【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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45話_束の間の平穏…とは行かないんだなぁこれが

「いよいよエヒトルジュエに、聖教教会に宣戦を布告する時が来たのね」

「今日は実質、平穏に過ごせる最後の1日って事だね。悔いの無い様楽しまなきゃね」

「うん。これから嫌という程教会からの、邪神エヒトルジュエやその眷属からの魔の手は襲い掛かって来ると思う、今のうちに平穏を満喫しておかないとね」

 

一夜が明けて、何やら物騒な言葉を口にしながら今後の予定について話し合うハジメ達。

当初は此処からグリューエン大砂漠へ、その中に聳え立つ大火山の迷宮へ向かう予定だった一行だが、此処を訪れてから舞い戻って来る迄に起こった出来事によって状況が変わった。

大迷宮攻略と並行して捜索していた愛子と思いのほか早く再会、彼女の専用機であるヴァスターガンダム・マイを渡す事が出来たし、幸利とティオがガンダムパイロットとして、淳史達がストリボーグのクルーとして旅の仲間に加わった。

目的が目的であるが故に避けられない聖教教会との衝突、其処で懸念していた異端者の烙印を押されてからの物資補給や宿のアテも、冒険者ギルド・フューレン支部長であるイルワという強大な後ろ盾が、『金』ランクという冒険者としての最大の栄誉と共に齎されたし、今現在ホルアドで実戦訓練の真っただ中にいるあろうクラスメートが人質に取られかねないという危険も、生徒思いの愛子が盾になってくれるだろうから問題無い、ヴァスターガンダムの強さと『豊穣の女神』の知名度は伊達じゃない。

もう彼らに懸案は、エヒトルジュエへの宣戦布告を躊躇させる要素は何もない、ならば迷宮攻略を兼ねて邪神エヒトルジュエに、それを信仰する聖教教会に喧嘩を売りに行こうではないかとの機運が高まり、旅の方針をシフトしたのだ。

そんな彼らが次の目的地として定めたのは、

 

「よもや、大迷宮の1つが教会の総本山たる神山の中にあろうとは思いも寄らなかったのう」

「そうよね、ミレディ・ライセンから聞いた時はアタシも一瞬信じられなかったもの」

「灯台もっと暗しって事なんでしょうかね」

「…シア、それを言うなら灯台もと暗し」

 

そう、ハイリヒ王国の背後に聳え立つ聖教教会の総本山、神山である。

実を言うと解放者の1人であるラウス・バーンは嘗て、教会が誇る最強の騎士団・白光騎士団の団長を務めていたらしく、反逆者の烙印を押され人々から追い詰められた末、騎士団長だった頃の土地勘を頼りに敢えてエヒトルジュエ信仰のお膝元である神山の内部に大迷宮を構築したそうだ。

因みにその大迷宮に挑む条件の1つとして、2つ以上の大迷宮攻略の証を所持している事が求められているが、一行は既にオルクス大迷宮及びライセン大峡谷の迷宮を攻略済であるため問題は無い。

 

「「We can go now!We can go now!」」

「「「「「「ひと・りじゃ・な・い・よ・ね」」」」」」

「「We can go now!We can go now!」」

「「「「「「とび・きりの・笑・顔・で・いこう!」」」」」」

 

そんな大真面目な事を話し合っているハジメ達の背後ではアイドルが着る様なステージ衣装(原案:幸利 製作:ハジメ)を身に纏った妙子と奈々が、イルミネーションスターズの楽曲『We can go now!』を歌い、観客みたく対面する幸利達ハジメ以外の男性陣がノッているという光景が広がっていた。

そう、此れこそがハジメ達の(ピー)を覗いていた妙子と奈々へのお仕置き、アイドルを真似てのミニライブである、然も恥ずかしいという理由で拒否しようとする2人をハジメから予め話を聞いていた幸利が闇魔術で操り、噂を聞き付けた淳史達が折角の機会だからと悪ノリし、観客として加わっての開催だ。

自分達の意見など聞いていないと言わんばかりにアイドルみたいなライブを強いられる妙子と奈々、その恥ずかしさたるや2人の顔がトマトの如く真っ赤になっている事からも明らかだろう、ご丁寧に幸利がビデオカメラ(製作:ハジメ)を構えており後々までその光景が保存される事は確定的、一時の性的な好奇心によって生まれてしまった黒歴史として長きに渡ってイジられていくのは言うまでもない。

 

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「何やら皆に悪いのう、ハジメ殿と知り合って日も浅い妾がデートへ行けるとは」

「まあ良いんじゃないの、公平な勝負の結果なんだし。逆に考えるのよ、ハジメと知り合って日も浅いんだからデートを通じてもっとハジメの事を知って、ハジメにも自分の事を知って貰うってね」

「…今日は勝てた」

 

それから幾ばくかの時が経ち、ギルド直営の宿から出たハジメ達は、其処から三手に分かれ、ハジメ達は食料、香織達は魔石を始めとした素材、そして淳史達クルーは服と、其々物資の買い出しを行いつつフューレンの街を満喫する事にした。

此処で色々と『ん?』と感じた点があると思われるので1つずつ説明しよう。

まず、香織達が魔石の買い出しをしている事について、淳史達ならまだ分からなくは無いが、膨大な魔力と魔力操作技能を持っている事からハジメ達には無用の長物と化している魔石が何故いるのかと言うと、これはストリボーグの動力源が関わってくる。

ストリボーグもヴァスターガンダム同様、乗組員の魔力を燃料としているのだが元々ハジメ達が乗り込んでいる事を想定して作られた為か、その要求魔力は膨大の一言、強烈なスペックに見合った大喰らいなのである。

然しこのままでは折角淳史達をクルーに加えても燃料切れという意味でストリボーグが後方支援出来なくなってしまう、だがハジメに抜かりは無かった。

ストリボーグの船底に設けられた広大な貯蔵庫、其処にはバラストを兼ねた大量の魔石が入れられており、ハジメ達が不在等の理由で魔力が足りない際はそれを動力炉に投入する事で補える。

因みにこれを聞いた淳史達から「蒸気機関か!」「発想が前時代的過ぎる…」と総ツッコミをハジメが食らったのは言うまでも無い。

次に淳史達クルーが服を買いに行っている事について、服といえばプラグスーツやら今朝のライブで着用されたステージ衣装やらを作っていた様に、ハジメが作れるんだから必要ないんじゃないか?と思うだろう。

だがよく考えて欲しい、製作者であるハジメは重度のオタク、然も筋金入りの『ミリオタ』『ガノタ』である、もう一度言おう、筋金入りの『ミリオタ』『ガノタ』である、その為かハジメ達ガンダムパイロットが着用する服はISとの兼ね合いもあってプラグスーツ一丁だ。

製作者であるハジメ、中の人的にも妙に似合っている幸利*1、イベント等で着慣れていた香織達、ハジメ達が元いた世界で流行のファッションだと勘違いしているユエとシア、そして露出狂の気が少なからずある事が発覚したティオ*2はまだしも淳史達、殊に年頃の女子である妙子と奈々がそれを着れるかと言われると難易度が高いだろう。

かといって他のデザインはとハジメに聞いても軍服の類しか出ないし、幸利がデザインするとアイドルのそれになるので自作による供給をなくなく断念、フューレンの服屋で買う事にしたのだ。

こうして其々が目的の物を購入しつつフューレンの街を満喫している現在、今更だがハジメのいる班には優花、ユエ、そしてティオが同行していた。

優花とユエの発言から分かる通り、じゃんけんの結果この3人がハジメに同行する事が、実質的にハジメのデートへ行ける事が決まったのだ。

尚、マサカの宿での勝負に続いて2連敗、ハジメの恋人達の中で唯一白星無しとなった香織が項垂れながら「私ってじゃんけん弱人類なのかな…別の勝負提案しようかな…」と呟いていたのは余談である。

こうして束の間のデートを楽しんでいた4人だったが、

 

「この気配…もしや!?」

「下からって事は恐らく下水道ね、其処に子供らしき気配、となれば…!」

「急ごう、皆!」

「ん!」

 

観光区のとあるストリート、その地下の方から弱弱しい気配を察知した4人はその気配の主を救助すべく行動を開始、人前でやって騒ぎになるのを避ける為に裏路地へと移動しつつISを展開、ハジメが錬成によって地面に穴を開けて下水道へと繋ぐと躊躇なく飛び降り、そのまま気配の方へと飛び込み、気配の主を抱えてそのまま地上へと戻った。

 

「この幼子、海人族の子じゃのう。何故この様な所に…」

「まあマトモな理由じゃ無いわよね」

「話は後にしよう。下水の中を流れていたんだ、ばい菌やら毒物やらに塗れたままでは危険だよ。もしかしたら多少は飲んでいるかも知れない。よし、ユエはこの水槽に水を貯め、それを沸かして。終わったらこの子の世話をお願い」

「ん!」

「優花はこの子の着替えを買ってきて」

「了解したわ!」

「ティオは香織達に連絡を取って、それが済んだら露店からこの子が食べられそうな物を買ってきて」

「委細承知!」

 

救出された気配の主――亜人族の一種である海人族の特徴である、魚のヒレを思わせる耳と水かきを有した3、4歳位の幼女の姿を見て、驚きを隠せない優花達。

それも当然と言えば当然だろう、海人族は亜人族の中でも特殊な地位にある種族だからだ。

大陸の西の果て、グリューエン大砂漠を越えた先に広がる海の沖合に位置する海上の町エリセンで生活する彼らは、種族としての特性を活かし大陸に出回る海産物の八割を獲ってそれを人間族のテリトリーに提供しているのだ。

海産物の大半は彼らによって賄われているという事情から、被差別種族の亜人族であるにも関わらずハイリヒ王国から公に保護されているという、ダブルスタンダードかと、結局は実利重視かとのツッコミが入りそうな話はさておき、そんな海人族の子供がエリセンの街からかなり離れた内陸にあるフューレンの街、それも下水道を流れているなどありえない話なのだ、犯罪の匂いがぷんぷんしている。

とは言えハジメの言う通り今はそれを気にしている状況じゃない、一刻も早く女の子を危険な状況から助け出すべく、錬成によって即席の浴槽を作りながら優花達に指示を飛ばしていた。

優花達も指示を受けて各々の行動に移った…!

*1
新劇場版破にて渚カヲルが着用していた灰色と黒、青を基調としたモデルを着用

*2
着用しているのも彼女のリクエストを基に作られた、背中どころか半ケツまで露出した黒いレオタードと言うしかない物である。本人は「部分的に竜化させる上で邪魔にならぬ様に」と弁明しているが…




因みに何故イルミネーションスターズの『We can go now』かと言うと、イルミネーションスターズのメンバーである八宮めぐるの担当声優が、妙子の担当声優である峯田茉優さんだから、つまり中の人ネタですw

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