【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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どうしても休み中に書き上げたいという衝動にかられ、本日2度目の投稿になりました。


24話_長老会議

「さて、貴方達は僕達にどの様な態度で臨むつもりかな?僕達は大樹の下に行きたいだけであり、それを邪魔しなければ敵対する気も無い訳だけど…

亜人族個人個人の感情は兎も角として、フェアベルゲンの、()()()()()の意志を示して貰えねばいざと言う時、此方が其方的にはやり過ぎるという意味で不味いと思うな。生憎と殺し合いの最中、アルフレリックさんみたいに受け入れる立場の人と、先程のジンみたいに拒絶する立場の人、その区別に配慮する暇は無いんだからさ」

 

ジンが運ばれた後、アルフレリックの執り成しもあってかハジメによる蹂躙劇が回避された長老会議の場、其処には今、虎人族のゼル、翼を生やした亜人――翼人族で長老唯一の女性であるマオ、狐みたいな姿の亜人――狐人族のルア、ドワーフらしき見た目の亜人――土人族のグゼ、そしてアルフレリックが、ハジメ達と向かい合う形で座り、ハジメ達の背後にハウリア族一同が固まって座っていた。

こうして始まった話し合いの第一声で発したハジメの言葉に、場合によっては皆殺しも辞さないと言外に主張するその言葉には、先程亜人族の中でもトップクラスの戦闘力を誇るジンが文字通り手も足も出ずに瞬殺された光景を目の当たりにしたのもあって、アルフレリックを除いた長老達は揃って身を強張らせた。

 

「此方の仲間を再起不能にしておいて第一声がそれか。それで友好的になれるとでも?」

 

その中の1人であるグゼが苦虫を噛み潰した表情で、呻くように呟いたのは、今の一件に対する敵意と言えなくもない感情だった。

 

「何を言っているのかな?先に殺意を向けて襲い掛かったのはあの熊人族だよ?僕はそれに対処しただけ、つまり正当防衛さ。再起不能になったのは向こうの自業自得でしょうに」

「き、貴様!ジンはな!ジンは何時も国の事を思って」

「それが初対面の相手を問答無用に殺しても良い理由になるのかな?」

「そ、それは、然し!」

「勘違いしないで欲しいな。僕が被害者で、向こうが加害者、これは揺るがしようのない事実なんだよ?長老会議は罪科の判断も下す機関、なら長老である貴方は感情に振り回される事無く状況に基づいた理性的な判断を下すべきだと思うな」

 

然しながらハジメが言った通り先に襲い掛かって来たのはジンの方である、流石に片腕を切り取った上に植物状態まで追い込んだのは過剰防衛じゃね?とツッコまれそうだが一歩間違えたら(無いとは思うが)ハジメもただでは済まなかったのである。

 

「グゼ、気持ちは分かるがその位にしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

アルフレリックもそれを理解してたのかグゼを諫め、自分の言い分に賛同する者がいないと思い知ったグゼは表情を歪めつつも黙り込んだ。

 

「確かにこの少年は紋章の1つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけの事はあるね。僕は、彼らを掟にある資格者と認めるよ」

 

こうして再開された話し合いで真っ先に発言したのはルア、ハジメ達を資格者として認めると表明し、他の長老達はどうするのかと言わんばかりに視線を周囲に向ける。

それを受けてかマオやゼルも思う所はあれど同意を示した、グゼは未だ黙り込んだままだったがアルフレリックを含めれば4人の長老が認めるとの判断であり、多数決の原理からして決定と言って良いだろう、代表してアルフレリックがそれを伝えた。

 

「南雲ハジメ、白崎香織、八重樫雫、園部優花、そしてユエ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さん達を掟にある資格者として認める。故にお前さん達と敵対はしないと言うのが総意だ。可能な限り、末端の者にも手を出さない様に伝える、然し…」

「絶対じゃないって事かな?」

「ああ、知っての通り亜人族は人間族を良く思っていない。正直憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は長老会議の通達を無視する可能性を否定出来ない。特に今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑え切れない可能性が高い。アイツは人望があったからな…」

「それで、何が言いたいのかな?」

「お前さん達を襲った者達を殺さないで欲しい」

「殺すな?」

「そうだ。お前さん達の、少なくともお前さんの実力なら容易だろう?」

 

フェアベルゲンの総意としてハジメ達を資格者として認め、敵対しないと表明はしたが、それに従わない者達も発生するだろう、そういった者達が仮に襲撃をして来ても命までは取らないで欲しいと言う要求に渋い顔をする香織達だったが、ハジメだけは予想通りと言いたげな顔で了承した。

 

「まあね、分かったよ。人間族が亜人族に対する長きに渡る差別の歴史は僕も学んでいる、それ故に亜人族が人間族に抱く憎悪も理解しているよ。僕がいた世界にも似た様な差別が長きに渡って続いた歴史がある、いや今現在も続いていると言って良い。それもこのトータスにおいて貴方達が被害を受けた様な魔力の有る無しや、動物みたいな耳や尻尾を生やしている事等に基づいた物じゃない、ちょっと肌の色が違うだけで酷い差別が横行したんだよ。アルビノへの迷信、アパルトヘイト、ホワイトパワー…

嫌な現実だよ、何処の世界にも他種族の粗を探してそれをこき下ろす輩が大勢いる、それが国家ぐるみ、世界ぐるみで長きに渡って行われる歴史がある、未だに続いているなんてね、ふざけんなよ本当にさぁ!」

 

敵と認識した相手には一切の情け容赦を掛けないが、そうでなければ考えるより先に手を差しのべてしまう程の優しさと、その為にどんな困難にも立ち向かえる勇敢さを併せ持っているハジメである、このトータスにおける人種差別の歴史を知って心を痛めたのは、それ故か亜人族が人間族等に対して憎悪とも言える嫌悪感を抱くのも仕方のない事だと思ったのは言うまでもない。

思い出すだけでも気分を害する現実に思わず声を荒げたハジメに驚いた亜人達だったが、アルフレリックからの要求に平気な顔で応じたのはそういう思いが、奈落に落ちてからの壮絶な日々を経ても歪む事の無かった鉄の意志があったからだ、然し…

 

「少なくとも僕は、殺しはしない。だけどまともな人生を歩み続けられるとは思わないで欲しいな。さっきあの熊人をノしたあの攻撃、あれこそ僕が出来うる『手加減』だから」

 

人としての命までは取らないが、無力にはする、それがハジメの真意だ。

ところがこれに噛みついた者がいた、ハジメ達を資格者として認めると口にしなかったグゼではない、

 

「ならば我々は大樹の下への案内を拒否させて貰う。掟にも気に入らない相手を案内する必要は無いとあるからな」

 

一度はハジメ達を資格者として認めた筈のゼルだ。

その言葉に香織達は訝しそうな表情をした、それもそうだろう、案内人に指定したのはハウリア族であり他の亜人族を頼る積りは無い、それは彼らも知っている筈なのだから。

然しながらゼルの次の言葉で真意が明らかになった。

 

「ハウリア族に案内して貰えるとは思わない事だ。そいつらは罪人、フェアベルゲンの掟に基づき裁きを与える。何があって同行していたのかは知らんが、此処でお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪、フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑の決定が下っている」

「何ですって?」

 

その言葉に反応したのはハウリア族と雫、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めた様な表情をし、雫は怒りを露わにする。

やがてシアが土下座をしながら他の一族は見逃すよう懇願したがその決定が覆る事は無く、

 

「そういう訳だ。これで貴様らが大樹に行く方法は途絶えた訳だが、どうする?運良く辿り着く可能性に」

 

それ故に此方の要求を呑め、でなければ大樹には事実上行けないぞと勝ち誇った笑みを浮かべながら突きつけようとしたが、

 

「むぅっ!?」

「ぬぉっ!?」

「きゃぁっ!?」

「な、何だ!?」

「地震か!?」

 

突如この部屋を、正確にはフェアベルゲン全体が激しい揺れに襲われ、轟音が響き渡った事でそれが最後まで発せられる事は無かった。

唐突に起こった揺れと轟音に驚き、外に出てみると其処には、

 

「な、何だあれは!?」

「地面に、大穴!?」

 

地面に半径数メートルから十数メートルとも言える大穴――クレーターが空いたフェアベルゲンの光景だった。

それに驚いたのは長老達だけでは無い、フェアベルゲンに住まう亜人族の人々もまた驚き、何だ何だとその方へ向かおうとする。

だがそれは1回限りの物では無かった、突如として発生する土柱、それに伴って起こる激しい揺れと轟音、それが1秒間に何十回という間隔で引き起こされ、フェアベルゲンの地が穴凹だらけになって行ったのである。

 

「解放者リューティリス・ハルツィナは嘆いている!掟に従わず資格者に敵意を示す長老達の姿を嘆いている!」

「な!?」

「自らの言い伝えを無下にし、理不尽な要求を突きつける亜人達を嘆き、その驕り高ぶった考えを正すべくこうして裁きの鉄槌を下しているんだ!オスカー・オルクスの住処にあった書物の通りだ!」

「何だと!?」

 

まさかの事態に慌てふためく長老達にこれはリューティリス・ハルツィナによる裁きだと伝えるハジメだが、これは嘘だ。

真相はフェアベルゲンに入国する前にハジメが、メルキューレにヴィントレスを持たせた状態で密かに上空へと飛ばし、遠隔操作の派生技能を習得していた魔力操作技能を駆使し所謂遠隔操作式レールキャノンとして配備し、このタイミングで地上に向けて掃射を行わせ、リューティリス・ハルツィナの意志を騙って長老達の決定を覆そうとしているのだ。

ヴィントレスはハジメが開発した銃火器の中で、ボーク・スミェルチ弾を使う物では最も巨大なサイズではあるが、それ故かヴィーフリと比べても銃身長は長く、即ちレールガンによる電磁加速の恩恵をより多く受けられると言う事である。

その弾速は十数km/s、これは隕石と互角以上のスピードである、銃弾としては異例とも言える重さを持つボーク・スミェルチ弾がそのスピードで地上に直撃すればどうなるか、そんな銃撃が重機関銃であるヴィントレスによって連続で行われたら、その答えが今の様な地獄絵図なのだ。

 

「わ、分かった!ハウリアの処刑は中止し、彼らは無罪とする!」

 

ハジメの自作自演によってこんな地獄絵図が繰り広げられているとは知る筈もなく、リューティリス・ハルツィナの意に背いた罰だと知って慌てた長老達は既に決定していたハウリア族の処刑を撤回し、その罪を問わない事を決めたが、銃撃が止まる事は無かった。

 

「な、何故だ!?何故治まらないんだ!?」

「まさか一時の決定を覆しただけで矛を収めると思ったの?きっとリューティリス・ハルツィナはこう思ったんじゃないかな?今の長老達を、少なくとも僕達資格者に対し傲慢な振る舞いを見せた人達は信用ならない、きっと第二、第三の資格者が現れた時にも同じ様な対応を取るに違いないとね。つまり、虎人族と土人族の長老を今この時を以て更迭すれば治まるかも知れないね」

「「な、な…!」」

 

後ろで自分がこの地獄絵図を作り出しているなんて考えもせず、脅しにあっさり屈したのを良い事に攻撃を続けながら更に要求を吹っ掛けるハジメ、繰り返すが敵と認識した相手には一切の情け容赦を掛けないだけである。

 

「分かった!今この時を以てゼルとグゼ両名を、この混乱を起こした責任で長老の任を解く!」

 

それを聞いてアルフレリックは一縷の望みを掛けてゼルとグゼを更迭する決定を下した。

長老の更迭という異例中の異例と言って良い決定を独断で行ったアルフレリックだが彼を非難する者はいなかった、それ程までに今起こっている事がフェアベルゲンを揺るがしかねない緊急事態だったのだから。

そしてハジメの言う通り(尤も実行している本人なので当然と言えば当然だが)、両名の更迭を宣言したそのタイミングで銃撃はパタリと止んだ。

 

「これでリューティリス・ハルツィナも安心だと思うね。資格者に害意を示す長老はその座を追われ、僕達資格者は歓迎される意向となった。案内役に任ぜられたハウリア族が処断される事無く、ね。何て顔しているの?これから仲良くやって行こうよ、ね?」

 

自分がこの事態を引き起こした事等おくびにも出さず、平然とした態度で応じるハジメ、そんな彼らに長老達の表情は苦虫を噛み潰した様な物、それを目ざとく見抜いたハジメが友好関係を築いて行こうと話し掛けた。

尚、その心中で「計画通り」と言いたげな歪んだ笑みが浮かべていたのは言わずとも分かるだろう。

因みにあの銃撃に巻き込まれたのは1人もおらず、精々揺れに伴う軽傷者が亜人側から出た程度だったらしい。

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