狙撃手・多々良   作:おべ

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シャボンディ諸島③

 

 

 

 

 

 

「ヤバイな」

 

 

 

 決着をつけるための渾身(こんしん)の一撃が、レイリーにより封殺された。上手く立ち回り、結果的にヤルキマングローブを貫通させ、レイリーをやる気にさせてしまった。

 

 

 覇王色を乗せたその弾丸は試行錯誤の結果作り出した多々良の最高傑作。覇気を込める量が普段の数十倍。燃費が悪く連発できないが、その分貫通力が増し、武装色で防ごうとも、それすらを破壊し貫通する。ジャイロ回転の先端に覇王色が濃く纏い、そこから解き放つオーラも尋常ではない。殺傷能力の高いその弾丸は触れた所から抉り取るように対象の身体エネルギーを奪い、それを糧にして突き進む。敵の覇気を利用して敵を殺す。それがこの技の真骨頂。

 

 

 しかし、どんなに強くても弱点は存在するもの。見聞色を極めている者であれば、銃弾のジャイロ回転とは別方向に覇気を流すという手段を講じることができる。電磁の力で反発し合い、コントロールを失ったそれはエネルギーを吐き出すだけの暴れ馬へと化すからだ。エネルギーが強くても、直流で覇気を運ぶそれに保護されていない覇気が逆流を起こせば、指示機能が麻痺を起こし、覇気の循環が再起不能となる。

 

 

 他にも、王の資質、覇王色を持つ者であれば殺気で拡散されたその覇気で軌道をずらすことができる。弾丸は覇気でコーティングされ、一時的にだが意思を生み出す。それを利用して、覇王色の力でベクトルを強制的に変えるのだ。弾丸を封殺までは行かなくても、敵の隙くらいは作れる。

 

 

 

「さて、これからどうするか」

 

 

 

 ぶっちゃけな話し、多々良は既にガス欠状態。闘えるとしたら精々2、3分が関の山。5分も行けば良いくらいだろう。

 

 

 

 

 

――ピュシュウウウウ!

 

 

 

 

 

 レイリーが大地を蹴り一気に距離を詰めて来た。相変わらずその瞳は鋭く、絶対に逃さまいと野猫のようで次第に麻痺を感じさせる。これはレイリーの覇王色のもので、敵を捉えるためのロックオン機能が備わっている。

 

 

 

「ちょっとばかし、覚悟決めようかな」

 

 

 

 今回の戦闘はただ遊び。だが、双方共にやる気になっている以上、この戦闘は誰にも止められない。どちらが力尽きるまで、続くだろう。多々良はガス欠状態とはいえ、そこまで深刻なものではない。また先程の銃弾をやるのは不可能だが、それ以外の攻撃なら問題ない。

 

 

 

「レイリー強すぎ」

 

 

 

 多々良の本音。

 先程の覇王色を纏った銃弾である程度削る予定だったのだが、少し険しい顔を浮かべながらも、封殺されてしまった。この時点で多々良への勝利条件は皆無であり、激しい戦闘はできない。体力が底を見せ始め、つまらないネチネチした闘いをしたくない多々良は後1発にかけるか、又は第三者の乱入が来るのを待つか。現状2択だ。

 

 

 

 ここは偉大なる航路(グランドライン)前半の海にあるシャボンディ諸島。海軍本部――マリンフォードに程近く、何か有事があった際将官クラスが飛んでくる。天竜人に危害を加えれば大将が飛んでくる。今回のレイリーと多々良の激しい戦闘で他の海賊、民間人、海軍が気づいていることだろう。海軍は海賊王の右腕とされている、レイリーが関わっているとあったら、何かやってくるに違いない。ここで大将クラスないし中将クラスをレイリーにぶつければ、多少は余裕ができるかもしれない。弱っている多々良を捕まえてくる恐れがあるが、その時は見聞色全開で逃げ勝負はお預け。シャクヤクの所に避難すれば安全だろう。

 

 

 

「とりあえず、逃げるか」

 

 

 

 今は少しでも体力回復に勤しむべきだ。先程の反動で覇気を上手く練ることができないでいる。少し休めば問題ないが、連発は身体を壊しかねない。これはなるべく封印しなければならないと思いながら、後方60番GRの方向へ逃げる。今は2、3番GR。流れるように13番GRから移動しており、順調に行けば海軍支部が見えて来る。海軍や世界政府の役人が多く出入りそこならば、海軍本部も見逃せないに違いない。ガープが言っていた、『2つの伝説』。これを考慮するとなると生半な戦闘では駆けつけない場合が考えられる。その点を踏まえ60番台へと移行することにより、看過出来ない事態を引き起こさせる。

 

 

 

「乗ってくればいいけど」

 

 

 

 多々良は少し不安にながらもそそくさに後退し始める。後ろに意識を向けるとレイリーが大地を滑るかのようについて来ている。その視線は人をも殺すもので、レイリーの威圧は離れている多々良まで届く。覇王色の威圧、刺激し合い、緊張感が再度芽生え始める。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 海軍本部

 

 

 

「ブワッハッハッハッ!」

 

 

 

 海苔せんべい片手に高らかに笑う。

 短く刈り込んだ黒の短髪に、口周りに髭を蓄えた男性、『海軍の英雄』モンキー・D・ガープ。 通称、ゲンコツのガープ。

 

 

 

「笑いごとではないぞ!ガープ!」

 

 

 

 海軍の象徴であるカモメの帽子を被った、巨大なアフロヘアーに三つ編みにした長い顎髭が特徴の男性。つい先日海軍のトップである海軍元帥に就任した『仏のセンゴク』が高笑いする海軍の問題児を大声で注意した。

 

 

 

「レイリーが大暴れ、それもここから近い、シャボンディ諸島。行きたくて、行きたくてしょうがないわ。ブワッハッハッハッ!」

 

 

 口に入っているせんべいもろとも笑いで吹き出す。

 

 

「お前が行っても、火に油を注ぐだけだ!」

 

 

「じゃが、レイリーが大暴れするほどの奴なのだろう?行かんきゃ、被害が拡大するだけだ。それで其奴はいったい何者なんじゃ?」

 

 

 テーブルに置いてある犯人関する情報が纏められた資料に手を伸ばし、その経歴や推測される強さに目を通す。

 

 

「綾小路・多々良。元白ひげ海賊団か。新世界の海賊とはまた随分と面倒じゃの」

 

 

「白ひげ海賊団にいたのはおよそ5年。CPの調べによるとゼロ番隊隊長だったらしい」

 

 

「ゼロ番か。それを意味するのは――」

 

 

 

 

――No.2

 

 

 

 

 2人の共通認識。

 ニューゲートは家族を大事にする海賊だが、例外が存在する。それはゼロ番隊。ゼロ番隊は元々曲者揃い、危険分子を集め、他の敵対する反乱分子を炙り出すための機関だ。ニューゲートとて家族の安全は最優先事項であり、白ひげ海賊団の古参メンバーを中心に面白半分で最初は設立された。今は多くの者が独立、それぞれの船で船長やっているため構成メンバーは近年減っているが、強さは健在で連携はとらないが個人として戦力はずば抜けており、今をなおそこの脅威は多くの海賊団から恐れられている。

 

 

 

「となると、大佐クラスだと荷が重いな。よし、わしが行こう!」

 

 

「それはダメだ、ガープ!天竜人の護衛があるだろうが!」

 

 

「え〜!わし、あいつら嫌いだし」

 

 

「ダメなものはダメじゃ!」

 

 

「目には目を、って言うじゃろ。なら、伝説には伝説だ!」

 

 

「屁理屈言うな!今は各方面の海賊対応で忙しいんだ!」

 

 

「え〜ケチ」

 

 

 鼻をほじくりながら明後日の方向を向く。センゴクは頭に血が上り噴火直前。能天気と苦労人。海軍本部で行われている日常茶飯事な行動に、一緒に部屋にいる他の将官達は2人の怪物に頭を悩ます。下手に出れば地雷を踏むことになり、後処理が大変であるため多くの者が静かになるまで傍観に徹する。

 

 

「それにしてもロジャー。余計なことをしおって」

 

 

「ブワッハッハッハッ!世界政府は煮え湯を飲まされたな。これで彼奴の狙いは大成功!それを対応する海軍、世界政府はいい気味だ!」

 

 

「笑い事ではないぞ!あれのおかげで私の休みがどこかに葬られたんだぞ!」

 

 

「世界政府か。全く、ワンピースくらいでギャーギャー騒ぎおって。子供か!?」

 

 

「口を慎め!コング元帥の助力もあって何とかなったんだぞ!」

 

 

「わーかって、分かっとる。コングさんがチャチャっと終わらせんたんだろ。なーにー、心配するではない。わしが行って片付けるから」

 

 

「あー分かればいいんだ。コング元帥を含め、私とお鶴ちゃんの頑張りがあって…………うん?…っあ!」

 

 

 横を振り返るといるはずの男が消えていた。近くにいる将官に目をやると、入り口の方を指差し、既にお留守であることを伝える。

 

 

 

 

 

「ガアァァァープウゥゥゥ!」

 

 

 

 

 

 1人苦労人が叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 




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