【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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102話_ありふれた職業の本領発揮

――殺してやる!殺してやるぞイレギュラァァァァ!

 

自らのホームグラウンドである神域でのハジメ一行との決戦で、ただでさえ宇宙世紀において最強クラスの性能を誇るネオ・ジオングを、宇宙世紀の世界から強制召喚したそれに己と眷属達の魂を宿させるという方法で20機以上も投入して来たエヒトルジュエ、兵器の質も量も、何なら地の利まで自分達に分があり勝利は揺るがないと思っていたにも拘わらず膠着状態に入って焦っていた所に、シャア・アズナブルの名言を引用したハジメの言葉でブチギレ、怒りの余り我を忘れてハジメの搭乗するアヴグストFXへと砲撃を集中させつつ突進、ネオ・ジオングの背部に大量に備えられたスラスター群の推力の限りを尽くしてその距離を詰めようとして来た。

その動きに、エヒトルジュエのやろうとしている事に直ぐ気付いたアヴグストFXも、そうはさせんと言わんばかりに推力全開、ネオ・ジオングから放たれる砲撃の雨あられをひょいひょいと避けながら距離を維持する様に後退、時にはマルチプルカノンでの砲撃で牽制する事で接近を許さない。

 

『追従します』

 

そんな主の行動を、その意図を受けてⅡネオ・ジオング達も追従、アヴグストFXを狙うネオ・ジオングの援護を行いつつ同じくスラスター群の推力を全開にして追いかけ始めた。

 

さて、その巨体に余す事無く搭載された兵器群による攻撃力と、サイコシャード発生器によって引き起こされる疑似的なサイコ・フィールドや腰部の大型Iフィールド・ジェネレーターを用いたビーム偏向に加えて機体その物の堅牢性による防御力、背部に大量搭載されたスラスター群や足の代わりに装着されたシュツルム・ブースターによる機動力、と何処から如何見ても非の付け所の無い圧倒的な性能を誇るネオ・ジオングなのだが、1つだけ欠点と言わざるを得ない分野がある。

それは本体MSのシナンジュが骨格の一部分にしかサイコフレームが使われていない事と、その余りの巨体故の運動性能の低さ、「大男総身に知恵が回りかね」という諺を体現した様な、行動を起こす上でのタイムラグ、それ故の格闘能力の低さだ。

尤もそれはこういった巨大兵器を作る上でどうあがいても避けようが無く、それを欠点としてあげつらうのは揚げ足取りに等しい物、そもそもネオ・ジオングは拠点攻略用に開発されたMAであって格闘戦を行う事、運動能力が求められる場面での運用など想定していない。

とはいえネオ・ジオングを開発した袖付きもアナハイム・エレクトロニクス社もその辺りを考えていなかった訳では無く「機体その物が鈍くさいなら周辺を機敏にすれば良いじゃない」という発想のもと、両腕及びバックパックに4基搭載されたアームユニットの指代わりとして5基ずつ、計30基もの有線式ファンネル・ビットを装着しつつ(然もスペアユニットを機体内に大量保有している)サイコミュとの連携で自己防衛能力を付加、オールレンジ兵器故の機敏な動作で本体の反応の鈍さを十全にカバー出来ているし、何なら本体MSがハル・ユニットから腕や武装を出して自ら迎撃する事も出来る。

この様に、唯一の欠点と言えなくもない運動性能の低さも武装や本体MSがカバー出来る様になっているネオ・ジオングだったがあくまでそれは『自己防衛』という目的での物、元の世界でほんの少数しか開発されなかったネオ・ジオング及びシナンジュの開発者達が想像出来る筈も無い「ネオ・ジオングを大量投入した状態での運用」というシチュエーションで、その欠点は露呈する事となった。

20機以上もあるⅡネオ・ジオングが隊列を組んで追走するが、先程より密度が増した砲撃の嵐を掻い潜りながら後退、時折逃走方向を変えて来るアヴグストFXを追いかけるネオ・ジオングに付いて行くにつれその隊列は乱れて行き、取り残されて行くⅡネオ・ジオングも出て来たのだ。

その巨体故の運動性能の低さに対して余りにも高すぎる推力、それが意味するのは誤差程度のラグによって生じる前方との途轍もない距離差、つまりほんの僅かに行動が遅れただけでこうして味方からはぐれてしまったのだ、アヴグストFXに搭乗するハジメもそれを狙って、Xラウンダーやイノベイターといった超感覚系の技能をフル活用、ネオ・ジオングの大軍からの砲撃を掻い潜りつつ隊列を大きく崩せるルートを未来予知して実行、それによって次々と隊列からはぐれるⅡネオ・ジオングが出て来た。

そんな隊列からはぐれたⅡネオ・ジオングはどうなるか。

 

「「「「「「「マルチプルカノン!行っけぇぇぇぇ!」」」」」」」

「馬鹿な、こんな…!」

 

その答えは言うまでも無いだろう、群れからはぐれた獲物を狩ろうとする肉食獣の如く、アヴグストFX以外の7機ものヴァスターガンダムが一斉に砲撃、其々2門ずつ、計14門ものマルチプルカノンから放たれた多種多様な砲撃の雨あられがⅡネオ・ジオングに襲い掛かったのである。

今迄はサイコ・フィールドの壁によって防がれていたマルチプルカノンの砲撃だが、それは20機以上もあるⅡネオ・ジオングがサイコ・フィールドを何重にも展開したから出来た事、幾らⅡネオ・ジオングと言えどたった1機の力で防げるものではない、抵抗空しくその巨体は砲撃の嵐の中へと消えた。

こうして1機、また1機と撃墜されていくⅡネオ・ジオング、流石に援護する眷属達が狩られていくのは、その際の破壊音やら爆破の光景やらを見聞きしたり、アヴグストFXへ襲い掛かる弾幕が薄くなったりでエヒトルジュエも気付かない筈は無いのだが、至上の『器』を手に入れたが故の慢心か、或いはハジメへの余りの怒りで我を忘れていたか、撃墜される眷属達の事等目もくれず唯ひたすらアヴグストFXを追いかけるだけであった。

そして20機以上あったⅡネオ・ジオングも最後の1機が撃墜され、残るはエヒトルジュエの魂が宿るネオ・ジオングのみとなったタイミングで、今まで逃走を続けていたハジメが反転、真正面から突っ込んで来た。

 

――馬鹿め、血迷うたか!欠片も残さぬわ!

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

それを見たエヒトルジュエは心中で嘲笑しつつ、何としても討ち滅ぼしたい標的がマトモに向かって来るのをチャンスと見て急停止、今までの様な一斉砲火に加えてファンネル・ビットも投入出来るだけ投入、全力で迎え撃つ構えを見せた。

だがつい先程迄援護の砲撃をしていたⅡネオ・ジオングはもういない、そのⅡネオ・ジオングと共に起こした砲撃の嵐をひょいひょいと避けて見せたアヴグストFXにとってネオ・ジオング1機程度の全力など大した事ない、いやそれ以上に、

 

「行け、ハジメ!このクソッタレをお前の手で討つんだ!」

「此処は私達が抑えるから、ハジメ君はエヒトルジュエを!」

「行きなさい、ハジメ!その手で邪神を、トータスに巣食う巨悪を討って!」

「ハジメ!アンタの手で、トータスの皆を救けるのよ!」

「ハジメ、叔父様達の敵を取って!」

「お願いします、ハジメさん!」

「ハジメ殿、お頼み申す!我ら竜人族の、我が父上、母上の無念を、どうか!」

――くっ!小癪なぁ!

 

ハジメには自分自身に等しい位に大切で、大事で、信頼する親友が、恋人達がいる。

幸利の搭乗するディカブリIJが、香織の搭乗するアクチャブリWZが、雫の搭乗するナヤブリDQが、優花の搭乗するフィブラリDXが、ユエの搭乗するイユニSFが、シアの搭乗するシンチャブリBRが、ティオの搭乗するアプリエルGDが、ネオ・ジオングの行動を阻み、アヴグストFXの道を切り開いた。

 

――くっ放せ!神たる我を踏みつけるなぞ無礼であるぞ!

「エヒトルジュエ、今の貴様の身体は金属で出来ているな?そして貴様が僕に与えた天職は錬成師…

これがどういう意味か、分かるな?」

――ま、まさか貴様!?やめろ!

「僕のこの手が真っ赤に燃える!偽神を裁けと轟き叫ぶ!爆熱!」

――わ、分かった!この世界から出て行く!この器も貴様に渡す、だから!

 

こうした仲間達の奮闘の末、アヴグストFXがマウントポジションを取るかの様にネオ・ジオングの両肩を踏みつけ、抵抗を封じるべく両肩装甲を錬成して内部の武装を展開出来ないようにした。

そして右手に纏ったメルキューレを発熱させ、無様にも命乞いを始めるエヒトルジュエの声も聞くことなく(尤も声を出す事を封じられているので聞こえなかったのだと思われるが)ネオ・ジオングの頭部に掴みかかり、

 

GOD(鋭い痛みを、) FINGER(永遠に味わえ)!」

――グギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!?

 

その瞬間メルキューレに組み込まれた概念を発現、それを食らったネオ・ジオングは機体内のあらゆる機構が周りを食い破らんと暴走、変形や膨張、縮小を繰り返す度にその身が崩壊していく。

その影響はサイコフレーム内に魂が入る形で己の身としていたエヒトルジュエにも及ぶ、痛覚など存在していない身体にも拘わらず今まで感じた事も無い程の激痛が全身を、そして魂にすらも襲い掛かり、

 

――ア、ア…!

 

それを和らげる事も紛らわす事も出来ず、やがてその痛みをどうすか考える事も出来なくなり、身体が滅ぶと共にその魂は、最も大きく恐ろしい責め苦を受けるとされる無間地獄へと旅立っていった。

 

「リリィ、愛子、レミア、ミュウ、メルドさん、皆…

全て、全て終わったよ」

 

戦いは終わり、8機のヴァスターガンダムがいるだけとなった白い空間、その中でハジメはふと、アヴグストFXのコクピットを開きながら、ポツリと呟いた。

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