ワノ国・兎丼
「さて、着いたのは良いが、これからどうするか」
ワノ国の兎丼にある浜辺に流れ着いた多々良。服はびしょ濡れで寒そうにする。愛銃である『雷管式36口径・多々良』は濡れながらも破損している部分はなく無事でいた。
「雨か」
雨の雫がポツリポツリと降り続ける。空は厚い黒い雲に覆われており、お日様からの日差しが伺えない。時より落雷があり、ゴゴゴゴ――と言う轟音が空気に振動して鳴り響く。兎丼を覆い隠そうとする黒い雲は何かを案ずるかのように静かさをもたらせ、落雷の音を響きらせながらも、どんよりとした空気が、この土地を濁らせるように重く冷たい。
「これは」
兎丼が燃えていた。
暫し海岸から歩き、木々を抜けた先に見えたのは崩れ堕ちた城の跡であった。激しく燃えたのだろうか、黒い変色した柱は炭と化し、砂のように脆い。城の下に広がる城下町も同じようように崩れ去り一部では更地と化している。所々にクレーターがあり、この地で激しい戦闘があったことが一目瞭然だった。辺りからは鉄のようなこびりつい血の匂いが充満し、目を凝らして覗くと、崩壊した家の隙間から骨が剥き出しとなった人間の死体がちらほらと見受けられる。赤子だろうか。大人の腕に抱えながら守られるように亡くなっている。状況から察するに予兆がなく突然襲撃があったのだろう。時間からして夜。夜襲による襲撃は生存率が大幅に下がるためそこを狙われた。
「生きている奴がいるな」
辺りの散乱する木の瓦礫を避けながら進んで行く。少し行く見聞色の覇気で1人の生命反応が確認できた。瓦礫の下敷きとなっていたため慎重にそれを退けて行くとそこには、1人の小娘が膝を曲げ丸くなるように意識を失っていた。浅葱色の髪の毛の小さな小娘。黄緑色に南天模様の刺繍が入った着物を着ており、子供用の小さな木の下駄を履いている。目元には涙を浮かべ、極度の緊張で疲弊しきっていた。体に傷は見受けられないものの、心には大きな傷が付いていることだろう。
「え、これオレが拾うんか!?」
その状況に遭遇した多々良はこの小娘の処遇ついてどうするか悩む。偶々居合わせたとはいえ、見捨てると言う選択肢は何とも後味が悪い。
「助けるか」
普段の多々良ならば殺してなかったことにするのだが、今回は手を差し伸べることにする。別に子供は嫌いなわけではないのだが、子供の世話をしたことのない多々良にとって苦労する自分は想像に
「何!?」
こびりつい汚れてをはたき落とそうと、小娘を起こし上げた時違和感を感じた。腰に手を当て支えようとした時反射的に彼女は多々良の腕を払うように叩いたのだ。これだけなら嫌がる子供なのだが、多々良が驚いたのはそれではない。
「覇気か」
覇気。
黒く変色してないため武装色の硬化は使用されていないが、それに準ずる身体能力の底上げはされていた。無意識なのかは分からないが、おそらく生まれながらの才能だと推測する。ここはワノ国だ。男は武道を。女は武芸を。偏見という意味ではないが基本的に女性は武道よりも武芸を選ぶ。理由は単純。力勝負では圧倒的に女性の方が弱いからだ。これは身体による特徴も大きいが、1番影響してくるのは体力。確かに鍛えればその差を埋めることができるかもしれない。しかし、その分男性も鍛えている。体力があるというアドバンテージは変わらない。そのため武芸を選ぶ傾向の高い女性が覇気を身につけている点は不自然。故に、この小娘は才能ないし、訳ありの可能性があるものの覇気を使えるという事実は覆られない。
「面倒だが、オレが育てることにするか」
身寄りがないと思い小娘を抱き抱える。面倒事に関わってしまったなと少し頭をかきながらも、この小娘を見捨てるという選択肢はなかった。不慣れとはいえ、これが自分にとっての運命なだと思い連れ帰る。道中崩れ去った城の跡から一つの汚れを被っているが意思を感じさせる小太刀を拾い、戦利品として持ち帰る。これが名刀であると知らずに。
兎丼・2日目
「おでんの処刑か」
すっかり忘れていたなと思い、囚われているであろう光月おでんの顔を拝みに、花の都へと足を進める。当初の予定ではさっさと花の都へ行き、情報収集とカイドウ達の接触に精を出すのだったが、小娘というイレギュラーにより、到着が遅れる見込みだ。小娘のことで頭から抜けていたというのもあるが、今は向かうことが先決。過去のことは追い払うように足を進めて行く。ちなみに昨日拾った小娘はというと――
「早く行かないと遅れやすよ!」
元気にはしゃぎ回る小娘。瓦礫の塵や埃で汚れた髪の毛は綺麗に洗われ、清流の清らな浅葱が際立つ。服は昨日の黄緑色の南天模様が入った着物と違い、近くで拝借してきた、
「お腹が空きやした!」
小娘は食べ盛り。少し進むと空腹だと訴え食べ物をねだってくる。お腹を抑え空いていることをアピールし、やらないと涙目を浮かべ、拗ねりいじけ始める。
「分かった。早いがお昼としよう」
多々良とて意地悪ではない。腹が減ったのであれば食えばいいし、眠くなれば身体を横にする。海賊である多々良にとって自由に生きる小娘はどこか守ってやりたいと思っている。
「ほら、急がせるな」
それに、覇気としての資質が充分に備わっている。損得感情なのかもしれないが、様々の要点をクリアしたからこそ、多々良はこの小娘を連れている。
「今日は稲荷寿司だ」
「やったやす!」
無邪気な笑みを浮かべ多々良の下へ走って来る。
「手を洗って来い」
「分かったやす!」
そう言うと近くにある川へバタバタと本当にワノ国の女なのかと疑いたくなる、汚い走り方で向かっていた。大きな着物の裾はいつの間にかに
「洗って来たやす」
バーっと両手を広げ見せびらかす。早いなと思いながらも手には濡れた跡があり、嘘をついた表情を浮かべていなかったため、懐から昨日仕込んだ稲荷寿司を取り出す。別に多少誤魔化しても怒りはしない。
「わー!美味そうやす!」
稲荷寿司。
兎丼から拝借して来た油あげと寝かしてあった出し汁で調理した。だし汁に砂糖と醤油を入れ、味を整え、ふっくらと茹でた油揚げの中に、米酢に砂糖、塩を混ぜ込んだ酢飯を投入。隠し味に練り辛子を入れ、だしの風味を最大限に活かした稲荷寿司である。
「美味いやす!」
パクパクと口へ運んで行く。美味い美味いと連呼しながら、果たしない食べ方で頬張る。口周りには米粒がついていたため、多々良は手を伸ばしつまんで自分の口に運んだ。そして、多々良はこの時、ロリコンに目覚めた(嘘)。
「作った甲斐がある」
これは本音だ。
元々多々良は料理が得意でちょくちょく1人で作り食べることはあれど、それを他人にあげたことは一度もない。そのため初めて自分の料理が褒められたことに嬉しかった。
「わ、何をするですか!?」
唐突に多々良は小娘の腰に手を回し、両手で支えながら、タカイタカーイ――と空高く小娘を天に送るように高く持ち上げる。慌てふためくも、それに満更でもない様子を見せる小娘は次第にこの状況に対応し喜んだ。
「お前はオレの娘だ」
「やったやす!」
またまた突然の娘宣言。
親馬鹿と化した多々良は完全に小娘にベタ惚れであり、小娘を一から育てることに決める。当初はそんな予定はなかったのだが、小娘の無邪気な表情を見ていくうちに多々良の心は見惚れていった。次第に小娘のことが好きになり親子関係へと発展する。所詮多々良は男。連続殺人を犯している者とはいえ、愛には勝てないのだろう。それに、ニューゲートだって似たようなことをしている。多々良もそれと同じだと自分のロリコンを棚に上げて思ったりする。
「暫しの間、オレと来い」
「はいやす!」
抱っこしていた小娘をおもむろに下ろし、目を合わせながら呟く。それに応えるように小娘は満面の笑みを浮かべ両手を大きく広がる。
「じゃあ、これから宜しくな。黒炭」
「宜しくやす!お父上」
多々良と黒炭の新たな物語が始まる。
パートナー欲しい気分だったので、ロリコン設定をぶち込みました。原作では兎丼の深い森ですが作者の都合で城下町や城も巻き込まれた設定にしています。
作者、気分でこの2次創作を書いているため当初とかなり展開が違ってます。面白くない場合、ご遠慮なくご指摘ください。未だアンチ・ヘイト系の話は登場してませんが、未来のビジョンにおいて必ず投稿する予定です。現に嫌いなキャラは殺すんで。
次回は花の都かな?作者も分かってない。