――ゴゴゴゴ
海が唸り、雲が唸り、大気が唸る。
ありとあらゆるものが命が宿ったかのように暴れ出し、次第にその力が自らの身体を蝕むかのように、脳天からつま先にかけて、電流に似た戦慄が走り抜ける。
――ゴゴゴゴ
空気が揺れる。空気と空気がぶつかり
――ゴゴゴゴ
――ゴゴゴゴ
渦を巻く雲は遠雷の潮鳴りを境に、次第に加速し、ぼんやりに光輝く2つの玉が、雲が薄れると共にその姿を現す。
「ウオロロロロロロロロ!!!!!!キング…テメェ…探したぞ!!!!!」
光輝くそれは蒼く蒼く桔梗じみた鋼鉄より硬い鱗を持つ青龍の眼球であった。頭部からは龍を象徴させる音叉の形をした角に、オーズのような鋭く巨大な角、『北』の形をしたその鋭く角が敵を威嚇するように、聳え立つ。
「…」
頭を上げ、見上げることしかできないキング。その表情は青ざめ仮面越しに強張り揺れ動く瞳は、視点が定まらない。クイーンの次の犠牲者はキングであると理解し、空飛ぶ蜥蜴を見て、悪態のついた苦いものが口全体に広がるように拡散する。
――カイドウ
陸海空生きとし生ける全てのもの達の中で
「オロチの野郎!ふざけた真似を!」
カイドウが叫び散らす。オロチと何かあったのだろうか。言葉には怒りが芽生え、烈火の如く噴火した殺気は近くにいる、キングと多々良、茶々良を直撃する。茶々良はその衝撃に虚しく糸が切れた人形のように倒れこみ、青ざめていたキングは一種ふらっと足がすくんだ感覚に襲いる。だが、耐える者が1人。殺気は受けても一切動揺することなく、青龍を睨みつけ、その姿を脳天に焼きつく。
「ウォロロロロロロ!!!クソが!」
鰐のような凶暴な白いノコギリを生やせた鋭い口を大きく開き、その中心に光の塊を高温で押し潰したかのような青白い光を放つ。圧縮され甲高い悲鳴をあげる眩ゆい光の影は、光の粒子が連鎖的に反応する爆発を起こす。その後、限界までに膨れ上がった光の粒子は無差別に撃ち放たれた。
「ゴガァァァァァンンンン!!!!」
多々良が乗船している船をギリギリ躱すかのように、すぐ真横を鬱憤の塊が通過した。轟音と共に海が割れ、高く上がった波がこの船を襲い始める。転覆はしないものの、舵をとることが難しく、空高く浮かび続けるカイドウの真下へと船が流れ始める。
――
「ウォロロロロロロ!!!!死ねやぁ!!!」
再度口の中に光の塊と化した火の玉を集中させ、ブレスを放つ準備に取り掛かる。その様子に危機感を感じ始めたのか、背中に背負っている風呂敷から雷管式の銃を取り出し、その銃口を青龍の姿を借りているカイドウに向ける。
「避けんじゃねえぞ!キング!」
真新しい光の結晶が勢いよく噴出する。先程よりも青みがかり、結晶がキラキラと輝く幻想的な光景を齎らす。威力が上がり、熱伝導率の高まった、
――バキューン!
多々良が引き金を引く。武装色と覇王色の覇気を纏った弾丸はカイドウの放った
――ドカァァァアアアンンン!!!
〈
今回放った〈梅重〉はほんの少し別物もの。通常力や破壊力はそのままにジャイロ回転によって得た気体に含まれる生命エネルギーを一気に吸い付き強奪できるというもの。覇気とは生命の源と呼ばれる身体エネルギーのこと。だが、生命エネルギーとは全てが覇気に使われるものではない。悪魔の実でも強力な技は技能や経験の他に使用者の潜在エネルギーで威力が決まってくる。そのため、今カイドウが放ったそのブレスは身体エネルギーの塊。つまりその場で一気にそのエネルギーを得ることで、その弾丸は自己的に覇気に変換し威力が増幅される。
――ビューーーーン!
そのブレスを力に変え、血の如く紅色した弾丸はカイドウの頭部めがけて空を駆け抜ける。空気の流れの変化に動揺せず、落ちることすら知らない覇王色を纏った紅模様の弾丸はただ真っ直ぐ、空気を掻っ攫う飄々じみた音を立てながら、その敷かれたレールを進むように突っ込んで行く。流れに身を任せ、弾丸の運命に重んじる漆黒は、一刻一刻と回転数を上げながら、加速し、その額に触れる。
――ギィィィギギィィィンンンン!!!!!
覇気と覇気の衝突。いや――覇王色の衝突。
カイドウの額と血の如く蠢き出す紅の弾丸は互いに覇王色を放ち、赤黒い衝撃波を生み出した。四方八方に広がるそれは海が波立ち、空気が小刻みに震動する。そして――天が割れる。以前の多々良ならばそこまで天候に影響を及ばないないが、ここ数年でメキメキと成長し、干渉できるまで至る。しかしながら、それは王と王による人の上に立つことが選ばれた、王の資質に拮抗し合うほどの戦力を持ち合わせた同士の衝突により生み出されるもので、意思を違えし、この海から降り、己を疑ってしまう者はこの荒業をしでかす権利はそもそもないに等しい。
「ウォロロロロロロ!!!やるな!
カイドウはかなり酔っ払っている。今戦っている目の前の敵が多々良ではなく、キングに見えているようでその強さに賞賛するように、楽しげに怒鳴り散らす。仲間を殺そうしていることはこの際置いといて、カイドウは多々良相手に余裕の表情を浮かべる。
――ゴォォォォオオオオ!!!!
大気が揺れ出す。波は静寂を取り戻し穏やかな夜を幻想するが、大気は轟音に飲み込まれ、重くのしかかる低音の連鎖がこの場にいる者に混乱を与えて行く。空は先程の黒く厚い雲と打って変わって、平穏な夜景色だが、カイドウと多々良が対峙するこの空間だけ異様に重く、冷や汗をかく。空気の分子が超高速的に震動し合うことにより、空気が温まり、次第に喉が音を鳴らし始める。表面にこびれつく水滴はやがて消え、喉がじわじわの悲鳴をあげる。
「おい!キングもう少し付き合え!」
カイドウの戦闘はまだ続きそうだ。
スマホから投稿しているため間違いがあるかも。