。じゃが、彼奴の銃弾。迷いがない」

 

 

 

「ふ、嘘だな」

 

 

 

「何がじゃ?」

 

 

 

「迷いがないのは確か。だが、貴様が言いたいのは別」

 

 

 

 ガープは多々良の攻撃に勘づき始める。多々良はこちらに狙いを定めている。意識している。だが、殺意を感じない。殺しに来ているのに本来の観念から外れた所に多々良がいるかのような錯覚。それに勝り2人を読むように銃弾が放たれるのは少々不自然。故に多々良は狙いを定めるだけで、撃てる可能性があり、殺意がなくても人を殺すことができるかもしれない。根拠はないが、多々良の行動を見る限り、楽観的ではあるがそう結論づける。

 

 

 

「読んだか?」

 

 

 

「いや、私も同じことを考えていた」

 

 

 

 レイリーもガープ同様に多々良の不思議さに眉をひそめる。覇気を纏った銃弾は天晴れ。意識を集中させ日々の積み重ねがあってこその伎倆(ぎりょう)であろう。だが、射撃能力1つで述べるならば、少し然りが残る。2日前に戦った時は殺気があり完全に狙われていたため気づくことはできなかったが、今の狙撃で何か妙なものを感じ取れた。集中力。覇気を込める段階までは良いが、その後の狙いを定める時に一瞬だが気が緩んだように見える。距離は離れており細かい仕草までは分からないが、敵に向けるその視線としては及第点に届かない。故に多々良は何かしらの能力者であるのが濃厚だろう。

 

 

 

「能力者か…」

 

 

 

「わしには判断がつかん。だが、選択肢としてはよかろう」

 

 

 

 ガープも同じく悪魔の実を疑う。

 ここは偉大なる航路(グランドライン)。狙撃の名手になれるような悪魔の実があってもおかしくない。だが、これは多々良が能力者という思考ロックによる憶測にすぎない。仮にあの行動が演技であるならばガープにとっても、レイリーにとってもお手上げ。しかしながら、その線は薄い。悪魔の実でなくても何かしらの秘密はあるとだろうと結論づく。

 

 

 

「ネチネチ考えても仕方ないのう。まずは多々良を倒してからじゃわい」

 

 

 

「それもそうだな。まずはケリをつけなければ」

 

 

 

 ガープとレイリーは多々良を見据える。多々良がどんな秘密を抱えてあろうとも今の戦闘において無関係。勝つためにも今は切り替えることが先決。

 

 

 

「――来るな…」

 

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 ガープとレイリーが見るその先。

 そこには先程よりも強大な濃密な覇気がこちらを覗き込む。幾千の時が流れるような歪みを照らす、胡蝶(こちょう)に満ちた南天(なんてん)は攻撃的な殺気を放つ。多々良を包み込み、その不可思議なオーラと覇王色の覇気が混ざり合う。喧嘩はすれど多々良に支配されるその光景は一種の独裁者で上手い具合に自分の覇気をコントロールしていることが遠く離れたここからでも良く分かる。そして混ざり会ったそれは銃弾サイズに凝縮され、覇気によってコーティングされた『雷管式36口径・多々良』に1発装填し、こちらに狙いを定める。

 

 

 

「なるほどな。これは見過ごせん」

 

 

 

「あぁ。やはり、多々良くんのあれは自らの伎倆なのだろうか」

 

 

 

多々良のことを少し疑いながらも彼が放つ覇気とそれをコントロールするために費やして来た時間は本物であると、感じさせられた。四方八方に察せられた濃密な覇気はこちらを串刺しするように一点に集中している。生半可なものではなく、目で人を殺すことができるような、蛇の瞳を浮かべている。

 

 

 

「止めるぞ」

 

 

 

「あぁ」

 

 

 

 レイリーとガープは協力するため一時的に手を組むことにする。野猫のように鋭く次第に麻痺を感じさせる弾丸。あれを止めなければ被害は甚大。ガープは楽しむため、レイリーは隠居先を潰されないため、目的は違えど今この現時点において、あらゆることに備え、無事に終わることを思いながら、撃つその瞬間を得物を構えながら待つ。

 

 

 

 

 

 

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