【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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最終話_幾億の果てに見る世界

後の時代において『機兵戦争』と語られる戦いがハジメ達の勝利で幕を閉じてからトータスの人々、世界の国々は、その戦勝祝いムードに浸る暇も無く戦後の、今後に向けての行政処置に取り掛かった。

まずはこの戦争における敗北勢力である魔z、げふんげふん、人型魔獣とその国であるガーランド、そして邪神エヒトルジュエとその眷属を信仰していた邪教の扱いだ。

魔国ガーランドは勿論の事、邪神エヒトルジュエとその眷属を盲信してこの戦争、というかそれ以前から長きに渡る種族間対立を煽って戦争状態を維持し続けた邪教教団も、各国首脳が集まっての会議の場において解体される事が全会一致で可決されたのだが、代わりにそのエヒトルジュエによって神の座を追われていた『事になっている』真神エヒクリベレイへの信仰の母体、真教という新たな宗教を立ち上げる事となった。

神という絶対的支配者に対するトータスの人々の依存心は、長きに渡る邪教がトップに立つ体制の影響で相当根深い、ハジメ達はそれを汲んでエヒクリベレイ――真なるエヒトという存在をでっち上げて邪神討伐への支持を集めたが今更「うっそぴょーん!」なんてバラす訳にも行かない、人々の心の拠り所は今尚『エヒト』、それを貶めたら暴動待ったなし、トータスは再び混乱に陥ってしまうだろうから。

だからと言って邪教のレッテルを貼り付けた既存の組織をそのまま流用する訳にも行かない、其処で信仰の母体を邪教から真教に挿げ替えつつ、教皇に就いたシモン・L・G・リベラールを始め中枢には、邪教関係者でありながらその在り様に異議を唱えた事で辺境へ飛ばされる等冷遇されていた者や、邪教から危険視されていた知識人達を起用したり、各国の政治への口出しを禁じる政教分離原則を取り入れたりして「邪教とは違う組織」である事をアピールした。

次にガーランドが領有していた、シュネー雪原を含めた広大な土地の扱いについてだが、その際に大き過ぎる障害となったのが大陸の南北を隔てるライセン大峡谷だ。

急峻なる高山という地形に加えて空気中に放出された魔力を即座に分解する性質から、人間族が統治する北側と人型魔獣が統治していた南側を隔てる巨壁となっていたライセン大峡谷、IS等のハジメが開発したアーティファクトを使えば多少緩和出来ると言えど其処を通っての往来は困難を極める、北側に設置された首都から南側の情勢把握など無理に等しいだろう。

ならば亜人族が統治するフェアベルゲンはどうか、其処ならガーランドとの間にライセン大峡谷の壁は存在しないから行けるんじゃないか、と思いそうだが、其処は其処でシュネー雪原という極寒の障壁が存在していた。

その為各国はガーランドの領地を割譲した上での直接統治を断念、移民希望者を募りつつ、それぞれの重鎮に行政権を委任して派遣、共同で統治を行う事としたのだ。

以上の経緯を経てこのトータスに、真教の総本山である神山を領地とした地球におけるバチカン市国みたいな国家『バーン教皇国』と、ライセン大峡谷から南側を領地とし、各国から派遣された重鎮達の合議制による政治体制を敷いた国家『ガーランド共和国』、2つの独立国家が建国され、それに乗っかる形でフェアベルゲンが『フェアベルゲン連邦』という国名で正式に国家として承認されたのだが、此処でハジメが「折角の機会だから」と、海人族達が住まうエリセンの町を独立させたいと提案して来た。

いきなりの提案に驚きを隠せないガハルド達だったが、其処には深い理由があった。

このトータスに点在している七大迷宮、現状はオルクス大迷宮がハイリヒ王国、メルジーネ海底遺跡が王国の保護下にあるエリセンの町、ハルツィナ樹海がフェアベルゲン連邦、グリューエン大火山がアンカジ公国、神山がバーン教皇国、シュネー雪原がガーランド共和国の領内にあると判明し、ライセン大峡谷もヘルシャー帝国に隣接しているという意味で領内にあると言えなくも無いが、ハジメとしては「七大迷宮はトータスの歴史において神聖な場所、其々の管理を別々の国家が、出来ればその迷宮を作り上げた者に所縁のある国家が担うべき」という考えを抱いており、それを踏まえてメイル・メルジーネと同じ海人族による国家をエリセンの町に作りたいと思ったのである。

とはいえそれを事前に聞かされていない他国首脳からは異論が絶えなかった、その最大の理由が支配者たり得る存在の不在、今までハイリヒ王国の庇護の下で暮らして来た海人族がいきなり独り立ちしろと言われてもやって行けるのか、そのトップを担ってくれる存在がいるのかという考えからだったが「直ぐにとは言わないし、第一、1人で出来ないなら皆でやれば良い」とハジメが直接民主主義政治の導入を重ねて提案、民主主義とは何ぞやとハテナマークを浮かべる彼らに説明がてら説得した事でやがて皆が納得してくれ、エリセンの町を領地とした独立国家『エリセン民国』の建国が承認された。

次にこの戦争において大盤振る舞いされたハジメ謹製のアーティファクトの扱いだが、対エヒトルジュエを目的に開発されたマルチプルカノンは「討つべき相手がいなくなった今、過剰な力を持ち続けては後々の禍根となる」というハジメの考えから全て解体、それその物や関連システムが搭載されていた各種モビルスーツは全て改修される事となり、ハイリヒ王国が一旦預かる事となった。

これ以後モビルスーツは「人型戦略兵器」から「巨人型汎用パワードスーツ」としてトータスの歴史に顔を出して行く事になる。

またエヒトルジュエの眷属との戦いで大破したストリボーグもこの際だからと解体される事となった一方、ISや各種銃火器については回収せず、それどころか生産続行、近い内に受託生産のライセンスを発行して各地の工房に販売する事が決まった。

トータスを長年支配していたエヒトルジュエを、それを信仰していた邪教を排した事で一難去ったとはいえ、魔獣の出現という一難は健在、そういった脅威から人々を守る為の術は確保するに越した事は無い、その為に銃火器等の生産は続行される事となり、弾丸の類も身近な所から補給出来たらという考えからライセンス発行を決めるに至った。

その後、人間族と亜人族の生物学的なカテゴライズを統合して『人類族』としたり、エヒトルジュエ討伐を祝して紀年法を『後神戦暦(PostRagnarok)』に変更したり、同じく討伐を祝して解放者達それぞれの肖像画が描かれた記念紙幣の発行が決まったり*1、地球における国際連合をベースにした機関『トータス連合(TU)』を設立して大迷宮を管理する7ヶ国に加えて中立都市であるフューレンもアドバイザーとして加入する事となったりと様々な政策が話し合われ、実行されて数ヶ月が経ったPR0001年正月、バーン教皇国に明け渡した大聖堂の代わりとして、嘗てハイリヒ王国の王宮があった広場に建てられた新たなる王宮。

 

「色んな事がありましたね、貴方」

「そうだね、リリィ。僕達がこのトータスに来てから1年も経っていないのに、一生分の出来事を経験した様な気がするよ」

 

そのハジメの居室として割り当てられた部屋、そのバルコニーでハジメとリリアーナは、雪化粧された王都の景色を眺めながらふと、感慨深げにそう呟いた。

この戦後数ヶ月の日々は、ハジメ達の環境も大きく変化した、国王であるハジメは言うに及ばないが、香織達9人の王妃も、ストリボーグのクルーとして共に戦って来た淳史達も大臣等の要職に就任、政治に大いに関わる事となったのだ。

尚、此処はおろかこのハイリヒ王国にも幸利の姿は無い、これは何故かと言うと、ガーランド共和国に派遣する重鎮に、ハイリヒ王国は幸利を任命、つい先日派遣されたからだ。

そんな幸利はエヒトルジュエ討伐に大いに貢献した『英雄』の1人という事でガーランド共和国首相への就任が満場一致で決まり、初代首相としてその歴史の始まりの1ページに名を刻む事となったそうな。

一方、幸利の派遣によって空位となった宰相の座にはリリアーナが就任、公私ともにハジメを最も近い場所で支える事となった。

そのリリアーナだが、マントを羽織っているので良く分からないがその腹部はドーム状に膨らんでいた、そう、彼女はハジメとの子を身ごもったのである、彼が以前から懸念していた魔物の肉を食した事での変異に伴う子作りにおける影響は払しょくされたという事である。

このハジメとリリアーナとの間に生まれた子こそ、後にハジメの後を継いでハイリヒ王国の国王となるイチカ・N・ハイリヒであるが、その後もリリアーナら9人の王妃はハジメとの子を数え切れない位に出産、したものの、イチカを除いて全員が女の子だったらしく「どんなご都合主義やねん…」とハジメが思わず関西弁でツッコミを入れたのは余談である。

 

「一生分の出来事、確かにそうですね。その出来事を経て時に迷い、時に道を踏み外しそうになり、大切な人々との別れもあり、そして再び前を向く事となった…本当に、いろいろありました」

 

それはさておき、ハジメの言葉を受けて、彼らがこのトータスに召喚された時から今に至るまでの様々な出来事を思い出したリリアーナは、

 

「言葉よりわかり合える まなざしがそこにあれば」

 

ふとギターラを取り出し、弾き語りを始めた。

 

「人は皆生きていける 迷わずに平和(じゆう)に」

 

今しがたリリアーナが歌い始めた曲が『アフターコロニー』シリーズの完結編と言えるOVA『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の劇場版主題歌『LAST IMPRESSION』である事、唐突に歌い出した訳に気付いたハジメは、さりげなく弾き語りに加わった。

 

「過ちをこえて 気づく真実(ほんとう)のやさしさ」

 

この平和と言って良い今この時に至るまでに、彼らは様々な過ちを犯した。

オルクス大迷宮の奈落の底へと落ちていくハジメ達の姿を見て復讐心に囚われた幸利はその後、沢山の冒険者達を手に掛け、ハジメすらも危うく殺しかけた。

リリアーナの身を守る為にとハジメが手渡したイユリ等のアーティファクトはその後、彼らの異端者認定を阻止するべく引き起こされたクーデターに使われ、認定を強行しようとした前王エリヒドら王国重鎮を皆殺しにした。

シュネー雪原においても、希望的観測やガーランドの戦力軽視等の様々な要因から来る油断によってストリボーグの防備を疎かにした事で壊滅寸前まで陥り、それを阻止したメルドの戦死を招いた。

 

「あなたと見つけたから 愛と呼べる強さを」

 

それでも、それでも彼らは前を向いて歩き続けた。

彼等には己の命に匹敵、いやそれすらも上回る位に大事な、愛する『もの』があったからだ。

恋人、戦友、トータス、祖国、国の民…

 

「I BELIEVE YOUR LOVE 震えながら 口づけに重ねた約束(ねがい)

あなたがいて 私がいる 忘れないでいつも」

 

沢山の大事な存在を胸に抱き、彼らは歩き続け、戦い続けた末に、邪神エヒトルジュエの討伐という大願を成し遂げ、今のこの平和な時を勝ち取る事が出来た。

そんな彼らの想いを乗せた歌声は、

 

「I BELIEVE YOUR DREAM 募る想い 愛しさを祈りに変えて

この鼓動を 伝えたいよ 熱く激しく SO FAR AWAY」

 

大陸の端から端まで、人々の心へと響き渡った…

 

 

 

 

 

*1
ヴァンドゥル・シュネー:100ルタ、ミレディ・ライセン:200ルタ、ナイズ・グリューエン:500ルタ、メイル・メルジーネ:1000ルタ、ラウス・バーン:2000ルタ、リューティリス・ハルツィナ:5000ルタ、オスカー・オルクス:10000ルタ

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