ギルドの受付をしていたおばちゃんから貰った地図を基に『マサカの宿』で一泊する事にしたハジメ達、そのチェックインの際に風呂の時間を二時間位確保しようとして驚かれたり、受付のおばちゃんがキャサリンという名前だった事に驚きが広がったり、三人部屋を2つ確保し、
「それで部屋割りは」
『あいこでしょ!あいこでしょ!あいこでしょ!あいこでしょ!』
誰を何処の部屋にするか話を振ろうとしたハジメの後ろで、既に女性陣がハジメとの同室を狙って壮絶なじゃんけん合戦を繰り広げた末にシアと雫が勝ち取り、プラグスーツで強調された爆乳を揺らしながらその喜びを露わにしたり、
「ま、まさか三人で?す、凄い…はっ、まさかお風呂を二時間も使うのはそういう事!?お互いの身体を洗い合ったりするんだわ!それから、あ、あんな事やこんな事を、その最中に他の部屋にいた女性達も参戦して六人で…なんてアブノーマルな!」
その光景を目撃していた受付の女の子がトリップしていたり、それを見かねた彼女の両親らしき存在が代わりに応対していたものの、翌朝には絶対「昨晩はお楽しみでしたね?」と言いそうな態度だったりと色々あったが何とかこの日の宿を確保した。
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その後も受付をしていた女の子が風呂及び部屋を覗き込もうとして母親である女将にバレて尻叩きされたり、予想通り別部屋の香織達も乗り込んで来て部屋割りの意味が無かったりと色々とあった翌朝、香織達が食料品等の買い物に出ている間、ハジメはこれからの大迷宮攻略に向けて有用となるであろう兵器開発を進めていた。
その折、
――アッー!
「…一体何が起こってんの?」
外で何かしらの騒ぎが起こっているのを耳にしたが、それが気になりながらも開発作業の手を止める事は無かった。
ハジメは知らない、この時ユエ達に「股間スマッシュシスターズ」なる色々とアレな二つ名が付き、その名が冒険者ギルドを通じて人間族のテリトリー中にまで轟き、男性冒険者を震え上がらせたり、女の子達から「お姉様…」と熱い視線を向けられる様になったりしていく事に…
「お帰り皆、お疲れ様。何だか街中で騒ぎがあったみたいだけど、何だったの?」
それから更に時間が経ち、チェックアウト迄あと少しという所で宿に戻って来た香織達を出迎えたハジメ、どうやら開発作業は終わった様だ。
やはり気になっていたのか出迎え早々話題に挙げたのは先程の騒ぎである、それに対して、
「…問題ない」
「あー、うん、そうですね。問題ないですよ」
「野暮用って奴よ、野暮用」
「そうだね、うん、そうだよハジメ君」
「ハジメが気にする事じゃ無いわ」
「あ、そう…
それで、必要な物は揃ったの?」
「ん、大丈夫」
「OKだよ、ハジメ君」
「食料品や薬品の類、必需品はこれで粗方揃ったわ」
「これで野営になっても安心ね。腕が鳴るわ!」
「ですね、それにしても宝物庫って本当に便利ですよね~。ISに宝物庫と『接続』する能力があって良かったです」
特に何の大事も無かったと答える5人、その姿に何処か訝しんだハジメだが、まあ良いかと流し、買い忘れが無いか確認した。
それに対する答えを聞いたハジメは、開発に成功した兵器を渡す事にした。
「さて。まず、香織はコレ。ビームライフル『スプィーシカ*1』だよ」
「ビームライフル?何だか見た目からはとてもそうには見えない様な…」
最初、香織に渡したのは2丁のビームライフルという未来的な武器…だとハジメが言い張る物だが、その見た目は香織が言う様にとてもそうは思えない物だった。
世界で最も普及したと言って良いアサルトライフル『AK-47』及びその派生ライフルから、特徴的な弾倉を取っ払った様な物にしか見えないその姿からビームを放つ等誰が予想出来ようか。
「まあ見た目は気にしないで。このスプィーシカは1丁1丁に燃料タンク代わりの神結晶とビームを射出する魔法陣が組み込まれていて、単体でも香織の魔力を燃料に高出力のビームを放つ事が出来る。だけどその真価はツインバスターライフルの如く連結した『バスターモード』。其々の銃身から放たれた2筋のビームが干渉を起こして1筋の螺旋状ビームとなり、貫通力と破壊力を劇的に上昇させる事が出来るよ。ただこのモードは香織の魔力でも一発で底をつきかねない諸刃の剣、よく考えて使ってね」
「正に一か八かのロマン砲って訳だね、凄い…」
見た目は兎も角(恐らくハジメの趣味だろう)、その高い性能を有したスプィーシカの説明を聞いた香織は、改めてそんな兵器を作り上げたハジメの手腕を凄いと思った。
「優花にはコレ。火炎放射器『パリャーシ*2』、これもスプィーシカ同様神結晶と火炎放射を行う魔法陣が組み込まれていて、優花の魔力を燃料に高火力の炎を放つ火炎放射器さ」
「香織のスプィーシカみたいなロマン機能は無い訳ね。でも前線に出る事もあるから、安定性のある方が良いわね、ありがと、ハジメ」
次に、優花に渡したのは、ソビエト連邦で開発された火炎放射器『ROKS火炎放射器』から燃料タンク部分を省略した様な物。
香織に渡されたスプィーシカとは違って此方は見た目通り、能力的にもバスターモードみたいなロマン機能はついていないが、遊撃担当である優花がそんなロマン機能を使いたいかと言えば否である、うっかり暴発させない為にも最初からつけなかったのは彼女としては有難かった様子だ。
「雫にはコレ。高周波ブレード『リェーズヴィエ*3』。電気を流す事で高周波震動を起こす粒子を化合した金属製の太刀だよ」
「何だかメタルギアシリーズの雷電になった気分ね。嬉しいわ、ハジメ」
続いて雫に渡したのは、SFではお馴染みである
現実でもこの手の刃物は医療や工作分野においてその能力を買われている、その機能を搭載した武器は雫も使ってみたいと思っていた所らしい。
「シアにはコレ。大型ソードメイス『ピサニエ・セドモイ*4』だよ」
「ソードメイス…この前貰ったヴァルとはどんな違いが?」
シアに渡されたのは、大剣型のメイス。
大剣型と言ってもメイスとしての能力を重視した結果、打撃部はかなり肉厚となっているが、シアの武器には既にヴァルがある、それとの違いは何か彼女が尋ねた。
「基本的な機能は大剣化したヴァルと言っても過言じゃないけど、その真価は其処じゃないのさ。シア、柄と打撃部の間にハンドルみたいな物があるでしょ?それを引いてみて」
「こうですか?わわっ、何かハジメさん達が使っていた銃でしたっけ?その弾を入れる部分が出て来ました!」
大剣における鍔があったであろう部分に設けられた、ボルトアクション式ライフルのハンドルらしき機構、それをシアが言われるがままに引くと其処から、やはりライフルの薬室らしき機構が出て来たのである。
尤もその幅的な意味での大きさはライフルの比では無いが…
「そう、それこそがピサニエ・セドモイの真価。流石に今は市街地の真っただ中だから使わせる訳には行かないけど、其処に専用のカートリッジを装填し、鍔の下あたりにあるトリガーを引く事で先端から杭が射出される、パイルバンカー機能を持っているって訳さ」
「おぉ、格好良いです!ありがとうございます、ハジメさん!」
大剣型メイスであるピサニエ・セドモイ、然しその中はこれまたSF等ではお馴染みと言っても良いパイルバンカーの機能も備わっていたのである。
香織のスプィーシカに備わったバスターモードにも引けを取らない、そんなロマン機能にシアが目を輝かせたのは言うまでも無い。
「そしてユエにはコレ。無線式オールレンジ攻撃兵器『クルィロ*5』だよ」
「無線式オールレンジ攻撃…ハジメがフェアベルゲンで見せた、メルキューレを用いてのあの攻撃?」
「そうだよ。流石ユエ、冴えているね」
そしてユエに渡されたのは、ガンダムシリーズにおけるファンネルを想起させる6基のビット兵器。
オールレンジ攻撃と聞いて彼女が真っ先に思い浮かんだのが、フェアベルゲンにおいて、リューティリス・ハルツィナによる粛清と騙ってハジメが敢行したメルキューレを用いての遠隔攻撃。
「この1つ1つのビットに神結晶と、魔力を様々なエネルギーに変換、射出する魔法陣が組み込まれていて、ユエの魔力を燃料に空中を飛び回り、火炎放射や超低温冷気、雷やビームを放つ事が出来るのさ。無論その力を活かすのはユエの腕に掛かっているよ」
「お~…
ハジメ、ありがとう」
その攻撃が自分でも、と聞いてユエも目を輝かせたのもまた、言うまでも無いだろう。
さて、ハジメが新兵器を開発した際、燃料タンク代わりの神結晶や、魔力を様々な物理的エネルギーに変換して放出する魔法陣を導入した物を、魔法適性を有した香織達3人に渡したのには訳がある。
何度も説明したが大迷宮の1つがあるとされるライセン大峡谷は、魔力が大気中に放出した瞬間にそれが分解され消失してしまう性質を有しており、その影響をモロに受ける香織、優花、ユエの3人の弱体化は避けられない。
一方で装着者と『接続』する関係上、魔力を機構内で完結させる形で運用出来るISならばその影響は微々たるもの(魔力を大気中に放出せざるを得ないシールド・バリアとブースター迄はどうしようもないが)、その領域下にある兵器も例外ではない。
ライセン大峡谷にてダイヘドアやハイベリア、帝国兵を蹂躙した時、纏雷を用いたレールガンの機能を何の不具合もなく使用出来たのはそういう背景があったのである。
其処でハジメはライセン大峡谷の性質による影響を無くすべく、使用者の魔力を物理的エネルギーに変換し、それを放出するというアプローチで新兵器を開発したのだ、さながら魔法戦記リリカルなのはForceに登場したAEC武装の如く。
尚、燃料タンク代わりに導入された神結晶は、オスカー・オルクスの住処にて発見された彼お手製らしいそれ及び、神水を出し切ってしまった(現在、残る神水の量はヴァーダ4つ分との事)それを使用している。
何はともあれあらゆる準備を終えたハジメ達は、チェックアウトを済ませると共にブルックの街を後にし、大迷宮攻略への旅を再開した。