【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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99話_悪魔王の目覚め

「メルドの件、淳史さん達からお聞きしました」

 

ガーランドへの報復攻撃として放出された月光蝶、それによって繭と化した魔人族を1人残らず回収したハジメ達はそのままハイリヒ王国へ帰還、リリアーナの出迎えを受けて王宮へと入って行った。

その王宮内の雰囲気は、メルドの戦死が淳史達によって伝えられたのもあってかお通夜状態、いや、戦死したメルドを今後葬ると考えれば文字通り通夜と言っても良いかも知れない。

 

「迷宮攻略に差し障りがあってはならないと報告しておりませんでしたが、皆さんがハルツィナ樹海を立たれたとの報を受けた少し後、メルドが「火急の件ゆえ」と一言伝えただけで、我らに無断で王都を出立したのです…」

 

その雰囲気の中でメルドがあの場に、此処からはるか遠くの地であるシュネー雪原近くに現れた経緯を説明したリリアーナだがその途中、あの時力づくで止めていれば、そう言おうとした所で口をつぐんだ、もしメルドを止めたらどうなったかに気付いたからだ。

確かにメルドを止めていれば彼が死なずに済んだかも知れない、だがそうなれば孤立無援となったストリボーグは陥落、クルーである淳史達はエヒトルジュエの眷属達によって拘束されていたか或いは自決したか、どちらにせよ此処には戻って来れなかった筈だ。

どっちがハジメ達に、この国に、この世界にとって良き結果に繋がったかは言うまでもないだろう。

 

「メルジーネ海底遺跡の最終試練の時、人間族と亜人族、魔人族の勢力同士による和平が成されて程ない頃の映像を見せられたんだ。結局はエヒトルジュエの、その眷属によって和平は台無しにされてはいるんだけど、和平が結ばれる前に繰り広げられた世界規模の、泥沼と言うべき長きに渡る戦争、その中で人間族側の代表たるアレイスト王が奔走した末に亜人族と、魔人族と和平という形で戦争を終わらせた事、種族間のわだかまりを乗り越えて和気藹々と交流出来ている事を見せられて、こんな風に分かり合える時があったのだと、今は敵対している魔人族とも手を取り合える可能性があるのだと思ったよ」

 

それを知ってか知らずか、ハジメはメルジーネ海底遺跡での出来事を話し始めた。

あの時見せられた過去の映像がハジメに齎したのはリリアーナに纏わるトラウマばかりではない、人間族と亜人族だけでなく、魔人族とも手を取り合えるのではという希望もであったのだ。

 

「リリィを通じてこの世界の人間族と、シアを、ハウリア族の皆を通じてフェアベルゲンの亜人族と分かり合えた。エリセンの海人族と分かり合えたのもミュウとレミアがいてくれたからだ。そしてハイリヒの国王に就いてからの外遊でヘルシャー帝国、アンカジ公国、フェアベルゲン…

ライセン大峡谷の北側に位置するこれらの国が、人間族と亜人族が手を結ぶ事となった。其処に至るまでに様々な問題が発生したし、今なお懸案は残っているけど、それでも皆が互いを分かり合える様に一歩一歩前へ進んでいる。後は魔人族と、魔国ガーランドと和平条約を結び、そして我らの同盟に迎え入れる事のみだと考えていた。超長距離からの絨毯爆撃と、圧倒的勢力による迎撃、それによって我らの脅威を示してガーランド側の攻め手を止め、その間にエヒトルジュエを討伐する事で、此方を敵に回さない方が良いと思わせればと、和平交渉の席に着かせられればと心の何処かで思っていた。僕達がすべき事はこの戦争を終わらせる事であって魔人族を、ガーランドを滅亡させる事じゃ無い、平和的に終わらせられるならそれに越した事は無いとね。淳史、僕達が大迷宮攻略をしている最中、この前みたいに絨毯爆撃をしろって指示しなかったよね?あれはそういう事だったんだ」

 

大迷宮攻略を再開してから今日に至るまで何時でもストリボーグからの超長距離砲撃を行える環境は十分整っていた、それを行う上で障害となるライセン大峡谷は射線上に無かったのだから。

にも拘わらず、シュネー雪原の氷雪洞窟への攻略に出向く際にガーランド側の攻撃に警戒しろと念押しして置きながら一方でそれを指示せず、結局行われなかったのは、ハジメ達は魔人族との和平が成し遂げられるんじゃないかという希望を何となく抱いていたからだったのだ。

何時しかアレイスト王が一時でも成し遂げた様に人間族と亜人族、そして魔人族が種族の壁を乗り越えて交流出来る日が来るとハジメは、あの場面を目撃したハジメ達は心の何処かでそう思っていたのだ。

 

「だけどメルドさんはきっと、魔人族側がこのまま手をこまねいているとは思えないと、必ずや間隙を突いて、今まで以上に強大な軍勢で進撃して来るかも知れないと懸念していたのかも知れない。そんな折に僕達がシュネー雪原へ向かうとの連絡だ。シュネー雪原とガーランドは目と鼻の先、そして迷宮へ挑んでいる僕達は暫く不在。よってストリボーグは手薄、其処を魔人族は突いて来るかも知れないと、今行かねばストリボーグが危ないとメルドさんは思い立ったのかもしれないね。

 

そして事態はメルドさんの懸念通りとなり、それを防ぐ為に動いたメルドさんは死んでしまった」

 

だがそんな想いは打ち砕かれた。

そんな希望故の手心に加えてガーランドの戦力的にこれ以上牙を剥けられる筈は無いという慢心その他諸々が合わさり、ストリボーグの防衛戦力をイエヌヴァリ1機のみという手薄にも程がある状態で迷宮攻略に出向くというミスを犯してしまったハジメ達、その果てに待っていたのは、邪神エヒトルジュエの眷属を大量に迎え入れたガーランド軍によるストリボーグの襲撃、陥落寸前まで陥ったそれを守るべく奮戦したメルドの戦死という残酷過ぎる結果であった。

 

「メルドさんは己の命を懸けて教えてくれた。

 

魔人族は、いや、奴らに『(じん)』などと誉れ高い呼び方をしては駄目だ、これからは奴らを『(ひと)型魔獣』と呼ぶ事にする。奴らは敵だ、完膚なきまでに滅ぼすべき敵だ、と。邪神エヒトルジュエ及びその討伐が済み次第、人型魔獣の処罰を行う。一部の例外を除き天之河達と同等の処罰を下す積りさ」

 

その自分達の手心を無碍にした末に大切な存在を死に追い込んだ魔人族に対してハジメが下す処罰、それは『人型魔獣』との呼び方に、人としての尊厳を消し去るかの様な呼び方に変えた上で天之河達と同じ様な刑罰を下すというものだった。

そんなハジメの人型魔獣に対する処罰に、メルドの死を目の当たりにした淳史達、同じ希望を抱きながら壊された香織達は勿論の事、その場を見ていないリリアーナやレミア、愛子も賛同の意を示した。

 

「何か言いたそうな顔しているね、ミュウ。じゃあ、もしミュウに新しいお友達が出来たとして、そのお友達をキーちゃんやルーちゃんやミーちゃん、今いるミュウのお友達に紹介する時、それが今いるお友達にとってどうしても嫌な人だったら、どうするの?新しいお友達の良い所を沢山上げるの?少しでも歩み寄って話し合って欲しいと説得するの?そうして新しいお友達と今いるお友達が仲良くなれる様努力するの?」

 

だがそんなハジメの沙汰に何処か納得していなさそうな表情の者がいた、ミュウだ。

普段の自分からは信じられない程の冷酷な処分にどういう事だと聞きたいのだろう、そう思ったハジメはミュウにも分かる様に説明を始めた。

 

「御免ね、ミュウ。パパにはもうそんな感じで、魔人族への嫌な思いに耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐え続ける力はもう無いんだ」

「ひっ!?パ…パ…?」

 

その時ミュウは見た、見てしまった。

誰よりも優しく勇敢で思いやりのあるパパの、今まで一度たりとも見せた事の無い位に仄暗く、どす黒く、濁りに濁った眼を。

その眼の奥底に蠢く、憎悪や憤怒といった負の感情の程を。

それを目の当たりにした衝撃の余り、ミュウは驚き呆然としてしまい、邪神エヒトルジュエとその眷属との最終決戦に臨むパパ達の姿を、黙って見送る事しか出来なかった。

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