夜
「それで何ようでやすか父上」
艶々と潤いのある甘く澄み通った声。豪華
「……う…そろそろワノ国をでようと思っている」
寸前の刹那に耐え我に帰る多々良。息を殺すようにじっくりと見惚れてしまった眼球に、覇気を込め無理矢理下に向ける視線を引き離す。その後、正面に向いた茶々良の含みを持たせた表情に
「唐突でやすね。また、なんでこんな忙しい時期に御決断を?」
多々良を
「……いやなに、もともとワノ国に来た目的は光月おでんに会うため。亡くなった今、ワノ国に用はない」
見惚れて赤くなった顔を隠し、真黄色に
「それでここを離れると」
優しい口元に薄笑いを見せ、今もなおその美貌に圧倒され、痙攣でも起こしたような
「そうだ。そこまで急ぎではないが、早めに出たいのは本音だ」
軽い嘘。
少し罪悪感に淀みながら多々良は早めに出たい意思を伝える。現状を考慮するならばワノ国をすぐ出る必要はない。現に狂死郎と日和の件がまだ片付いていない。日和はまだ狂死郎と接触していないため河松の監視と狂死郎へ資金援助に留めている。1人だけ、狂死郎一家に筋の良い多々良に染められた侍が忍び込んでいるが、飽くまでも監視のもので公に使うつもりはない。時期が来たら一度勘当し、多々良と合流を果たす手筈となっている。
「隠し事はしてやせんね?」
口唇を引き歪め意味ありげな
「してないと言えば嘘になる。しかし、現段階において言うわけにはいかない」
これだけは譲れない。元々多々良とは嘘で構成されていると言っても過言ではない。茶々良との間に混じり渡した約束にもあるように『詮索しない』という文言はここで効果を発揮する。嘘で塗り固めている多々良は保険を多くばら撒いている。また、それに準ずる布石も予定している。敵を作ることは致し方がないとはいえ、作りすぎるのにも問題がある。そのための予防策としてカイドウとの同盟。ならびに、赤鞘の侍衆にも幅を効かせる手筈となっている。
「ここらで一度引きやす。ただし、
煤けた障子の先──満月の黄色い光を見て陰険な真意の読めない淡い横目で多々良にお願いという脅しをかけられる。
「わかった。善処しよう」
こまめに──即ち、情報の欠如を禁じ、円滑な共有化を大義に掲げ、独断による行動を正面から潰すというもの。今までコソコソと暗躍して来た多々良にとってあまり嬉しくない提案だけに、2人の間で決めた約束で足を取られるという結果を前にして、多々良は頷くことしか許されていなかった。一本取られたと感心しつつも自らが決めたその約束が言質となり、詮索は免れたものの昔のように迂闊に行動できないことは、多々良にとって痛手そのもの。まさに、多々良は今、茶々良という本質を見たように錯覚を覚え、今後茶々良の方にも気を配ることにする。
──多々良と茶々良。
1分も満たない話し合いは、朝まで続いたと多々良は口にした。不思議なこともあるものだ。
???
「そんでおかん方の言い分は世界政府を侮辱すると捉えていいんですかい?」
能のお面と黒と白の縦線が入ったシルクハットを被り、皺一つない橙色の派手なダブルスーツを着る巨体。
「死んで欲しいとは言ってあらへん。そんなアホめいた風に聞こえたとは、犬とやらも案外難儀な生き物といったところで」
鉄紺の髪を長く伸ばし真髄を見せない吊り目の男。絶えず追われている立場にありながら飄々と交渉という名の拿捕作戦に顔を出す。
「こちとら時期尚早とはいえ、アンタの首を取らんなか行かんうちらの事も考慮して欲しいんですがい」
「話は平行線。貴殿らに構ってられるほど儂も暇じゃあらへん。ここはお暇させてもらうけて」
互いに睨み合い、交渉が決裂したことによりおもむろに立ち上がり、出方を互いに見る。
「それではさいなら」
「待て!
『元月星海賊団船員''東朝の黒田如水 ''懸賞金9億3200万ベリー』
今日を持って一度終了。今後は不定期投稿になります。今後もよろしくお願い致します。