【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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21話_いざ樹海へ

「シア!無事だったのか!」

「父様!」

 

余計な事を口走ってしまった為にユエから竜巻&ヴィントレスによる銃撃(非殺傷弾)の嵐を浴びたシアが何とか復活したのを見計らってハウリア族がいるであろう地点へと向かったハジメ達は、シアの案内もあって程なくその場所へと到着、その際にファンタジー物ではおなじみと言って良いワイバーンみたいな姿の魔物――ハイベリアの群れにハウリア族の人達が襲われている光景をハジメが目撃するや否やヴィーフリによる正確無比な連射を披露して1匹の撃ち漏らしも無く射殺、この活躍もあってかハウリア族から1人の犠牲を出す事も無く合流する事が出来た。

助けを呼んで来ると言って、返事も聞かずに峡谷の奥へと正に脱兎の如く走っていったシア、予想外の事態に慎重さを無くして捜索した結果ハイベリアに見つかってしまい全滅を覚悟した所でハジメ達を読んで来た彼女が戻って来た事に、娘は勿論自分達一族が1人も欠ける事無く救われた事に彼女の父にしてハウリア族の族長らしき初老の男が安堵の声をあげ、それに応えたシアが事情を説明した。

その際にハジメ達の事も紹介した様だが、彼らへの呼び方は1人の例外も無く『さん』付けである、当初は自分よりも年下な外見(実際は物凄く年上)であるユエの事を『ちゃん』付けで呼ぼうとしたが「さんをつけろよデコ助野郎」と何処ぞの健康優良不良少年が言い放った台詞で脅され、先程銃弾の嵐を食らったトラウマもあって訂正したとか。

 

「ハジメ殿で宜しいでしょうか?私の名はカム、シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えば良いか。しかも脱出まで助力下さるとか…

父として、族長として深く感謝いたします」

「ま、まあ、お礼なら樹海の案内で返してよ。それにしても、随分あっさりと信頼を寄せるんだね。窮地を助けたのは確かに僕達だけど、そもそもその窮地に追い込んだのは僕達と同じ人間族、そうでなくとも亜人族は人間族から長きに渡って迫害を受けて来た歴史がある、良い感情は持っていないと思っていたけど…」

 

シアからの説明を聞き終えた族長――カムがハジメに向き直り、心からの感謝の意を示すかの様に深々と頭を下げ、シアを含めた他のハウリア族の面々もそれに倣った。

それに何処か照れた様子で返答したハジメ、一方で幾ら命の恩人とはいえ自分達は彼らを迫害していた人間族と一応は同じ存在、不信感は抱かれても仕方ないと思っていた為に全幅の信頼を寄せると言わんばかりのカム達ハウリア族の面々の姿勢に何処か肩透かしを食らった様な気分でその訳を聞いた。

 

「シアが信頼する相手です、ならば我らも信頼しなくてどうします?我らは家族なのですから…」

「…そっか」

 

その問いに対するカムの答えを聞いたハジメの反応は、そのお人よし過ぎると言うしかない優しさへの、フェアベルゲンでは忌み子とされるシアであろうと信じられる家族愛への敬意だった。

自分も香織達から優し過ぎると言われてはいるが、もし自分自身がカムの立場だったら同じ様に受け入れられただろうか、自分達を長年に渡り苛め続けた挙げ句、己の欲望の為にこんな危険極まりない場所へと追い込んだ連中と同じ人間族を、娘とはいえ祖国では処罰すべき存在であり、極論すればこの件の原因であるシアの勧めで、例え命の恩人であろうと…

そんな自分でも出来そうに無い事を平然とやってのけるカムの人間性にハジメは敬意を抱き、例え樹海での探索を終えるまでという短い付き合いであろうと彼らを全力で守り抜くと誓った。

 

「はい、ご安心ください父様!ハジメさんは優しくも勇敢で、困っていた私達を放って置けず、考えるより先に手を出した素晴らしい方なんです!」

「そうかそうか、つまり生まれついての英雄(NaturalBornHERO)という訳だな、それなら安心だ」

「僕が来た!って何やらすねん、僕は無駄に属性てんこ盛りな筋肉達磨かいな」

「ハジメ君の場合は寧ろ、それに憧れるヒーローオタクな主人公の方だよね」

 

そんなハジメの心中を知ってか知らずか彼の人間性を称賛するシアの言葉を受けて何処でそのネタを仕入れたんだと言いたくなる評価をしたカム、それに思わずノリツッコミをしてしまったハジメだったが、何時までも此処に留まっていては再び魔物が襲い掛かって来かねないので、この場を後にした。

 

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「あの、ハジメさん」

「ん?どうしたの、シア?」

「恐らく帝国兵は未だ陣を敷いています。遭遇したら、その、ハジメさん達は、どうするのですか?」

 

ハウリア族の面々と合流し、ライセン大峡谷を脱出する為の道を進むハジメ達、そんな中ふと、シアが不安そうに話し掛けて来た。

帝国兵と遭遇したらどうするのか、と何処かあやふやな問いかけに一瞬?マークが浮かんだハジメだったが直ぐにその意図に気付いた、ハジメ達と帝国兵は同じ人間族、亜人である自分達ハウリア族を守る為とはいえ同族に銃口を向ける積りなのか?とシアは聞いているのだと。

 

「シア、君はその未来が視える固有魔法で視たって言っていたでしょ、僕が、僕達が帝国の兵士を皆殺しにする未来を。あれは嘘なの?」

「嘘ではありません、確かに見ました。だからこれは質問というより確認です。帝国兵から私達を守ると言う事は、人間族と敵対する事と言っても過言じゃありません。同族と敵対して本当に良いのか、と…」

 

シアは不安に思っていた、自分達を守る為にヘルシャー帝国と敵対する道を歩ませて良いのかと。

といってもハジメ達が帝国の兵士に殺される様な未来も、帝国に降って自分達を売り渡す様な未来も想像出来ない、彼らの心身の強さは、所有する兵器の強力さはそれ程の物だと彼女は実感していた。

シアが不安に思っているのは、帝国と敵対した為に同族を殺す事を強いられているんだ!という状況に置かれ続ける事でハジメ達が良心の呵責に苛まれないか、優しいハジメ達がそれを苦にする事態に発展してしまうのではないか、という事だった。

そんなシアの不安を見抜いたハジメはふと、自分達が旅をしている訳を教えていない事に気付いた。

 

「そういえば話していなかったね。僕達がどうして旅をしているのか、君達に頼んでまで樹海に入ろうとしているのかを」

 

それに気づいたハジメは「相手は亜人族、エヒトルジュエの事は信仰するどころか差別の関係から憎んでいると思う」との考えから話しちゃっても大丈夫だと判断し、自分達の旅の目的を話した。

反逆者の住処で知ったトータスの真実、邪神エヒトルジュエが自分達の故郷にまで手を出さんとしている危機感、それを阻止する為に決意した邪神討伐、その為の『術』としてISやヴァスターガンダム、ストリボーグを始めとした兵器を開発した事等々…

 

「僕達の目的である邪神エヒトルジュエの討伐、それは即ち聖教を潰すのと同じ事であり、それを信仰するほぼ全ての人間族を敵に回すのと同じ事さ。ヘルシャー帝国もハイリヒ王国程では無いにしても信仰に熱心な国民性だと聞く、僕達がやろうとしている事を知ればそれを阻止せんと敵対するに違いない。それが少しばかり早まるだけの事だよ、シアが「自分の所為で」と気に病む事は無いさ」

「そ、そうだったんですか…」

「はっはっは、分かりやすくて良いですな。樹海の案内はお任せ下され」

 

エヒトルジュエ討伐というまさかと言うしかない目的を聞いて、余りにスケールのデカい話にハウリア族の大半が理解し切れないと言いたげな表情を浮かべる中、既に帝国はおろか、この世界の同族全員に敵対するのも厭わないと覚悟を決めていたのだと納得したシアの不安は晴れ、一方でその目的がこの世界の為みたいな安直な正義感を振りかざす物では無く、自分達の大切な人を、日常を守る為というあくまで自分本位な物、ハウリア族を守るのもハジメの性分が含まれてはいるけど、極端な話自分達の目的の為だと理解したカムは、下手な善人キャラより余程信ずるに値すると快活に笑っていた。

そんな一行は大峡谷の出口に繋がる階段構造の岩壁に辿り着き、ハジメを先頭に登って行き、

 

『のわっ!?』

 

登りきって脱出を果たす前、其処にいるだろう帝国軍の陣に優花がスタングレネードを投擲、雫に次いで高い筋力と投擲術の技能を活かして寸分の狂い無く放り込んで炸裂させ、陣内を混乱状態に陥らせた。

 

「さぁて皆、

トリハピ祭りじゃぁぁぁぁ!サンハイ!

「トリハピ祭りじゃ」

「「「「「ワッショイワッショイ!」」」」」

『ぎゃぁぁぁぁ!?』

「トリハピ祭りじゃ」

「「「「「ワッショイワッショイ!」」」」」

『ぐぁぁぁぁぁ!?』

 

その混乱の隙を突いてハジメ達は、何処ぞのキュアゴリラみたいなネタを叫ぶハジメの先導で陣内に突入、香織達もハジメに合わせてネタを連呼しながらヴィーフリによる掃射で帝国兵を皆殺しにした。


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