【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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35話_フューレン支部長からの依頼

「南雲ハジメ君だね。それと白崎香織君に八重樫雫君、園部優花君にユエ君、そしてシア君。ようこそ、冒険者ギルド・フューレン支部へ。私が此処の支部長を務めるイルワ・チャングだ。忙しい中急に呼び出して、済まないね」

 

ドットに連れられてやって来たこの建物内で最も格式高そうな部屋、如何にも此処のトップがいると言いたげな部屋へと入ったハジメ達を出迎えたのは、金髪をオールバックにした目つきの鋭い壮年男性、フューレン支部長であるイルワ・チャングだ。

 

「構わないさ、然し何で僕達の事を?別段此処で騒ぎを起こした覚えは無いんだけど…」

「先程、キャサリン先生から長距離連絡用アーティファクトを通じて、近々此処に奇抜な恰好をした一団がやって来るって連絡が来てね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目を掛けてやって欲しいと伝えられたのさ」

「ああ、あのオバちゃんか。それにしても奇抜な恰好って、そりゃあこの辺りでは見ない格好だけど」

「将来有望ねぇ、樹海の魔物を狩りまくった事を買ったって訳?」

「トラブル体質…まさかあの件の事かしら」

 

自己紹介と共に握手を求めるイルワに応じつつも、騒ぎを起こしていないにも関わらず何故自分達の事を知っていて、秘書長を送って迄自分達を呼び出したのか疑問を素直にぶつけたハジメに、イルワは答えた。

其処で出て来た、自分達の来訪を伝えた存在の名前を聞いて、ブルック支部にいたあのオバちゃんだとハジメ達は気付いた。

 

「あの~キャサリンさんって何者なのでしょうか?」

「ん?本人から聞いてないのかい?彼女は王都のギルド本部で、ギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後ギルド運営に関する教育係になってね。今、各地に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

「はぇ~そんなに凄い人だったんですね」

「…キャサリン凄い」

「伝えた訳じゃないのに私達が此処へ来る事を見抜いているし、只物じゃ無いとは思っていたけど、思いっきり中枢の人だったなんてね」

 

行先を伝えた訳でも、それに関係する事も口にしていなかったのにも関わらず此処フューレン支部にやって来ると見抜いていたのを知り、改めてキャサリンの優秀振りに驚きを隠せない一行、その中でシアがおずおずと、キャサリンが何者なのかイルワに尋ねる。

あの優秀振りから中々の経歴を歩んでいたのだろうと思っていたハジメ達だったが、返って来た答えはその予想を大きく上回る物だった、まずギルドの一番偉い人直属の秘書、そのトップという時点で凄いどころの話じゃない。

 

「そんな先生も注目する君達に1つ話があるんだけど、良いかな?聞いてくれるのなら迷惑料代わりと言っては何だけど、君達4人の冒険者ランクを黒に上げよう」

「「「「ゑ?」」」」

 

そんなキャサリンから態々自分に連絡を入れる程目を掛けられる存在であるハジメ達、そんな一行にイルワはとある話を持ち掛けて来たが、足止めした事への迷惑料として提示したのは、黒ランクへのジャンプアップという破格どころじゃ無い物だった。

指導者も指導者なら、生徒も生徒かと言うべきか。

 

「い、良いんですか?」

「構わないさ。君達のランクを上げるのは、我々の為にもなるからね。流石に銀や金は手続きの関係で難しいけど、黒までなら私の権限1つでどうとでもなる」

「成る程、その様子からして話というのは依頼の件だね。ギルド支部長自らの依頼となればかなりの大事、それを青ランクの冒険者に持ち掛けたとなれば此処フューレン支部の信用に関わるって所かな?」

「あはは、まあそんな所だよ。君達の実力は聞いているし、間近で見て把握したけど、大抵の人々は冒険者の良し悪しをランクで見るからね。で、どうかな?」

「良いよ、用件を聞こうか」

 

そんな大盤振る舞いに戸惑わない冒険者がいる筈もなく、香織が思わず聞き返したが、それに対するイルワの返答に、ハジメはその真意を理解した。

ギルドを通じた冒険者の依頼は、殆どはその手のアニメやゲームで良く見られる様に窓口で受け付けられる、支部長というお偉いさんが自ら持ち掛ける事は滅多に無く、その全ては依頼を受ける冒険者にも相応の実力が求められる重要案件だ。

イルワが見抜いた通り、ハジメ達の実力ならばそういう依頼も朝飯前ではあろうが、一方で冒険者に成りたての彼らの冒険者ランクは一番下である青、そんな『ペーペー』に重要案件を持ち掛けたとなれば「冒険者としてひよっこな輩に重要案件を任せる無能」なんて悪評が立ちかねない、だが9つに分けられたランクの上から3番目、青の千倍の価値がある、文字通り一騎当千な黒ならば話は別だ。

まあハジメ達にとって冒険者ランクは「あったらあったで損になる事は無い」程度にしか思っておらず、迷惑料を提示される迄も無く話を聞くつもりだったが。

椅子に掛けた一行のうちステータスプレートを持っていた4人からそれを預かり、ランクを黒にする処置を施した上で彼らに返却すると、イルワはその内容を話し始めた。

 

最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。

其処は一つ山を超えると殆ど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程では無いがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けたのだが、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物が半ば強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組む事になった。

この飛び入りが、此処フューレンにおいて一定の影響力を有する貴族である、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。

クデタ伯爵は、冒険者になると家出の如く飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息不明となり、これは只事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

「伯爵は、家の力を活かして独自の捜索隊も出している様だけど、手数は多い方が良いと、ギルドにも捜索願を出した。つい、昨日の事だ。さっき言った調査依頼を引き受けたパーティはかなりの手練れでね、彼らに対処出来ない何かがあったとすれば、並の冒険者じゃあ太刀打ちできず、二次災害が発生してしまう。よって相応以上の実力者に引き受けて貰わないといけないんだけど、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は皆出払っていてね、其処へキャサリン先生から君達の話を聞き、その通り来てくれたから依頼を持ち掛けたという訳さ」

「悪いけど僕達にも行くべき目的地がある。此処に寄ったのだって通り道にあったからに過ぎない。目的地とその場所は方角が全然違う。第一、身の程を弁えず、貴族という優越的立場に物言わせて無理矢理同行したロクデナシを何で助けなきゃいけないのさ」

 

その内容を聞いた一行の反応は何時になく厳しい物、敵以外には基本的に優しいハジメですら断る気満々の突き放した態度だった、それ程までに捜索対象であるウィルに抱いた印象は最悪だった。

が、待ってましたと言わんばかりにイルワは超ド級の爆弾をぶち込んで来た。

 

「この依頼を受けるにしろ受けないにしろ、君達は其処へ行く事になるよ」

「何?それはどういう」

「『豊穣の女神』畑山愛子。彼女は今、北の山脈地帯近くに位置するウルの町にいる」

「「「「「「な!?」」」」」」

 

愛子が件の場所に近い町にいる、イルワから聞ければ良いなと思っていた情報がこうもあっさりと齎された事と、そんな危険地帯の近くに彼女がいる事、その二重の驚きに一行は動揺を隠せなかった。

 

「これもキャサリン先生から聞いた話だけどね、この界隈で『豊穣の女神』と名高い畑山愛子氏を君達は探し回り、方々で聞き込みをしているそうじゃないか。私の呼び出しに応じたのもそれが理由だよね?それ程君達にとって大切な存在が、もしかしたら件の騒ぎに巻き込まれるかもしれない、魔物達に襲われるかもしれない。となれば、北へ行かないという選択肢は君達には無いと私は思う。その序で構わないんだ。伯爵とは個人的にも友人でね、出来る限り早く捜索したいと考えている。引き受けては貰えないだろうか?」

 

とは言えまだ、ハジメ達が北の山脈地帯近くへ行く事が確定的になっただけ、依頼を受けるかどうかはまた別の話だ。

イルワもそれを理解していたので破格の報酬を提示する。

 

「報酬は弾ませて貰うよ?依頼書の金額は勿論だが、私からも色を付けよう。銀ランクの昇格も働きかけよう」

「お金は其処まで必要じゃないし、ランクだって別に良いよ。黒だって一騎当千と称される高ランクなんだし」

「なら今後、ギルド関連でもめ事が起きた際は私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな?フューレン支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ。キャサリン先生も言っていたが君達はもめ事とは仲が良さそうだからね、悪くない報酬では無いかな?」

「随分と大盤振る舞いな。幾ら友人の息子と言えど、強権を振るって割りに合わない依頼に入り込んだ害悪を何故助けようとするのかな?」

 

然しながらハジメは、ハジメ達は首を縦に振らない。

それもそうだろう、武器等はハジメ自ら作れるからお金は食料品の補給や宿代だけで済むし、ランクも黒なら周りを畏怖させるには十分過ぎる、それ以上高くする必要性はハジメ達には感じられなかった。

ならばとウィルは、ギルド内でのもめ事に対する防護役になる事を提示したが、それ即ちギルド内での問題を全てハジメ達にとって有利に解決する様に立ち回ると言う事、専属弁護士に無給でなると言っている事と同義である、それもフューレン支部長という大幹部がだ。

何故其処までしてウィルを助け出そうとしているのか、彼への悪印象を隠す事無くハジメが問い質すと、イルワは如何にも後悔していると言いたげな顔で話し始めた。

 

「彼に、ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。君達はウィルを害悪だと罵るが、実の所私こそがその害悪だ。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った、実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね。昔から私には懐いてくれていたのもあるかも知れない。だが、その資質はなかった。だから今回の依頼で、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。なのに…」

 

その訳を聞き、ハジメ達はウィル自らが強権を使った訳じゃないのだと理解し、彼へ抱いていた悪印象を多少改め(身の程知らずな点は変えなかったが)、イルワが今回の一件でとんでもない事を仕出かしてしまったと深く後悔しているのだろうと考えた、ハジメ達のランクをただ依頼の話を聞くだけで黒に上げる等の権力乱用と言っても過言じゃない大盤振る舞いをしたのも、その現れなのだろう。

ハジメ達としてもさっさと北の山脈地帯に向かわなければ、近くの町にいるだろう愛子の身に危険が迫る可能性が高まる、彼女の身の安全を確保した上で依頼を果たそうとしても大したタイムロスにはならないし、それでギルド大幹部の後ろ盾が出来ると言うのなら儲け物だ。

エヒトルジュエ討伐という旅の最終目的を掲げるハジメ達、それ故に聖教教会やその信者達だらけな人間族の国々との衝突は避けられない、もしそんな事態に発展したら町で食料品を補給したり宿を利用したりがしにくくなるだろう、出来ればそれを避ける為にもギルド外のもめ事でも後ろ盾が使える様に、というかぶっちゃけ全面的な協力者にしたい。

そして今書いた事と似た様な事情から、ユエとシアの身分証明についてもスムーズに行ける様にしたい。

 

「其処までの事情があるなら考えなくもないけど、2つ条件があるよ」

「条件?」

「うん、1つは簡単だと思うよ。まず、ユエとシアにステータスプレートを無料で発行する事、その際、其処に表記された内容については他言無用とする事。

そして貴方には、ギルド関連と限定しない形で僕達の後ろ盾になる事。貴方の持つコネクションの限りを尽くし、僕達の要望に対して便宜を図る事。以上の2つだよ」

「な、それは余りに」

「出来ないなら断らせて貰うよ。愛子の身が危ないし、直ぐにでも行かせて貰う」

 

最初の要求はまだしも、2つ目の要求は流石に無理があると難色を示したイルワ。

それはそうだろう、実質的にフューレン支部長がハジメ達の手足になる様な物、ギルドの大幹部としてそんな横暴を許容する訳にはいかないのだから。

然しながらウィルへの対応を誤って今回の件に繋がった事、今現在それに対応出来る冒険者が此処にいるハジメ達しかいない事からも、彼にそれを拒否する権利など無いのだ。

依頼を断り、ウルの町へ向かうべく支部長室を後にしようとしたハジメ達を慌てて引き留め、探りを入れた。

 

「何を要求する気かな?」

「其処まで無理な要求をする積りは無いよ。ただ僕達は色々と訳アリでね、この先教会と敵対する事間違いないから、その折に伝手があると動きやすいと思ったのさ。例えば異端認定された際に貴方の強権で施設を安全に使える様にするとか…」

「異端認定されるのが確実なのかい?ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っている位だから悪い人間ではないと思うが…

その秘密がいずれ教会に目を付けられる代物だという訳だね。教会への敵意を含めて大して隠そうとしていないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか。そうなれば確かにどの町でも動きにくい、故に便宜をと…」

 

ハジメの隠そうともしない教会への敵意を聞き、それなら要求も納得だと理解したイルワ、考えた末に意を決した様に視線を合わせ、こう伝えた。

 

「犯罪に加担する様な倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせて貰い、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう。これ以上は譲歩出来ない。どうかな?」

「Good。僕も自己中だけどその辺りの一線は理解している積りだから、そんな真似はしないさ。香織達は尚の事大丈夫だよ。あ、それと報酬は後払いで。ウィル・クデタ自身か、遺品辺りで良いかな?」

「ああ、ハジメ君の言う通り、どの様な形であれ、ウィル達の痕跡を見つけ貰いたい。ハジメ君、香織君、雫君、優花君、ユエ君、シア君…宜しく頼む」

「分かった、やってみよう」

 

こうして依頼は受託され、支度金やらウルの町への招待状やら、依頼を実行する上で必要な物を受け取り、ハジメ達は支部長室を後にし、北へと出発した。

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