【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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23話_フェアベルゲン

待つ事一時間近く、ただ待っているのも苦痛だったのかまずは香織とユエが、そのすぐ後に「抜け駆け厳禁よ!」と優花が、少し後に「私も混ぜて」と雫がハジメにすり寄った為にイチャつき始め、それを見て羨ましくなったのかシアが「私も~」と参戦しようとして「お呼びでないから」と追い払われ、尚も入ろうとして、胸の一件からシアを良く思っていないユエに制裁されるという、何とも言えない光景が繰り広げられる中、急速に近づく気配を感じ取った事で気を引き締めた一行。

尚、待っている間武装こそ解除してはあるもののハジメはXラウンダーによるプレッシャーを発し続けていた為に待機していたフェアベルゲン側の面々は戦闘態勢に入る事はおろか指一本動かす事も出来ず、敵地のど真ん中でイチャつくハジメ達の姿を目撃しても何の対処も出来なかったそうだ。

と言っても別に周りの亜人達から攻撃されるのを警戒してそうした訳では無い、では何故そうしていたのかと言うと、現在は自分達及び案内役として同行しているハウリア族の一団とフェアベルゲン第二警備隊の一団、指揮系統が全く異なる2つのグループが一緒になってハルツィナ樹海内の一か所に屯している状況、其処に魔物が襲い掛かって来たらどっちが魔物を迎え撃つかで大揉めになるし、互いが勝手に対処すれば誤射等のミスも発生しかねない、自分達はフェアベルゲン側とは初対面な上にそもそも相手側からは蛇蝎の如く嫌われる人間族だしハウリア族はシアの一件でフェアベルゲンから追われる身、いざと言う時の連携など望める筈も無い、そういった混乱を避けるべく魔物を追い払う為にプレッシャーを発していたのだ。

自分達が使用している銃火器は誤射1つで命取り、もし亜人を射殺してしまったら仮にミスだと客観的に証明されてもフェアベルゲン側の態度が硬化するのは確定的に明らか、なるべくならそんな事態は避けたいハジメの防衛策なのだ。

この為に何事も無く(?)待ち時間を過ごしていたこの場所に再び緊張が走る、とはいえ近づいて来る気配は魔物の物ではなく、周りにいる警備隊とよく似た物だったが。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね?名は何と言う?」

「ハジメ、南雲ハジメ。貴方は?」

 

現れたのは数人の亜人、その中心には長老と呼ばれる存在の一角であろう、初老の男がいた。

尖った耳が何よりも特徴的な所謂エルフ――トータスにおいては森人族と呼ばれる種族の特徴を有した男、寄る年波には勝てないのか元々端正だったその顔には皺が刻まれているが寧ろそれが威厳さというアクセントを加えていた。

その長老らしき男にハジメは一応の敬意を払いながら自己紹介するがぶっちゃけタメ口だったので周囲の亜人がその無礼に対して憤り飛び掛かろうとするも、ハジメは相変わらずXラウンダーによる威圧を放っていたので動くに動けなかった。

 

「私はアルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を1つ預からせて貰っている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが、その前に聞かせて貰いたい。解放者とは何処で知った?」

「オルクス大迷宮の奥の奥、正に奈落の底と言って良い場所にある解放者オスカー・オルクスの住処で教えて貰ったよ。この指輪がその証拠さ」

 

それは男――アルフレリックも一緒の筈だが、彼は重苦しい気配に押し潰されそうになりながらも毅然とした態度で自己紹介をしつつ、ハジメに目的の根拠である解放者の存在について尋ねた。

それを素直に答えたハジメは、アルフレリックの顔が驚愕に染まりその証拠を提示する様求める未来が見えたので先回りする形で自らの指に嵌めた指輪を見せた。

その指輪に刻まれた紋章を見てアルフレリックは驚愕の余り目を見開き、ハジメ達がオスカー・オルクスの住処で解放者の事を知ったのだと認識した。

アルフレリックはハジメの話を聞いた当初、上層部の誰かがハジメ達にその情報をリークしたのではないかと若干疑っていた、というのは解放者の存在と、その1人がオスカー・オルクスという名である事は自分達長老と極僅かな側近しか知らない機密事項、よってその内の誰かがハジメ達の強さに目を付けて勇者として招き入れる事で自分の発言力を強めようとしたのでは無いかと疑いを持っていたのだ。

然しハジメ達がオルクス大迷宮の最深部にある住処に辿り着き、其処で解放者の存在を知った事を示す物的証拠がある以上その線は無いと確信、同時に彼らは客人として迎えるべき存在だと理解した。

 

「成る程、確かにお前さん達はオスカー・オルクスの住処に辿り着いた様だ。他にも色々気になる事はあるが、良かろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るが良い、私の名で滞在を許そう。勿論、ハウリアも一緒にな」

 

フェアベルゲンの、亜人族の長である筈のアルフレリックが口にした、仇敵である筈の人間族と法を破ったハウリア族を迎えるという異例の決断に驚きの声が上がるが、それに抗議するのは周囲の亜人達だけでは無かった。

 

「ん?どう言う事?僕達が行きたいのは大樹であってフェアベルゲンじゃないんだけど?」

 

目的地はフェアベルゲンでは無く大樹であるハジメ達もまた、何故さっさと大樹に行かせてくれないかと抗議の声を上げるが、その話を聞いたアルフレリックは何処か困惑した様に返事した。

 

「いやお前さん、今大樹に向かうのは無理だ」

「え?」

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で霧が弱まるから、大樹の下に行くにはその時で無ければならん。次に行ける様になるのは十日後だ。亜人族なら誰でも知っている筈だが…」

 

今直ぐには行けないと言う事実を、亜人族なら皆知っている筈の事実を知らされるハジメ、あれそういえばハウリアの族長であるカムは説明していなかったなとふと思い出してアルフレリックと共にカムの方を見た。

 

「あ」

「カム?」

「あっいやその何と言いますか…

はっはっは、色々あったから忘れちゃったZE☆」

『ズコー!』

 

その事実をすっかり忘れると言うまさかの事態にハジメ達、カム以外のハウリア族、そしてフェアベルゲン側の亜人達が昭和を代表すると言って良い感じにズッコケたのは言うまでもない。

 

「いや忘れちゃったZE☆や無いやろ!オドレはマジタレ*1が出来ていちびってる*2漫画編集者かゴルァ!」

「アッー!」

 

それを、誤植を連発した漫画編集者みたくふざけた感じで釈明したカムにハジメがマジギレし、関西のチンピラみたいな口調で糾弾しながらヴィントレスで連射、カムをボコボコにした(勿論非殺傷弾)のも言うまでも無い。

 

------------

 

「成る程、試練に神代魔法、それに神の盤上、か…」

 

その後1時間程掛けてフェアベルゲンに入国したハジメ達、其処でこの霧が立ち込めるハルツィナ樹海の中でも生きていける様な取り組みを積み重ねた亜人達の苦労が分かる街並みの神秘性を称賛したり、道中で所かまわず突き刺さった好奇や忌避、困惑や憎悪と言った様々な視線を感じ取った事で長年に渡って酷い迫害を受け続けた亜人族が人間族等に対してどの様な感情を抱いているのかを感じ取ったりしたハジメ達は、長老達が重要な意思決定を行う為の場所、現代日本で言えば官邸や国会に該当する様な場所の最上階に招かれ(その際にハウリア族の皆がその下で待機しようとしたがハジメが「皆も入るんだよ、今は仲間なんだから」と一緒に入れた)、アルフレリックと話し合いを始め、オルクス大迷宮の最深部に存在する反逆者の住処でオスカー・オルクスから教えられたこの世界の真実を、自分達が元居た世界からエヒトルジュエによって無理矢理召喚させられた事を、真実を知ってエヒトルジュエを討伐する為に七大迷宮を攻略し、神代魔法を手に入れようとしている事を説明した。

その話を「神がクズであろうとそうで無かろうと、亜人族の現状は変わらない、今更だ」と顔色を変える事無く受け止めたアルフレリックは、何故周囲の反対を押し切って自分達をフェアベルゲンに招いたか、その根拠である『掟』について説明した。

その掟、解放者の1人でハルツィナ樹海にあるとされる大迷宮の創始者であるリューティリス・ハルツィナが、自分達が解放者であるという事実、自分を含めた解放者の名前と共に、フェアベルゲンが出来るよりずっと前からこの地に住んでいた亜人の一族に言い伝えて以来、延々と受け継がれて来たたというその掟、それはこの樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れた時、それがどんな存在であろうと敵対しない事、その者を気に入ったら望む場所に連れて行く事、と何とも抽象的な物だった。

因みにアルフレリックがハジメの指輪に刻まれている紋章を見つけて驚いたのは、大樹の根元にある石碑に七大迷宮を示す紋章があり、その1つと一致したからだとか。

 

「つまり、僕達はその資格を持っている訳だね」

 

自分達人間族を此処フェアベルゲンに招き入れた訳が分かったハジメ達だったが、それは長老達にしか伝わっていない事、殆どの亜人族は知らないので今後どうすべきかを話し合う必要があるとの認識で一致したその時、この場に向かってドカドカと大きな足音を立てて向かって来る一団を感じ取った。

最悪の状況を想像して顔が青ざめるハウリア族一同とは対照的に、ハジメ達とアルフレリックはまあそうなるよなと、寧ろ呼び出す手間が省けたなと言わんばかりに平然としている中、ドカァッ!という轟音と共にドアが荒々しく開かれた、その先にいたのは熊を思わせる亜人に虎人(警備隊長の虎人とは別)、狐を思わせる亜人に背中から翼を生やした亜人、そしてドワーフの様な見た目の毛むくじゃらな亜人の5人がいて、例外なくハジメ達を、アルフレリックを、そしてハウリア族一同を睨み付けていた。

 

「アルフレリック、貴様どう言う積りだ?何故人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませる等…

返答によっては、長老会議にて貴様を処分することになるぞ」

 

それを代表して熊の亜人がアルフレリックに問い質す、握り拳がわなわなと震えているのを見れば怒りや憎悪等、様々な感情が渦巻いて今にも爆発しそうなのは明らか、然しながらアルフレリックと同じく長老の立場なのかそれを必死に抑え込み、何事かを問うているのは流石にフェアベルゲンを引っ張る立場であると言うべきか。

そんな熊の亜人の激情などどこ吹く風と言わんばかりに、アルフレリックはこう答えた。

 

「なに、掟に従った迄だ。お前達も各種族を代表する長老の座にあるのだ、事情は理解出来る筈だが?」

「何が掟だ、そんな物眉唾物ではないか!フェアベルゲン建国以来一度も実行された事無いではないか!」

「だから今回が最初になるのだろう、それだけの事だ。お前達も長老なら掟に従え、掟とはそういう物だ。我ら長老の座にある者が掟を軽視してどうする」

「ならこんな人間族の小僧達が資格者だとでも言うのか!敵対してはならない強者だと!」

「そうだ」

 

どうやら集まって来た亜人達とアルフレリックが今代の長老らしいが、掟に対する認識は差がある様子、アルフレリックは見た目もそうだが、森人族自体が平均寿命200歳という長命な種族、よって目前の長老達とは相当年齢に開きがあるのかも知れず、掟への姿勢も此処まで違うのだろう。

あくまで掟を重視するアルフレリックと、形骸化したと言っても過言じゃない掟など守る意味は無いと息巻く他の長老達、

 

「ならば、今この場で試してやろう!」

 

その状況下で熊人はいきりたち、ハジメに向かって突進し、瞬時に間合いを詰めると共にストレートパンチを放った。

2メートル半という身長に見合った身体能力を有する熊人族、そのパワーは一撃で野太い木をへし折る程との事、その豪腕から全力で放たれたパンチには流石のハジメも耐えられる筈もない、次の瞬間には肉塊となったハジメを他の亜人達は想像したが、

 

「ッ!?」

 

そうはならなかった。

衝撃音と共に振り下ろされた拳はあっさりとハジメの左腕で掴まれ、次の瞬間にはズバァ!という斬撃音と共に腕ごと熊人の身から分離させられた。

だがそれだけでは終わらなかった。

 

「ご、がば、あが…」

「じ、ジン!?」

 

最初、長老としての矜持から例え腕を切り離される激痛を感じようと悲鳴を上げなかったのだと思われた熊人――ジンだが、少し経つと様子が変わった。

酸欠状態に陥ったかの様に顔が青ざめ、足元が覚束なくなりやがて崩れ落ち、ビクビクと痙攣し出したのである。

腕が切り離されたのは言うまでも無くハジメが錬成を悪用し、ジンの拳を左腕で掴む瞬間に彼の血液に含まれる鉄分を用いて発動、沢山の鉄を駆使して腕の中に刃を作り出してズタズタに切り裂いたのだ。

さてこの錬成の際に用いた鉄は血液において酸素供給を担う重要な物質、その大半が錬成の為に役割を失ったらどうなるか、答えは今言った通りの酸欠状態だ。

急激に酸素供給能力が失われた事によって只でさえ片腕を失ったダメージの大きいジンの身体が悲鳴を上げ、昏睡状態に陥ったのである。

その後ジンは救急搬送され、高価な回復役を湯水の如く使う等の治療によって一命をとりとめたらしいが、所謂植物状態に陥り、戦士として戦う事は勿論、意識を取り戻す事すら無かったそうだ。

*1
本命の彼女を示す隠語

*2
近畿地方の方言で「調子に乗っている」という意味

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