【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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98話_そして全ては黒歴史となる

「メルド…さん?」

 

最後の大迷宮であるシュネー雪原の氷雪洞窟を攻略してから暫くして後、脱出手段として用意されていたドラゴンの氷像に乗って大迷宮を後にしたハジメ達、予め設定されていたであろう目的地である雪原と魔人族領との境目に到着した彼らが最初に目にした光景は、雪原に倒れ伏すマルトゥと、その周りで俯きながら鎮魂と思しき祈りを捧げる淳史達、その傍らで着陸している大破したストリボーグという光景だった。

 

「皆、これは、何?何でメルドさんが、ハイリヒ王国で待機していた筈のメルドさんが、雪原に?」

 

ドラゴンの氷像が着陸するや否や、血相を変えて現場に向かうと共に訳を聞くハジメ、その口ぶりからはストリボーグが陥落寸前、クルーである淳史達も確保を拒んで自決する寸前まで追い込まれ、それを阻止すべく介入したマルトゥの、パイロットであるメルドの文字通り決死の特攻で戦況をひっくり返して見せたフリード率いるエヒトルジュエの眷属軍との戦いなど知らないと言わんばかりであった。

とはいえそれも無理もないと言うしかない、その戦闘が始まったのはハジメ達が迷宮攻略を開始してから数時間後の事、その間に一行は文字通り迷路となっている道を羅針盤の力も借りて難なく進み、道中の魔物達も事も無げに退け、最終関門である『己の心の闇』と言うべき自分のコピーとの戦闘でも、ユエから心境の変化を指摘されたのもあってか自らの心の内に向き合った彼らにとっては大した関門ではなく攻略完了、と此処までは順調その物だったのだが、氷雪魔法で7つ目の神代魔法である変成魔法を修得する魔法陣に足を踏み入れた瞬間、既に他の6つの神代魔法を修得していた影響か変成魔法の知識と共に概念魔法の知識すらも刷り込まんとした所為で彼らの脳がオーバーヒート、それによる凄まじい頭痛に耐え切れず全員が気絶していた最中に眷属の大軍が襲い掛かって来たのだ、淳史がSOSを送ってもハジメ達が反応しなかったのはその為である。

ハジメ達が目覚めたのは戦闘が終わった後、ストリボーグは大破によって遠距離通信等の大半の機能が使えなくなり、マルトゥも無双劇の末にパイロットであるメルドが壮絶な死を遂げた後、そうとは知らないハジメ達は来たる邪神エヒトルジュエとの決戦に向けて、容量拡張等のアップグレードを施した宝物庫の新造や新兵器の開発等に数時間位時間を費やしてから脱出、したかと思えば目的地でまさかの事態に直面したのである、動揺するのは仕方の無い事だろう。

 

「メルドさんは…メルドさんは死んだ!マルトゥに乗って戦って、死んだんだ!

俺達を、俺達なんかを守る為に!己の何十倍もの魔力をつぎ込むなんて無茶をして!」

「そ、そんな…!?」

 

そんなハジメからの問いかけに、未だ悲しみが癒えぬ淳史が、それ故の激情のままに答えた。

その言葉に信じられないと言わんばかりな様子のハジメ達、だが大破したストリボーグや、地表に飛び散った眷属のそれと思しき血漿や肉片が視界に入れば嫌でもそれが事実なのだと思い知らされ、そんな事態に至った要因は何なのかに行きついた、行きついてしまった。

ストリボーグ及びヴァスターガンダムの性能ならば問題ないと、多少手薄にしても大事には至らないと過信した事か。

超長距離砲撃で都市に少なくないダメージを与えつつ、進撃を事も無く返り討ちにすれば暫くは大人しくなるだろうとガーランドを舐めてかかっていた事か。

それとも魔人族とエヒトルジュエの眷属が手を組むなど、眷属はまだしも魔人族側のプライド的にあり得ないと甘い見立てを立てた事か。

…或いは、その全てか。

 

「淳史達はこれを持って、先にハイリヒ王国へ帰還して欲しい。ISを動かすだけの魔力はあるよね」

「…ハジメ達は?」

「ちょっと野暮用を終わらせてから帰るよ」

「…分かった」

 

メルドが戦死してしまうという事態に至らしめた自分達の『ミス』に気付き、淳史達と同じく泣き崩れてしまった香織達、一方でハジメは特にそういった様子は見せず「そっか」と一言呟いた後、今まで使っていた宝物庫にマルトゥとストリボーグを回収、それを淳史に手渡しつつハイリヒ王国への帰還を指示した。

 

「トシ」

「おう」

 

指示を受けてハイリヒ王国へと帰還する淳史達の様子を気配で感じ取ったハジメは、幸利に対して何事かを指示しようとするが、幸利はその呼びかけに「皆まで言うな」と言わんばかりに応じて行動に移した。

その為の準備と言わんばかりに、ハジメが新たに作った宝物庫に移したディカブリを呼び出す、が、その姿はユニコーンガンダムをイメージして造られたヴァスターガンダム、その1機であった筈のそれとは随分とかけ離れていた。

デストロイモードをイメージした起動形態に一部だけながら既に移行している頭部、純白だった筈なのに大半が赤紫に、残る部分が銀色に染まっている装甲、まるで翼が生えたかの如く背中に装着されたSFS(サブフライトシステム)を思わせる形状の新設パーツ…

機動戦士ガンダムSEEDシリーズにおける「もう1人の主人公」と言われるアスラン・ザラの、SEED Destinyにおける終盤の専用機『インフィニットジャスティスガンダム』を思わせる姿と化していたのだ。

そんな劇的な変化を遂げた自身の専用機を見ても全く気にする事無く、後方に控えていたハジメ達も何ら指摘する事無くコクピットへと乗り込み、

 

「清水幸利、ディカブリIJ。出るッ!」

 

その名を、概念魔法を修得した己がパイロットの魔力に呼応して進化を遂げたディカブリの新たなる姿『ヴァスターガンダムペレストロイカ*1・ディカブリIJ(インフィニットジャスティス)』の名を名乗りつつ、出撃した。

まずは背中に装着されていた、インフィニットジャスティスガンダムのファトゥム-01にあたるフライトユニットを分離させて遠方へ向かわせると共に自らも飛び立ち、

 

「数多の身に宿りし魔力よ、我が呼びかけに応じ、我の号令に従え!我こそは全ての魔力を統べし者なり!『月光蝶』!」

 

シュネー雪原から程近い、魔国ガーランドの首都と思しき都市の上空に陣取った所で己の十八番である月光蝶の詠唱を行うと共に、ダブルブラスターの砲口を都市へと向け、

 

「人を騙る傲慢なケダモノ共め!貴様らの国も!ミームも!遺伝子も!何もかも!黒歴史の底へと沈めてくれる!」

 

魔国ガーランドへの、魔人族全てへの敵意や憎悪、憤怒や怨恨といった考えうる限りの悪意を込めた叫びと共に、極彩色の魔力を放出した。

ガーランド側もディカブリが攻撃を仕掛けようとしているのが明らかなのにそれを黙って受ける筈が無い、神山の大聖堂でも見た様な障壁を展開して防ごうとするが、月光蝶にはそんな魔力製の壁など通じない、たちまち浸食されて無力化、その勢いは少しも削がれる事無く都市の隅々まで殺到した。

其処から繰り広げられるはハジメ達にとっては見慣れた、然し魔人族達にとっては未知の光景、少しでも触れれば死に至ってしまうのではないかと言える程の苦痛に苛まれた末に気絶し、その身が同じ色の繭に包まれてしまうという極彩色の魔力、それが都市の至る所に充満するのだから逃げ場など無く、首都に住んでいた者達は老若男女、貴賤の区別なく僅か数分で全て無力化された。

そんな光景は魔人族側のテリトリーである他の都市でも、遠方へと飛来させていたディカブリIJのフライトユニットによって全く同じ形で繰り広げられ、一時間も経たずに全ての魔人族が無力化し、極彩色の繭によってその身を封じられた。

それを受けて後方で待機し、ディカブリIJの様に己が魔力に呼応して変貌を遂げた専用機に乗り込んでいたハジメ達も行動を開始、各地に散開し魔人族が封じられている繭を新造の魔力庫に次々と回収していった。

 

「皆。魔じ、じゃなかった、人型魔獣の回収漏れは無いね?」

「…人型魔獣と思しき魔力反応がのうなった事は、此方では確認済みじゃ。皆もそうであろう」

「了解。そしたら帰ろうか、僕達の国へ」

 

やがて全ての魔人族を回収し終えた面々が首都だった都市の外れで合流、見つけ損ねが無いか確認をした後、ハイリヒ王国へと帰還して行った。

 

魔国ガーランドが、いや、魔人族の文明全体が致命的なダメージを受け、それを担う者達も1人残らず無力化・確保された幸利の『月光蝶』の一撃、これによって魔人族の歴史は彼の言う通り黒歴史の底へと沈み、二度と表に出る事は無かった。

*1
ロシア語で再構築。1980年代後半のソビエト連邦にて、最高指導者であるミハイル・ゴルバチョフが推し進めた政治改革運動の名前でもある




ハジメ達が犯した『ミス』の原因

・いち早く迷宮攻略を果たさねばという焦り
・ストリボーグ及びヴァスターガンダムの性能への過信
・超長距離砲撃と進軍の撃退によって大人しくなるとガーランドを舐めていた
・魔人族とエヒトルジュエの眷属は手を組まないという甘い見立て

その代償:メルドの死、その重さは…
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