【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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皆様お待たせしました。

新年一発目の投稿、は・・・


97話_メルド・ロギンス

「ダメージレベル97%、もう、持たないわ…!」

「くっ此処までなのか…!」

 

シュネー雪原で待機していたストリボーグが、邪神エヒトルジュエの眷属の大軍が進撃して来るのを捉え、迎撃に動いてから数分後、雪原と魔人族領との境目で交戦状態に入ったストリボーグは窮地に立たされていた。

ストリボーグ側も健闘はした、イエヌヴァリのそれも含めて計11門も搭載したマルチプルカノンの圧倒的火力に物言わせての砲撃の嵐によって数千もの眷属達を消し飛ばしたり、向こうからの攻撃もイエヌヴァリが迎撃したり昇の無茶苦茶な操縦手腕で被弾を最小限に抑えたりした、だが多勢に無勢、増して向こうは神山上空での戦闘で多大なる被害を受けた事を教訓に、それを踏まえた策で対抗、度重なる攻撃を食らったストリボーグもイエヌヴァリも陥落寸前にまで追い込まれてしまったのだ。

 

「慎重に扱え、中には我らの同胞が捕えられているのだからな。それに船員達もイレギュラーに対する人質に使える、着実に確保するぞ」

「無論です、イレギュラーの力は我々の手に余る。少しでもその動きを封じる手を下さねば」

 

そんなストリボーグの様子を見てもう抵抗する力は残されていないと判断した眷属達、それを指揮するは何故か人間族と、人間族の殆どが信仰していたエヒトルジュエとは敵対関係にあった筈のフリード。

人間族のテリトリーへ侵略を仕掛けてものの見事に返り討ちにされてから一週間も経っていない内に、敵対していた筈のエヒトルジュエの眷属にも匹敵しうる力を得てそれらを率いている姿を見て、魔人族達も、彼らが信仰するアルヴなる神もまたエヒトルジュエの手先だったのだとクルーは思い知った、それならばものの見事な掌返しも説明が付く。

そんな眷属達とてハジメ達8人には、彼らが搭乗するヴァスターガンダムには敵わないと痛感、ならば戦闘以外の方法で無力化してしまえば良いと考え、淳史達を人質にとってしまおうと判断、こうしてストリボーグを陥落寸前まで追い込む事にしたのである。

尤もストリボーグにはガーランドが送り込んだ魔人族の先遣部隊が動力源として囚われている、手荒な真似をしてでもそれを解放せねばという考えもあるのだが…

 

「俺達は、死んでもハジメ達の足手纏いにはならねぇ!」

「「おう!」」

「『えぇ!』」

 

だが淳史達には人質になってでも生き長らえる気は、ハジメ達の足手纏いになる気は毛頭なかった。

眷属達が自分達の確保に動いているのを見た彼らはそう言いながら、ホルスターに入れていたグローサを取り出し、その銃口をこめかみに突き付けた。

自分達が人質という形でハジメ達の足手纏いになってしまう位ならいっそ自ら命を絶つ、そんな決然とした様子でグローサのトリガーに指を掛けんとする淳史達だが、

 

『その必要は無い!』

「だ、団長!?」

 

そんな淳史達に早まるな!と言わんばかりに、最前線にいた眷属達へと何処からともなく光の奔流が降り注ぎ、それを浴びた数百もの眷属が消滅した。

マルチプルカノンの砲撃と思しき光の奔流、その直前に耳にした聞き覚えのある声、直後にストリボーグと眷属達の間に割って入った朱色のマナフレームのヴァスターガンダム…

此処からはるか遠く、ハイリヒ王国王都で防衛に当たっていた筈のマルトゥが、騎士団長であるメルドの専用機であるマルトゥが今、淳史達を守るべく戦場に舞い降りたのである。

 

「駄目だ団長、団長のマルトゥが敵う相手じゃ無い!」

 

まさかの援軍だったがストリボーグの窮地が覆る事は無い、そう思った淳史は撤退する様メルドに呼び掛けた。

ヴァスターガンダムの高性能も、そのスペックを発揮出来るか否かはパイロットの魔力量に依存する事も今更説明するまでも無いだろう、マルトゥのパイロットであるメルドの魔力量は、ヴァスターガンダムを問題なく動かすには十分でも、エヒトルジュエの眷属を相手取るには全然足りなかった。

そんなマルトゥが例え助太刀に入った所で焼け石に水、数万もの大軍である眷属達の優勢は変わらない、敵も味方も関係なくそう判断する者が殆どだったが、

 

『良いから、さっさと寄越せ、マルトゥ…!』

「な!?」

 

メルドのそんな呟きが聞こえた瞬間、その判断を撤回せざるを得なくなる事態が発生した。

その呟きの直後、マルトゥの全身が朱色に輝き出すと共に魔力量が急激に増加、ハジメのアヴグストを通り越して香織のアクチャブリに匹敵する程の力を得た様に感じられたのだ。

まさかの事態にフリードも眷属達も、淳史達も戸惑いを隠せない、然し今は戦闘中だと対峙する側であるフリード達は態勢を整えるも、

 

『行くぞ…マルトゥ!』

『グォォォォォォン!』

 

マルトゥの眼が真紅に輝き、咆哮を上げた次の瞬間、音をも軽く超える速さで眷属の大軍に突進、同時に振るわれた腕の一撃によって実に千近くもの眷属達がズタズタに引き裂かれ、その命を散らした。

だがそれだけでは終わらない。

 

『グッ!オォォォォ!』

『ウォォォォォォン!』

 

一瞬、ほんの一瞬だけ苦悶の声を上げるメルドだったがそれに構う事無く突撃を再び敢行、眷属達も同じ手は喰らわないと迎撃しようとするも上下左右にジグザグと動いた事で狙いを定められず接近を許し、次々とその命が消し飛ばされて行く。

ある眷属は何度も何度も(凶器)を振るわれて小間切れにされ、ある眷属は余りにも強烈な頭突きを受けて地面に激突して大地の染みと化し、ある眷属は上段回し蹴りをモロに食らってその身がズタボロになると共に上空へと打ち上げられて血の雨を降らせた。

 

「団長…?

何やってんだよ、団長!?」

 

マルトゥのパイロットであるメルドの実力を踏まえればあり得ない筈の蹂躙劇に敵味方問わず混乱が広がる戦場、だが程なくその理由に、淳史達クルーは行きついた。

騎士の忠誠。

メルドを始めとした、国や教会の上層部に位置する者達が、それ故に持つ事が許される重大情報を敵に渡さない為に所有が義務付けられている、所有者の数十倍もの魔力と自爆魔法の術式を内包した魔道具。

メルドはそれに内包されていた膨大な魔力をマルトゥの動力源として全て注ぎ込む事でハジメ達が搭乗するヴァスターガンダムに匹敵する程の出力を引き出し、眷属の大軍相手に無双すると言うメルドが搭乗するマルトゥが引き起こしているとは到底思えない光景を作り出しているのだ。

だがそんな膨大な魔力はヴァスターガンダムの全身に循環された末に、動力源であるパイロットへと流れ込む、己のキャパシティを遥かに越えた魔力がメルドへと流れ込んで来るのだ。

またメルドの魔力はヴァスターガンダムを普通に動かす分には問題ない程の多さだった為に、マルトゥには魔力不足を補うマナジェネレーターが搭載されていない、それはつまり、余剰魔力の逆流を緩衝する機構など無い、それを全てメルド自身が受け止めるしかないという事でもある。

そしてそんな己の限界を遥かに超えた魔力が身体に流し込まれたらどうなるか。

 

「わ、私は、こんな所で!?あ、あぁぁぁぁ…!?」

 

その結末を想像して焦りを隠さない淳史達クルー、そんな彼らを他所にマルトゥの無双劇は勢いを増すばかり、やがて残る眷属がフリードを含めて数千位になったタイミングで、背中に装着されたジェットエンジンの排気口らしき機構――リボーンズキャノンのGNキャノンをイメージして造られたマルチプルカノン『ターボブラスター』の砲口を眷属達に向け、予めチャージしてある魔力を全集中させたビームを発射、強大な光の奔流が1体の撃ち漏らしも無く飲み込み、塵一つ残さず消滅させた。

 

「…おい、マルトゥのコクピット内カメラの映像に繋げ、早くやれぇ!」

「今やってるわよ!」

 

ほんの数分前まで自分達が窮地に追い込まれていたのが嘘であったかの様に殲滅された眷属達、だが安堵の様子など欠片も見せず、それどころか戦況をひっくり返して見せたメルドの安否に対して絶望感を露わにするクルー、急いで状況を把握すべくマルトゥのコクピット内カメラへの接続を試みる。

 

『はぁ、はぁ…!

何だよ、結構やれるじゃないか…!』

「だ、団長…?」

 

妙子が予め作業を進めていた事もあって程なく接続、カメラが見ている映像が、マルトゥのコクピット内の様子がモニターに映し出された。

其処に映っていたのは、

 

「あ、あぁ…!」

 

息も絶え絶えで、穴という穴から夥しい量の血を流すメルドの姿だった…

 

『何て声を出すんだ、淳史…』

「だって、だって!」

『俺は、ハイリヒ王国騎士団長、メルド・ロギンスだ…!

この位、どうと言う事は無い…!』

 

幾ら人間族最強と言えど己のキャパシティを遥かに超えて逆流して来た魔力の暴走に耐える事は出来ず崩壊、何時息絶えても可笑しくない状態となってしまったメルドの肉体、その惨状を目の当たりにしてこの世の終わりだと言いたげな声を上げる淳史、そんな彼らクルーを安心させようとメルドは満身創痍な身をおして気丈に振舞った。

 

「俺達の、俺達なんかの為に…!」

『お前達を守るのが、俺の仕事だ…!』

「けど!」

『良いから行くぞ!皆が、待っているんだ!それに…!』

 

淳史達にもその気遣いは伝わっていた、だからこそメルドの苦痛の程が、自分達が犯したミスの代償がどれだけ大きかったのかを突きつけられた、彼らクルーの「もう無理をするな」と言いたげな声を振り切るかの如くマルトゥは立ち上がり、雪原へと足を踏み入れた。

遥か先の大迷宮を攻略しているであろう、ハジメ達を迎えに行くかの様に。

 

(ハジメ、漸く分かったんだ)

 

止まる事の無い大量の流血、如何にもだと言わんばかりな途切れ途切れの声、魔力が尽きかけているのを知らせる様に明滅を繰り返すマルトゥのマナフレーム…

メルドをもう救けられない事は、今にも死にそうなのは確定的明らか、それでもメルドは、メルドが搭乗するマルトゥは一歩一歩、ハジメ達を迎えるべく雪原に足跡を刻んで行く。

 

(俺達の帰る場所は、この道の先にある。だから其処に向かって、前に進むだけで良い。止まらない限り、其処へ近づく)

『畏まったりしたら許さない』

『ああ、分かった』

(俺は止まらないから、お前達が止まらない限り、その先に俺はいるぞ!)

 

その途上で、メルドはふとハイリヒ国王となったハジメに仕えるのを決めた時の事を思い出していた。

主君である自分の事を呼び捨てにしろと、畏まった態度を取るなというまさかの命令には流石に戸惑いを隠せなかったが、威圧してまで畏まらせたがらないハジメの心情を察したメルドは今まで通りの対応をする事にした、例え地位が逆転しようとハジメにとってのメルド、メルドにとってのハジメ、その間柄は変えられない、変えたくないのだと。

とはいえハジメに対する、新しい国王に対する敬意を捨てた訳じゃない、いやその想いは日に日に大きくなった。

トータスに転移して来た当初からそのオタク故の柔軟な発想や、同パーティの香織達への的確な指示を見せていた所から指揮官等の人の上に立つ存在に相応しいと見ていたメルド、故にオルクス大迷宮の奈落の底に、香織達諸共落ちて行った時には相当落胆し、原因となった檜山達の厳罰を執拗に求めた。

その後ハジメ達の生存が判明したかと思えば帰還するつもりは無いと分かり、かと思えば王都に戻った時にはハイリヒ王国の新しい国王に即位し…

といった感じで僅かな期間でその立ち位置がころころと変わったが、その立ち位置を変える切っ掛けとなった出来事について聞き、王としての立ち振る舞いを目の当たりにしていくに連れてハジメこそが自分が仕えるべき王だとの想いを強めて行った。

そして今、ハジメが歩まんとしている道の果て、其処こそが自分達トータスに住まう人達にとっての帰るべき場所なのだと、騎士団長として、その道を歩むハジメ達の先導となる事こそ己の生まれて来た意味、自分が果たすべき役目なのだと確信した。

 

(だから)

『止まるんじゃねぇぞ…』

 

今この時に至った「自分は何故生まれて来たのか」という問いに対する答え、だがもう己の命は今にも尽きようとしていた。

突き進まんとしている道を迷わずに進め、そんなメルドの言葉を最後にマルトゥのマナフレームは光を失い、待機形態に変形すると共にその身がシュネー雪原の大地に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

ヴァスターガンダムのマナフレームが光を失うという事、それは動力源であるパイロットの魔力が絶たれたという事、パイロットであるメルドの命が尽きた事を意味していた。

ハイリヒ王国騎士団長、メルド・ロギンス。

その最期はらしいと言えばらしい、前線で散る壮絶な物だった。

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