――パーン!
『
五七五七七。
短歌を読みながらこれからの展開を予期する。この闘いにおいて多々良は自分が負ける未来を描いていた。紅に染まるその弾丸は冥府に相殺される未来。しかし、手段を自由に、桔梗ほどに我が儘になるならば、それを見事に会い混じり合わずに終わるという。先を見通し、死へカウントダウンを味わえば、勝利への一筋の光を捕らえることができるかもしれない。
「冥府への片道切符か。死なないように頑張ろう」
――キーン!
赤より美しい紅を纏う漆黒の弾丸は、
「重い。それに鋭い。覇気の練度も充分。だが、それで私を仕留めるとは少し甘いな」
目をギラつかせながら呟く。視線は狙撃された方を向き、細めるように獲物を目視する。
「では、行かせてもらおう」
大地を蹴る。
滑るかのように大地を鋭い軌道で駆け抜け、敵の影を逃さまいと追いかける。
――パーン!
――キーン!
――パーン!
――キーン!
――パーン!
――キーン!
いち早く追いつこうと最短コースで駆け抜けている。しかし、敵は馬鹿ではない。直線上になりがちのこの急接近。狙撃手として格好の的だ。
――シュウウウウ!
力強く大地を蹴りながらも、意識は敵のみ。
剣で銃弾を捌きながらも、自分の目は獲物の影に釘付けである。
――パーン!パーン!
――キーン!キーン!
体重移動で剣にいつもよりも力は増す。前傾姿勢を取り敵へ突っ込んでいるため、威力は絶大だ。だが、柔軟に相対することができない。普段よりもパワーが増えた分、それをコントロールするための技量が必要不可欠。
「ッム!」
覇気の調整も至難。
普段ならば覇気で相対すれば楽であるが、今回の場において、それは愚策。武装色の覇気を纏ったその漆黒は、自分の覇気を吸い尽くすようなジャイロボール。まるで、見聞色で消えた弾丸となり、相対しようとするも、電磁の如く近くつくだけで、切り傷を負う。生半可な覇気では致命傷になりかねないため、頭を使う戦闘へと、時間と共に変貌する。
――パーン!
――キーン!
「どうするか」
拮抗。
覇気を纏った銃弾に慣れていないがためか、戦闘は
「何が狙いだ?」
先程から攻撃がワンパターン。
急接近して目視で捉える距離まで詰めてから、攻撃が固定化し始めていた。敵が射つと、それを捌く。敵が射つと、それを流す。敵が射つと、それを躱す。先程から頭を狙った攻撃の一点張り。それの繰り返しだ。
「参ったな」
膠着。
敵の考えが分からない。本当に分からない。シャクヤクが情報通であると知っている点や、ここにレイリーがいると分かっていたかのような立ち回り、不自然な点が数多い。偶然という線も追えるかもしれないが、ロックスの件や過去の経歴も合わさって、多々良を見逃せないでいた。
映像電伝虫のよそ。
それに映っていないシャクヤクは声には出さず、紙に書いて、多々良の素性を教えてくれた。覇気でレイリーを呼び、自然体を装って、必要な情報を簡潔にまとめたのだ。シャクヤクと多々良が協力関係であるように、シャクヤクとレイリーもそれにあたいする。シャクヤクは物事に中立の姿勢を表し、敵にも味方にもなり得る。今は海賊を辞め口調も柔らかくなったが、昔はいかに騙し、いかに生き残るかを考える、寄生型の海賊であった。だが、そんな彼女にも転機が訪れ、今はバーを経営する。シャクヤクはどんな時も冷静であり、逆転の糸をそこら中に撒いてある。
――パーン
――キーン
「さて、どう動く?」
流れるように銃弾を躱したり、流したりする。敵がこれからどのように策を講じて来るのか。内心この戦闘を楽しんでいた。
――パーン、パーン、パーン、パーン、パーン!
――キーン、キーン、キーン、グゥッ!、シュッ
戦局が大きく変わる。
突然射つテンポが速くなり、今までのパターンに慣れきった体はついて行けず、とうとう被弾した。擦り傷程度ではあるが、その漆黒を纏う弾丸は鋭く、皮膚を軽く擦ったとはいえ、
「久しぶりだな。少し本気で行くとしよう」
血は流れていないとはいえ、皮膚の細胞は焼け橙色に変色しており、少し火傷したようなヒリヒリ感が芽生える。
――パーン
――キーン
銃弾の対応にワンテンポずつ遅れ出している。
少しずつ噛み合わなくなるこの感触に少々悪態をつきながらも、敵に狙いを定め、一気に距離を詰める。瞬く間に突き刺さってくる銃弾の雨が多少、被弾しながらも着々と詰め敵の表情を見える所まで行った。
――バキューン
そんな時だった。先程までの漆黒の弾丸とは違い、血に溺れたかのような紅の弾丸が鋭い軌道を通ってやって来た。
――ピューーーーン
剣を構える。
だが、レイリーはそれに嫌な予感を覚える。
「何!?」
身構える。
初弾の弾丸と似てはいるが、その本質は別物。弾丸は淡い紅ではなく、濃密な
――キィィィイイン!ギ…ギギイィィィィイイン!
覇気と覇気の衝突。いや――
――覇王色の衝突。
剣と銃弾が交じり合い、強力な衝突波を生み出す。まるで銃弾はその場に留まり落ちることを知らないのか、数秒間その衝撃を生み出し続ける。剣でその力を削いでも、また第2波、第3波の重い衝撃が剣の焦点に集中し、ヤバイと思ったのかレイリーは剣に思いっきり覇気を集中させ、横に退避した。
邪魔をするものがなくなったことによりその弾丸は先にあるヤルキマングローブに吸い込まれるように空を駆け抜ける。そして――
――ドカァアアアン!
衝突。
行き場をなくしてその膨大な力は破壊として役目を終える。ヤルキマングローブの根元は大きく爆発し、黄猿のように折れはしなかったものの、くっきりと巨大な穴が貫通していた。綺麗に
「凄いな。覇気をここまで乗せて来るか。それに――」
――覇王色。
数百万人に1人しか素質を持たない、''王の資質''とされ、世界で名を上げる者の多くはこれを持っている。圧倒的な力量差があれば、威圧や殺気により一瞬で敵の意識を奪い気絶させることができる王の力。
険しい顔。だが、どこか口角が上がっているように見える。レイリーは暫しこの戦闘を楽しんでいた。
「覇気が上がっておる。不意打ちの時よりも格段に」
覇気。
最初の1発よりも武装色の覇気が強化されていることが分かる。濃度が良く質の良い覇気が一発一発に込められており、生半な考えで処理してはいけない。それに最後の銃弾。あれは、明らかに殺気が込められた銃弾であった。覇王色は勿論のこと、練られた覇気の量は先程までとは違い、濃度が10倍を超える。
「凄まじい」
久しぶりの臨場感。死と隣り合わせの高揚感。それを凌ぐ達成感。どれもこれもロジャーの船で味わって来たものたちだ。剣を血に扮し、腕は得物を狩り、目は人を殺す。全てを感じさせ、懐かしい思い出で呼び覚める。
「敬意に評して、こちらもやるとしよう」
身体から無色のオーラが吹き湧き出る。覇気が四方八方に伸び、その有り余る濃密な覇気を全て剣に注ぎ込む。剣は少しずつ黒く、黒く染まり数秒して漆黒へと変貌する。武装色の覇気。それも命が芽生えるかのような身体エネルギーが隅々までコーティングされ、剣に意思があるように誤認させるかのような存在感がそこにあった。
――ピキィ
――シュウゥゥ
剣を構えて視界に捉えている敵を見て微笑む。銃を構えた敵に向かって圧を発し、一気に距離を詰めるため、大地を電光石火の如く蹴り出す。
「失望させるなよ」
目をギラつけさせながら、吐き捨てた。
誤字報告
V•X•T様、 一さん様、半死体生命体れーつぇる様、ありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。
くだらないミス連発。恥ずかしい。