44話_フューレン再び
「ウィル!無事かい!?ケガは無いかい!?」
ウルの町を出発してから一時間と経たずにフューレンに到着した一行がそのまま冒険者ギルドの応接室に通されてから数分後、ギルドの大幹部となるに相応しい落ち着いた何時もの雰囲気など何処へ行ったのかと言わんばかりの様子でイルワが駆け込んで来た。
その様子からして余程ウィルが心配だったのだろう、そういえばフューレンの入場検査場に長蛇の列が出来ていたにも関わらず、ストリボーグの姿を見た検査官達が何事かを話し合った末、順番待ちの為に降りて来た自分達に駆け寄ってイルワが呼んでいるから直ぐに来て欲しいと言っていたなぁと一行は此処に来る迄の経緯を思い出し、イルワとウィルがどれだけ親密な仲なのかを再確認した。
「イルワさん…
すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を…」
「何を言うんだ、私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった、本当によく無事で…
ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなる所だよ。二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげると良い。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」
「父上とママが…
分かりました。直ぐに会いに行きます」
ウィルの無事を確認して安堵したのも束の間、彼の両親が滞在している場所を伝えて会いに行って来いと促したイルワ、ウィルもそれに応じつつ、ハジメ達に改めて挨拶に行くと伝えてその場を後にした。
因みに父親でありクデタ伯爵家現当主であるグレイルの事は『父上』呼びである一方で、何故母親であるサリアの事は『ママ』呼びなのかと言うと、ぶっちゃけ言えばウィルは重度のマザコンだからだ、雫達が六合目の川の上流で遺品を回収していた時、それに混じって彼が常日頃身に着けているロケットペンダントがあったのだが、それにはサリアの絵が入っていた事からも彼のマザコン振りが伺える。
「ハジメ君、今回は本当にありがとう。まさか本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」
「生き残っていた事に関してはウィルの強運が大きいと思うよ。あの状況で数日も生き延びれたなんてそうそう無いよ」
「ふふ、そうかな?確かに、それもあるだろうが、十数万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?女神の巨人兵の皆様?」
「…ああ、そういえば以前、長距離連絡用アーティファクトについて話していたね、もしかしてそれ?」
「ああ、そうだとも。ウル支部長から事の子細は聞かせて貰ったよ。二重の意味で君達に依頼して良かったよ。まさか北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとはね」
ウィルが退室した後の応接室、其処でイルワは改めてハジメ達に向き直り、穏やかな表情になったかと思えば、今回の依頼でウィルを助け出した事へのお礼か、深々と頭を下げた。
「さて報酬についてだけど、1つ目にユエ君とシア君のステータスプレート無料発行、及び記載内容の他言無用とあったね。早速貰って行くかい?」
「ああ、お願いするよ。そうだ、ティオはどうする?」
「うむ、折角じゃ、妾の分も頼めるかの?」
「良いとも、そしたら3枚持ってこさせよう」
それはさておき、今回の救助は冒険者の身分で『依頼』として受けての物、当然その報酬は受け取って然るべきである、ということでその話に移り最初はステータスプレート、当初要求していたユエとシアの分に加えて、北の山脈地帯での一件から仲間に加わったティオの分も受け取れる事となった。
こうしてステータスプレートを獲得したユエ達、それに表示されたステータスは以下の通りとなった。
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ユエ 323歳 女 レベル:75
天職:神子・
筋力:120
体力:300
耐性:60
敏捷:120
魔力:6980
魔耐:7120
技能:自動再生[+痛覚操作][+再生操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+身体強化]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・
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シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40
天職:占術師・
筋力:60
体力:80
耐性:60
敏捷:85
魔力:3410
魔耐:3180
技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・
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ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89
天職:守護者・
筋力:770
体力:1100
耐性:1100
敏捷:580
魔力:4590
魔耐:4220
技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+部分変換]・
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強引な方法でパワーアップしたハジメ達5人には遠く及ばないとはいえ、地球より呼び出された勇者一行でも集団で掛からないと話にならないレベルのステータスを誇る辺り充分チートである、一番レベルの低いシアですら淳史達ストリボーグクルーの倍以上であり、上回っている物といえば『素』の身体能力のみ、魔力に至ってはクルーの中で最も高い奈々ですら9倍近い差を付けられていると言えばそのチート振りが分かるだろう。
尤もチートなのはステータスだけじゃない、技能欄もかなり多い上にそのどれもが強力な物、派生技能も大量に存在するのだから、口をあんぐりと開けて言葉も出ないイルワの反応は至極当然であろう。
「いやはや、何かあるとは思っていたけど、これ程とは…」
何時までもそうしている訳には行かないと我に返り、話を再開したイルワだったが、その最初の言葉がユエ達のチート振りに対する驚きなのも当然と言えば当然だろう。
「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員『金』にしておく、ウル支部長からも要請があったし。前にも言ったけど普通は『金』を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど、事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕、ウル支部長の推薦、それに『女神の巨人兵』という名声があるからね」
こうして冒険者の最高ランクである金に昇格したハジメ達、その他にもイルワの大盤振る舞いによってフューレン滞在中はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、イルワの家の家紋入り手紙を渡されたりした、何でも今回のお礼もあるが、それ以上にハジメ達とは友好関係を築きたいとの事、余りにもぶっちゃけ過ぎだが、あからさま過ぎるのもあってか隠しても意味無いと開き直っていた。
尚、前線に立った訳じゃないからという理由で淳史達クルーが、異変の当事者にして沢山の冒険者達を殺害したからという理由(表立って言う事は無かったが)で幸利が金ランクでの冒険者登録など個人個人に関する報酬を固辞しようとしたが、ハジメの説得に折れて受け取る事となったのは余談だ。
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その後、イルワが手配したVIPルームへと移動、其処でくつろいでいた所にウィルの両親であるクデタ伯爵夫妻が挨拶にやって来て、ウィルを助けてくれた礼がしたいと家への招待やら金品の支払いやらを提案して来たものの、依頼の報酬に加えて其処まで受け取るのは流石に、という良心が働いたのか固辞したハジメ達、それでも息子を助けてくれた恩を返したいと言うクデタ伯爵は、困った事があれば何時でも声を掛けて欲しい、何時でもどんな事でも力になると言い残して去って行った。
息子が息子なら親も親と言うべきか、筋道通したその気概と優しさから来るクデタ伯爵からの提案にはハジメ達も素気なく断る訳にいかず(尤もハジメは愛子からの教えもあるのだが)、去った後の彼らは何処か気疲れが見受けられた。
「とりあえず、今日は休もう。明日は食料品とかの買い出しに行かないといけないし。旅のメンバーが倍になった以上、其処も細心の注意を払わないとね」
「あ、あはは、お世話になります…」
とはいえこのままぼけっとしている訳にも行かないと切り替え、今後の予定を伝えるハジメ、その口ぶりからして、想定していなかった淳史達クルーの加入による影響も考えなきゃと示唆しているのだと気付いた奈々が苦笑いしたのは余談だ。
こうして魔物の大軍との戦いで始まった1日は終わりを告げ、其々割り当てられた部屋で夜を明かす事にした。
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おまけ
その夜更け、月が頂点に差し掛かる頃、まるで暗殺者だと言わんばかりの黒装束に身を包んだ2人の女性が気配を殺しながら、冒険者ギルド直営の宿、その最上階に位置するVIPルームの様子を伺っていた。
その部屋が今どうなっているかと言うと、
「あ、あれが噂に聞く、南雲っちのマルチプルカノン…!」
「凄く、大きいです…」
「妙子っち、その発言は色々と危ないから」
「シアちゃんとティオさんがもうふにゃふにゃになって失神している…
南雲君、恐ろしい子ッ!」
「だからその発言は色々と危ないって。それにしても皆してSUGOIDEKAI…
あの中で一番小さいユエっちにすら負ける私って一体…」
「だ、大丈夫よ奈々、ほら良く言うじゃない。『貧乳はステータスだ!希少価値だ!』って」
「それ他人に言われると凄い腹立つんだけど」
言うまでも無く其処はハジメ達が滞在している部屋であり、その中ではハジメが自らの恋人6人と(ピー)している真っただ中であり、覗いていたのは今朝からハジメのマルチプルカノンに興味津々だった妙子と奈々である。
因みに2人がのぞき見していた事は、ハジメは勿論、この時は意識があった香織達にもバレており(シアとティオはヤり過ぎて失神)、その後色んな意味でキツいお仕置きを執行する事になったのも言うまでもない。