【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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46話_未来を切り拓く!

ハジメ達の迅速な対応もあって、その無事が確認された海人族の幼女――ミュウ。

ミュウが何故このフューレンの街の、下水道の中で流されていたのか、その事情を聞いてみた。

要約するとこうだ。

海人族の例に漏れず、エリセンの町で母親と共に過ごしていたミュウだったがある日、海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っていた所を人間族の男に捕まってしまった。

その後、幾日も掛った辛い道程を経てフューレンに連れて来られたミュウは、薄暗い牢屋の様な場所に、人間族の幼い男女の集団と共に入れられたそうだ。

其処で過ごす内、一緒に居た子供達は毎日数人ずつ連れ出され、戻って来る事は無く、少し年齢が上の少年曰く、見世物にされた挙句、客に値段を付けられて売られたとか。

いよいよミュウがその見世物にされる番となったこの日、たまたま下水施設の整備でもしていたのか、地下水路へと続く穴が開いていたのを発見、幼女に何が出来ると高を括っていたのもあって枷を付けられなかったのも幸いして、其処へ飛び込む事に成功した。

慌てて地上から追いかける男たちだったが幼いとはいえミュウは海人族、その泳ぎに下水道の水流も相まって追いつける筈も無かった。

だが慣れない長旅よる疲れ、誘拐されるという過度のストレス、慣れていない不味い物しか食べさせて貰えない食糧事情、トドメに下水に長く浸かるという悪環境で、遂にミュウは肉体的・精神的に限界を迎えて意識を喪失、気が付いた時にはハジメの腕の中だったという事である。

 

「客が値段を付ける、オークション形式での奴隷売買か」

「然も罪のつの字も無い、幼い子供達を、増して人間族や海人族の子達を売買するなんて完全に裏のそれだよね」

 

その話を聞いたハジメ達はミュウがどの様な存在に捕まったのか推察する。

このトータスにおいて、奴隷という存在は公的に認められた物(ハジメ達も嘗てシアを表向きには奴隷として扱っていた)であり、その売買を行う市場というのも決して珍しい物でも後ろめたい物でもない。

とはいえ本来奴隷として扱うのは被差別種族である亜人族か、重大なる罪を犯した事に対する刑罰でその身分に落とされた犯罪者だけであり、市場に出回っている奴隷も普通はそういった存在だ。

だがミュウと共に囚われていたのは罪を犯したとは到底思えない幼子ばかり、ミュウも亜人族の中では差別対象となっていない海人族、そんな存在を奴隷として扱うのは違法であり、その売買を行う市場も決して公には出来ない裏モノであろう、それを取り仕切る組織もヤバい物に違いない。

そんな組織に捕らわれていたミュウや、未だに捕らわれたままだったり、既に奴隷として売られてしまったりした子供達の事を思い、何とかしたいという想いが芽生えた一行、ハジメも同じ想いではあったが、逸る気持ちを抑えて冷静な対応を提案する。

 

「まずは保安署に話を通すのがベターだと思う。其処でミュウを保護して貰い、他の子供達も裏市場の摘発に伴い保護して貰うのが良いと思う」

 

此処で言う保安署とは、日本における警察機関の事である。

ハジメとしてはミュウを始めとした幼子達を奴隷として捕え、裏市場で売買するという重大犯罪、それを保安署が黙って見ている訳が無いとし、話を通しておけばフューレン史上稀に見る非常事態として大規模な捜査体制が敷かれ、摘発されればミュウや、未だに捕らわれた幼子達も保護され、既に奴隷として売られてしまった子供達も芋づる式に保護されて行くだろうとの考えだ。

尤もそんな重大な事案を知っていて保安署に話を通さないのは問題だし、今度は自分達が誘拐犯の仲間として扱われかねないという常識的な考えもありはする、幾らエヒトルジュエに宣戦布告する=このトータスにおいて『異端者』という重大犯罪者の烙印を押される覚悟を決めたとはいえ、進んで犯罪者になる積りは毛頭ないのだ。

然しながら自分達の手で早急に解決出来ないか、という考えを持つ者も少数派ながらいた様で、その者達はショックを受けた様な目でハジメを見るが、

 

「とはいえ、その可能性に気付かない連中じゃ無いと僕は思う。其処を考慮して構成員を保安署に張り付かせ、もしミュウが預けられたとしたら捜査態勢が整う前に襲撃を仕掛けてミュウ諸共消し飛ばして証拠隠滅を図ったり、再びミュウを誘拐したりする事も考えられる。その対策はしておかないとね」

 

それはハジメとて同じ気持ち、保安署に預けたとしても介入出来る余地は無いかと探っていた。

とはいえまずミュウと一緒に保安署へ行かなければ話は始まらない、ハジメはその事をミュウにも分かりやすく伝えるべく、屈んで視線を合わせ、ゆっくりと話し始めた。

 

「良いかい、ミュウ?これから、君を守ってくれるだろう人達の所へ行くよ。その人達を通せば、時間は掛かると思うけどお家に帰る事が出来る。ママにもまた会えるよ」

「…お兄ちゃん達は?」

 

その様子からしてハジメ達とお別れするんじゃないだろうか、それを察したミュウが不安そうな声音でハジメ達はどうするのか尋ねた。

 

「ミュウ。ちょっと手を出して?」

「…うん」

 

その不安を感じ取ったハジメは、言われるがままに左手を差し出したミュウの手首に、鈍色の腕輪の様な物を取り付けた。

 

「もしミュウの身に危ない事が起こったとしても、この腕輪が君を守ってくれる。それをお兄ちゃん達だと思って大事に身に着けていて欲しいな。それで、もしミュウが無事お家に帰ったら、後でそれを返してね。その時までちょっとの間、バイバイだね」

「…分かったの」

 

それはメルキューレをミュウ用の腕輪サイズに圧縮・成形した物、それを護身用として取付けさせる事で、有事が起ころうとミュウには指一本触れさせないというハジメの意思表示だ。

ミュウもメルキューレを通じてハジメ達の存在を感じ取れたのか、或いはまた直ぐハジメ達に会えると思ったのか、思いのほか素直にハジメの言葉を聞き入れた。

とはいえ本心はハジメ達と一緒に居たいのだろう、幾ら大事に身に着けていてと言いつけたとはいえ何も其処まで、とハジメがツッコみたくなるくらい、自らの左手首に取り付けられたメルキューレをしっかりと抱き締めて離そうとしなかった所からもそれは明らかだ。

そんなミュウを連れ、流石に14人もの大所帯で乗り込んだら騒ぎになりかねないので最も直接的に関わったユエと香織と共に保安署へと出向いた。

当初、この地では中々見かけない海人族の子を連れて来た事に戸惑い、目を丸くした保安員達だったが、事情を聞くと緊急モードに入ったと言いたげな険しい表情をし、今後の捜査や送還手続きの為にミュウ本人が必要なので、此方で手厚く保護すると申し出て来た。

ハジメの予想通り重大案件として本部にも応援要請をするらしく、自分達の役目も一段落着いたなと思ったハジメ達はその申し出に応じ「お兄ちゃん、また会えるよね?」と言いたげな目を向けるミュウに勿論だよと言わんばかりに力強く頷いて、その場を後にした。

念の為にXラウンダーの力による警戒を怠らなかった一方、未練たらたらだと言わんばかりに保安署の方を何度も振り返ったハジメ達、やがて保安署の姿も殆ど見えなくなったその時だった。

 

「ちっ案の定仕掛けて来たね!ミュウにメルキューレを着けさせて正解だった!」

「急ぎましょうハジメさん、皆さん!早くしないとミュウちゃんが!」

 

背後で爆発が発生、黒煙が上がっているのが見えた、その場所はやはりと言うべきか保安署だった。

想定通りとは言え起こらないに越した事は無かったのにと言わんばかりに苛立ちを隠さないハジメ達は、急いで保安署へと向かう。

走る事数分で辿り着いた時、保安署は中々酷い有様だった。

建物自体はそれ程ダメージを受けていないのか倒壊の恐れこそ無かったものの、窓ガラスや扉が表通りへと吹き飛んで破片が散乱、爆発に巻き込まれたのか対応にあたってくれた保安員達が腕の骨を折る等の怪我を負い、倒れている光景が広がっていた。

一方でその中に、この襲撃を仕掛けたであろうチンピラ数名もまた同じ様に倒れ伏す姿も。

恐らくはミュウを抹殺なり誘拐なりしようとしたものの、彼女の左手首に装着されたメルキューレによってタコ殴りにされ、返り討ちに逢ったのだろう。

それを裏付ける様に、

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

 

カウンター奥で身を潜めていたのであろうミュウが、ハジメの姿を見るや否や、大泣きしながら抱き着いて来た。

 

「ミュウ、大丈夫!?ケガは無い!?」

「う、うん、大丈夫なの、腕輪さんが助けてくれたの!でも、でもすごく怖かったの!」

 

渡していたメルキューレの活躍もあってかミュウ自身には何の怪我も無かった事に安堵するハジメ、だが保安署の職員が実際に大けがを負っている以上はミュウにもその可能性があった訳だし、大泣きしている事からもミュウがどれだけの恐怖を味わったかは明らかだ。

 

「香織は保安署の人達の治療をお願い。玉井達は香織のサポートを。それと皆でミュウの事を頼むよ」

「分かった。南雲達は『アレ』か?」

「ああ」

 

それを実行した組織達への怒りが沸き上がりながらも、今は混乱に陥っている保安署も治めなければならない、そう思ったハジメは香織達に指示を飛ばしながらミュウを預け、自分達は武装の準備を整えた。

 

「ミュウ。今からお兄ちゃん達は、ミュウ達を捕まえた悪い人達をやっつけに行ってくるよ。帰って来る迄お姉ちゃんたちと一緒に居て欲しいな」

「わ、分かったの」

 

ハジメはミュウから返却して貰ったメルキューレを手にしつつ、ミュウにそう言いつける。

 

「ミュウちゃん達の身を脅かす連中は、全て切り裂いてやるわ!」

 

雫はリェーズヴィエを帯刀し、ミュウ達を捕まえて商売道具にしている組織へ激しい怒りを露わにする。

 

「汚物は消毒しないとねぇ!」

 

優花は機械的なモールドが刻まれたカランビットナイフ――雫のリェーズヴィエと同じ改造が施された高周波カランビットナイフ『キンジャール*1』を手に、世紀末を闊歩するヒャッハーな人みたいな事を口にする。

 

「南雲ユエ。ミュウ達の未来を切り拓く!」

「いや南雲ユエって、まだハジメと結婚してないだろ」

 

ユエはクルィロを展開、機動戦士ガンダム00の主人公である刹那・F・セイエイの名台詞をもじって言い放ち、しれっと南雲姓を名乗っていた事に対して、グローサを腰のホルスターに入れていた幸利からツッコまれる。

 

「悪い奴らは撃滅!ですぅ!」

 

シアはピサニエ・セドモイを手にしながら、相変わらずクロト・ブエルの様な物騒な二文字熟語を口走る。

 

「Bad boyにはお仕置きが必要じゃのう!」

 

ティオはIMI(イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ)社等が開発している自動拳銃『デザートイーグル』の様な外見、然し余りにも前後左右に大きいグリップの所為で原型を留めなくなっちゃっている2丁の拳銃――ハジメがオスカー・オルクスの住処で開発した銃火器の1つ、なのだがボーク・スミェルチ弾を装填するマガジンを何故かグリップ内に納めようとした所為で前述する余りにも大き過ぎるグリップとなった事による取り回しの悪さが災いしてお蔵入りしていたものの、ティオが手を竜化させる事によって問題なく使用出来る事が判明、彼女の専用武器として引っ張り出される事となった自動拳銃『ティス*2』のスライドを引いて弾を装填し、何処かのスタイリッシュ痴女みたくチンピラたちをどうお仕置きしようか思案している。

 

「さて、行きますか!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

各自準備が整ったのを確認したハジメは出撃を宣言、7人はミュウ達を奴隷として誘拐していた裏組織撲滅の為に動き出した…!

*1
ロシア語で短刀

*2
ロシア語でイチイ(アララギとも呼ばれる植物)。ロシアのトゥーラ造兵廠で設計・開発されたアサルトライフル『OTs-12』のプロジェクト・コードネームでもある

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