【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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1章『唐突な異世界転移とオルクス大迷宮』
1話_日常の終わり


月曜日、それは『サザエさん症候群』や『ブルーマンデー症候群』という言葉にもある様に、一週間の中で最も憂鬱な1日、この日はきっと大多数の学生や社会人がこれから続く忙しく苦しい日常を想像して溜息を吐き、前日までの連休と言う名の天国を思い出している事であろう。

ただその大多数には、

 

「ふぅ、何とか間に合ったか…」

 

始業チャイムが鳴る少し前のタイミングで教室へと入った、此処南陽高校の2年生である南雲(なぐも)ハジメは含まれない、彼にとって学校生活自体は割と好きな方であるからだ。

 

「おはよう、ハジメ君!今日は珍しくギリギリだったね、どうしたの?」

「おはよう、香織(かおり)。ああ、実を言うと昨日PG(パーフェクトグレード)ユニコーンガンダムを組み立てていて、完成したのは良いんだけどその時にはもう今朝になっていて…」

「つまり、徹夜って事?ハジメ、あんたガンプラ1つの為に何やってんだか…」

「あはは、ガンプラと言ってもPGは高校生の僕にとって高嶺の花だから、つい熱中しちゃって…」

「だからって優花(ゆうか)の言う通り徹夜は行き過ぎよ、凄い隈じゃない」

「そうだね、(しずく)、優花。以後気を付けるよ。寝不足で倒れたら元も子もないからね」

 

今しがた教室に入って来た彼を出迎える様に話し掛ける3人の少女、白崎(しらさき)香織と園部(そのべ)優花、そして八重樫(やえがし)雫。

南陽高校における『三大女神』と称される3人の存在はハジメにとっても特別なもの、中学時代にハジメが起こした『事件』を切っ掛けに知り合って絆を深め、高校入学前後のタイミングで晴れて恋人となった彼女達と会える学校生活を果たして嫌がれるだろうか、いやない。

自らの恋人達が迎えて来たのもあってか眠気も一瞬で覚め、如何にも嬉しそうだと言わんばかりの様子で会話を交わしながらハジメは自らの席に着いた。

…尚、そんな目立ち過ぎる光景が繰り広げられながら殆どのクラスメートが目を向けようとしない、それどころか其処から目を背けていたが、何時もの事だとハジメが割り切ったのか、或いは幸せの余り気付けなかったのか、気を悪くする事は無かった。

この異様な、然しこの教室において何時も繰り広げられている光景、それはハジメ達4人のこの学校における評判が関係している。

まず三大女神と称される香織、雫、優花の3人は皆、その通称に恥じない美少女である。

香織は所謂可愛い系の顔立ちと面倒見の良さと責任感の強さ、どんな依頼も嫌な顔せず真摯に対応する懐の深い性格から学年を問わず頼られ、雫は宝塚歌劇団で見掛けそうな顔立ちに身長172cmと女子としては長身で引き締まった体躯、家が剣術道場で自身も凄腕の剣士として有名な事から『お姉様』と慕われ(本人は引き気味であるが)、優花は美人系の顔立ちと派手なファッションセンス、勝気な言動から所謂『ギャル』と誤解されやすくはあるがその実直さからか皆を纏め上げる存在と見られている。

一方のハジメも、良くも悪くも有名な存在ではある。

顔のパーツ自体は平凡、身長も雫と変わらない高さではあれど、高校生離れしたマッシブな体躯、人類史にその人ありと言われた武人を思わせる様なオーラがそれすらも精悍な物に見せ、その見た目に恥じない抜群の運動能力、元々は全国有数の進学校である星海高校へ特待生として入学する筈だったとまで言われる程の明晰な頭脳、父親の(しゅう)は大手ゲーム会社を一代で築き上げた凄腕経営者、母親の(すみれ)は少女漫画業界にその人ありと言われた人気漫画家、と恵まれた家庭、と此処まで言うと好かれる事はあっても嫌われる、或いは避けられる事は無いと思うだろう。

そんな彼が『悪い意味で』有名になる切っ掛けとなったのが先述した『事件』、2年前に市内ショッピングセンターの駐車場で『そっち系の人』に見えなくもない男を当時中学生だったハジメが脅迫し、金品を奪い取った、と言われている事件である。

この件が切っ掛けになって星海高校への推薦が取り消しとなり、県内でも有数の進学校ではあれど星海高校と比べると多少ランクの下がる南陽高校への一般入試を受けざるを得なかったという(一応)事実、その事件前後から香織達と関係を深めている事等も相まって「三大女神を毒牙に掛けたプレイボーイ」「何仕出かすか分からない危険分子」等の悪評が広まったのだ。

…尤もその事件は、そのそっち系の人とぶつかり、持っていたソフトクリームで服を汚してしまった事で絡まれた子供とおばあさんを助ける為に(ハジメ曰く)「穏便に」交渉したのが真相であり、香織と優花はその力に頼らず、一方で真正面から立ち向かうやり方を選び実行したハジメの姿をその目で見て、雫は香織を通じてそれを聞いた事で一目惚れしたのであって、決してハジメの方からからあの手この手で関係を迫った訳ではなく、堂々と三股掛けている事も「ハジメ君は誰か1人選べるの?」という香織の一声もあってか彼女達側は容認しているのだがそれを知る者は殆どおらず、こうした悪評が広まった影響で香織達等一部を除いて学校の面々から嫌われ、避けられているのである。

…とはいえ目を背ける周囲の中でも、幸せな様子のハジメを微笑ましく見守るクラスメートや、(別のクラスメートに止められてはいるが)ハジメ及び香織達の在り様を良しとせず、彼に突っかからんとしているクラスメートがいるにはいるのだが。

 

------------

 

「ほら、ハジメ。今日のお弁当よ」

「はい、ハジメ君。今日のは良く出来たかなって思うんだけど…」

「ハジメ、どうかな…?」

「3人共ありがとう、助かるよ」

「良いよ良いよ、私が作りたかったんだし。ね、雫ちゃん、優花ちゃん!」

「そうね、香織」

「何時も言っているけど、あんた自衛官になるんでしょ?だったら食事は充実させないと」

 

時は流れて昼休みの教室、何時もの通り香織達と4人で机を囲んだハジメは、これまた何時もの通り自らの彼女である3人から手作り弁当を受け取っていた。

今しがた優花が話した通りハジメは自らの将来の夢に、自衛官に就く事を挙げている。

「たった一度きりの人生、後悔無く生きたい」という信念と自他共に認める『ミリオタ』『ガノタ』な性分故に培われて来た知識から何時しか自衛官となり日本を、其処に住む自らの両親や香織達を始めとした人々を守りたいと決意した彼は、それに相応しい存在となれる様勉強及び鍛錬を熱心に取り組んだ。

その意識は食事にも目が向き、ハジメの夢に対する熱意を汲んだ両親の手助けもあって食生活の改善にも余念は無いが、両親共に忙しい身分であり自らも手伝いを頼まれる事もしばしばで朝晩はともかく昼の弁当まで万全を期す余裕は無かった。

それを聞いた香織達が、自分達がハジメの弁当を作ろうと決め、家が洋食屋なのもあって料理はお手の物だった優花が主導して美味しくも身体に良いメニューを多数考案、それを毎日ハジメの為に作って来ているのである。

今日のメニューは、玄米ご飯を主食に、鶏むね肉のピカタ、お弁当の定番であるプチトマトにブロッコリーと、シンプルながら栄養バランスを考慮した物となっている。

 

「本当にありがとう、皆!それじゃあ、いただきm」

 

自分の為にお弁当を作ってくれた彼女達に心から感謝の意を示し、食べようとしたその時だった。

 

「っ!?な、何!?」

「こ、これは!?」

「一体、何が!?」

「皆、僕から離れないで!」

 

教室が急に眩くなったと感じ、その方向に振り向くとクラスメートの1人の足元に光り輝く幾何学的な模様の環が、魔法陣を思わせるそれが広がっているのが見えた。

 

「皆!教室から出t」

 

それに気づいた誰かが咄嗟に離れる様叫ぼうとしたが間に合わず、その瞬間魔法陣の光が爆発した様に溢れ出した。

数秒か、或いは数分か、その眩き光が晴れた後には既に誰もいなかった。

騒ぎで蹴倒されたらしき椅子に、元々昼食時だったのもあって配置が乱れた机等の備品はそのままに、其処にいた数十名の人達だけが消えてしまったのだ…

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