狙撃手・多々良   作:おべ

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ワノ国⑤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォロロロロロロ!!!今日は飲み干すぞ!多々良ぁ!」――ゴクゴク

 

 

 

 開口1番に乾杯の掛け声。龍の姿から戻った百獣のカイドウは鼻を赤くしながら、今日何回目か分からない乾杯を吐き捨てる。樽ほどの大きさのジョッキを持ち、ゴクゴクと勢いよく喉を鳴らす。興奮で冷や汗が(にじ)み出し高揚した気分のようで、岩手名物わんこ蕎麦の如く、口に運んで行く。そのため、周りの部下達は汗だくになりながら、よっしゃよっしゃとお代わりの酒を運び、空になった樽を外へ運んで行く。

 

 

 

「それでカイドウ。さっき伝えたこと了承してくれるんだよな?」

 

 

 

 青い蛇と目模様の入ったぐい呑をちょくちょくと摘むように飲む――多々良。二合徳利を手にする浴衣姿の茶々良からトクトクとお代わりを貰い受け、神妙な(おもむ)きで、今もなお酒に溺れる百獣に尋ねる。

 

 

 

「小せぇことは気にしねぇ!おれにもメリットが生まれるんだ!なら、顔を縦に振るのが礼儀なんじゃねぇぇか!?」

 

 

 

 そう言いながら頭を地につける。その行動に周りから(どよ)めきの声をあげるが、それに文句を言う輩はいない。キングやクイーンの大看板はそれに目を細めるも、咎めることはしなかった。何故か。至ってシンプル。ここは実力主義。強き者が上に立ち弱気者は頭を下げる。強さこそが正義であり、弱さこそが悪。百獣海賊団は力を何よりも重視しており、発言したければ力で示す必要がある。そのため、何か思うことはあれど誰も口にはしなかった。

 

 

 

「下げる必要はねぇぞ。オレとカイドウは互いに平等な関係だろ?なら、一緒にこのひと時を楽しもうじゃねぇか」

 

 

 

「その通りだぁぁぁ!オメェらじゃんじゃん飲めぇ!」

 

 

 

 カイドウは上機嫌。

 久しぶりの激しい戦闘ということもあって、多々良を強者として認めてくれたようだ。先の戦闘では結果的に多々良のスタミナ負けで終わってしまったが、カイドウはそれを咎めることはせず、逆に百獣海賊団に誘って来た。だが、多々良は断る。別に入っても良かったのだが、ここで入ってしまうと身動きが取れない可能性が発生する。間違いなく大看板のエリートコースなのだが、今後の展開を考慮して丁重に断った次第だ。

 

 

 

 その後、多々良は断った代わりとして同盟を持ちかけた。それにカイドウは直ぐに喰いつき即刻了承。厳密には多々良を客将扱いにして百獣海賊団の相談役に仕立て上げた。他にも様々な交渉を持ちかけ、クイーンやキングの同席のもと百獣海賊団側にメリットがある、議案の半分以上が可決され、協力関係が結ばれた。その中に多々良の私情も含まれていたが、カイドウの一言により承諾された。

 

 

 

「光月おでんの処刑。オレも参加させてもらおう」

 

 

 

「グアア…ああ、好きにしろ!…ゴクゴク」

 

 

 

 光月おでんと赤鞘九人男の釜茹での刑。

 このためだけにワノ国に来たと言っても過言ではない。九里の大名・光月おでん並びにそれに仕える九人の侍からなる家臣達による公開処刑は、最初から多々良も参加するつもりでおり、赤鞘九人男達と敵対関係を構築するために態々百獣海賊団と同盟を組んだ。まだ、海賊団は結成していないがワノ国を出た後においおいモルガンズを通じて発表するつもりである。同盟の件も合わせて。

 

 

 

「暫しの間、ワノ国に滞在する。部屋借りぞ」

 

 

 

「…ゴクゴク…グハァ…ああ、勝手に使え!」

 

 

 

 カイドウから了承を得た。暫くはワノ国に滞在し、やらなければならないことを済ませるとしよう。

 

 

 

 


 

 

 

 

 ちまちまと茶々良との酒盛りを楽しんでいると、スキンヘッドに弁髪のずんぐり体型の踊れるデブ――クイーンが手を縦に振り(ます)席に腰を下ろす。

 

 

 

「多々良殿」

 

 

「呼び捨てでいい。それでなんだ――クイーン?」

 

 

「おお、んじゃ多々良さん。ちょっとばっかし頼みがあってな。おれに狙撃術教えてくれねぇか?」

 

 

「またなんで?」

 

 

 

 唐突に狙撃を指南してくれと頼まれた。意外だなとクイーンの顔を見ていると、クイーンの視線は多々良から別の方へ移した。視線が合い外されたと思ったが、そのクイーンの行き先を追うと、多々良は内心納得する。

 

 

 

「いやなに、変態ヤローに効く攻撃を…」――グフ

 

 

 

 チラチラともう1人の大男に視線をやりながら、困った表情で口にしていると、席を跨いで飛んで来た大男がクイーンの顔面にストレートがお見舞いされた。

 

 

 

「誰が変態だ!?」

 

 

 

 紅いの血がたぎる瞳が大きく揺れ出す。背中に黒い翼と湧き出すように燃える炎。顔を仮面で覆い隠す全身黒尽くめの大男――火災のキング。

 

 

 

「悪いな、多々良さん。この馬鹿は処分しておくんで」

 

 

 

 親指で指しながら呟く。

 

 

 

「いえいえ、拷問好きのゴミカスは俺が片付けるんで」

 

 

 

 ゴミを見る目で吐き捨てる。

 

 

 

「「やるか!?糞が!!!」」

 

 

 

 2人の大男が殺気立つ。胸が炙られるような焦燥感。嵐の前触れを感じさせる。その光景に近くにいた部下は一斉逃げ距離を開ける。いたずらに歯を噛み鳴らし、殺し合いが始めると多くの者が予見した。しかし――

 

 

 

「キング!クイーン!今騒いだらぶっ殺すぞ!」

 

 

 

1人の割り込みにより事態は収束する。

 

 

 

 殺気。

 酒に溺れていた百獣のカイドウが、得物を握り出したキングとクイーンによる一触即発の展開に終止符を討つ。どんよりとした重い空気から一変、皆が皆、ぎょっと化石のように硬直し、蛇に睨まれなカエルの如く言葉を失う。

 

 

 

「ふん!命乞いしたな」

 

 

「それはこっちのセリフだ!カスが!」

 

 

クイーンとキングは互いに睨み合いながらも退いて行く。ここで態々カイドウの逆鱗に触れる必要がないため、噛み付くことはしない。ただ、互いに嫌味を口にして、自分達がいた持ち場へ戻って行く。

 

 

 

「今は楽しむ時間ダァ…逆らう者は何たりとて許さん!!!」

 

 

 

場を支配する。さすが世界最強の生物は人を従わせる力も持っている。

 

 

「悪いな…多々良」

 

 

「別に構わんさ。それでカイドウ。侍で生きのいい奴連れて行っていいか?」

 

 

「オロチに訊かんきゃ分からん!」

 

 

「別に強い奴はいらねぇよ。孤児とか勝手に選ぶから」

 

 

「それなら問題ない」

 

 

カイドウから連れて行く言質が取れたのでよしとする。とりあえずやりたいことを訊いてみれば、ポンポンと機械作業のように了承してくれる。ワノ国で1番の武力を誇るカイドウの発言力は大きいため大抵は話が通る。

 

 

 

「そんで…多々良!オメェは何企んでやがる!?」

 

 

 

唐突に訊かれる。確かに企むというより自らの野望のために暗躍に勤しんでいる身だが、何故カイドウに気づかれたのか。顔に出ていたか。それとも前後の話で理解したのか。

 

 

 

「気になるのか?」

 

 

「気になる!だが、今聞いたら面白くねぇ!」

 

 

 

興味はあるがお楽しみは後にとっておく派のようで、寸前のところで訊かなかった。別に教えてやっても良いのだが、カイドウがそれで良いのならそれ以上言うことはない。

 

 

 

「そうか。んじゃ、オレそろそろお(とま)させてもらうわ」

 

 

「オオ!次は処刑の時か?」

 

 

「そうなるな。それまで、自由にやらせてもらうわ」

 

 

 

多々良はカイドウからある程度の裁量権をいただいている。そのため、常識の範疇であるが、様々な所に赴き手に染めることが可能。侍に関してはオロチの許可が必要であり迂闊に手を出せないが、その他の事柄についてはお咎めなく好きにして良いと会ったしがカイドウにより出ている。要は侍以外は好き勝手やっていいということ。

 

 

「それとカイドウ」

 

 

「ウン?」

 

 

「近々サイファーポールが活発になって来ている。大丈夫だと思うが耳に入れとく」

 

 

 

そう言い多々良は酒をグイッと飲み干し、茶々良と共にこの場を後にした。

 




百獣海賊団と同盟結びます。それの多々良は海賊団を結成します。海賊名は後々に。
どんどん話を進めて行きましょう。


設定見てて思った。皆さん身長デカすぎ!菊之丞さんは287cm、イゾウさんは192cm。兄弟でここまで差ある!?
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