狙撃手・多々良   作:おべ

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多々良③

――コンコン

 

 

 

ノックをし部屋に入るとそこには、三日月型の大きな白い口ひげを生やした、屈指の体躯を持つ筋骨隆々の大男、エドワード・ニューゲートが多々良を待ち構えていたかのように、部屋の上座に腰を下ろしていた。

 

 

 

「グラララ…多々良よぉ…抜けるだって?」

 

「あぁ。オレにはやることがある」

 

 

 

 ニヤニヤとこちらの心を見通すかのような鋭い視線を向ける。目は真剣そのもので、これからの話し合いが長期戦になると予想した。だが――

 

 

「そうかぁ…なら抜けていいぜ」

 

 

 意外な答えが帰って来た。

 今の多々良の強さはマルコを凌ぎ、ニューゲートに迫るであろう、白ひげ海賊団No.2。武装色と見聞色の覇気が使用でき、特に武装色の覇気を得意とする強者だ。そんな海賊団の中で船長の次に戦力になる者を簡単に抜けさせないのが一般的だ。世界政府や海軍だってそうだ。理由や未練あれど、「はい、そうですか」と簡単に首肯できない。強さとはどこへ行っても、即戦力となり、どこの組織でも、喉から手が出るほど欲しいものだ。

 

 

 だが、ニューゲートは即決で了承した。

 

 

「何か勘違いしてるんじゃねぇか…アホンダラ」

 

 

「…」

 

 

「確かにオメェは強ぇ。だがその強さがどうした?その強さ1つがなくなっただけで一々大袈裟に騒ぐことなのか?そんな細かぇこと気にするわけねぇだろ。おれぁ白ひげだぞ?来たけりゃ…歓迎するし、去るなりゃ…送り出す」

 

 

「…」

 

 

「それが家族…親の務めなんじゃねぇか…グラララ」

 

 

「…」

 

 

「確かに家族は大事だ。だが、息子を尊重してこそ真の親だろうよ。おれぁ…オメェのことを応援するし、何かあったら相談も聞いてやる。オメェは自分が信じた道を貫いて行く。ただそれだけだ」――グフ

 

 

 多々良は下を向く。

 どこかニューゲートに失礼な考えを抱いてしまったことについて、申し訳なくなってしまった。ニューゲートが息子を大切にすることは分かっていたつもりだが、自分自身までもがその対象だったということが驚きだ。馬鹿だな思いながら改めてニューゲートに顔を向ける。

 

 

「好きなようにやれぇ。海賊は自由だ」

 

 

「分かった。そして世話になった」

 

 

「グラララ…そうか。なら、さっさと降りな」

 

 

「あぁ」

 

 

 ニューゲートは少し寂しそうにしていたが、空元気で笑顔を作り送り出す。片手には酒の瓶が握られており、いつもよりも飲むペースが早いように思われた。内心では長い間一緒にいた仲だ。悲しくないなんて有り得ない。だが、送り出す時はきっちりと背中を押してあげる。まるで()()のように。

 

 

 

「失礼する」

 

 

 そう言い残し部屋から退室した。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「失礼する」

 

 

 多々良はそう言い残し、部屋を後にした。

 

 

「行ったか。ゴクゴクゴク…グハァ」

 

 

 今日はいつもと違い酒のペースが速い。

 

 

「アイツは何を企んでいるのやら」

 

 

――カンッ…ゴロ…ゴロン

 

 

 飲み切った酒瓶が辺りに転がっている。酒で何か忘れたいという遣り切れない思い。だが、応援したやりたいという、複雑な気分。それらが噛み合い、また酒を口にするペースが一段と速くなる。

 

 

 

「何をしでかすか、か」

 

 

 まるでロジャーみたいだなと笑みを浮かべながら。

 

 

「ロジャーをきっかけに世界が荒れるのか?」

 

 

 この前、酒を酌み交わした時のことを思い出しながら。

 

 

「見えているか、か」

 

 

 まるで先の未来を見据えているかのような。

 

 

「なら、変えてみせろ!はなたれ小僧」

 

 

 あの不思議な少年を思って。

 

 

「世界が変わるな…グラララ」

 

 

 ロジャーが何をしでかすか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きにやれ!多々良!オメェが望んだ未来に向けて…全力を出しやがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニューゲートは多々良が全力を出し尽くしてないことを知っていた。日々の自分に課す厳しい掟を作り、過大評価することなく、修行に取り組んでいることも知っていた。自分が想い描く未来のために、何百通りというプランを制作していたことも知っていた。

 

 

 ニューゲートは多々良が思っている以上によく知っているのだ。おそらくロジャーは死ぬのだろう。その結果として、海が荒れるということも想像できる。そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おれぁも死ぬんだろうな…グラララ」

 

 ニューゲートは1人笑いながら酒を楽しんだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「行くのかよい」

 

 ニューゲートへの挨拶を終え、船を降りるため甲板へ向かうと、そこには欄干に背中を預けたマルコがいた。

 

「あぁ。ニューゲートの許可が降りたからな」

 

「そうかよい。なら、さっさと行くんだな」

 

「あぁ。そうさせてもらう」

 

 別れの挨拶を終え、準備していた小舟に飛び移る。

 

「多々良!」

 

 繋がっている紐を切ろうとした時、マルコから声がかけられる。

 

「楽しかったぜ。そしてまた会おうな」

 

 これが一生の別れではない。彼ら海を自由に横断する海賊だ。どこかでまた、再開する時が訪れる。それが最悪な事態な時でもだ。

 

「そうだな」

 

 そう言い残し、繋がれたら紐を切り離す。ここは偉大なる航路(グランドライン)。潮の流れが速く、変わりやすい。そのため直ぐに白ひげ海賊団の船、モビー・デイック号がどんどんと離れ、最後には地平線の彼方へと消えて行った。

 

 

 


 

名前 綾小路・多々良

性別 男性

所属 (元)白ひげ海賊団ゼロ番隊隊長

懸賞金 1520万ベリー

 

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