狙撃手・多々良   作:おべ

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シャボンディ諸島②

 

 

 

 シャボンディ諸島

 

 

 

 

「また来る」

 

 

「じゃあね」

 

 

 

――カランカラン

 

 

 

 手を振りながら多々良を見送る。ドアが閉まり、また静けさが戻ると、1人カウンター席に座り、ポケットから煙草を取り出す。シュッとマッチで火をつけ、タバコを一服。

 

 

 

「あの子も大変ね」

 

 

 

 

 頬杖をついて先程までの会話を思い浮かべる。

 

 

 

「綾小路・多々良。経歴が謎に包まれてたけど、まさかあの一族の末裔とはね。世界が荒れるわ」

 

 

 

 何か確信をついたかのように呟く。綾小路。それを意味するものとは、いったい。

 

 

 

 

――カランカラン

 

 

 

 

「誰が末裔かね?」

 

 

 

「あら、レイさん」

 

 

 

 煙草を吸いながら考えてていると、突然入り口から声をかけられる。白髪が混じり始めた黄色い髪の毛、顎髭は横に四つ等間隔に並ぶ、右目には一筋の傷が刻まれているワイルドな男性、シルバーズ・レイリー。

 

 

 

「何かいいことでもあったのか?」

 

 

 

 シャクヤクの顔をマジマジ見ながらそう口にする。

 顔に出ていたのかと思い、慌てて顔に手を当てる。

 

 

 

「いや何、先日会った時よりも雰囲気が違うのでな」

 

 

 

 以前あった時よりも清々しくなったように見えた。クールで寂しそうだった表情が、今では何か別のことに興味を持った、スッキリした顔つきに。

 

 

 

「ええ。さっき、面白いボーイが来たから」

 

 

 

「ほぅ。それが先程口にしていた、末裔なのかね?」

 

 

 

「そうよ。綾小路・多々良。''白ひげ海賊団''の元隊長さん」

 

 

 

「多々良?」

 

 

 

 レイリーが一瞬揺らぐ。多々良と耳にした時、何か心当たりがあるのか、記憶の底を探すかのように瞼を閉じる。

 

 

 

「何か心当たりあるの?」

 

 

 

「いや…気のせいだ」

 

 

 

 シャクヤクはその些細な行動を見過ごさない。多々良と反射して聞き返すその行動。そして、何か引っかかりを覚えてしまったその瞳は何かを案じるかのように、漆黒に染まる。だが、杞憂だったのかわからないが、レイリーはそれを外に追い払うように現実に戻って来る。

 

 

 

「それで、多々良くんは何か言っていたかね?」

 

 

 

「確か、明日来ると言っていたわ」

 

 

 

「そうか。その日は特に予定はない。私も同席しよう」

 

 

 

「ふふ。それが良いかもしれないわね。あ、そうだ。お酒あるんだけど、飲む?」

 

 

 

「ああ。一杯もらおう」

 

 

 

 シャクヤクが奥の部屋に入っていき一本の一升瓶を持って来る。ラベルには、『倆覇(りょうは)』と明記されている。

 

 

 

「何!?」

 

 

 

「どうしたの?レイさん」

 

 

 

「この酒はどうした?」

 

 

 

「それは多々良ちゃんから貰ったのよ。その酒に何かあるの?」

 

 

 

「あぁ。これは以前スキヤキ殿から貰った酒と同じモノだ。だが、当時それは既に生産が終わっており、同じモノは両手で数えられるほどしかない」

 

 

 

 『倆覇』。

 主にワノ国、九里で生産されていた米酒。一升分作るのにおよそ10年を費やすとされ、大名行列や崩御時にしか飲めないとされる高級酒。外国から来た国賓が来る時ですら、出されないほどで、その価値がうかがえる。また、これに纏わる秘密もあるのだとか。

 

 

 

「じゃあ、この酒はもう作れないの?」

 

 

 

「あぁ。だが、今はそれどころではないな。彼はいったい何者なのだ?」

 

 

「それはレイさんが分かっていることじゃないの?」

 

 

「いや、多々良というのは昔耳にした時はあるが、ほとんど伝承でしかない。それに、綾小路と言ったな。それの末裔なのだとしたら……うん?」

 

 

 

 何か閃いた。

 先程のモヤモヤが消え、そこに隠れ込んでいたであろう記憶が呼び覚ます。

 

 

 

「何か気づいた?」

 

 

 

「あぁ。確か、ゾウ――ミンク族の国にそんな名前が刻まれた石碑があったな。ミンク族と何か深い関係があるのかもしれん。それと…いや、それはないか」

 

 

 

「ふーん」

 

 

 

 ミンク族との交流があることは確かではあるが、それが答えではないと推測する。レイリーはミンク族だけに言うのを留め、その本質については発言を濁した。ミンク族とは昔、何かしらの出来事があったと予想できるが、石碑があるだけで、それ以外の情報は分からない。以前行った時、ネコマムシに気になって訊いてみたが、彼も知らないでいた。同じく、イヌアラシも石碑は昔からあったの一点張りで、不思議ではあったが、世界の各地に偉大な人として石碑が建つことは珍しくないため、当時深追いしなかった。

 

 

 

 だが、今になって重要だったことに気がつく。綾小路・多々良という人物が世界に悪影響を及ぼす可能性があると感じため。

 

 

 

 そもそも何故、モナコ公国というミンク族の国にその石碑があったのか。石碑は風化していたため文字を読み解くことはできなかったが、言い伝えがない事に疑問を覚える。凄ければ凄い人ほど、それを伝え続ける者は多いはず。みんなあることは知っているが、何も疑問を持たないのは不自然だ。

 

 

 

 それに加え、過去に聞いた『多々良』という名前。これは''東の海''にある、とある国での話だ。伝承として聞いたため、嘘か誠だったのか分からなかったが、今になって確信を持てる。そして、多々良とは――

 

 

 

「――っふ」

 

 

 

「あら?何か閃いた?」

 

 

 

「知らんな」

 

 

 

「へぇ、誤魔化すの?」

 

 

 

「知らんと言っているであろう」

 

 

 

「そう。それと考えているところ申し訳ないんだけど、レイさんが疑問にしていること、たぶん知ってるわ」

 

 

 

「!?」

 

 

 

「悩んでる姿、逞しかったわ。これ、多々良ちゃんにも見せようかしら」

 

 

 

 映像電伝虫を手に笑みを浮かべるシャクヤク。レイリーが日頃からよく考察し、深妙な顔つきになることを知っていたため、この瞬間を記録として残した。

 

 

シャクヤクは多くことを多々良から聞いた。細心の注意をしながら説明していたことは分かっていたが、かなりの情報を頂いた。秘密をいくつか握ることができたシャクヤクの今日は、普段よりもご機嫌が良かったら、

 

 

「辞めろ。シャッキー」

 

 

 

「あらあら。そんなに顔を赤くしないの」

 

 

 

「やめなさい。私の面子に関わる」

 

 

 

「大丈夫よ。多々良ちゃんなら」

 

 

 

「大丈夫ではない。特に私の心が」

 

 

 

「見られて減るモノじゃないでしょ?」

 

 

 

「そういうことではない。!これが万が一流出した時のことを想像しろ。間違いなく、見習いが喜ぶぞ」

 

 

 

ロジャー海賊団にいたシャンクスとバギーの見習い2人を思い浮かべながら。尊敬されているため、危険な真似はしないと思うが、あの2人のことだ。あり得るから心臓に悪い。特にシャンクスあたりは何かしでかしそうだ。

 

 

 

「はぁ〜分かったわよ。これは消してあげるわ」

 

 

「それは助かる。うん?その電伝虫は確か…あっ!」

 

 

 

「消してあげるから安心してね♡」

 

 

 

「そういうことではない。それは…中継用か?」

 

 

 

「当たり。今頃多々良ちゃんが観ているわよ」

 

 

 

「…」

 

 

 

目が笑っていない。知り合いに嵌められたことはそこまで腑に落ちないが、新参者に足をすくわれ、一本取られたことに対して、面白い笑みを浮かべる、瞳は獲物を捕らえるギラついたモノへと変貌し、身体から覇気が溢れ出す。

 

 

「ちょっと悪ふざけが過ぎたかしら?」

 

 

 

「そうか。なら、落とし前をつけに行くとしよう」

 

 

 

おもむろに立ち上がる。グラスに余ってるいる少量の酒をグイッと飲み、ドアへ向かう。

 

 

 

「場所分かるの?」

 

 

 

「いや何。奴はシャッキーが見込んだ男なのだろう?なら、充分であろう」

 

 

 

「そう。多々良ちゃんは狙撃手。''白ひげ海賊団''ではゼロ番隊。単独で敵を仕留めていたらしいわ」

 

 

 

「ゼロ番か。それは厄介だ。それと狙撃手か。それなら敵がいる所も限られてくるわけだ」

 

 

 

 ニューゲートは昔から家族を大事にする。自ら息子と認めた者は理由関係なしに何か有事が発生した際、問答無用で介入してくる。息子達を大切にするあまり、戦争の引き金を引きかねないという、凶暴性がある。それ故に、世界政府は接触は最低限に留め、無闇に刺激させないように心得ている。

 

 

 ''白ひげ海賊団''には1から16の隊長が存在する。これは主に戦力で選ばれるが、全てが力ではなく、中には親密度で選ばれるのが多い傾向がある。大抵、古参からいる者は隊長の座についており、一見分からないが、凌ぎを削るライバルは共に兄弟という壁を超えた関係でおり、自分よりも他人を優先する、善人の集まりだ。そこの1番隊となると戦力や指揮が優れているだけではなく、信頼や協力性が他の者よりもずば抜けている。

 

 

 だが、ゼロ番隊という第17つ目の隊が存在する。これはあまり知られていないが、17番隊は主に曲者が集い、中には裏切りを企む輩がいるという。また、ゼロ番隊は極少数の精鋭揃いであるとされ、1番隊隊長よりも強いとされている。

 

 

 

「ドアを開けた瞬間、打たれて屍へ化すのかしら」

 

 

 

「縁起の悪いことを言うな。だが、用心に越したことはない」

 

 

 

「そう、気をつけてね」

 

 

 

「あぁ」

 

 

――カランカラン

 

 

 

シャクヤクからの心配をよそにドアに手をかける。

 

 

 

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