お姉ちゃんは何でもできる【完結】   作:難民180301

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第6話

 瑞乃の経験は神浜史上でも類を見ないレベルで長い。魔力を節約して最小の労力で魔女を倒す技術から、日々の生活で溜まる穢れを抑えるメンタルコントロールも習得しているため、毎日魔女退治に出かける必要はない。せいぜい週に一度あるかないかの頻度で深夜に家を抜け出している。さらに鶴乃がお年頃に突入して姉を抱きまくらにすることがなくなったので、深夜徘徊が鶴乃に感づかれることはなかった。

 

 今夜も8日ぶりの魔女退治を終え、帰路についた。早めに決着が付いたから長く寝られるはずだったが、

 

「黙ってちゃ分からんぜ、嬢ちゃん」

「ひええ……」

 

 瑞乃は顔も名前も知らない魔法少女を尋問していた。

 

 照明を落とした暗い万々歳。ご丁寧に二階から持ってきた電気スタンドとカツ丼代わりの中華丼(日本発祥)で取り調べっぽい雰囲気が漂う。容疑者の少女は頭にたんこぶをこさえ、涙目ですっかり萎縮している。

 

 ほかほか中華のいい匂いが漂う中、瑞乃が迫る。

 

「ここ新西では、魔法少女同士のケンカはご法度。ましてや魔女を倒した直後の同業を不意打ちで襲うなんて……エンコの覚悟はできとるんか?」

「ごめんなさいごめんなさいもう二度としません!」

「うん、いいよ」

 

 少女は戦いを終えた直後の瑞乃を襲った。

 

 当然のように中華鍋で防いだ瑞乃はひとまずみねうちで少女を気絶させ、万々歳へ運んだ。少女のソウルジェムは没収──するのはかわいそうなので、テーブルの上に置かれている。

 

 ごめん一つで許された少女は何を言われたかわからないように目を瞬かせ、

 

「いいん、ですか?」

「これでも結構魔法少女長くやっててね。グリーフシード強盗も初めてじゃないんだ」

「はあ……」

「で、提案なんだけど。強盗するガッツを別のことに活かしてみない?」

 

 魔法少女同士が争う原因はたいていグリーフシードの不足だ。魔法少女の生命線であるグリーフシード、その元である魔女が不足すると、少女のような強盗も出てくる。

 

「別のことって?」

「私といっしょに魔女退治しようぜ!」

「嫌です!」

「即答!?」

 

 少女は頭をかかえ、耳をふさいでうずくまった。

 

「だって私、魔女があんなに怖いなんて知らなかったんです……キュゥべえは素質があるって言ってたのに、魔法の力もクソザコだし……あんな怪物と戦ったら、絶対死んじゃいますよ……」

「な、仲間といっしょなら……」

「仲間? 万年ぼっちの私にケンカ売ってるんですか? 余計萎縮して動けませんよっ!」

「え、ええ〜……」

 

 少女は典型的な被害者系魔法少女だった。キュゥべえに魔法少女のきらきらした部分だけを売り込まれ、軽い気持ちで承諾したはいいものの実際に戦う力も度胸もないタイプだ。神浜市にはこうした力のない魔法少女が無数に存在していた。この手の魔法少女は強くなる努力も立ち向かう勇気もなく、ただ魔女になるのを待つしかない。

 

「どうせ私なんて何やってもダメなんです……やることなすこと空回り、努力は全部無駄になって、良かれと思ってやることが悪い結果を呼び寄せる……魔法を使えるようになっても、どうせ……」

 

 ただ、瑞乃はけっしてそれをよしとしない。

 

 自己嫌悪と共にみるみる濁っていく少女のソウルジェムに、グリーフシードを突きつける。穢れはグリーフシードに吸収され、本来の輝きを取り戻した。

 

 貴重なグリーフシードを使われた少女は、目を丸くしている。

 

「なんで……」

「セットメニューに変なおもちゃ付ける店、あるじゃん?」

 

 瑞乃はグリーフシードをおもちゃのように指でもてあそび、中華丼の横へ置いた。

 

「ウチもマネしようと思ってて、この中華丼は試作品。今度から裏メニューで提供するよ」

「裏、メニュー……そんなことだろうと思った。どうせお高いんでしょ?」

「四九〇円税込」

「ワンコイン!?」

「ただし、口外無用。どうしても困ってる人がいればさすがにだけど、有名になったら裏メニューっぽくないじゃんね」

 

 使用したグリーフシードは、まだ一、二回使えるだろう。少女の手にそれを握り込ませ、まっすぐに向き合った。

 

「向き合うのが嫌ならそれでいい。戦わなくてもいい。辛くなったら、いつだって逃げていいんだ。だからもうちょっと、生きてみよう?」

「……はい。はい……!」

 

 泣き崩れる少女の肩を抱き、落ち着くまで胸を貸す。二十分ほど経ってから、少女は鼻をすすりながら出ていった。去り際に頭を下げていった少女の瞳には、小さくとも確かな希望が灯っていた。

 

 何をしても状況が悪化して、一縷の希望に手を伸ばせば新たな絶望が待っている。少女の境遇はかつての瑞乃そのものだった。放っておけるわけがなかった。

 

「もうちょっと生きて、なんて。どの口が言うんだか」

 

 瑞乃のつぶやきは誰にも聞かれることなく、夜の神浜に消えていく。

 

 この日から万々歳は、力なき魔法少女たちの最後の希望としてひそかに噂されることになる。噂の内容は、店長代理に黒タマ中華丼と注文すると、魂を浄化する奇妙なおもちゃが付いてくるとかどうとか。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 瑞乃が見知らぬ少女に同情を与えた報いを受けたのは、半年後のことだった。

 

「やっち、みっふ! 久しぶりー」

 

 お昼のラッシュアワーを終えた昼下がり、やちよとみふゆが万々歳を訪ねてきた。瑞乃が急遽進学を断念してからは疎遠になっていたので、瑞乃は満面の笑みで二人に駆け寄る。

 

 しかし二人は暗い顔で「ええ」「はい」と愛想なく返すばかりで、再会を喜ぶ気分ではないようだった。ひとまずカウンターに座らせて話を聞くと、理由はすぐに分かった。

 

「魔法少女は、魔女になるの?」

 

 やちよとみふゆは縋るような目で瑞乃を見つめていた。瑞乃が否定してくれることを期待していた。その気持ちが分かっていても、瑞乃は「そうだよ」と応えるほかなかった。

 

 やちよとみふゆは、偶然魔法少女が魔女になる瞬間を目撃したという。ソウルジェムが穢れきり、異形の怪物が現れる瞬間を。二人はすぐさまキュゥべえを問いただし、『魔法少女の真実』を知る。それでも信じられず、むしろ信じたくなくて、一番信頼できる瑞乃のところへやってきたのだ。

 

 二人が目撃した魔女は、万々歳の噂を聞きつけた力のない魔法少女だった。万々歳へたどり着くまでに力尽きた瞬間に、二人が鉢合わせした。二人へ間接的に真実をつきつけたのは瑞乃だった。

 

 そうした経緯は知るよしもないが、瑞乃は真実を語る。キュゥべえから聞いたものと同じ説明に、やちよとみふゆはさらに顔を青くした。

 

「魔法少女が魔女になるなら……私たちが倒してきたものは……」

「そんな、そんなのって……あんまりですよ……」

 

 瑞乃は二人におしぼりを渡して、店先に準備中の札を吊るしておいた。真実を知った魔法少女への対応はもう慣れっこだ。

 

 二人の嗚咽が止むまで瑞乃は黙って隣に座り、時折背中をさすって、手を握った。

 

「ねえ、瑞乃」

 

 最初に立ち直ったのはやちよだった。

 

「元は魔法少女だった魔女を倒すのって、同じ魔法少女を殺してるってことよね……あなたはどうやって受け入れたの?」

「相手の身になって考える、かな。たとえば私が魔女になって大切な誰かを傷つけたら、いっそ死にたくなる。だから魔女も使い魔も、見かけたら即倒すのが供養だと思う」

「……」

 

 やちよは真剣に瑞乃の考え方を咀嚼している。

 

 その間に、まだ泣き止まないみふゆが割って入ってきた。

 

「ワタシは普通の女の子になりたかったんです」

 

 みふゆが語ったのは願い事についてだった。みふゆは普通の女の子に憧れていたけれど、たとえ普通になっても自由を享受できる自信がなく、せめて夢の中だけでも自由でありたいと願った。普通になることを諦め、願い事を妥協した。

 

「でも魔法少女になった時点でもう、普通ではなくなっていたんですね……こんなゾンビみたいな体にされて、最後には化物に……」

「違うよ」

「ふぇ?」

 

 みふゆの柔らかなほっぺを引っ張り、正面から見つめ合う瑞乃。強く引っ張りすぎてみふゆの頬に痛みが走る。

 

「痛い……」

「でしょ? 痛がって、泣いて笑って嫉妬して。ゾンビはそんなことしない。それは普通の女の子がやることじゃんね」

「あ……」

 

 目を丸くして絶句するみふゆの頬を離し、瑞乃は身を引いた。思案しているやちよと呆然とするみふゆを見やり、何かを諦めたように小さく息をつく。

 

 瑞乃に二人の気持ちは分からない。たとえ契約前に真実を知っても、ためらいなく魔法少女になったと思うから。

 

 けれど友達が参っているのは見ていられず、瑞乃はいつかのように提案する。

 

「どうしても受け入れられないっていうなら、辞めちゃおう」

 

 魔法少女を辞める。あまりにもあっさりとした言い方にやちよとみふゆは耳を疑い、瑞乃はもう一度繰り返す。

 

「苦しいとか辛いとか、そんなのもうたくさんでしょ。魔法少女とか辞めちゃおうよ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 瑞乃に促されやちよとみふゆがやってきたのは、新西区の建設放棄地だった。雑草だらけの空き地と鉄筋がむき出しの建設物が散在するばかりで、誰も寄り付かない。

 

 向かい合う三人を西日がオレンジ色に照らしている。やちよとみふゆの瞳は不安で揺れており、一方の瑞乃は不自然なほど晴れ晴れしていた。

 

「ソウルジェム貸して」

 

 瑞乃はこれから固有魔法を使って、やちよとみふゆを普通の少女に戻す。キュゥべえには不可能と聞いていた所業なので、二人は半信半疑のまま瑞乃にソウルジェムを委ねた。

 

 瑞乃は二つのソウルジェムを地面に置き、膝を着いて手をかざす。するとソウルジェムを中心に、目を焼くような光の輪が展開された。

 

 光輪は十重二十重に絡まり合い、リールからほどけた糸のように宙を漂う。

 

「これは……!?」

「因果。今から二人の因果をいじって、魔法少女になったことをなかったことにするよ」

「そんな都合のいいことが本当に……?」

「できるできる。都合がいいのは私の領分──それが私の、魔法だから」

 

 瑞乃は転生して物語のように順風満帆な生活を送りたいと願った。その祈りは歪んだ因果と絡まって、どこまでも都合のいい固有魔法として結実する。

 

 『ご都合主義』の魔法である。

 

 内実は因果への干渉。あらゆる事象の因果へ自動的に干渉し、瑞乃に都合のいい結果になるよう誘導する。多大な魔力と集中力を消費すれば、具象化した因果を操作し意図した通りに過去を改変することもできる。

 

 神々しい光輪を前に一歩後ずさるやちよとみふゆ。

 

 瑞乃は少しずつ光輪へ意識を没入させながら、最後の了承を確認した。

 

「因果を操作したら、魔法少女になってから得たものを全部失う。それでも、魔法少女を辞める?」

「はい。やっちゃん、みっちゃんと一緒なら、乗り越えられるかもしれないですが……辞めることができるなら是非もありません。お願いします」

「私も同じよ。辞めることができれば……?」

 

 そこでやちよは違和感を覚えた。

 

 魔法少女になってから得たものを全部失う。これは魔法の力や身体能力、戦うための力を失うのだろうか。それとも文字通り全部だとすれば──

 

「分かった。じゃあ──さよならだね」

 

 光輪がより強く発光し、恐ろしいほど強大な魔力が瑞乃を中心に渦を巻く。

 

 魔力の奔流の間から見えた瑞乃の寂しげな表情と、わずかに風に乗って聞こえた声から、やちよは最悪の可能性に思い至った。

 

「待って、待ちなさい! もしかして文字通り全部って意味じゃないでしょうね!?」

「全部だよ。魔力、体力、戦うための力──出会いも友だちも仲間もみんな、なかったことになる」

「……え!?」

 

 みふゆもやっと失うものを悟って、信じられないというように瑞乃を見やる。

 

 因果とは原因と結果を意味する。やちよとみふゆが魔法少女になったことが原因で、その結果が瑞乃との出会いであり、友情だ。原因の方をなかったことにすれば、それに連なる様々な結果も消滅してしまう。やちよたち三人は赤の他人に戻る。この融通の利かなさこそ、過去の改変という破格の固有魔法の欠点の一つだった。

 

 とっさに瑞乃へ駆け寄ろうとするやちよだが、嵐のような魔力に圧されてうまく進めない。みふゆはオロオロと判断に迷っている。

 

「今なら言える。私と友だちにしちゃって、ごめん」

 

 そんな中、瑞乃の声が聞こえた。罪を懺悔するような声音だった。

 

「私ってすっごいイヤなやつでさ、何やってもダメで、うまくやってる他人が妬ましくて、辛いことから逃げてばっかりのクズなんだよね」

 

 いつも自信満々で最強と自称してはばからない瑞乃とは別人のような、悔悟に満ちた自虐だった。待てと言われたのにも気づいていない。

 

 自我が芽生えたその時から、固有魔法の知識があった。使い方も危険性もみんな把握できて、それでも自動発動の能力だけは止めようがなかった。

 

 やちよは一歩距離を詰める。

 

「やっちとみっふみたいなすっごいいい子たちと、友だちになれるわけない。きっと無意識にご都合主義で、二人の因果に干渉してたんだと思う。私の友だちになるように、二人の運命を捻じ曲げたんだ」

 

 やちよはさらにもう一歩距離を詰める。瑞乃はぼうっとした表情で光輪に手を伸ばしており、改変までの猶予はない。後少しでやちよの手が届く。

 

「私の友だちにさせてごめん。でもこれで正しい形に戻るから──」

 

 やちよの背をみふゆが押す。それでようやくやちよは瑞乃の体に手が届き、首根っこを掴んで引っ立たせる。

 

 卑屈極まる自虐モードの瑞乃はトランス状態のように目が死んでいて、まだ光輪へ手を突っ込もうとしている。

 

 果たしてやちよのとった行動とは。

 

「バカッ!」

「へぶっ」

 

 ビンタである。

 

 ぱあん、と小気味よい破裂音が広い空き地に響き渡る。魔力の乗った本気のビンタは瑞乃に正気を取り戻させ、瑞乃は呆然として熱い頬に手をやった。可視化された因果の光輪はその一撃で砕け散り、静かな空き地が戻ってくる。

 

 数秒後、事態を把握した瑞乃は堰を切ったように喋りだす。

 

「さすがに! 予告なしのガチビンタはさすがにだよやっち!? 親しき仲にも礼儀ありって言葉を──」

「瑞乃」

「あっ、はい」

 

 氷のように冷たい声音だった。どんな魔女よりも恐ろしいやちよの迫力を前に、瑞乃は冷や汗が止まらない。

 

「あなたはこう言いたいの? 私があの時あなたに抱いた気持ちも、笑いあった思い出も、全部あなたの変な魔法のおかげだったって。私が今怒ってるのも、全部」

「は、はい、きっとそうだろうなと……」

「ふーん」

 

 やちよの両手が瑞乃の両頬を挟み込む。普段眠たげに見える目元がカッと開かれ、

 

「ふざけてるの?」

「ひいっ!?」

 

 瑞乃を抉るように睨みつけた。

 

 同時に瑞乃は悟る。今までやちよに怒られたと思ったことはあるが、あれはただのツッコミだ。今のやちよこそ真のプンプンモード──ガチギレやちよであると。あまりの迫力に見ているだけのみふゆでさえ、目を丸くして後退っている。

 

 やちよは一度深呼吸。

 

 それから、震える声で言った。

 

「あなたにすっごく怒ってるこの気持ちも──三人一緒なら、魔法少女を続けたいって思ってることも全部まやかしだってそう言いたいなら……私はあなたを許さない」

 

 やちよは悲しくて、腹立たしかった。三人で一緒に築いてきた思い出、絆、友情。みんな瑞乃が作り出した偽物に過ぎず、正しくないものだと、大切な仲間である瑞乃自身に否定されたことが悲しくてたまらない。

 

 たしかに瑞乃の固有魔法ならそれほど強力な効果もあるだろう。先程の魔力の嵐はやちよもみふゆも経験したことのない規模のもので、どんな不可能も可能にできるかに思えた。因果に干渉することもできるだろう。

 

 しかしだからどうしたという話だ。

 

「決めた。私は魔法少女を続ける。この気持ちを忘れてなあなあであなたを許すくらいなら、魔女になった方がマシよ」

「……男前だなぁ」

「うるさい」

 

 やちよの睨みを受けた瑞乃は背筋を正して口をつぐんだ。

 

 一人残されたみふゆはというと、

 

「ワタシも続けます」

 

 心を決めていた。

 

 真実を知ってからは、過酷な魔法少女の宿命のことしか考えられなかった。そこに究極の二択を迫られることで、宿命以外に得た思い出や絆のことへ思い至った。これを捨てるくらいなら魔法少女でいる方がいい。何よりも、

 

「三人一緒にいればどんな運命だって乗り越えられる。そんな気がしますから」

 

 みふゆはやちよと目を合わせ、意を同じくして並び立つ。

 

 そうしてへたり込む瑞乃に対し、手を差し伸べた。

 

「……本当にいいの? 魔法少女を続けて、私なんかの友だちのままでいいの?」

「今度親友のことを悪く言ったら、もう一発行くからね」

「私もお手伝いしますよ」

「……っ! ごめん、ごめんね。ひどいこと言ったよね……!」

 

 こうして少女たちは手を取り合って立ち上がり、新たな因果を紡いでいく。ご都合主義の加護があろうとなかろうと、三人一緒にいる限り希望が潰えることはないだろう。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 その夜のこと。

 

 珍しく臨時休業となったため、瑞乃は鶴乃と共に居間で湯呑片手にくつろいでいた。

 

 分かりやすく上機嫌な姉に、鶴乃は嬉しそうな笑顔で、

 

「お姉ちゃん、何かいいことあった?」

「んふふー、実はね──」

 

 瑞乃が語ろうとしたその時、びしり、と硬質な音がする。

 

 まさか不吉なフラグのごとく、湯呑に亀裂でも入ったのか。そう思って見てみるが、湯呑自体は無傷だった。鶴乃のものも同様で、姉妹そろって首をかしげる。結局気のせいということで話は流れ、瑞乃は友だちと仲良くなれことを語り出す。

 

 紡がれる絆の裏で瓦解していく何かがあるなどと、その時は誰も知る由はなかった。


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