日が沈み出す黄金色をした夕暮れ時から続く『龍』と『銃』による殺し合い。主導権はカイドウが握りつつも、どちらが上とかは無く、互いに繰り広げる攻撃で牽制し合う。牽制とはいえやる全てに殺気が含まれており、周辺にいた魚達は怯えて遠くへ逃げて行く。船の甲板にいるキングと茶々良は後ろへ後退し2人の怪物の矛先を見守る。
「ウォロロロロロロ!!!」
蛇のように長い胴体がクネクネと雲と雲の間を縫うように移動し始めた。長い髭は相変わらず泳ぐように
多々良は引き金に手をかける。金属の臭みを感じ安心しながら銃口を青龍へ向ける。長い間共にした相棒と何か感慨深いものを感じながらも、今の敵に集中する。
覇気を込める。鉄紺から漆黒のへと変貌し弾丸の1つ1つにもジュワジュワと転移する。濃密な殺気が込められたそれは意志を持ち、人を殺すための道具ではなく、人を殺し
人は死んでも魂は滅ばない。意志とは永遠に生き続けるもので、自ら手放すことのできない、命令できる権限も持ち合わさない、苦渋の痛みを堪え凌ぎ魂が滅ぶその日まで地獄を味わうことになる。だが、虚しいもので魂とは生きることを諦めることが大半で次の未来に賭けることなく、心を閉ざす。
しかし、道具と呼ばれて来た無機物は違う。形は違えどその物が持つ由来は変えられない。何かしらの化学反応でも起こさない限りのその魂は不滅であり、生きるための根源を自らの手で手放すという愚かな選択肢は皆無。人間とは大きく異なり、今世がためなら来世に賭ける。
魂の意志は無機物ほど強く、有機物ほど弱い。
魂は死なない。だが、諦めることはできる。死ぬという結果ではなくとも、現実からは逃げられる。
逃げたいなら
魂の叫び。
意志持つことを約束された魂たちが津波が押し遣るように連鎖反応を起こす。漆黒のどんよりとした、
死。
それも、魂の死。まるで操られる人形で意思決定権を持たない只のガラクタ。洗脳され、その漆黒の命令に、ただただ、『はい』と返すことのできない、死を望まされている、一歩手前。そんな哀れな思考に身を削がれた無機物は何を感ずることすらできなく、虚しさ――空しさが心の内で込み上げるだけの一種の得体の知れないものへと、道を外れてしまった放蕩人へと姿を変える。
〈
武装色の真髄。武装色を殺し、また武装色を生み出す。そこに眠るとされる魂を叫びと共に抹消し、そこからエネルギーを生み出す。意志を持ち合わせて魂を殺し、己の武装色を極限まで暴走させる。覇気とは意志の力。身体エネルギーの根源とも呼ばれている意志は、その者の生命線であり、それを失えば生きるための希望もそこで途絶えることであろう。
多々良の禁忌。
〈梅重〉よりも強力とされているこの技は1発放つに膨大な覇気を必要とし、使用するならば身体に甚大な被害が及ぶ危険な技。だが、この技には1つ秘密が隠されている。
魂の叫びを力に。
禁忌に触れる大きな理由の正体。この技には弾丸という魂を犠牲にしている。弾丸という名の金属の塊。そこに眠る1つ1つの意志を持つ魂を技に変容する事で、この技が運用することを可能としている。リスクとはこのことだ。その者がどのような『生』をして来たのかは知る由も無いが、意志を無視して自分の都合が良いように使うことは、明らかに人の理念から外れた存在と
決して、蚊帳の外に追い払ってはいけない。
これは他人でも、自分でもない、考え方の問題だ。魂
引き金に手をかけ、青龍に標準を合わせる。この動作に無意味と分かっているとはいえ、構えくらいやらなければ様にならないであろう。目がけるはカイドウの頭部。多々良は引き金を引いた。
「ウォロロロロロロ!!!」
刻一刻と時間が進む。
大きく蛇のような胴体をおもむろに動かす。クネクネと身体を上下左右に空気を蹴り上げるように上昇し行く。今は夕暮れが終わり、星が見え始めた夜。日中の熱気が終わり夜の肌寒さを感じされる冷たい風が陸から海へと吹き荒れる。海風と呼ばれる夜の訪れを意味するささやかな音色が、波の音と共に辺りに響く、そして溶け込むように消えて行く。
雲を突き抜ける。近くにあった何の変哲のない、ただただ浮かぶ小さな雲。雲を抜けると星が沢山。隠れていた星が顔を覗かせそれが地平線の先まで伸びている。
下へ視線を落とす。
海の上に浮かぶ1つの船。
そこには部下であるキングがカイドウを見上げる形で伺っていることがよく見える。どこ青ざめており怯えた表情を浮かべ、目が踊っているように見えたが気のせいだろう。
「うん?」
キングが2人?
「んな馬鹿な」
カイドウは酔いが覚めた。
今まで戦っていた者がキングではないことに要約理解した。何故今まで疑問に思わなかったのか。カイドウと互角に戦闘を繰り広げる者はこの百獣海賊団、ワノ国にはいないというのに。カイドウは思う。おれは馬鹿だなと。
強い。
こちらを見据える銃を構えた男の表情を見てそう思う。自分は強者に分類されるし、自分が世界最強であることも疑っていない。だが、己が最強であることに自惚れてはいない。自分に勝てる者に会えないことは勿論残念だが、それで鍛えない理由にはならない。日々の研磨は自らにとって生きる意味だ。『不死身』という言葉が一瞬頭に
武装色の覇気を纏っている。
銃全体に濃密な武装色の覇気を纏い、こちらに向ける殺気が尋常じゃないことに気づく。視線だけで人を殺しそうな鷹の如く獲物を見据える鋭い瞳は、どこ恐怖心がありながらも好奇心という名の興味があるように思える。明らかにカイドウを意識したその表情は形を変えど、その引き金を引くだけに集中しているところを見るに、息を潜めた蛇を現す。ヌルヌルとこちらが気づかないうちに回り込み、気づいた時には手遅れの状況。他人から見れば
「ババァ以来だな」
昔のことを思い浮かべる。別に興味はないが、あの船での体験を忘れるなという方に無理がある。短い期間だったとはいえ、あそこで見てきた体験は他では絶対に味わえない。船長に癖の強い幹部に扱かれた思い出は良いのか悪いのかは分からないが、カイドウを強くさせたのは事実であろう。
「さて、久しぶりに本気で行くか」
本気を出す。
酔いの冷めたカイドウが今動き出す。意識を己に向け力を解放する。
「あ、今は龍の姿だったな」
今のカイドウは青龍の姿。
カイドウはまだ酔いが冷めていないのかもしれない。
もう少し書いても良かったな。でも、書き始めると4000字軽く行くから却下。本当は1万字ペースでやりたいけど、あれやると絶対に頭がイカレル。毎日3000字の方が気が楽。次回、vsカイドウ③?終われば良いけどね。