【完結】機動戦士ガンダムRevolt   作:不知火新夜

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49話_因縁に直面してもすべき事は変わらない

ハジメ達の呟きを聞いて頭上に!マークを出現させるという、某ステルスゲームの金字塔と言えるシリーズに登場する敵兵みたいな反応をする黒装束の少年――ハジメ達のクラスメートで彼らと同じくこのトータスへと転移して来た1人である遠藤は、その聞き覚えのある声に驚き、声の主がいるだろう方向へと振り向いた。

 

「玉井!?それに仁村に、相川に、菅原さんに、宮崎さん!?あれ、他に南雲達の声が聞こえた気がしたけど、アイツらは一体何処に?」

「いや、遠藤?目の前にいるだろ、髪の毛が白っぽくなってる連中が。コイツらが南雲達だよ」

「ゑ?」

 

が、愛子の護衛として離れてからそんなに変わっていない淳史達は兎も角、オルクス大迷宮での一件で行方知れずとなってから髪の色とか身体つきとかが大きく変わったハジメ達には気づかなかった様で、淳史に指摘されて初めて目前にいる一団のうち、髪色が薄い5人が行方知れずとなっていたクラスメート達だと理解した。

 

「ゑ?南雲に、清水に、白崎さんに、八重樫さんに、園部さん!?ず、随分と変わっていねぇか!?見た目とか雰囲気とか!全く気付かなかったぞ!」

「遠藤君、何を言っているのかな?かな?

 

ハジメ君達の虹彩や指紋、手の静脈が変わった訳じゃないんだから判別なんて容易でしょ?

「いや、香織?そいで判別出来るんは色んな意味で人間辞めた僕達だけやで?」

「流石香織っち、私達に出来ない事を平然とやってのける!」

「其処に痺れるんも憧れるんもアカンで宮崎!」

 

今見た時にはその人だと気付かない位、最後に見た時とは明らかに違った姿となったハジメ達に驚きを隠せない遠藤、そんな彼に香織は、何処を見ているんだと言わんばかりに指摘していたが、余りに理不尽な内容、それに凄さと憧れを感じた奈々の言動にハジメは何時もの如く関西弁でツッコミを入れていた。

念のために言って置くが、人間の虹彩や指紋、手の静脈等は常人の眼では到底見る事は叶わない。

そうとは気付かず(気付かない振り?)に無茶振りをする香織の言動に困惑を隠せない遠藤だったが、死んだと思っていたクラスメイトが生きていたと安堵し、ふと此処の受付嬢が言っていた事を思い出した。

 

「というかお前ら、冒険者しているのか?しかも『金』って…」

「最近なったばかりだけどね」

「俺達5人は南雲達のおこぼれに与った感じなんだけどな」

 

それを確認する為の遠藤の問いに対するハジメ達の答えに、その表情が何処か切羽詰まった様な物に変わった事と、そもそも服装やら身体やらがズタボロだった事から、何かあったのだと察したハジメ、もしかしたらギルド内の雰囲気が何処かピリピリしているのも関係があるかも知れないと、話を聞いてみる事にした。

 

「…つまりお前ら全員、迷宮の深層から自力で生還出来る上に、冒険者の最高ランクを貰える位強いって事だよな?まだ半信半疑だけど…」

「うん」

「なら頼む、一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!1人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかも知れないんだ!頼むよ、南雲!皆!」

「…一先ず、詳しい話を聞かせて欲しい。

此処だとあれだから、奥の部屋で。丁度騒ぎを聞き付けたお偉いさんがやって来たみたいだし」

「察しが良いな、話が早くて助かる。さあ、アンタの言う通り奥でしてもらおうか」

「ああ。そうだ、玉井。お前達5人でミュウの面倒を見ていて欲しい。これはミュウを同席させて良い話じゃなさそうだからね」

「ああ、分かった」

 

遠藤と同じパーティメンバーだった永山と野村が死ぬかも知れない、つまりそれはオルクス大迷宮で実戦訓練を続けていた永山パーティと天之河パーティ、及びその指導に当たっていたメルド率いるハイリヒ王国騎士団の一行が何者かに襲撃され、壊滅的と言って良い被害を現在進行形で受けているという事。

思った以上に状況が深刻である事を理解したハジメは、騒ぎを聞き付けてやって来た如何にも戦士然とした初老の男――此処冒険者ギルド・ホルアド支部のトップを務めるロア・バワビスの勧めに従い、ミュウを淳史達に託しつつ、奥にある応接室へと移動した。

 

------------

 

ホルアド支部の応接室にて遠藤から事の子細を聞いたハジメ達。

要約するとこうだ。

訓練開始から三カ月近く経ったその日、オルクス大迷宮第九十階層に辿り着いた一行、だが其処で奇妙な光景を目にした。

何処を探索しても、それこそ階層の半分以上を探索しても、魔物の1体たりとも遭遇しなかったのだ。

余りにも拍子抜けな光景に却って不気味さを感じ取った一行は一先ず引き返すべきか、或いはどんな障害を乗り越えるのが自分達の使命なのだからこのまま進むべきか迷ったが、そうこうしている内に魔物の血だまりがある部屋に辿り着き、一連の状況が、誰かが自分達をおびき寄せる為の物だったと気付いたのと同じくして魔人族の女と遭遇したのだ。

その女は当初、一行、というより勇者である天之河に魔人族への鞍替えを提案するも、その思い込みの激しさからか魔人族=諸悪の根源という価値観が染み付いていた天之河は持ち前の正義感からそれを一蹴、戦闘に突入した。

当初、魔人族側の戦力が女1人だと思われたが(実際、視界内にはそれ以外の敵戦力は見当たらなかったらしい)それは地形と魔物の技能を活かした隠蔽、実際は質量共に膨大な魔物の大軍を率いてやって来ていたのだ。

今までに遭遇して来た迷宮のそれとは別次元の強さを有する魔物の戦闘は、オルクス大迷宮の奈落の底に消えた香織と雫を絶対に救け出す!と一心不乱に訓練を積み重ね並外れた成長を遂げた天之河の奮闘も相まって当初は善戦していたものの多勢に無勢、次第に追い込まれて行き八十九階層の隠し部屋に一時退却した。

遠藤はその惨状を、上層で待機している騎士団の一行に連絡しようと1人退却したが、魔物達も天之河が地上へ戻ろうとしているものだと思ったのか上層へと移動、騎士の面々は質量共に圧倒的な魔物達の前に無惨にも命を散らしていったそうだ。

そんな惨状を背に遠藤は、この状況を地上にいる人達に伝えろというメルドの指示に従って地上へと帰還し、その足でホルアド支部へと到着、今に至るそうだ。

 

「南雲、一緒に救けに行こう!お前達がそんなに強いなら、きっと皆を救けられる!」

 

その話を聞き、天之河達が置かれている状況が極めて深刻な物だと理解したハジメ達。

一方の遠藤は、ハジメ達が『金』ランクに認定された切っ掛けであるウルの町での魔物の大軍との戦いや、フューレンにてフリートホーフを壊滅させた件を、イルワからの手紙を読んだロアを通じて知り、ハジメ達は自分達以上の力を持っているんじゃないかと希望を見出し、助けを求めた。

ハジメとしても、幾らこのトータスに来る前は自分を悪人と決めつけ、虐めと言っても過言じゃない扱いをして来た存在ばかりとはいえそれでも愛子の教え子達、見殺しにして愛子を悲しませたくはないと、その求めに応じる積りだったのだが、

 

「なぁ頼むよ、仲間だろ!」

「…仲間ぁ?」

 

勢い余って遠藤がとある言葉を口にした瞬間、部屋の空気が一気に冷え切った様に感じられた。

一気に気温が低下した様に感じたのに驚いた遠藤が顔をあげると其処には「何ふざけた事ヌかしてんだゴルァ」と言わんばかりに、ハイライトが消えた眼で遠藤を睨み付けるハジメ以外の7人の姿があったのだ。

 

「随分と都合のいい頭をしているんですねぇ、遠藤さん?皆さんから、元の世界にいた頃のハジメさんがどんな扱いをされたかは粗方聞いているんですよ、殆ど根も葉もない噂を信じ込んで、皆揃って敵視していたそうですねぇ?そしてそれはこの世界に転移して来てからも変わる事は無かった、ハジメさんをありふれた職業の無能扱いしようとしたり、襲撃されたのを返り討ちにしただけなのに被害者である筈のハジメさんを悪者扱いしようとしたり、挙げ句の果てには大迷宮の奈落に香織さん達共々突き落とした犯人を許そうとしたりしたそうじゃないですか。それで窮地に陥ったら、仲間だろ?仲間なんだから助けるのが当然だろ?

 

一体どういう教育を受けたらそんな厚かましくなるんですかねぇ?そんな妄言、聞くウサミミを持ちませんので

「な!?何を、言って…」

 

代表してシアが口にしたのは、今まで散々ハジメを悪し様に扱い、その心を傷つけ続けたにも関わらず、いざ自分達の命の危機となったら掌を返して仲間扱いする、ハジメ達のクラスメートへの憤怒だった。

 

「シア、落ち着いて。でも遠藤、僕達が仲間かどうかについてはシアの言う通りだよ。恋人である香織と、雫と、優花と、ユエと、シアと、ティオと、此処にはいないけど愛子。親友であるトシ。義娘であるミュウ…はちょっと違うかな。僕達と自分達との差を理解し、足手纏いになるであろう事を自覚しながらも、何らかの仕事で僕達の役に立ちたいと土下座してまで志願して来た玉井と、仁村と、相川と、菅原と、宮崎。フェアベルゲンにいる、シアの家族であるハウリア族の皆。そしてリリィ。僕が仲間だと思っているのは現時点で今挙げた人達だけさ。他は、例えばお前達とかは偶々この世界へ一緒に転移した『同郷』の人間でしか無いんだよ、それ以上でもそれ以下でもない。要は他人と変わらないって事さ」

「そ、そんな…」

 

そんな憤怒のままに遠藤を糾弾するシアを宥めながらも、ハジメもまた遠藤達を仲間とは思っていない、ハジメにとって仲間とは自分達の目的に賛同し、同じ道を往く者達の事を指すのだ。

その事実を突きつけられて狼狽える遠藤だったが、ハジメはあくまで遠藤達を仲間と思っておらず、その事を突きつけただけで、救けないとは一言も言っていない。

 

「だから遠藤、この件はお前達を救けると言う『依頼』を僕達冒険者が受けるという、仕事の話だよ。其処は履き違えない様にね。ロア支部長、そういう事だからこの件はさっき貴方が言っていた通り『依頼』として受けるよ」

「ああ、良いだろう。上の連中に『仲間』と捉えられ、無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

「うん」

「…ゑ?」

 

先程ロアから、ホルアド支部長からの指名による天之河達の救出依頼を受けて欲しいとの要望されていたハジメはそれを承諾し、冒険者の『仕事』として救出に向かう事を伝えた。

香織達もハジメの心情を分かっている為か文句1つ言わず、その話を聞いて即座に己の武装をチェックし始めた。

 

「え、えっと、結局、一緒に行ってくれるのか?」

「だからそう言っているでしょうに。ほら、事は一刻を争うんだよ、早く案内して!」

「うわっ何で俺抱えられてんの!?」

「無駄口を叩かない!さっさと済ませて、早く戻るよ!玉井達が面倒を見てくれるとはいえ、ミュウを長時間待たせる訳には行かないし、こっちも用事って物があるんだからさ!」

「お前、本当に父親やってんのな…ハーレムは倍増するわ、ISみたいな物を作り出すわ…一体何がどうなったら、あの南雲がこう突き抜けるんだよ…」

 

その様子に戸惑いながらも救出に来てくれるのだと理解した遠藤、ただハジメの脇に抱えられ、ISによって空中を猛スピードで浮遊するというまるで意味が分からんぞ!と言いたくなる状況に納得いかなそうに呟いていたが。

ともあれ強力な助っ人が来てくれるという状況に心の余裕を取り戻したのか、未だ迷宮内にいる親友達の無事を祈り続けた。

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