【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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13話_奈落の底の封印部屋

オルクス大迷宮を下へ下へと進んで行く決意を固め、腹ごしらえに魔物の肉を食した事で思わぬ強化を遂げたハジメ達の探索はそれからどうなったかと言うと、正直順調過ぎる位に順調に進んでいた。

この快進撃が成し遂げられたのには3つの理由がある。

1つ目は、魔物の肉を食した事を切っ掛けに発現した、ハジメの技能『新型』に関する派生技能だ。

Xラウンダー、機動戦士ガンダムAGEの作中にて提唱された、人の脳で通常は使われない領域『X領域』の力を使える人間を指す言葉であり、近未来に起こる事が見えたり反射速度が向上したり、様々な超常の力を使える様になる。

ハジメはこれによって周囲の状況を捉え、数秒先までの未来が見える様になった為、迫り来る危険を予め見て周囲に指示を飛ばしたうえで対処出来る力を得たのだ。

2つ目は、其々の魔物が有していた固有魔法に起因する、新たに発現した技能の数々だ。

特に有用だったのが熊みたいな魔物の肉を食した事で発現した技能『風爪』だ。

元の持ち主と同様、攻撃に風を纏わせる事で切れ味を増したり遠くへと飛ばしたりといった事が出来るこの技能によって、銃火器等が使えない状況下でも充分に戦える力を得たのだ。

そして3つ目は、纏雷を得た事に伴ってハジメが改造した銃火器だ。

纏雷によって強大な電力を発する事が出来ると判明して直ぐ、既存の兵器を強化する機構のアイデアが浮かんだハジメは早速、ヴィーフリを始めとした銃火器の改造を施した。

その改造というのが、物体を電磁誘導によって加速させて射出する装置を導入する事、つまりレールガン化だ。

グリップを起点に銃身の上下部まで銀製のレールを設け、其処に纏雷によって発せられた電気を流す事で銃身内にローレンツ力が発生、それを受けた弾丸が一気に加速される事で威力が強大化し、ヴィーフリで発射した際の最大威力はなんと改造前の数百倍、射程も推定数十km(向こう側の壁に着弾した為計測不能)に及ぶ物となったのである、それ程の銃弾を食らって生きていられる魔物もそうはいまい。

ただ其処までの威力となると反動も相応の物となり、元から銃の扱いに長けていた為に反動を上手く逃がせるハジメか、筋力の高さと技能によって反動を無理矢理抑え込める雫くらいしか扱えないじゃじゃ馬と化してしまう(一方で両者共に魔力が比較的低い為、其処までの攻撃は多用出来ない)為、放出する電気の強さは各自で調整する事となったが。

こうした理由が、奈落へと落ちてから2週間も経たない内に五十階層も下るという超ハイペースでの探索を実現したのである。

 

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さて、奈落へと落ちてから五十階層という区切りと言って良いフロアへと辿り着いたハジメ達だったが、それに相応しい展開と言えば良いのか、明らかに異質な場所を発見したのである。

脇道の突き当りにある空けたその場所には高さ3m位の装飾された両開きの扉があり、脇には2体の一つ目巨人(サイクロプス)と思しき彫刻が、半分壁に埋め込まれているかの様に鎮座していたのだ。

その空間から発せられる異様な雰囲気、踏み入れた瞬間に走った悪寒から今までとは明らかに違う脅威を感じたハジメ達だったが、今まで真っ暗闇だったりタール塗れだったり密林だったりとフィールドの変化こそあっても、やる事と言えば魔物を倒してその肉を食べて探索しての繰り返しでしかなかった大迷宮において漸く現れた明確な変化である、調べないという選択肢は無かった。

装備している銃器の残弾数と、身に着けている手榴弾等の確認を終えたハジメ達は改めて覚悟を決めた

 

「この彫刻、如何にも怪しいね。扉に何か仕掛けたら動きだす、なんてベタな物だったりして。よし、香織と優花は彫刻の、雫は後方の警戒をお願い」

「了解だよ、ハジメ君!」

「任せなさい、ハジメ!」

「分かったわ、ハジメ。でもその発言はフラグじゃないかしら…?」

 

其々所定の位置につき、警戒を怠る事無く状況の推移を見守る香織達を背に、ハジメは油断なく歩みを進め、扉を調べ始めた。

 

「ん?分からないなぁ、こんな式。勉強を重ねたつもりだったけど、文献にも乗らない程旧式の物って事かな?」

 

中央には2つの、何かを嵌める為の物らしい窪みがあり、それを中心に魔法陣が描かれていたが、その術式はハジメには読み取れない物だった。

王都での訓練中は座学に重きを置いていたハジメ、その中にはこういった術式に関する物も少なくなく、今となっては粗方暗記したと自負していた彼だったが、そんな彼にも分からない、いや知らない程古い物なのかと推測しながら調べたが、新たな事実が分かるという事は特に無かった。

 

「正規の方法が分からない以上、此処は錬成で強行突破しますか」

 

2つの窪みに何かを嵌めればもしかしたら何かしらの仕掛けが作動するかも知れないと当たりを付けはしたが、その『何か』を持っていない以上は正規の手段では開けられない、ならば強行突破だと言わんばかりにハジメは右手に魔力を流し込み、扉に触れながら錬成を開始したが、

 

「あいたっ!?」

「ハジメ君!?」

「「ハジメ!?」」

「皆、警戒を緩めないで!」

 

その瞬間、扉から紅い電流が放たれ、ハジメの右手を弾き飛ばした。

その強烈な拒絶反応によって手に火傷を負ったハジメを心配してか香織達が彼の方を向くも、ハジメは神水を飲みながら警戒を止めない様声を飛ばす。

 

『オォォォォォォォォォ!』

 

すると突如として野太い雄叫びが部屋全体に響き割った。

それに反応して素早く飛び退いて扉から距離を取ったハジメを他所に、その声の主――2体の彫刻である筈の巨人が周囲の壁をばらばらと砕きながら立ち上がろうとしていた、ご丁寧に壁と同化していた灰色の肌は暗い緑色に変色している。

 

「本当に動いたね、なんてベタな…」

「香織、ならそのベタをひっくり返してやろうじゃない。今なら隙だらけよ」

「そうだね、優花ちゃん」

 

その光景を目の当たりにした香織が苦笑いしながら呟いた所に、片方の巨人にヴィーフリの銃口を向けている優花が今にも引き金を引きそうな構えをしながらそう声を掛けたのを受け、2人は一緒に銃撃した。

 

「…まあ、空気を読んで待っている訳にも行かないわよね」

 

目覚めたばかりで態勢も整っていない隙を突いての、明らかに弱点だと分かる一つ目を狙っての銃撃、放たれたボーク・スミェルチ弾を食らった2体の巨人は案の定と言うべきか狙われた一つ目を貫かれ、脳をグチャグチャにミキシングされた上で後頭部に風穴を開けられる、という一連の流れの中で即死、ビクビクと痙攣しながら前のめりに倒れる、という色んな意味で酷い光景を後方で見ていた雫が頭を抱えながらそう呟いていた。

恐らくは扉の向こうにある何かを守るガーディアンとして配置されたのだろう、奈落の底の更に奥深くという訪れる者など皆無な所に長い間待機させられて漸く来た役目を果たす時、さあやるぞという決意と共に動き出した瞬間に頭が吹っ飛ばされてこの世からさよならバイバイ、と哀れと言わずして何と言えば良いのかと嘆きたくなる巨人の末路には、雫も同情を禁じえなかった。

 

「さて。扉に何か仕掛けたら動き出した、というベタな展開で目覚めたコイツら、扉にあった窪みと同じ数存在する事を踏まえると、もしかしたらあの扉を開ける『何か』を持っているかも知れない。解体して見るね。優花は何時も通り肉の下処理をお願い」

「分かったわ、ハジメ。さてこの魔物にはどんな力があるのかしら」

 

とは言えいつまでも振り返ってはいられない、風爪を用いて巨人の解体を行ったハジメは、とりわけた肉を優花に渡しながら進めていき、やがて拳大の、血にまみれた魔石を取り出した。

流石にへばり付いた血で滑って嵌りませんでした、なんて間抜けな事になってはいけないと、別の階層で採取した地下水を用いて洗い、ピカピカにした魔石2つを手に、再び扉の前へと赴き、窪みに嵌めた。

案の定と言うべきか2つの魔石はぴったりと嵌り、直後に赤黒い魔力光が迸り、扉に描かれた魔法陣へ魔力が注ぎ込まれて行き、そしてパキャンという何かが割れる様な音と共にそれは収まった。

とは言えそれで扉に起こった変化はおしまいかと言えばそうではなく、部屋全体に魔力が行き渡ったのか周囲の壁が発光し、まるで地上にいるかの様な明かりに満たされたのである。

今まで暗かったのがいきなり地上の如き明るさとなった事で眩しそうにしながらも、ハジメ達は警戒しながら扉を開いた。

その先は閉じ切られていた為か光一つない真っ暗闇の大きな空間だったが、手前の部屋の明かりに照らされた事でその全容が明らかになった。

其処は、聖教教会の大で見た大聖堂の如き艶やかな石造り、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた、正に神殿と言うべき場所であった。

その中央付近には巨大な立方体の石らしき物が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っているが、良く見ると中から光るものが前面の中央辺りから生えていた。

それに気づいたハジメ達が近くで確認をしようと扉を大きく開け固定しようとする、光源を確保する為と、ホラー映画みたく入った瞬間に閉められたら色々とヤバい為だ。

が、

 

「…だれ?」

 

扉を開き切る前に、立方体の方から女の子の声が聞こえた。

そう、生えていたのは人だった。

頭だけが立方体から出ており、長い金髪が某ホラー映画において呪われたビデオから出現する女幽霊の如く垂れ下がっており、髪の隙間からは夕方の月を思わせる赤い眼が覗いている。

歳は12、3くらいか、拘束期間の長さからかやつれている様で、垂れ下がった髪で分かりづらいが香織達にも引けを取らない整った容姿をしている。

 

「女の子?君は一体」

「「「すみません、間違えました」」」

「いや何でやねん!?何で見ちゃあかんモン見てもうた的な感じで閉めるん!?」

 

その声に振り向いたハジメが、声の主である少女に気付いて何事かを聞こうとしたが、香織達は触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに扉を閉め、部屋を出ようとし、ハジメがそれを何時もの如く関西弁でツッコんだ。

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