狙撃手・多々良   作:おべ

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ワノ国⑥

 

 

 

 

 

 ──月は夜明けを知らぬ君。叶わばその一念は

 

 

 ──二十年を編む月夜に九つの影を落とし

 

 

 ──まばゆき夜明けを知る君と成る

 

 

 

 

光月トキの最期の夜となる。

 

 

 

 


 

 

 

 釜茹での刑──光月おでんが亡くなってから早一月。街はどんよりと重たい空気。冷徹な目で周りから非難されていたおでんが亡くなった影響は計り知れないもの。民衆は大混乱。真相を知りオロチの野望を知った今、ワノ国は先の見えない暗闇に襲われていた。だが、暗い所あれば光が指す地もある。

 

 

 

 花の都。

 公開処刑後の数日は混乱で客足が遠のいてものの直ぐに賑わいを取り戻した。ここはワノ国一の華やかな花街。金のある者は関係なしに足を運び、それに釣られるように芸や遊びといった客をもてなす職も再開される。金と男の欲望にまみれたこの街は不安を感じさせない、一種の箱庭と化している。

 

 

 

 とはいえ以前と違う点も見受けられる。光月家という強い大名を失った影響は大きいもので、花の都の人種は様変わり。主にオロチ派の人間が住み着くようになり、それに反発する者は街から追放された。その中でも、オロチに完全服従している男がいた──。

 

 

 

──狂死郎。

 つい先日、ヒョウ五郎に代わると噂されてる侠客。リーゼントと吊り目が特徴でいつも眠そうにしていることから、付いた名は''居眠り狂死郎''。酒癖が悪く、酒が入ると会話の途中で眠り出す。

 

 

 

 ワノ国は多くことに関して変わることはあれど、花の都は毎日が明るく楽しく普段通りの日常である。

 

 

 

──ベベンッ!

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「「「藩主(はんしゅ)様(殿)!」」」

 

 

 

 縁側で腰を下ろし茶々良の入れたお茶と共に静かなひと時を過ごしていると、中庭で大声を挙げなら走って来る3人組がいた。

 

 

 

「小松と川上、新納(にいろ)か」

 

 

 

 幼い少年少女が子供独特の朗らかな笑顔を浮かべ、稽古の疲れだろうか、爽やかな汗を掻き、腕や布でそれを拭いている。

 

 

 

「藩主様。今日の稽古無事に終了致した次第です」

 

 

 

 真面目な黒髪黒目の11歳の少年──小松。

 

 

 

「小松がサボってた。怒って」

 

 

 

 さらっと仲間を売る藤髪黒目の12歳の少年──川上。

 

 

 

「嘘はいけんでしょうがぁぁ」

 

 

 

 川上の嘘を密告する銀髪銀朱の瞳を持つ可憐な10歳の少女──新納。

 

 

 

「そうか。なら、今日は休め」

 

 

 

「ハッ!」「分かった」「畏まりました、藩主殿」

 

 

 三者三様返事がバラバラである。

 彼らはこの地でお腹を空かせていた謂わゆる捨て子に部類されている。小松と川上は元々白舞の領地に住んでいたのだが、仕事を失った両親に売られ、絶望に染まっていた所を多々良が買った。新納は兎丼の荒地で倒れている所を茶々良が助けトントン拍子で多々良の所まで来た。他にも捨て子はいるが、今は茶々良と共に外へ出かけている。

 

 

 

「藩主様。腹減った」

 

 

 

 川上は基本無口。だが3人の中で自己主張がはっきりしている。あったことをそのまま伝えてくれる素直な子。つまり、嘘をつくことができないため、自然と小松がサボり、新納が嘘ついたことが発覚する。

 

 

 

「その箪笥(たんす)の中に菓子がある。それを食べなさい」

 

 

 

「分かった」

 

 

 

 そういうと箪笥の方へ行かず家の奥へ入って行く。川上が向かったのは台所。手洗いうがいをしたのちに菓子を食べるという見本的存在。3人と比べてしっかり者であるが、どこか気が抜けていることから、あの中で中間ポジに居座る。

 

 

 

「新納」

 

 

「ギクッ!」

 

 

 

 そろりそろりとこの場を後にしようとしている馬鹿女を呼び止める。目は泳いでおり嘘をついたことは明らかだ。

 

 

 

「べ…別にあらんせんことで…何もやましいことではないでしょうげ…」

 

 

「シラを切るなら最後までやれ、馬鹿女。嘘をつくにしても対象を選べ」

 

 

 

 彼女は基本的に学習しない。毎回嘘をつくのだが、川上に対してのもので、バレると知りながら毎回のように嘘八百をつく。

 

 

 

「それと、小松は…」

 

 

 

 そう言いかけるとそそくさに逃げる影が1匹。砂煙をあげながら、どこかへ行ってしまった。

 

 

 

「チッ、逃げ足が速い奴め」

 

 

 

 珍しく舌打ちをあげる多々良。それもそのはず、川上と新納とやりとりをしていた最中に、お茶の横にあったはずの和菓子が消えてなくなっていたのだから。あとで、稽古の量を倍にしてやると決めるのだった。

 

 

 

「川上、新納!」

 

 

「「ハッ!」」

 

 

 

 息のあった返事を返す。多々良は命令する時必ず覇気を持たせる。それに反応するように2人は片膝をつき、口から発せられる命令の言を待つ。

 

 

 

「茶々良を呼び戻せ。話しがあると」

 

 

「「ハッ!」時間はどうなされましょう」

 

 

「日が落ちてから一つ目の鐘だ。それと小松を見つけ場合捜索に参加するよう伝えろ。行け」

 

 

「「ハッ」」

 

 

 

 普段ののほほんとした雰囲気と裏腹に仕事の顔を持つ2人。懐から出したお面を被り、『紅』と刺繍の入った羽織を着て、地面を蹴り目的の人物を探しに屋根へ飛び移る。カタカタ──と瓦屋根を蹴り音を響かせながら、捜索を始めた。

 

 

 

「今日は肌寒いな」

 

 

 

 多々良は1人口にする。

 

 

 

 

()()()は平和である。

 

 


 

<藩主>

紅月多々良

 

<御一門>

紅月茶々良

 

<無格>

小松 川上 新納

 

 

 

 

 

 




気分的に薩摩藩入れます!
小松に川上、新納!
茶々良は御一門。本来の意味合いでは間違っていますが、階級をつけたいため、御一門です!因みに藩の名前は薩摩でも綾小路でもありません。
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