――パーン
武装色の覇気を纏った銃弾。多々良が得意としている技術であり、この弾で貫けないものはない。
〈
多々良が編み出した技。武装色の覇気で身体を硬化させていたとしても、それを貫き通すことが可能。多々良にとっての集大成であり、この存在を知る者は誰もいない。
〈オートエイム〉
多々良の転生特典。敵のヘッドラインを自動的に合わせることができるため、エイム力がなくても引き金を引くだけで敵を殺すことができる。長距離のライフルの場合、通常計算してやる必要があるが、見聞色の覇気、武装色の覇気を併合することにより、重力の落下、空気抵抗を無視することが可能だ。
〈ノーリロード〉
弾丸のセットを基本的に無限にする能力。リロードによる補給動作を短縮できるため、隙がなくなり、永遠に狩り続けることが可能。
「訓練終わり。能力の不具合もなし」
多々良は点検するように能力の動作の確認を終える。訓練に使用したのは近くにいた、海賊団総勢125名。合計懸賞金額3億8760万ベリー。その全てを的にさせ、公開処刑した。それも、訓練という大義を掲げて。
死体は仲介に売り渡した。割合は多々良が1割。せいぜい2000万少し貰えればいいなと思っていたため、その仲介人の条件を呑んだ。その条件を呑んだことにより仲介人は喜んでいた。
多々良にとって3億も30億も端金に過ぎない。手段を選ばなければ、恐らくある所から引っ張って来るだろう。金はこの世で1番重要ではあるが、手順を間違えればそれは自分を傷つけてしまいかねない。富とは力で発言力を増すことはできても、暴力という生物として力の前では、その力はゴミ屑に等しい。金などは必要とあれば掻き集め、いらなければ欲しい奴にばら撒けばいい。それが多々良にとっての正しい使い方だと思っている。
「2000万か。これで何をするかな」
2000万という端金を手にしながら街をブラブラする。ここは
――パーン
訂正。
多々良は近くにあった時計塔を登り、そこから海賊団を狙撃していた。硬化武装できない輩は普通の覇気を纏った銃弾で。武装硬化できる強者はそれを超えるほどの武装色の覇気を纏わせる。
〈
覇気を纏った奴を確実に殺すための技。〈リズ・リタート〉は覇気の消耗が激しいため、普段の戦闘では覇気を纏うだけ留めている。これでも覇気使いにおいて一般常識から逸脱している技だが、多々良にとってこの技法は朝飯前である。
「強者を殺すのは楽しいね」
そんなことを呟きながら黙々とハンティングを楽しむ。
――パーン
後頭部が血を吐いて倒れる者。
――パーン
武装硬化した剣で塞ぐもそれすらも貫いて頭に命中する者。
――パーン
あろうことか敵に背を向け逃げ出すが死ぬ者。
多くの者が運が悪いことに多々良の餌食になった。
「終わりっと。やることやったから飯屋にでも行こうかな」
楽しむだけ楽しんで多々良は港近くにある、高級そうなレストランへと足を運ぶ。
「うん?この気配は…死体処理はお願いしてもらおう」
何かの気配を感じたのか、死体を放置することに決める。当初の予定では仲介人とかに渡そうと考えていたのだが、気配からして世界政府の覇気使いだろうと当たりをつける。その証拠として、〈剃〉のような高速移動する者が見聞色を展開しながら辺りの様子を伺っているのを偶々目にしたからだ。
「爺ちゃん達へのメッセンジャーになってくれないかな」
1人五老星のメンツを思い浮かべてながら独り言をこぼす。
「プリヤート海賊団船長アクト、懸賞金1億4000万ベリー。カリバーチ海賊団船長グレイト、懸賞金2億6530万ベリー。賞金稼ぎのヴァリーチ。3人を含む2つの海賊団の壊滅を確認。どうなされます、司令長官」
黒スーツに身を包んだ美女。上司らしい三十路のサングラスをかけた男性に報告する。
「死因は?」
「全て頭部へ狙撃。即死かと」
「はぁ〜。覇気使い相手に即死か。こりゃあ、上は黙ってねぇぞ」
最大限の溜め息を吐きながら、今後自分たちがするであろう仕事を思い浮かべて、悪態をつく。覇気使いを即死させるとは通常ありえないこと。それが狙撃となると、考えられるのは主に2つ。
1つは悪魔の実による覇気を無効にすることだろう。ここは新世界だ。あってもおかしくない。だがこれは、覇気は能力者に有効な手段であり、それらを無効にするとは考えづらい。
もう1つは弾丸が覇気で覆われていることだ。だがかなりの難度を要する。武装色の真骨頂は何と言っても武器にも纏わせ自ら黒刀を作り出せることだ。覇気の練度や濃度で強さ変化してくるが、硬化することにより本来の武器よりも格段に攻撃力が上がる。ただ、これには弱点があり武器と身体が共に接触しなければそもそも覇気で纏うことが不可能に近い。覇気とは本来、身体エネルギーのことを指し、それを放出又は身体の表面に纏わせることにより覇気が扱える。
「武装色の覇気。それを即死。上はどのように対処するので?」
「知らん。だが、私達の仕事が増えることだけは変わらん」
最悪だと頭を抑えながら答える。つい先日までロジャー海賊団関連で動いていたのだ。当然、精神疲労が激しく休暇が欲しいと上層部に掛け合った結果、この新しい仕事だ。ロジャーに続いてまた面倒そうな、フラグたっぷりの仕事だ。
「休みたい」
「それを言ったら私もですよ、長官」
彼女も同じく休みたい様子。彼女も彼女で上に振り回されながら仕事をしている苦労人。決して仕事中毒者ではない。世界政府はブラックなのだ。跳梁跋扈大歓迎の職場はいつも地獄だ。
「お互い大変ですね」
「そうだな」
『CP8司令長官、トラス』
『CP8、エレン』
2人は世界政府の愚痴をこぼしながら、今後の先行き不安定の未来を祈りながら職務を全うしようと勤しむ。
「ウメェ!」
1人多々良はこの街で美味しいものを食べ、この幸せな時間を堪能していた。世界政府の諜報員の苦労も知らずに。