「よし、完成だ」
ハジメ達がオルクス大迷宮の最深部、反逆者の住処に辿り着き、其処で此処トータスの真実を知らされた彼らが、この世界の主神であるエヒトルジュエを討つ事を決意してから二カ月近く、外で何か作業をしていたハジメは、完成したであろう『それ』を
その視線の先にいたのは12体も立ち並ぶ純白の、金属製の巨人。
20mもの高さを誇る人型の身体、頭部から突き出た
機動戦士ガンダムUCの主人公バナージ・リンクスが搭乗する
このMSの最大の特徴は6tという、ガンダムシリーズに登場するMSでも異例と言える位に少ない本体重量、機動戦士ガンダムSEEDの主人公キラ・ヤマトが最初に搭乗したMS、ストライクガンダムの10%未満、イメージモデルとしたユニコーンガンダムの30%未満、機動武闘伝Gガンダムの主人公ドモン・カッシュが最初に搭乗した
そんな軽さが何故実現されたか、持ち前の知識と、オスカーからの話の後で習得した神代魔法という神代で使われていたらしい強力な魔法の1つ『生成魔法』を活かし、ヴァスターガンダム開発の為に独自の合金『ガンダミウム』を作り上げたハジメの涙ぐましい努力も、後述する『マルチプルカノン』が所謂後付け装備で、固定武装が側頭部に1基ずつ設けられた射撃武装『マルチプルチェーンガン』以外無いという事情も無くは無いが、一番の理由はこのMSに導入された独自の駆動方式だろう。
∀ガンダムやスモーに導入された
尤もこの6tはあくまで本体重量であり、対エヒトルジュエにおける『切り札』である砲撃武装『マルチプルカノン』を2門装備した場合は24t(ユニコーンガンダムの本体重量と比べて僅かに重い)になるが。
尚その名前を香織達が聞いた際、砲撃武装であるマルチプルカノンの使用を前提としている事も相まって「明らかにバスターガンダムが元だよね?」とツッコまれ、ハジメは「ロシア語で反乱を意味する『ヴァスターニエ』が語源だよ」と反論したが、信じる者はいなかったとか。
「出来たの、ハジメ君?」
「ああ、これで12体揃ったよ。思ったより早く出来た」
「ほ、本当に早いわね…」
「流石はハジメと言った所かしら」
「…驚異的な手際の良さ」
それはさておき、完成の報を聞きつけたのだろうか、香織達が
ヴァスターガンダムに乗り込めば強大な力を振るってくれる事は間違いないものの、ではどうやって乗り込むかという懸念が浮かぶのは簡単であった。
何しろ全高20m、ビルで言ったら5階建て相当の高さである、ウサギらしき魔物の固有魔法『天歩』を得た事で空中での移動手段を有しているハジメ達はまだしもユエにそんな物は無い、乗り込むのは容易では無いし、その隙を狙って攻撃される可能性もあるのだ。
だがハジメに抜かりは無い、それを解決すべく開発したのが、今現在香織達が装着している、ヴァスターガンダムと同様に装着者の魔力を燃料としたパワードスーツ『
言うまでも無いがハジメ達がいた世界で刊行されている同名学園SF小説に登場したマルチフォーム・スーツをベースとした物であり、それと同様『シールドバリア』『
流石に人工知能は搭載出来ず(そもそもヴァスターガンダムに乗り込む手段として開発したのもあってか)『
尚、装着の際は専用スーツを着用する必要があるのも元ネタ通りではあるが、そのスーツはハジメの趣味が色濃く出た影響か、明らかにプラグスーツだった。
何はともあれ、こうして個人個人で使用する対エヒトルジュエの『術』であるヴァスターガンダム及び関連武装を揃えた一方「やっぱMSには旗艦が無いとね」というハジメのオタクならではの拘りから、それとは別に航空能力を備えた戦艦を開発した。
12体並ぶヴァスターガンダムの側に鎮座する細長い船体と、カタパルトらしき機構を備えた2枚のパネル状パーツ、そして翼の両端に巨大なブースターを備えた推進器らしきパーツ…
ガンダムSEEDに登場した、オーブ連合首長国保有の宇宙戦艦『クサナギ』とよく似た4つのパーツを有するこの戦艦は、ハジメが開発した航宙空戦艦『ストリボーグ*1』だ。
基となったクサナギ同様、本体とカタパルト、推進部を分離・再構成する事が出来る一方で、オスカーが保管していた指輪型アーティファクトで、それに嵌め込まれた宝石内の異空間に相当な大きさの物をも余裕で入れられる保管庫『宝物庫』を入手した事から必要なくなったMS格納庫の代わりに2門のマルチプルキャノンを本体艦首に搭載、推進パーツ両舷ブロックに2門ずつ、カタパルトパーツ上下部分に2門ずつの計10門も搭載するというガチガチの砲撃仕様となっている等の独自設計も施されている。
尚、何故クサナギを基にしたのかというとハジメ曰く「此処そんなに広くない」との事、開発スペースとしている反逆者の住処が其処まで大きくないからという何とも残念な理由だった。
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製造を予定していた12体のヴァスターガンダムを作り終えた事で、ハジメ達は遂に地上へと帰還する事となった。
組み上げたばかりのヴァスターガンダム達、各パーツが分離した状態のストリボーグ、その他様々な銃火器等を、必要最小限な物以外全て宝物庫に格納したのを確認した後、三階の魔法陣を起動した。
「皆、良く聞いて欲しい。僕が作り上げた兵器の数々は、地上では明らかな異端だ。聖教教会や様々な国が黙っている、なんて事は無いだろう」
「ん…」
地上への帰還準備が進む中、ハジメは静かな声で香織達にそう話し始めた。
「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制されたりする可能性も極めて大きい」
「だよね、ハジメ君。エヒトルジュエを倒す積りで作ったんだもんね、戦力に組み込めば優位に立てるって考えるのも道理だよ」
レールガンに改造する前のグローサやヴィーフリの時点でメルド達の度肝を抜いて来たのだ、ISやヴァスターガンダム、ストリボーグを目にしたらどうなるかは言うまでもないだろう。
「それを抜きにしても僕達の力は強大且つ、魔物の固有魔法も扱える異例ずくめの存在。狂信者はこぞって襲い掛かって来る筈」
「まあ、こんな化物スペックだものね。狙われるのは是非も無いわね」
人間族最強と言われるメルドのステータスが平均300近くである事は以前紹介したが、初めて魔物の肉を食した時には既に11倍以上、最も低かったステータスですら3倍以上、高かったステータスに至っては33倍以上、となっており、此処へ辿り着くまでにも様々な魔物を、下って行くごとに強くなっていく魔物を食して来た以上、その倍率は更に上がっている。
しかも食した魔物が保有していた固有魔法を取得し、それをも含めた派生技能を多数身に着けたハジメ達はチートどころの話では無い、重大な危険分子として見る者は必ずいるだろう。
「エヒトルジュエを討つと定めた以上、この世界全てを敵に回す可能性も十分にある。そもそも聖教教会に喧嘩を売る行為だし、命が幾つあっても足りないね」
「今更よ。やってやろうじゃない」
そもそも此処トータスにおいて、人間族全体のうちエヒトルジュエの、彼を主神と定めた聖教の信者は9割を超える、そのエヒトルジュエを討つと決意したハジメ達を危険視するのは、当然と言えば当然だろう。
それを良しとしない者の刃は、ハジメ達は勿論、彼らと同じく此処へ呼び出されたクラスメート達、特に幸利や愛子、リリアーナといった親しい存在に向けられるだろう。
「僕達は、僕達がいた世界を己の欲望のままに支配せんとする邪神エヒトルジュエを討つ。その為にまずは此処以外の大迷宮を早急に制覇し、神代魔法を手に入れる。その途上でトシや愛子達と合流して、この世界の真実を、僕達の世界に迫る危機を伝え、協力者を募る。リリィにも再会次第同様の対応を取り、身辺を固める様伝える。そして準備が整い次第、ガンダムによる粛清を、神殺しを実行する!」
「「「「了解!」」」」
「皆が他の皆を守る、それさえ忘れなければ、僕達は何でも出来る。挑むよ、大迷宮に、世界に、邪神エヒトルジュエに!」
「「「「はい!」」」」
そのリスクを最小限に抑えつつ、エヒトルジュエを討つ為にどう行動するかの方針を確認し終えた彼らは声高に宣言し、反逆者の住処を後にした…!
「では行こう!僕が、僕達が!」
「「「「「ガンダムだ!」」」」」
次回から第2章、原作ではSUGOIDEKAIウサギさんが合流したり大迷宮の1つに挑んだりした章がスタート…の前に、キャラ紹介を挟む予定です。