灯火が親しみ
「あれは凄いのぉ」
「あぁ。あれを受け止める自身がない」
そう呟くのはガープとレイリー。ヤルキマングローブから見下ろしている多々良の姿を眺め、その内に秘める、いや外に漏れだす覇気の流れを見て笑みをこぼす。
「武装色の覇気。あそこまで極めているとなると、ゼファーを超すかの?」
「それは分からないが、狙撃手に長けた覇気使いではトップに君臨するだろう」
その漆黒の覇気を眺め、元海軍大将であるゼファーを連想する。ガープ同様に悪魔の実を食べていない非能力者であるものの、海軍屈指の覇気使いで、強靱な肉体も駆使して戦う。主に武装色の覇気を得意としており、多々良と似ている点が多く見られる。
「来て正解じゃわい。センゴクに自慢しちゃお」
「ま、止めはしないが、お手柔らかにな」
ニヤリと笑みをこぼし、帰った後に今日の体験を自慢する自分を思い浮かべる。それにレイリーは苦い顔を浮かべ、頭に血がのぼるセンゴクの姿を容易に想像できた。
「レイリーも分かるだろ。あの覇気」
「あぁ。ワノ国の覇気に近い」
2人は多々良が扱う覇気はどちらかというとワノ国の流桜に近いと推測した。覇気というものは基本的に全世界共通であるが、一部の地域によってその志しは大きく変化していく。
「流桜。その本質は殺さないこと。血に染まるのはけじめの時だけ」
「無駄な
「じゃが、近年になって流桜は覇気と同じものとして扱われておる」
「半分正解だがな。だが、覇気は元々流桜から広まった説がある。鵜呑みにすることもあるまい」
流桜。
覇気と何の変哲も無いがそれに対する見方は別物。覇気は能力者対策のため、自分が強くなるためと主に戦力として捉えた考え。逆に流桜は自らの腕前を証明するために、自らの潔白を晴らすために、侍としての覚悟を持つために、個人を重点に置いた考え方。趣きは似ている部分が多いが、戦闘において積極的に扱うか、それとも己に鎖をかけ使わないかと、心情に対する考え方に食い違いが生じる。侍は野蛮とされているが仁義は弁える。流桜を使うにしても相手を選び、無駄な殺生は好まない。
「覇気の原点か。世界政府はこれを否定しているつもりじゃが、態々鎖国国家に言及する必要はないわい」
鼻をほじくりながらも真面目に話すガープ。彼も以前世界政府の呼び出しの時ワノ国の内情について知ることができた。海軍の英雄ということもあってか、面子を保つたまにガープに一枚噛ませたのだろう。五老星もそれだけに必死なのだ。
「まぁそれも今やめちゃくちゃじゃがな」
「ロジャーか」
爆弾。
それも圧縮した。
多々良の扱う濃密な武装色の覇気を極限まで上げ、巨大に膨れ上がったそれを弾丸レベルまで圧縮する。水分が抜けたジュースのようで不必要な覇気は削り落とされている。弾丸もその圧力に負けないために武装色の覇気でコーティングされている。弾丸の覇気とそれをグルグル巻きに覆う巨大な武装色の覇気が互いに喧嘩するため、暫し放置すると暴走を起こしコントロール不可の暴れ馬へと化す。手綱が切れたら最後、多々良本人にも被害が及ぶ。
――ピュゥゥゥゥゥ!ピュンンンン!
しかしながらその暴走は多々良の狙いでもある。多々良の転生特典は〈オートエイム〉。敵に自動的にヘッドラインを合わせることができるため、反動が大きいこの銃弾でも何も問題なく的に命中する。エイム力を必要としないため、銃は構え狙いを決めるだけに留めることができ、その分覇気の集中に回せる。多々良の武装色は爆弾。些細な理由で爆発する可能性があるため、毎回気が抜けない。そのため〈オートエイム〉は必要不可欠な存在であり、いつも重宝している。
「レイリーとガープ。この一撃でオレの限界が分かる」
標的は英雄のガープ、海賊王の右腕のレイリー。自らの限界を知る上で相応しい敵であろう。2日前レイリーと戦ったが〈梅重〉を放ったのちにガス欠となり、レイリーと距離を保ちながら追跡から流れていると、レイリーの気配を逃してしまった。覇気を使いすぎ見聞色がうまくできなかったと思い、多々良は自分が負けたのだと痛感した。
「今日は撃つ!」
〈梅重〉より更に上。
〈梅重〉は多々良にとって最高傑作であるが、多々良に禁忌に触れる必殺技が存在する。当然リスクがあり、1発放てば覇気はかなりの期間使えなくなってしまうほど。一度に膨大な覇気を使用するため、普段回らしている覇気も全て技に変容する。身体全体に流れる覇気、いや流桜を銃を支える両手に回し、それを通じで弾丸にも供給される。
「あまりやる気はないけど」
多々良も多々良でこの技は好きではない。燃費が悪いどうこうの問題ではなく、単に体への悪影響を及ぼすからだ。一時的にとはいえ生きるためのエネルギーを身体の外へと追いやる。そのため、身体を構成するための器官に多大なる負担を保つかけてしまう。生命維持する上で重要となる心臓や脳、脊髄にダメージが入るため極力使いたくないのが多々良の本音。
「まずは撃つのみ」
リスクについて考えても前には進まないため、一度蚊帳の外へと追い払う。どんな挑戦であれリスクなしでは達成は困難。多少のリスクはつきものと割り切らなければ、多々良の考える理想には近づかない。今回の戦闘で改善策を見つけ、それに対応する方法模索できれば良いのだから。
「これで最後」
この1発を放てば多々良にとって大きなビジョンを持つことができるだろう。多々良は転生者。せっかく、ONE PIECEの世界にやって来たのだから、自由奔放に生きたいのは当たり前。転生特典に恵まれ、覇気も習得した。今、多々良がやっていないとすれば、それはこの世界を謳歌すること。海賊王ゴールド・ロジャーのように自由に生きたいのは、男のロマン。それ故に多々良は景気付けにレイリーやガープに一泡吹かせて、気分良く自分が思い描く未来に向けて突き進みたい。
――カチ
引き金を引く。漆黒の斑点が蒼く伸び、身体のありとあらゆるオーラが銃口へ一直線。血を絞り出し、多々良が貧血になりかけ意識が朦朧となりながらも、身体が捕食されるようにストローの如く吸い尽くされる。
「うっぅぅ」
死へのカウトダウン。一時的とはいえ身体の全てを奪われた多々良。それだけにこの技の負担は大きく今後二度と使いたくないと、意識が飛ぶ寸前、思ったりする。
――ダダダダッ!
『雷管式36口径・多々良』が悲鳴をあげる。通常とは異なる異常な量の覇気。爆発的に高まったそのエネルギーは武装色でコーティングされているとはいえ、耐えられるものではなく、次第に
――シュゥゥゥ
発車直前の前触れ。圧力が最大値まで高まり、あとはその弾丸を押し出すのみ。
――さぁ始めよう。
――新たな世界を。
――多々良の野望へ。
『
多々良は心の中で呟く。
『ボォォォオオオオオ…ガガガァァァガガガァァァアアアアアンンンン!!!!!』
轟音の弾丸は多々良の野望と共に2人の伝説へと運ばれる。
終わらなかった(悲)
早くシャボンディ諸島から出たい!
いつまでいるんだ!?
この気持ちを一句。
遣らずの雨。まるで私を帰さないような感覚。