【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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25話_生き残る唯一の道

「ハジメ、何であんな回りくどい事を?」

「雫?」

 

長老会議にて死罪が決定していた筈のシアを始めとしたハウリア族の逆転無罪と、同じく長老会議にて資格者である筈のハジメ達に敵対的な姿勢を見せたグゼとゼル両名の長老からの更迭(ジンは植物状態なので事実上の辞任)、そしてハジメ達を資格者に認定しての滞在の許可、その3つをハジメが策を弄した事で勝ち取り、シア達の心からの喜びの声を聞きながら意気揚々とハウリア族の集落に入った一行、其処でハジメが実行した策についてふと雫が尋ねた。

 

「別にあんな回りくどい事しなくても「今すぐにでも皆殺しに出来るんだよ?」と脅し、案内人であるシア達を処刑させなどしないと意志を示せば済んだじゃない?私達ならそれが容易く出来る、それ程の実力があるでしょ?」

 

きっと自分達やシアの関係でゴタゴタが起こるだろうなと想定していたハジメは兎も角、香織達は長老達、というより高圧的な態度で出て来たゼルの主張に怒りを覚えていた、殊に雫はそれを隠す事すらしなかったのだ、そのゼルを含めて3人の長老がその座を追われた事には「ざまぁ見ろ&スカッと爽やか」の笑いが出て仕方なかったが、一方でリューティリス・ハルツィナの意志と称した銃撃を、態々メルキューレにヴィントレスを持たせ、上空に遠隔操作式レールキャノンとして配置した状態で行うと言う面倒臭い事この上ない手間を掛けたハジメの思いに少なからず疑問を抱いたのである。

 

「雫、僕達が此処フェアベルゲンに来たのは喧嘩を売りに来たからじゃないんだよ?僕達は大樹に行きたいからその許可を求めて交渉する為に来たんだ。元々亜人族の人間族に対する感情は長年に渡る差別の影響ですこぶる悪い、一見すると同じである僕達が只でさえあの熊人を正当防衛とはいえ半殺しにした事で向こうの覚えが更に悪くなっていたのに、そんな喧嘩腰で、あからさまな内政干渉的発言をしたら関係の決定的な悪化は避けられないよ。恐らく長老会議の威厳ガーって感じで紛糾した末、完全勝利は無かったと思うよ、良くてハウリア族ごと僕達を出禁にする、とかで手打ちになっていたかな?勿論あの虎人族と土人族の長老はその座に居座ったままでね」

「それは…そうね」

 

それに対するハジメの答えを聞き、そんな光景が直ぐに浮かんで複雑な表情になる雫、もしそうなったら恐らくアルフレリックが掟を基に要求を受け入れようとし、ゼル達がそれをハジメが言ったみたいな主張で強行に反対し、落とし所としてハウリア族の死罪だけは無し、とするだろう。

 

「樹海の案内を依頼した時、絶体絶命の状況から助けたという恩があるとは言え、長年の迫害を受け続けた事とかを抜きに快諾してくれたハウリア族の皆を、短い間だけど仲間として守って見せると僕は誓った。其処が決して譲れない一線なのは確かだよ。だけどフェアベルゲンの人達にも相応の事情がある。それを無視し、力を背景に此方の意見を押し通そうとすれば必ずや禍根を残す事になる。交渉において嘘や詭弁、自作自演は避けて通れないのさ」

 

ヴィントレスの掃射によってそのフェアベルゲンに無数の穴凹を作り、それを解放者による粛清だと騙って「自発的に」此方の要求を受け入れさせる、一文で表現するとえげつない事この上ないハジメの所業ではあるが、その根底にはフェアベルゲンの民が人間族に対して抱く憎悪にも似た感情とその原因である長年の迫害というこの世界の負の歴史に理解を示しつつも、ハウリア族の身を守り、自分達の探索を滞りなく進めるにはどう対応すれば良いかと考えた末に導き出した最良の答えがあるのだ。

 

「とはいえまだ100%安心という訳じゃない。一応は僕達の要求が全て通り、あの掃射が降って来るかも知れないという恐怖と長老からの通達でフェアベルゲンの民達は、僕達を襲撃する事は死にに行くのと同じ事だと捉えた筈。だけど可能性が無くなった訳じゃない。あの長老会議の場で熊人の長老は再起不能、虎人と土人の長老は混乱の責任を取る形でその座を剥奪、それを聞いた彼らの一族は相当な憤りを抱えているだろうね。命を投げ出す覚悟で襲い掛かる可能性は無い訳じゃない。まあそいつらを返り討ちにするのは簡単だけどさ」

 

だが油断は禁物と言わんばかりに気を引き締め、未だ残る懸念を説明する。

後日、熊人バントン族のナンバー2(トップは長老の1人だったジンらしい)で、次期長老候補とまで言われたレギン・バントンという男が、ジンが人間族相手に成す術もなくやられて植物状態になったという話を聞き激昂、ハジメの予想通り報復に乗り出そうとし、全てメルキューレに搭載していた探知能力でお見通しだったハジメがやはりリューティリス・ハルツィナによる粛清と称した掃射を実行、レギンはフェアベルゲンを混乱に陥れた罪で全ての職を解任、樹海を追放されたそうな。

 

「という訳で、君達にはこれから戦闘訓練を受けて貰おうと思っている」

「いやどういう訳ですかぁ!?」

 

それを踏まえてハウリア族全員に戦闘訓練を課す考えを伝えたハジメだったが、余りにも唐突な発表に聞こえたシアがツッコんだ。

 

「これから十日間はこの集落で過ごす事になるんでしょ?だったらその間の時間を有効活用し、身体能力面で他の亜人族に対する取り柄の無い君達でも充分戦える戦士に育てようとね」

「な、何故その様な…」

 

そのツッコミに応ずる様に自らの考えを説明するハジメだったが、ハウリア族の誰もが先程までの雫との会話から何故この様な状況に辿り着いたのか分からないらしく、誰かが疑問を投げかけた。

 

「いや君達、今までの話聞いてた?今言った亜人族による襲撃、その対象として君達ハウリア族も狙われるかも知れないんだよ、僕達を樹海の中に、フェアベルゲンに招き入れた元凶としてね。今はまだ良い、僕達という守ってくれる存在が居るから。僕達自身の強さもさることながら、僕達に敵意を示せばリューティリス・ハルツィナによる粛清と称した銃撃がこのフェアベルゲンを襲うという要因がある、僕達は勿論、案内役に任ぜられたハウリア族にも手は出せない筈さ。

 

ならその案内役の任が終わったら、僕達という守ってくれる存在が居なくなってしまったら?その時こそ他の亜人族が襲い掛かって来る時さ、資格者である僕達の案内役という肩書が無くなった以上、ハウリア族を攻撃してもリューティリス・ハルツィナの意志に逆らう事にはならない、あの掃射がフェアベルゲンに降り注ぐ事態は起こらない、そして弱っちぃハウリア族には碌な反撃も出来ない、と。フェアベルゲンの庇護下にあるから大丈夫?そんな物何かしら罪状をでっち上げてしまえばどうとでもなる」

 

その疑問へのハジメの答えを聞いて今更ながら状況を理解し、顔を青ざめさせるハウリア族一同、それは族長であり色んな意味で大物振りを見せるカムも例外では無かった。

 

「僕達、少なくとも僕は出来るならこれからも君達を守って行きたい。幾ら僕達が助けたと言っても、過去の遺恨や他種族とのゴタゴタ等を気にすること無く樹海の案内を快諾してくれた優しい人達を様々な理不尽から救い出したいというのが本音さ。でも僕達も僕達なりの事情がある。このトータスに点在する七大迷宮を攻略していかなければならない以上此処に留まってはいられないし、エヒトルジュエ討伐を果たしたら元の世界に帰らなきゃならない。この集落を、ハウリア族を守って行くには、君達自身が強くなって自ら武器を手にして守るしかないんだよ。それとも弱っちぃまま一族の滅びを受け入れるかい?そんな理不尽な運命を受け入れて良いの?」

 

何時も通りの穏やかな口調で、然し残酷な現実を容赦なく突きつけるハジメ、そんな中で誰かがポツリと零した。

 

「そんなもの良い訳が無い」

 

その言葉に触発された様にハウリア族の誰も彼もが顔を上げ始める、最初ツッコミを入れていたシアも今や決意を固めた様な表情だ。

 

「そうだよ、良い訳が無いんだよ。ならどうすれば良いか。死に物狂いで強くなるしか無いんだよ。僕達が此処に居られる十日間で厳しい特訓を受け続けて強さを身に着けるしか無い。言って置くけど、途中で投げ出す事は許さないからね。これは君達ハウリア族の生死が掛かった戦い(ミッション)なのだから、良いね!」

『はい!』

 

その言葉に、ハウリア族は皆揃って覚悟を宿した表情で頷いた。

 

------------

 

さて、ハウリア族に戦闘訓練を付けさせるにあたってハジメは、兎人族の特長である聴覚及び気配操作の能力を活かすなら槍等の長物よりも小太刀や鉈等のコンパクトな武器の方が上手く扱えるだろうし、それならこの樹海内でも武器が木々に引っ掛かる可能性は低いと考え、其々の挙動に合わせた武器を新調して渡した。

流石に銃火器の類は渡さなかった、これは強力過ぎてこの世界のパワーバランスを崩壊させかねないから、というより銃弾等の消耗品を生産するノウハウがハウリア族に無い以上は宝の持ち腐れにしかならないからという理由である。

因みに、シアについてはユエが魔法、雫が近接戦闘というツーマンセルで訓練を受けさせている。

亜人族でありながら魔力があり、その直接操作も出来るシアは知識さえあればタイムラグ無しで魔法を放てるチートキャラと化す筈だとハジメは考え、2人に訓練を任せたのだ。

時折家屋の中からシアの悲鳴や、雫の「もっふぅぅぅ!」等の奇声が聞こえはするが、まあ向こうは問題ないだろうとハジメは考えるのをやめた。

その他香織は負傷者の治癒、優花はハウリア族一同の為の料理作りと其々の得意分野を活かした担当に就き、万全の態勢でハウリア族の訓練をサポートするシステムを整えた。

後は訓練を受けるハウリア族一同の態度次第、なのだが訓練開始から2日目、ハジメはどうした物かと言わんばかりの難しい表情で訓練を見守っていた。

といってもハウリア族一同は自らの穏やかな気質に逆らいながらも、言われた通り真面目に訓練に励んではいる、元々自衛官を目指して幼い頃から厳しい訓練を自らに課して来たハジメの指導方針が洗練されていたのもあってかめきめきと実力を付けて行った。

その成長度合いは指導するハジメも驚く程、幾ら生死の掛かった状況で死に物狂いにやるしかないとはいっても此処まで育つとは考えにくい、争い事を嫌う気質に隠れていただけで元々素養はあったのだろうと感心していた。

その素晴らしい成長振りは実戦訓練として現在行われている魔物との戦いにも反映されており、掠り傷を負う事すらなく倒してはいる、のだが、

 

「嗚呼、どうか罪深い私を許してくれぇ!」

 

ある男は殺した魔物にそう叫びながら縋り付く、まるで互いに譲れぬ信念をぶつけ合った末に親友を殺したかの様に。

 

「御免なさい、御免なさい!それでも私はやるしかないのぉ!」

 

ある女は魔物の首を切り裂いた直後から、狂愛の果て、愛した人をその手で殺めたかの如く小太刀を握り、わなわなと震えていた。

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰と言う訳か、当然の結果だな…」

 

そしてカムは一瞬の隙を突かれ、致命傷を与えた魔物の体当たりを食らって吹き飛ばされた際、起き上がろうとしながら自嘲気味に呟いていた。

 

「族長、そんな事言わないで下さい!罪深いのは皆一緒です!」

「そうです!いつか裁かれる時が来るとしても、それは今じゃない!立って下さい、族長!」

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行ける所まで一緒に逝きましょうよ」

「お、お前達、そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼の為にも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

『族長!』

 

それを切っ掛けに繰り広げられる何か良い雰囲気の芝居っぽい物を見せられ、ハジメは頭を抱えるしかなかった。

 

「どうした物かなぁ、これ…」

 

最初にそれを目撃し「それ何?」とちょっぴりプレッシャーを発しながら尋ねてみると「幾ら魔物でもかわいそうで…」と答えを呟いたのを聞いてまあ優しく争いを好まない気質のハウリア族ならあり得なくは無いかと思い、それも慣れてくればある程度割り切ってくれるだろうと考えたハジメだったのだが、一向にそんな気配はない。

これは多少強引でも荒療治を施す必要があるんじゃないかと指導方針について悩み始めたハジメ、そんな彼を心配してか、ハウリア族でもハジメに特に懐いている1人の少年がハジメに近寄って来た。

が、その途中、突如としてその場を飛び退いた。

 

「ん?どうしたの、パル?」

 

その挙動を怪しんだハジメに尋ねられ、少年――パルは足元のそれに手を這わせながらこう答えた。

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって…

良かった。気が付かなかったら、潰しちゃう所だったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

「お花さん?」

「うん、ハジメ兄ちゃん!僕、お花さんが大好きなんだ!この辺は綺麗なお花さんが多いから、訓練中も潰さない様にするのが大変なんだ~」

 

イマイチ話について行けなさそうなハジメを尻目に、ニコニコと微笑むパル、周囲のハウリア族一同も微笑ましそうにパルを見つめていた。

その光景を目の当たりにして、まさかと思ったハジメが質問した。

 

「皆が時々、変なタイミングで跳ねたり移動したりするのは、その『お花さん』があるからなの?」

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

「そ、そうだよね?」

「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出て来た時は焦りますよ、何とか踏まない様に避けますがね」

 

そんなカムからの答えを聞いたハジメは何か決意を固めた様な表情となった。

その様子に何か悪い事を言ったのかとハウリア族一同がおろおろと顔を見合わせる中、

 

「そっかそっか、

 

そういう事か!

『は、ハジメ殿!?』

「ハジメ兄ちゃん!?一体何を!?」

 

ずかずかとカムに近寄ったかと思ったら右腕を思いっきり振りかぶり、今にもぶん殴ろうと言わんばかりの構えを見せた。

そのまさかの光景に驚きを隠せず、何とか止めようと周囲のハウリア族達が駆け寄ろうとするが、

 

「フッ!」

「ッ!?」

 

間に合う事無く拳は放たれ、拳はカムに直撃…するまであと数mmという所で止まっていた。

絶体絶命の状況に冷や汗が止まらないカム、一方ハジメを止めようとしたハウリア族の面々はというと…

 

「…僕に寸止めする積りが無かったら、この拳はカムに直撃していた、カムの命はもう無かったんだよ?

カムの命が今にも潰されかねない状況だと言うのに、君達はお花さんに気を取られて制止に手間取った。見ず知らずのお花さんの為に大事な族長を見捨てる所だったんだよ?」

 

ハジメが予想した通り、道中に咲く花に気を取られて飛び退いた為に間に合う事無く、ハジメが拳を突き出した時には手の届かない地点にいた。

 

「ああ、さっきの状況、僕なら制止させる暇も無くカムを殺せるだろうなんて甘ったれた考えは捨てた方が良いよ。世の中には敵の気質等を基に今みたいな状況を意図的に作り出して敵にとって大事な存在を殺した上で「此処でこうしなければ助ける事が出来たのにな」等と敵の甘さを執拗にいたぶるクズ共なんて沢山いるよ。そんなクズ共にしてみれば君達なんざ格好の餌食なんだよ!」

 

それを踏まえ、厳しい口調でハウリア族一同を叱責するハジメ、それを聞いた周囲の面々はその恐ろしい光景を想像し、真っ青を通り越して白に顔が染まっていた。

 

「良いかい?君達の優しさは武器だ、其処は誇るべき事さ。だけど花や虫を気遣う前にまずは自分を、本当に守りたい大切な人達を気遣って欲しい。そういう物に一々気遣ったが為にもし本当に大切な存在が失われたりしたら、後悔するのは君達なんだよ?花や虫を大切にする優しさは大事だけど、いざと言う時は割り切って欲しい、でないと自分は勿論、守るべき大切な人も死ぬ事になるよ?」

『はい!』

 

ハジメからのアドバイスに力強く答えるハウリア族一同、そんな彼らの顔は、もう優しさと甘さを混同したあんな態度はとらない、そんな決意に満ちていた。

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